魔界の大魔王(笑)として転生したが、ドラクエ世界ではなく恋姫†無双の世界に転生したのはおかしいんじゃないかな!?   作:てへぺろん

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ミルドラースと呂布の戦闘回終結です。呂布の前に立ちはだかるミルドラースは恐怖なのかはたまたそれ以上の……!


それでは……


本編どうぞ!




恐怖ではない……これが絶望だ

 「……ぁ……ぁ……ぁぁ……!!!」

 

 

 目の前に闇が広がる……巨大な影が一人の少女である呂布を覆いつくす。

 

 

 赤く黒い斑点模様の体は見る者全てに恐怖を与え、四本の腕は何者も切り裂く鋭い爪を宿し、二対の翼から放たれる風は小さな命を巻き上げ、棘の生えた尻尾は愚かなか弱き存在を叩きつぶすことができ、口の中に見える牙はなんでも噛み砕けるほどの輝きを見せてる。

 ただただ圧倒される……そこに居るだけでこの世の生き物が抗えぬ存在……本能が訴えかける。逃げ出せと……敵う訳がないと……しかし体は動かない。体そのものが……心の奥底から……凍りついたようにその存在からは逃げられないと理解してしまっていた。

 

 

 大陸最強の武人と呼ばれる呂布奉先が視線を向ける先には恐怖を具現化した存在がいた。

 

 

 大魔王ミルドラース……恐怖そのものが立ち塞がる。

 

 

 「どうした呂布よ、我を追い詰めたのだ。光栄に思うがいい……しかし我とてそう簡単に敗北できぬ訳があるのでな」

 

 

 ただ言葉を発しているだけだが、呂布にはその言葉が鋭い無数の刃となって突き刺さる。暗闇の世界からこちらに向ける瞳には呂布自身の震える姿を映し出した。その瞳には今まで一度も本人ですら見たこともない弱々しい姿が目に入った……映った自身の姿を情けないとも思える余裕すらない程に追い込まれていた。

 

 

 「……来ぬのか?ならば……」

 

 

 ミルドラースは人の図体よりも太く大きい尻尾を振り上げて……

 

 

 「我から行くぞ」

 

 

 呂布目掛けて尻尾を叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――ッぅぐ!?」

 

 

 吹き飛ばされ地面に放り出された呂布は砂煙が舞い上がった方へと視線を向けると……しばらくして砂煙が引いていき相変わらずそこには大魔王が平然と立っていた。しかし先ほど呂布がいた場所には一本の丸太のように太い筋が入ったように陥没しており、尻尾を叩きつけた時の衝撃がどれほど大きかったのか窺える。

 

 

 「(もしも……あの場でバランスを崩していなければ今頃……!)」

 

 

 すぐに分析に入れるのは大陸最強の名は伊達ではないと言う事だ。先ほど尻尾が振り下ろされる寸前に体が勝手に避けようとバランスを崩して直撃を避けられた。衝撃で吹き飛ばされたことが更に功を制して先ほどまでの震えが少し治まっていた。しかしそれでも震えは止まらない……微かな震えが今も呂布の体を支配していた。

 

 

 「我の攻撃を避けたのは驚いたが……次はどうかな?」

 

 「――ッ!?」

 

 

 もう一度尻尾が空へと昇っていきミルドラースの瞳が呂布を捉えて離さない。呂布は震える体を何とか言う事を利かせようと必死になっている。しかし状況は呂布の方が不利である。

 ミルドラースから発せられる強大な気配、人ならざる者の凶悪な姿、言い表しようのない恐怖がこの辺り一面を覆いつくし戦機を阻害させていた。そして何よりも人間など受ければひとたまりもない程の威力を放った尻尾による叩きつけを間近で見てしまったのだ。いくら大陸最強の武人と言えどもあの光景を忘れることなどできやしない。そしてそう言っている間に第二次の攻撃が呂布を襲おうとする。

 

 

 第二次の攻撃は結果として呂布は避けることができた。しかし代償に左腕に力が入らなくなってしまった。何故なら今度は尻尾による薙ぎ払い、呂布は恐怖を押し殺して長い尻尾による攻撃を避けれる範囲まで飛びのいた。しかしその距離はギリギリでミルドラースの尻尾の先には鋭利な棘が生えていた。ただその棘に呂布の左腕が掠った程度だったのだが、棘はあまりにも鋭く切れ味抜群だった。この大陸中探してもその鋭さと切れ味に匹敵する程の武器は見つかるかわからないほどであったのだ。呂布の左腕がぱっかり裂けたのである。骨や神経まではいってなかったものの筋肉をまるで紙を切るような柔らかさで裂いてしまい、血が流れ出る。

 

 

 「……!?血が……出てる……!!?」

 

 

