機動戦士ガンダムSEED effect   作:kia

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第50話  因縁の邂逅

 

 

 

 

 

 見渡す限り、岩などが散乱している暗礁宙域。

 

 そこに身を隠すように黒い外装に覆われた戦艦が航行している。

 

 それは今回の戦争でザフト最強と謳われた戦艦ミネルバだ。

 

 彼らはアメノミハシラから発進し、再び協力してくれるザフトの部隊へ合流しようとしていた。

 

 特務隊から追われたミネルバはスカンジナビアでの修復を終えた後、宇宙に上がりディアッカ達と合流を果たした。

 

 アストがザフトにいた頃、ディアッカ達に接触してある程度の事情を明かし、いざという時に備え協力を要請していたのである。

 

 彼らとしても当初は半信半疑だったが、ミネルバから提供された様々なデータのおかげで信用してもらえた。

 

 ミネルバも反デュランダル派という形で彼らの部隊に参加し、同盟との間の連絡役になっていたのである。

 

 ただミネルバはやたらと目立つ。

 

 それがたとえ宇宙でもだ。

 

 そこで彼らは艦の全体を黒い外装で覆い、さらにミラージュ・コロイドも展開可能なように生成装置を取りつけた。

 

 これによって短時間とはいえ姿を隠す事ができる様になり、宇宙でも動きやすくなっていた。

 

 「周囲に反応は?」

 

 「ありません」

 

 「そのまま警戒を続けて」

 

 「はい」

 

 こうして姿を隠し、いつ来るか分からない襲撃に怯える。

 

 いつまでも慣れる事のない嫌な感じだ。

 

 しかし見つかれば確実に特務隊が駆けつけてくるだろう。

 

 それだけは避けなくてはならない。

 

 警戒しながら進むミネルバの先に何隻かのナスカ級の姿が見えた。

 

 合流しようとしていた部隊の母艦である。

 

 《ミネルバ、無事ですか?》

 

 モニターに映ったのは三英雄の一人であるニコル・アルマフィだった。

 

 いつも通りの柔和な笑顔を浮かべミネルバを迎え入れた。

 

 「こちらは無事です。アルマフィ隊長」

 

 《そうですか。月での会談が始まるまで、もう少し時間があります。その間に情報共有を済ませましょう》

 

 「了解しました」

 

 ナスカ級に接舷するため、ミネルバは静かに近づいていった。

 

 

 

 

 

 彼らは決して油断していた訳ではない。

 

 常に警戒を怠っていなかった。

 

 それが幸いし、この後で徐々に動いている『物体』に気がつく事ができた。

 

 それでも「ザフトの意識は月に向いている」という意識がなかったと言えば嘘になるだろう。

 

 だから彼らは近づいてくるもう一つの存在に直前まで気がつかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 月面都市『コペルニクス』

 

 この都市は前大戦までは地球、プラントどちらにも属さず、自由中立都市として存在していた。

 

 現在はテタルトスの玄関口として機能し、交流を持った国の様々な者達がこの場所を訪れている。

 

 とはいえ訪れる者のほとんどが交流がある中立同盟や同盟の仲介で秘密裏に接触していた一部の国家のみだが。

 

 しかし今日という日は流石に異常であった。

 

 中立同盟の戦艦だけならばまだしも、敵対している連合やザフトの艦まで入港してきたのだから、違和感を感じるのも無理はない。

 

 そんな光景を港で観察していたエドガーは、傍に控えていたアレックスに向き直る。

 

 「アレックス、君に頼みたい事がある」

 

 「何でしょうか?」

 

 「数人を連れて街中を警備して欲しい。警戒はするが、懐に迎え入れる以上、どうしてもリスクはある。特にザフトは何をするかわからない」

 

 コペルニクスを訪れた三勢力には都市内での散策程度は許可してある。

 

 もちろん立ち入り禁止区域や重要施設へ立入りには行動範囲に制限を設けている。

 

 都市には警護の兵士達を配備している事も通知済みだ。

 

