魔界の大魔王（笑）として転生したが、ドラクエ世界ではなく恋姫†無双の世界に転生したのはおかしいんじゃないかな！？ 作：てへぺろん
それでは……
本編どうぞ！
闇……黒く全てを塗りつぶしてしまう。
光は抗い輝こうとするが強大な闇の前では無力であった。
………………ここは……どこ……？
呂布は目を覚ます。自分が何故寝ていたのは思い出せない……
……真っ暗……わたしは……なんでここに……？
辺りを見回すと黒……上下左右どこもかしこも黒一色に包まれてポツンと呂布がそこにいる。訳が分からない状況に困惑していた。
確か……連合軍がやってきて……そうだ！みんなは……！？
呂布は仲間達のことを思い出して辺りを見回したが、先ほど言ったように黒一色でこの場には彼女しかいない。まるでこの世の全てが黒……いや、これは黒でも深い闇だ。光を覆いつくす無限の闇が呂布一人だけを残して全てを飲み込んでしまったような感覚に襲われた。
みんなどこ行ったの……？華雄……張遼……賈駆……董卓……セキト……陳宮……！！！
呂布がいくら望んでも姿を現さなかった。いくら見渡してもそこに広がっているのは闇だけだった。自分以外の存在が全て闇に包まれていた。呂布は次第に不安がつもりやがて身を守るように縮こまって塞ぎこんでしまった。
どうして……誰もいないの……なんで……なんで……一人なの……！？
呂布の心は冷静さが欠けていた。息苦しさを感じ、肌が冷たく寂しさが彼女を襲う……そんな時、闇が形を作っていく。その闇はみるみるうちに大きく、人ならざる姿を形成していった。その姿を見た呂布は脳裏に電流が走ったような痛みを感じた。
『「呂布よ、私がだれであるかそなたにはすでに分かっておろう」』
『「そうだ。魔界の王にして王の中の王 ミルドラースとは私のことだ」』
『「よかろう……さあ来るがよい。私が魔界の王たる所以を見せてやろう」』
『「さすがだな。呂布奉先よ。しかし不幸なことだ……なまじ強いばかりに私の本当のおそろしさを見ることになるとは……泣くがいい 叫ぶがいい その苦しむ姿が私へのなによりのささげものなのだ。大陸最強の武人などというたわけた存在を私が今ここで断ち切ってやろう！！」』
――ッあ……ああ…………………………ああああああああ！！？
呂布の脳裏に今までの光景がフラッシュバックとして映し出された。自身の前に現れた異形なる存在であり、大陸最強と呼ばれた呂布に一騎打ちを申し込み、立ち塞がった恐怖……否、絶望の化身！
『「我は大魔王ミルドラース……魔界の王にして王の中の王である。さぁ呂布よ、我にその恐怖と嘆きを捧げるがいい！！！」』
闇が形作ったのは絶望の化身の姿であった……
「――ッうわぁぁぁぁぁぁぁあ！！？」
悲鳴を上げて目が覚めた。息が荒く、体中には汗が流れて今も心臓の鼓動が激しく脈打っていた。
「恋殿！？恋殿ー！！！」
「ワンワン！！」
そんな呂布の体に衝撃を感じた。大した拘束力はないものの、本人は自身が持てる全力で抱きしめて居たのだと思う……陳宮が呂布の体に抱き着いていた。傍にはセキトが心配そうな表情でご主人である呂布を見つめている。
「恋殿大丈夫ですか！？ねねが傍に居るから怖がらないでください！！痛いところはないですか！？ああ？……こんなに汗だらけでかわいそうです！！」
「……ちん……きゅう……？それに……セキトも……」
「――ッはい！恋殿の陳宮です！！ねねは心配で……しん……ぱいで……眠れなかったのですからぁ……よかったぁ……恋殿……うぅ……ヒグッ！」
陳宮は呂布の顔を見ると涙を流してしまい、どうするべきかわからない呂布はあたふたしていた。そんな時にこの場に慌ただしく現れたのは董卓達であった。
「恋ちんどないしたんや！！？」
「大丈夫か恋！！？」
「ちょっと今の悲鳴はなんなの！？」
「恋さん……あの……無事ですか？」
「……みんな……！」
呂布の鼓動がいつの間にか安定していた。荒かった息もいつの間にか落ち着いており汗も止まっていた。そして目の前には共に過ごした仲間達の姿が瞳に映し出されて体中から不安が抜け出た様であった。
みんな……ちゃんと生きている……！！みんな言葉を喋っている……！！
「ヒグッ……！？恋殿……涙が……」
「……えっ？」
呂布の頬には瞳から液体が流れ落ちていた。
「……みんなが……生きていて……よかった」