 自分の血が流れ出ている様を見つめている呂布は痛々しく顔をしかめる。彼女がこのような表情をするのは滅多にないことだ。ほとんど無口で感情はほとんど出さなかった彼女がここまで露わにしたのは傷の痛みのせいではない。自分とはかけ離れた存在が立ち塞がり、呂布の本能がもう勝てないのではと諦めかけてしまう。しかしそれを認めたくなかった……認めてしまえばそこで何もかも終わりである。体が、本能が負けを認めても心だけは屈しないと思っていたが……今、折れそうになっていたからだ。

 

 

 「(……もう……無理……)」

 

 

 諦めれば終わり……諦めてしまえば何もかもがどうでもよくなる……自分の命すらも。

 

 

 呂布に宿っていた全身の力が抜けていく。抗うことをやめ、生きることを諦めるかのように瞳に宿った光が失われていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――ッ恋殿!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――ッ陳宮……?」

 

 

 光を失った瞳は自身の真名を呼ぶ声の方へと引き寄せられた。そこには城壁から身を乗り出して支えられていなければ落ちてしまう体勢で必死に呂布の真名を叫ぶ陳宮の姿があった。

 

 

 「恋殿!!!恋殿!!!負けないでください!!!そんな脂肪の塊なんぞ恋殿の敵ではないのです!!!」

 

 「お、おい暴れるな!手が離れてしまう!!」

 

 「せや、危ないって!!落ちてもええんかいな!?」

 

 「落ちても構わないのです!!そんなことよりも恋殿の方が大切なのです!!大丈夫なのですよ恋殿!!恋殿は最強なのです!!どんな敵も恋殿の前では無力なのです!!だから……だから……だから決して負けないでください!!!」

 

 「……陳宮……!」

 

 

 何度も呂布の真名を叫ぶ陳宮の姿を見ると拳に自然と力が入る。先ほどまで更なる絶望を見て光を失った瞳に再び光が差し込む。

 

 

 「(そうだ……勝たなければみんなは……!)」

 

 

 連合軍の申し出を思い出していた。ミルドラースと呂布が一騎打ちをして、ミルドラースが勝てば降伏する条件であり、呂布が勝てば連合軍は撤退して今後一切関わらないとの条件であった。最後の希望だった。申し出を受けなければ董卓軍は連合軍に今頃押しつぶされていたかもしれない。たとえ大陸最強の呂布が居ても数の前では己を生かすことしかできない……仲間達を生かすことなど到底無理だ。いくら強くても人間である彼女にも限界があるし、ましてやミルドラースの存在に震えていた彼女では戦いにならなかったであろう。だからこそその申し出を受けた。自分がここで諦めてしまえば仲間達の想いを踏みにじり、裏切ることになる。

 大陸最強と呼ばれる呂布でこれならば他の者では歯が立たない……だからこそ自分がやらなくては。自分が勝たなければ陳宮も張遼も華雄も賈駆もそして董卓も……みんな散っていく姿が脳裏に浮かぶ。

 

 

 「(それは……嫌だ!!)」

 

 

 短い時間だが、呂布にとって悪くない生活だった。家族と呼ぶ動物たちと共に董卓の元へと転がり込んだが彼女は嫌とは言わずに微笑んでくれた。街そのものは平和そのものだったが、董卓を妬む輩のせいで連合軍が結成されてしまい何の罪もない少女は今も怯えながらも戦場に立つ者達の象徴として輝いている。呂布も彼女のことは嫌いではないし、連合軍に反乱する意思もあった。それは呂布は今の生活が嫌いではなかったからだ。もう一度あの日を、もう一度みんなのあの笑顔を見たい……

 

 

 「恋殿!!!」

 

 「恋ぃ!!!」

 

 「恋ちん!!!」

 

 

 城壁……いや、虎牢関から呂布を呼ぶ声が聞こえてきた。陳宮だけでなく華雄と張遼、そして兵士達全員が呂布の名を必死に叫び鼓舞していた。その言葉一つ一つに重みがあった。彼女はその言葉を聞くたびに全身に力が戻っていく。

 

 

 「――ッ!!うわぁあああああああああああああああああ!!!」

 

 「――ッなんだと!!?」

 

 

 雄たけびを上げながら呂布は蘇った。体の奥底からいつも以上の力がみなぎって来るようだ。

 

 

 「みんなの……ためにも……負けない……負けられない!!!」

 

 

 立ちはだかる恐怖(ミルドラース)に立ち向かっていく呂布、今の彼女にとって恐怖心など大したものではなくなっていた。目の前には彼女自身の体を覆い隠せる程の巨大な肉体を持つ大魔王が大きな瞳を鋭くして睨んでいた。だが彼女は止まらない……仲間の声援を背に感じながら、大勢の仲間が傍に付いているように孤独感を感じない。今の彼女は一人ではない、董卓軍全員と心が一つとなって奮起させている。今までで一番気持ちが軽く、そして体の奥底から炎が上がってきているように熱い……心が燃え上がっていた。

 ミルドラースには見えた。呂布の背には数えきれないほどの人々……応援する人々の戦う闘魂が見えたのだ。ミルドラースは呂布一人を相手にしていなかった。董卓軍全員を相手にしていた。ミルドラースはその光景に唖然とした。

 

 

 呂布はみんなの想いを胸にミルドラース目掛けて飛び上がった。彼女の方天画戟が光り輝き希望の光を象徴しているかのような……そんな光景をこの場にいる全員が目の当たりにした。そして方天画戟が振り上げられる!!