 当然リスクを負ってまで、都市への立ち入り許可した事には理由がある。

 

 今回の会談は全世界が注目していた。

 

 テタルトスとしてはあまり警戒を厳重にして、マイナスのイメージを持たれるのは面白くない。

 

 ただでさえ、同盟以外からの印象は良くないのだ。

 

 だから此処はあえて彼らを受け入れる事にしたのである。

 

 「司令の警護の方は?」

 

 今回はエドガーが代表者として会談に参加する事になっていた。

 

 デュランダルと真っ向から相対出来る者がいないという事。

 

 そしてテタルトスを誕生させた創始者の一人でもあるエドガーが相応しいと判断されたのだ。

 

 「こちらの警護にはユリウスについてもらう。軍本部の方にはバルトフェルドに居てもらうから大丈夫だ。……アレックス、もしも何かあった場合は君の判断を優先する。遠慮なくやれ」

 

 「了解」

 

 アレックスは敬礼すると踵を返し、周囲の兵士達に指示を飛ばしながら部屋を出ていく。

 

 それを見届けたエドガーは再び視線を港に降りようとする艦に戻した。

 

 「来たのはミネルバの同型艦か。周囲の状況は?」

 

 「数隻のナスカ級を確認しています」

 

 流石に単独で来るほどテタルトスを信用していないようだ。

 

 当然の選択と言えるだろう。

 

 「それに合わせ部隊も出撃させました」

 

 「良し、そのまま警戒を続けさせろ。ただし不用意にこちらから向こうを刺激するな」

 

 「はっ!」

 

 さて、ここからが本番である。

 

 エドガーは気を引き締め、降りてくる客人を出迎える為に部屋を出た。

 

 

 

 

 コペルニクスの港に到着したザフトの戦艦フォルトゥナ。

 

 それを後から追うように一隻の戦艦が月面に降下しようとしていた。

 

 ファントムペインに所属していた特殊戦闘艦『ガーティ・ルー』である。

 

 ただ以前とは違い色が変えられ、白をメインにした塗装にいくつか細部に変化が見られた。

 

 ガーティ・ルーはザフトにとってこの戦争の一つの発端ともいえるアーモリーワン新型機強奪事件を引き起こした艦である。

 

 命令だったとはいえ露見すれば色々と不都合が生じる事は想像に難くない。

 

 そこである程度の改修を施し、塗装を変更したのである。

 

 これなら同型艦だと言い張れるからだ。

 

 ガーティ・ルーのブリッジには指揮を執るラルスと艦長であるイアン・リー。

 

 さらにアオイ、ルシア、スウェン、スティングといった主要メンバー。

 

 そしてマクリーン派、いやロゴスが壊滅した今、実質的な地球軍トップであるグラント・マクリーンも乗船していた。

 

 彼がここにいるのは勿論今回の会談の為だが、本来ならば政治家が来る予定だった。

 

 しかし現在連合は半壊状態。

 

 しかもロゴスに関わっていた政治家も多く、関わりない政治家も皆、国を纏める事で精一杯。

 

 月に来ての会談などしている暇はないと、グラントに押しつけてきたのだ。

 

 『デスティニープラン』に対する答えが皆一致しているのが、まだマシともいえる。

 

 「さて月に到着した訳だが、予定通りラルスに護衛についてもらう。艦の戦力としてはスウェンを残す。ルシア、少尉、スティングは街に出て情報収集して欲しい。ただし時間厳守で、テタルトスを刺激しないようにな」

 

 「「「了解」」」

 

 とはいえグラントとしても情報が簡単に手に入るとは思っていない。

 

 テタルトスも馬鹿ではない。

 

 確実に警戒している筈だ。

 

 それでもアオイ達に任務を下したのは、どんな形でも彼らに休暇を与えたかったからだ。

 

 これまで激戦続きでありながら、碌に休む暇も無かった。

 

 ここらで休みも必要だろうと判断したのだが、ルシアもアオイも真面目だ。

 