呂布が言葉にできたのはそれだけだった。無口な彼女はこれでも精一杯の言葉だったが、心の底からよかったと思えたのだからこれでいい。
「恋ちんもやっぱり女の子やな。それにウチら恋ちんにこんなに思われていたなんてありがたいね♪」
「まったくだ」
呂布の反応を見た張遼と華雄はまんざらでもない様子であった。呂布が涙する姿などこれが初めてであろうが、その初めてが自分達を心配して流してくれたのであるならば嬉しいに違いない。
「無茶したわね、でも今回は相手が悪すぎだわ。あんなのが相手なんでボクも予想できなかったし……」
賈駆は複雑な表情をしていた。その言葉を聞いて呂布はハッと思い出した。一騎打ちの勝敗でミルドラースが勝てば降伏する条件であり、呂布が勝てば連合軍は撤退して今後一切関わらないとの条件であった。しかし呂布は負けたのだ……完膚なきまでに叩きのめされた。だが彼女達は無事に生きていた。いや、もしかしたらこの後に待ち受けているのは……不安が再び生まれてしまった呂布は事の結末を聞かなければいけなかった。
「恋さん落ち着いてください。私達は……この戦争に負けました」
……やっぱり……これから……どうなる……？
不安が残る呂布はふっと気づいた。敗北したのにも関わらず董卓は悲愴な表情が見られないことに。
「……董卓……悲しくないの？」
「悲しいです……私の為に多くの命が亡くなっていきました。けれども私は亡くなった方々の分まで生きなければならなくなったのです。ミルドラースさんに言われました」
「――ッ！？」
ミルドラースと言う名に呂布の体が反応してしまう。呂布の体だけでなく脳裏にすら忘れることのないあの姿が思い起こされる。自然と片手で拳を握りしめて、もう片方の手で壁に立てかけてある方天画戟に手を伸ばそうとしていた。
「まちまち恋ちん！恋ちんが警戒するのはわかる！けど続きを聞いてからや！」
張遼が咄嗟に呂布を止める。自分でも意図しておらず体が勝手に動いていたことにここで初めて気づいた呂布だった。
「恋が警戒するのは当然だよ。ボクもあれには心は許せないからね。月もあれを信用しちゃダメだよ！」
「へぅ……で、でも永ちゃん、私はミルドラースさんは悪い人じゃないと思うよ？」
「あれが人じゃないのは同感だけど……だから余計に信用できないんじゃないの。何を考えているかさえわからないんだから……」
賈駆はあれを信用していいのかさっぱりわからなかった。ミルドラースの存在を報告を受けた時は何が何のことかわからなかったが、連合軍に敗北して呂布が負けたことは衝撃だった。そして連合軍からの申し出は降伏……これで最後かと腹を決めて董卓と最期を覚悟した時だった。
「ミルドラースさんが私達の前に現れて『この戦争はもう終わりだ。これ以上誰も死ななくてよい』と言ってくださいまして……説得された私達は投降し、連合軍の袁紹さんとの話し合いの場を用意してくださいました。話し合いの結果ですけど、私達が悪政を行っていることは間違いだったことに袁紹さんが頭を下げて謝ってくださいました。そして私達に濡れ衣を着せた方々は全員捕らえられたみたいです。これもミルドラースさんと袁紹さんが率先して動いてくださいました。そして私達の身の安全を約束してくださいまして……公……公……ええっと……」
「月……公孫賛」
「そ、そうでしたね！コホンッ……それでミルドラースさんが掛け合ってくれて、公孫賛さんの元で私達の身を置くことになりました。洛陽では暮らせなくなりますけど……ミルドラースさんのおかげで誤解が解けたことに感謝しているのですよ」
董卓の口から語られたのは呂布にとって驚きだった。自身の前に立ち塞がったあの絶望の化身が董卓を救ったなどと……
「恋殿が驚くのも無理ないです。ねねもあいつは信用していません！それに恋殿をこんなに痛めつけたあいつは万死に値して死ねなのです！！」
陳宮は賈駆と同じくミルドラースのことを信用しておらず寧ろ敵対心まであるようだ。無理もないだろう……あれだけ呂布を痛めつけたのだから、呂布ＬＯＶＥの陳宮から敵意を向けられても反論できないのであった。
「それで恋さん、ミルドラースさんがあなたに会いたがっています」
「……わたし……に……？」
呂布は俯いた。あれにまた会わなければならないと思うと体が震えてしまう……圧倒的な力の差、異常な存在、全てを飲み込む絶望の化身が会いたいと言っている。呂布はどうしたらいいのかわからなかった。そんな時、董卓がそっと呂布の肩に触れる。