 

 

 「――ッ覚悟!!」

 

 

 方天画戟が振り下ろされ、ミルドラースの肉体が切り裂かれてどす黒い瘴気を纏った血が傷口から流れ出し、大魔王が苦痛の悲鳴が戦場に響き渡る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――ッな?!」

 

 

 呂布は信じられないものを見てしまった。ミルドラースの肉体は確かに傷つけた。光り輝く方天画戟がミルドラースの肉体を切り裂きそこから血しぶきが噴出すはずだったのだ。しかし……

 

 

 「どう……して!?」

 

 

 切り裂いたはずの傷がなかったのだ。確かに呂布は手に持つ方天画戟でミルドラースの肉体を傷つけたのを自身の目でハッキリと見ていたはずだ……なのに何故!?

 

 

 「ふふ……驚いたようだな。自動回復があるのだ」

 

 「じ……どう……かいふく……?」

 

 「簡単に言えば受けた傷もすぐに修復してしまい元通りの肉体へと治してしまうのだ」

 

 「そ、そ……んな……!?」

 

 

 呂布は改めて思い知らされる……この世に希望など無いと言うことを……

 

 

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 なにが『ふふ……驚いたようだな。自動回復があるのだ』だよ……さっき攻撃を受けて自分に自動回復が備わっていることがわかったのに、ドヤ顔でまるで初めから知っているみたいに言っている俺はキモイ……まぁ別に自動回復がなくともミルドラースには『瞑想』があるから困ったことではないんだけどな。しかし驚いたな、呂布が再び立ち上がるなんて……俺変身!そんでちょっと実力を見せてやろうとしたら戦意喪失してブルブル震えている子犬のようになった呂布……ちょっと可愛いと思ってしまってじっくり眺めていようとか思ってないからな!と、とりあえず戦う気力が削ぎ落されたみたいで、これぐらいで許してやろうと思っていたけれども……少年漫画とかに良くある仲間の声援で強くなる主人公そのものみたいな展開になった。そして漫画のお約束のようにパワーアップした呂布、そして何故か光り輝いていた方天画戟に切り裂かれて内心めっちゃヤバい展開じゃん!?と思った俺だったが、瞬時に体の傷が治っていることを発見し、この形態は自動回復持ちであることをすぐさま理解した。

 魔王の肉体やっぱパネェわ……スペックが高すぎる。そして何よりも痛みもほとんどなかった。一瞬焦った俺が馬鹿みたいだ……何がヤバいだよ。全然ヤバくなかったよ……ダメージはくらうことはくらったけどすぐに元通りでHPは元気モリモリ。力も強い、体力もヤバイ、回復持ち、魔法使えるなんてこんなのチートや……爺さんの姿の時ならまだしもやはり大魔王(一応)は伊達ではなかった。声援を受けパワーアップした呂布よりも俺の方が強かっただけだ。おそらくもう呂布には打つ手は残っていない……これでもう戦いの勝ち目はなくなっただろう。俺の勝ちが確定した瞬間だ。だが俺も呂布の強さに気持ちが高まり、敬意を表してこの姿を見せることにしたし、仲間達の声援を受けて立ち上がった呂布はまさにドラクエに例えると勇者だ。

 

 

 だからこそ呂布に俺も更に敬意を表しようと思う。

 

 

 ミルドラースは動かぬ呂布を見据えて言った。

 

 

 「呂布よ、お前の攻撃は我の肉体に傷をつける程の力を持っていた。だが、無意味だった……呂布よ、お前は負けたのだ。恐怖には打ち勝った……だが我という絶望に負けた。そうだこれが絶望だ」

 

 「こ……れが……ぜつ……ぼ……う……」

 

 「しかし呂布よ、お前は恐怖に打ち勝ち我に挑んできた。そのことに対しては多大なる敬意を表そう……大魔王に挑んできたその雄姿には感動を覚えた。そこで……だ、我もお前に敬意を表して最大の魔力をぶつけよう!」

 

 

 ミルドラース四本の腕が中心に集まり、何かを唱える……するとエネルギーの塊が現れ呂布を中心に集まりやがて……

 

 

 受けてくれ呂布……俺ことミルドラースより……敬意を表して!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『極大爆裂呪文(イオナズン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呂布の姿をかき消すほどの光を一瞬放ち、辺り一面大爆発を引き起こした。

 

 


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