 休めと言っても休まない。

 

 そこで任務という形を取って無理やり休ませる事にしたのである。

 

 皆が敬礼を返し、グラントがラルスを連れてブリッジを出るとスウェンも同時に出て行った。

 

 おそらく機体の調整に向かったのだろう。

 

 アオイ達も街での情報収集に出る為の準備を始めた。

 

 「では大佐、俺達も行きましょうか」

 

 「ええ」

 

 今回は時間がかなり制限されている上、テタルトスも警戒している。

 

 問題を起こさないようにする方が重要だ。

 

 ブリッジを出ようとした時、オペレーターの一人が訝しげに声を掛けてくる。

 

 「大佐、少しよろしいでしょうか?」

 

 「何かしら?」

 

 「これなんですが」

 

 オペレーターがキーボードを操作し、それをモニターに表示する。

 

 映し出されたのは送り主不明のメールだった。

 

 内容はステラ・ルーシェの居場所について。

 

 「これって」

 

 「あからさまな罠ね」

 

 御丁寧に文章と一緒に地図まで添付されている。

 

 ステラに関する名前を出してきたという事は狙いは―――アオイ。

 

 となれば差出人はザフトに間違いない。

 

 この状況下においても邪魔者を始末しようという事か。

 

 ザフト側の思考が透けて見える。

 

 彼らは―――デュランダルはデスティニープランに関してまったく譲るつもりなどないのだ。

 

 「なあ、アオイ、ステラって誰だよ?」

 

 スティングは不思議そうな表情を浮かべて聞いてくる。

 

 彼はもうステラに関する記憶がない。

 

 それは分かっているが、何度目の当たりにしても嫌な気分になる。

 

 「ステラっていうのは、前にいた俺達の仲間だよ。とある戦いの後でザフトの捕虜にされて、今は」

 

 アオイが言いにくそうに言葉を切ると、スティングは察したようにニヤリと笑った。

 

 「じゃ、助けにいかなきゃな」

 

 「スティング!? 待ちなさい、これは―――」

 

 「罠だっていうのは分かってるよ。ただ……なんか聞き覚えがあるんだよ。ステラってさ」

 

 その言葉にアオイもルシアも驚いた。

 

 記憶はすべて消された筈なのに。

 

 少しでも覚えているのだろうか、ステラの事を。

 

 「で、アオイ、行くんだろ?」

 

 「ああ」

 

 本当にステラがいるなんて思っていなかった。

 

 空振りである事は覚悟の上である。

 

 どの道、街での情報収集に当てはないのだ。

 

 「はぁ、仕方無い。一応中将の方に連絡を入れて、指定された場所に向かいましょう。ただし単独行動は絶対に駄目よ」

 

 「「了解」」

 

 ルシアは勇んでブリッジから出ていく二人の背中を見て、苦笑しながらその後を付いて行った。

 

 

 

 

 

 アオイ達の下に差出人不明のメールが届いた頃。

 

 同じ様にメールが送られた場所があった。

 

 すでにコペルニクスに入港し、準備を整えていたアークエンジェルである。

 

 彼らは中立同盟の代表として会談に訪れたカガリを送り届ける為に、いち早くテタルトスに到着していた。

 

 メールの内容はティア・クラインの居場所について。

 

 さらにはアレン・セイファートを名指しする形で地図も添付されている。

 

 「アスト君、分かっていると思っていますが、これは罠ですよ」

 

 「でしょうね」

 

 メールの差出人は間違いなくザフトからのものだ。

 

 邪魔者であるアストを消してしまおうという算段だろうか。

 

 デュルクにはザフトに戻らないとはっきり宣言した訳だから、狙われても不思議はない。

 

 「アスト、どうするの?」

 

 「行く。間違いなく罠だろうが、ティアの居場所について何か分かるかもしれない」

 

 元々アストはティアをデュランダルの所に何時までも置いておくつもりはない。

 

 折りを見て連れ出すつもりだった。

 