「ミルドラースさんはきっと謝りたいのではないでしょうか？」
「……誰に？」
「恋さんです」
「……わたし……？」
董卓の言っている意味がわからない呂布は首を傾げることしかできない。
「混乱するのはわかります。けれど恋さん、もう一度だけ会って見てはどうですか？ミルドラースさんと戦った恋さんにしかわからないことだってありますし……それに怖そうな方ですけど悪い方ではないと思います」
「………………わたし……は………………」
董卓達に見守られながら呂布が出した答えとは……
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…………
……やりすぎた。
俺は只今絶賛後悔中だ。何を後悔しているのか……一つだけならず二つも三つも……それ以上のことを後悔している。
一つ、力を試すためとはいえ大魔王形態を披露してしまった。今のままでも異形な姿なのにあの姿はまずかったようだ……って言うか仮にも俺はラスボスでしかも（大）魔王だぞ？威圧感が半端ないんだぞ？そのおかげで董卓軍の連中からヤバイ奴だと思われているのは仕方ないとしても、連合軍の仲間から恐怖されて俺が現れるごとに兵たちが悲鳴を上げたり、命乞いしたり、中には失神する者まで現れる始末だ。他の将たちには明らかな警戒を孕んだ視線を向けられる……なんで！？ちょっとはっちゃけただけだろ！？いやまぁ……あれだけ暴れたんだから怖がられて当然だろうけども……お、おおい！？みんな俺の視界から消えて行かないでくれよ……
……もういいや……過ぎたことは仕方ないとして……次の後悔は……
チラリとミルドラースは横を見ると……
「流石ミルドラース様！その強さで董卓軍を下し、更には連合軍の下等な連中共にミルドラース様の威光を知らしめることもできましたね！素晴らしくなんともお美しいお姿でした！私の心の奥底……いえ、私の髪の毛一本にもミルドラース様の偉大さを改めて感じることができ感激でございました！！！私はなんて幸せ者なのでしょうか♪これからもミルドラース様の為ならばたとえ火の中水の中、戦場の矢が降り注ぐ嵐の中までも駆けつけてこの命を散らすことも惜しみません！！ああ……ミルドラース様！ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様！ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様！ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様！ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様！ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様！！！この私は一生死してもミルドラース様の元で御仕えさせていただきます！！！」
「主の真なるお姿には私も心底から熱くなるものを感じましたぞ。そこに存在するだけであの威圧感……まさに王の中の王であらせられた。私も主に手間を取らせぬよう更なる武を高めていこうと心に決めましたぞ。改めて主に誓いましょう……この趙子龍、主の為ならばこの命散らすこと惜しみませんぞ！」
もうやめてくれ白蓮……こんなのある意味で闇落ちじゃんか。もう現実を受け入れるしかないんだよな……俺が真の大魔王形態を現してからと言うもの、白蓮の崇拝度合いがうなぎ上りになってしまった。白蓮率いる部隊からも更に崇拝されてしまった。俺を目の前にしてお祈りとかマジでやめろ……これじゃ只の邪教じゃんかよ。マジで「光の教団」になってしまうんじゃねえかと冷や冷やしている。そして星は俺に対して忠義を尽くしてくれているのは嬉しいが、この状況に違和感を感じないのはお前も完全に毒されてしまったということだな……哀れな。そして新たなる後悔というより悩みだが……
「ミルドラースさん！私もミルドラースさんみたいに人々を導いていけるように頑張ります！」
あれれおかしぞー？どうして桃香がこんなにもキラキラした瞳で俺を見つめて来るのだろうか？実は今の状況は好ましくない状況に陥っている。
一騎打ちに勝ったことでこの戦争は連合軍の勝利に終わった。俺を中心として袁紹のお力添えをもらい董卓の悪政が嘘であることを突き止めることに成功し、董卓の身柄は呂布を打ち倒した俺がいる幽州……つまり白蓮が引き取る手筈になった。袁紹も快く了承してくれたし、嘘の情報を漏らした真犯人達は発見してお縄についた……これも袁紹が動いてくれたこともあって、彼女が董卓に頭を下げたことでこの戦争は真の意味で終結することになったのだ。多くの命が散って逝ったが、これ以上命が失われずに済んだことで袁紹にお礼を言うと顔が赤かったがどうしたんだろうか？お礼を言われることに慣れていないからか？まぁどちらにせよ、反董卓連合は解散することになったのだ。これから幽州に戻る準備をしているのだが、先ほども言った通り他の将たちから警戒されている……そして問題はここからだ……
愛紗が俺に向ける視線が複雑なものだったのだ。それに朱里と雛里の二人も俺を見るなり避けて近づいてくれない……鈴々はいつもよりも俺によそよそしい態度を取る。本人はそんなつもりじゃないみたいだが、本能が俺を怖がっている様子だった。連合軍に参加する前はみんなで仲良くできていたのに、俺のちょっとした気持ちの昂りでやってしまったことが響いていた。これはとてもよろしくない状況だった。四人の心が俺から離れていきそうになっている……意外にも桃香も俺を怖がるかと思っていたが、前よりも積極的に関わってくるようになった。何やら尊敬の眼差しで見つめて来るのは俺が何かやったからか？確か「これ以上命を失っていくのを見てるのが辛い」俺はその言葉を受けたな……それで桃香は信頼を寄せてくれたのかも。お人好しの桃香のことだからありえないことはないよな。けれど俺みたいにはならない方がいい……多くの命は救えたが、仲間の信頼を損ねることをしてしまったんだから。
「？ミルドラースさん？どうしたんですか？」
「……桃香、愛紗達の傍についていてやれ」
「えっ？なんでですか？」
「……頼む」
「……わかりました。ミルドラースさんがそうしてほしいなら」
劉備はミルドラースに一礼した後、気疲れしている関羽達が居る天幕へと向かっていった。
「おや？主よ、如何なされましたか？」
星が俺の行動に疑問を抱くのは最もだ。けれどこれは今の桃香に聞いてほしくないことだからな。
「桃香達には悪いが、幽州から出て行ってもらう」
「ほぅ……何故ですか？桃香殿達が邪魔になった訳ではないでしょう？」
「ミルドラース様、何か考えが？」
星と白蓮に向き直り俺の考えを二人に伝える。
今のままでは後に桃香達に悪影響を及ぼす可能性がある。桃香にはいつかは蜀を建国してもらいたい。俺はあくまでイレギュラーであり、三國志には含まれない存在だ。しかも今回の影響で愛紗達は俺とどう接したらいいのかわからなくなっているはずだ。俺はこの通りお口が言うことを聞いてくれない……そして今の俺は周りからは危険な存在だと認識されているはずで、そこに桃香達が居ると彼女達にも悪い影響を及ぼすことになるだろう。原作でも桃香達は白蓮の元を去った……そしていばらの道を進んで己の力で天下を切り開いていったんだ。俺の存在が邪魔をしているんだ。ずっと俺の傍に居れば複雑な関係のままで愛紗達との絆に亀裂が生じるかも知れない……結果はわからないが、桃香には強くなってもらわないといけないと思っている。残酷ではあるがライオンが子供を谷へと投げ捨てるように突き放そうと思う。別れは寂しいがまた会えるだろう……きっと。
「なるほど……流石はミルドラース様です！桃香のことをそこまで考えてくださっていたとは感激です！！ああ……ミルドラース様は気高い存在であり何者にも屈さぬ偉大さと心温まる優しさに私は飲み込まれてしまいそう……いいや既に飲み込まれていた！この私は幸せを通り越して絶頂の極みでございます！！！ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様ミルドラース様……！！」
「ふむ、やはり主に仕えて正解のようでしたな。私も桃香殿はまだまだなところがあると思っておりました故に丁度いい機会でしょう。主の元から離れて現実の厳しさを身を持って体感するのも悪くないですな」
二人共賛成のようだな。後は桃香は納得してくれるかどうかだが……その前に一つ後悔がまだ残っていた。それは……
……ボコボコに打ち負かしてしまった呂布にどう謝ったらいいだろうか……
何事もやり過ぎには注意しましょう。