 しかし何度か居場所を掴もうとしても、すべてブロックされてしまった。

 

 掴めたとしてもダミーである可能性も高い。

 

 それだけザフトはティアに関して高い防備を敷いていた。

 

 「アスト、そろそろ私達にもティア・クラインの事を教えていただけませんか?」

 

 「アストさんはあの人が何なのか知っているんですよね?」

 

 「ああ」

 

 アストはまだ皆に対してティアの事を話していなかった。

 

 ティアの生まれを考えれば、出来るだけ伏せておきたかったというのが本音だ。

 

 しかしラクスが気になるのも当然の事。

 

 彼女はラクスと非常に良く似た容姿であり、しかも妹と言われているのだから。

 

 「……そうだな。行く前に話そう。彼女、ティア・クラインは間違いなくラクス、君の妹だ。そして―――俺にとっても妹のような存在だ」

 

 

 

 

 

 事の起こり―――それはコーディネイター達のとある欠点が判明した時期まで遡る。

 

 コーディネイターは遺伝子調整を施されることで、優秀な頭脳と強靭な肉体を持った存在として誕生した。

 

 しかし時が経つにつれと幾つかの問題が浮上してくる事になる。

 

 その一つが出生率の低下だった。

 

 世代が進むにつれ遺伝子配列が個別に複雑化した為に受精が成立せず、遺伝子の型が組みあわない者同士は出産が不可能という事実が発覚したのである。

 

 これにはプラントの者達は大いに慌てた。

 

 ナチュラルに対して常に優位に立っている自分達にこのような事が降りかかるとは思っていなかったのだ。

 

 当然この問題に対して対応策が練られる事になった。

 

 婚姻統制などはその一つだったのだが、もちろんそれだけでは終わらない。

 

 この問題を解決する為に優秀な者達が集められ、研究が開始されたのである。

 

 だが簡単に解決できるような問題ではなかった。

 

 様々な研究が行われるも、成果を上げる事は出来ず、時間だけが過ぎていく事になる。

 

 何時までも成果を上げられず、これらの研究を一番後押ししていたパトリック・ザラすら、苛立ちを隠さなくなった。

 

 焦った一部の研究者達が手を出したのが、メンデルで行われていた数々の研究データだった。

 

 これらのデータを使ったところで別に成果が上がるという確証があった訳ではない。

 

 「何か成果を」という彼らの焦りとコーディネイターとしての矜持がそうさせた。

 

 彼らは一つの結論に達したのだ。

 

 それが根本的な解決には至らないと理解しつつも、彼らは手を止めなかったのである。

 

 要は遺伝子配列の複雑さが問題。

 

 ならばできる限り簡略化し、同時にこれまで以上の力を発揮できるようにすれば良いと。

 

 だが言うほど簡単な事ではない。

 

 それはこれまで誕生してきた失敗作と呼ばれたコーディネイター達が示している。

 

 データを基にした遺伝子配合による、実験。

 

 その度に積み上がっていく失敗。

 

 その中で生まれた幾つかの命。

 

 結果―――彼らは誕生させた。

 

 使用した遺伝子はクライン夫妻のもの。

 

 どうやって彼らがクライン夫妻の遺伝子を手に入れる事が出来たのかは分からない。

 

 その遺伝子を使い狂気の研究者でありアストの母親でもあるシアン・カグラ博士の残した研究データを使用。

 

 遺伝子配列をできるだけ単純化しながらも、コーディネイターとして最大限の力を発揮させた一人の赤子が誕生した。

 

 ユリウスやアストとは違う目的ではあれど生まれたもう一人のカウンターコーディネイター、それがティア・クラインだった。

 

 彼女は通常の第二世代コーディネイターに比べ遥かに遺伝子配列が単純化されている為、多くの者との間に子を成す事が可能だった。

 

 ある意味で実験は成功したのだ。

 

 ただ、問題は解決した訳ではない。

 

 あくまでも彼女が誕生出来たのは偶然に過ぎず、成功率は限りなく低い。

 

 さらにコストなどの事もあった。

 

 しかし研究もここまでだった。

 

 シーゲル・クラインが実験に気がついたのである。

 

 裏で行われていた実験に気がついた彼は研究者達を拘束、即座に研究を凍結させた。

 

 これが世間に漏れれば、間違いなく問題が起きる。

 

 当時はメンデルでバイオハザードが起きてから、そう年月が経っていない。

 

 メンデルで起こったとされる事故はテロであるという話が根強くあった時期だ。

 

 評議員だったシーゲルはパトリックにも協力を仰ぎ、裏で手を回して事実を隠ぺい、生まれた子供達を出来るだけ保護した。

 

 そしてティアもまた人目から遠ざけ、別の場所で育てた。

 

 第二子として育てる事も可能だったが、シーゲルは公に立つ立場である。

 

 いつ事実が漏れるかわからない。

 

 最悪ティアを含めラクス達も危険にさらす可能性もあったのだ。

 

 故にティアの存在を知っているのはシーゲルとパトリックを含めたごく一部のみ。

 

 デュランダルが公に発表するまで、彼女は人目から隠れて生活して来たのである。

 

 アストがプラントに渡ったもう一つの理由が、彼女を利用させないためだったのだが―――

 

 彼女の存在を掴んだ時は、すでにデュランダルの手が回っており、迂闊に連れ出せない状況になっていた。

 

 

 

 

 話を聞き終えた全員が神妙な顔つきで俯いている。

 

 特に初めてアスト達の生まれを知ったシンは顔を歪め、拳を強く握りしめていた。

 

 「じゃあ彼女は……」

 

 「ああ、間違いなくラクスの妹だ」

 

 パトリック・ザラが彼女を殺さなかったのは、出生率低下を打開する研究の実験体だったからだろう。

 

 戦争終結後も彼の政権が存続していたなら、研究の被検体にされていたかもしれない。

 

 アストはラクスを見るとキラに寄り添って下を向いている。

 

 やはり彼女に話すのは早かっただろうか。

 

 顔をあげた彼女は何かを決意したような表情でこちらを見てきた。

 

 なんか嫌な予感がする。

 

 「アスト、私も行きます」

 

 「ラクス!?」

 

 「……言うと思ったよ」

 

 焦るレティシアを尻目にアストは呆れたようにため息をついた。

 

 彼女が生存している事が判明したところで、今さら何の問題も無い。

 

 そもそもラクスが生きている事を伏せていたのは、前大戦時パトリック・ザラに狙われていたから。

 

 さらにはデュランダルを含むクライン派と呼ばれる人々に政治的に利用させない為であった。

 

 しかしもはや状況は大きく変わった。

 

 すでにパトリック・ザラは死亡し、ラクス自身にも政治的に何の価値も無い。

 

 バレてもプラントの歌姫が生きていたという事で騒ぎは起こるかもしれない。

 

 しかしデュランダルの『デスティニープラン』の宣言でそれどころではないだろう。

 

 それに来るなと言っても彼女の表情から見て、何を言っても無駄だ。

 

 「はぁ、ティアがいるとは限らないんだ、それでも?」

 

 「もちろんです」

 

 「……せめて最低限の変装くらいしてきてくれ。君は目立つからな」

 

 「ありがとう、アスト!」

 

 結局レティシア、マユ、キラもついてくる事に決まってしまった。

 

 ムウはショウと共にカガリの護衛役として、シンは万が一の場合に備えてアークエンジェルに残る事になった。

 

 シンとしてもついて行きたかったのだが、アストに「お前は会談の方を気にしておけ」と言われてしまった。

 

 会談の状況は各勢力の艦内で中継される事になっている。

 

 アスト達もそれまでには戻る予定ではあるが、間に合わない可能性がある。

 

 確かにこれはデュランダルの考えを聞く上で、絶好の機会と言っても良い。

 

 だからアストが気を使ってくれたのだろう。

 

 「マユ、危なくなったらすぐに逃げるんだぞ」

 

 心配そうなシンに苦笑しつつも、マユは感謝と信頼を込めて声をかけた。

 

 「大丈夫ですよ、兄さん。対人戦闘も経験済みですし」

 

 「マユ……分かった」

 

 心配である事に変わりはなかったが、大丈夫だと言い聞かせアストを見る。

 

 銃を点検しながら、シンの様子に気がついたのか力強く頷いた。

 

 「後は頼むぞ、シン」

 

 「はい!」

 

 シンの返事を聞いたアストは指定された場所に動する為、車が置いてある格納庫に向った。

 

 

 

 

 コペルニクスに存在する大きな会議室。

 

 現在この場所は今までにない緊張感に包まれている。

 

 警備をしている者が皆、緊張のあまり息を詰まらせそうな程だった。

 

 会議室の中央には大きな机と四つの椅子が用意されていた。

 

 その椅子には今テタルトス軍事総司令エドガー・ブランデルが座っている。

 

 その傍ではユリウス・ヴァリスが鋭い視線で周囲を警戒していた。

 

 そこに黒髪の男が一人の護衛者を連れて入ってきた。

 

 ギルバート・デュランダルである。

 

 その後ろにはユリウスを睨むように立つ、デュルクと身を固くしたレイの姿もあった。

 

 エドガーは椅子から立ち上がるとデュランダルに向け手を差し出した。

 

 「ようこそ、デュランダル議長」

 

 「お会いできて光栄ですよ、ブランデル司令」

 

 デュランダルは差し出された手を笑みを浮かべて握り、握手を交わす。

 

 二人は終始笑顔だったが、相手を探る事を忘れず、鋭い視線を向ける。

 

 軽い挨拶を終え、自分の席に着くとデュランダルはユリウスに声を掛けてきた。

 

 「久ぶりだね、ユリウス」

 

 「……お久ぶりです。デュランダル議長」

 

 「君は相変わらずのようだ」

 

 「それは私の台詞ですよ。貴方こそ、以前と変わりないようで」

 

 明らかに皮肉の籠った言い方だった。

 

 デュルクが眉を顰め、レイが一歩足を踏み出すがデュランダルが手で制した。

 

 「……そうだね。丁度良い、会談が始まる前に聞いておきたい。君個人として私に協力する気はあるかな?」

 

 ユリウスはデュランダルの方へ鋭い視線を向けるが、彼はいつも通りの笑顔のままだ。

 

 「……分かっている筈ですが。私が貴方に協力する事などあり得ない」

 

 「何故ですか?」

 

 前に出たのは今まで黙っていたレイだった。

 

 理解できない様子でユリウスを見ている。

 

 だがユリウスはレイに何の興味も無いらしく、視線を向ける事も無い。

 

 それがレイをさらに苛立たせた。

 

 「答えてください。議長の創る世界こそが―――」

 

 「……黙っていろ。お前に語る事など無い」

 

 「なっ」

 

 ユリウスは内心ため息をつく。

 

 正直うんざりだった。

 

 彼らと自分ではあまりに考え方に隔たりがある。

 

 「貴方のそれは未来を作り出すものではない。ただの停滞だ。私は未来の為にここにいる」

 

 「だがそんな思いも歪められ、争いを、戦いを引き起こし―――結果、君や『彼』のような人間を生み出す事になる」

 

 その言葉にさらにユリウスは視線を鋭くする。

 

 「貴方が『彼』を語るつもりか」

 

 「……私はただ彼のような生き方は不幸だと思っただけだよ」

 

 「彼は最後まで足掻き、戦った。傷つく事を恐れ、選択する事すら放棄する。そんな貴方が彼を語るなど―――」

 

 十分な侮辱だと拳を強く握り締める。

 

 「だが彼は負けた。私は御免だよ。彼の様に足掻くのも、負けるのもね」

 

 「……貴様」

 

 まさに一触即発。

 

 その時ユリウス、そしてレイにあの感覚が走った。

 

 この場所に奴らが来るとは、何とも因縁深い会談になりそうだ。

 

 「これは……どうやら話はここまでのようですね」

 

 一転して冷静になったユリウスの言葉を証明するように、足音が響いてくる。

 

 そして両側に設置されている扉が同時に開いた。

 

 仮面をつけたラルスと一緒に入ってきたのはグラント・マクリーン。

 

 そしてムウやショウと入ってきたのはカガリ・ユラ・アスハ。

 

 ここに各勢力の代表者が集まった。

 

 「遅くなってしまったようだ」

 

 「申し訳ない」

 

 「いえ、お気になさらず」

 

 「ええ、私も今到着したところです」

 

 断っておくが、誰かが遅刻したという訳ではない。

 

 開始予定時間まで十五分以上ある。

 

 カガリとグラントが皆と握手を交わし席に着くと、部屋はすぐに静かな、そして重い緊張した空気に包まれた。

 

 ムウは仮面をつけたラルスや宿敵であるユリウス、そしてデュランダルの傍に控えるレイを見る。

 

 あの感覚が教えている。

 

 間違いなく全員が自分との血縁者であると。

 

 「……たく、クソオヤジ。余計な事ばっかりしやがって」

 

 高まる緊張と重苦しい空気の中、ムウはただ毒づく事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 町の外れにある古めかしい石造りの劇場のような場所。

 

 人気もまったく無い、この場所がメールで指定されていたポイントだった。

 

 そこに銃を片手にアスト達が近づいていく。

 

 テタルトスもこんな場所は警戒していないのか、誰もいない。

 

 「全員、周囲を警戒して」

 

 一番後ろのいるキラの声に合わせ、左右についたレティシアとマユが周囲に視線を流す。

 

 そして正面に立っているアストとそのすぐ傍にはラクスが控えていた。

 

 ラクスは眼深いフードを被り、金髪のかつらをつけている。

 

 これで彼女がラクスだと気がつく者はおるまい。

 

 何と言うか本格的である。

 

 彼女にこんな特技があったとは知らなかった。

 

 彼女曰く「レティシアと二人で色々やってましたから」という事らしい。

 

 プラントではアイドル扱いだったらしいから、こういうのにも慣れているのかもしれない。

 

 「嫌な感じだな。やはり」

 

 間違いなく罠だ。

 

 何が起こっても不思議はない。

 

 音を立てないように慎重に中を進んでいくと、やがて劇場の中央らしき場所に辿り着く。

 

 そこに腰かけていたのはピンク色の髪をした少女ティア・クラインだった。

 

 「ティア、本人か」

 

 本当にティアがいるとは思っていなかった。

 

 「どういう事だ?」

 

 皆に目配せし、声をかけようとした時、傍に金色の髪をした少女が座っているのが見える。

 

 「誰だ?」

 

 疑問はあるが、埒が明かない。

 

 アストはもう一度皆を見て、全員の意思を確認すると意を決して声を掛けた。

 

 「ティア」

 

 皆を待機させ、アストだけが姿を見せると空を見上げていたティアが視線を向ける。

 

 すると穏やかな笑顔を向けてきた。

 

 「アレン様!!」

 

 「久ぶりだな、ティア」

 

 嬉しそうに立ち上がったティアの姿にアストは安堵する。

 

 どうやらデュランダルに何かされた訳ではないようだ。

 

 そこにフードを被ったラクスとレティシア達がアストの傍に来た。

 

 「アスト、私に話させてもらえませんか?」

 

 「……分かった」

 

 ラクスがフードを脱ぎ、かつらも取るとピンク色の髪の毛が姿を見せる。

 

 それを見たティアが驚いた表情を浮かべる。

 

 「貴方は……」

 

 「初めまして、ティア。私はラクス・クラインと言います。今日は貴方に会いに来たのです」

 

 「ま、まさか、お姉さまなのですか?」

 

 「はい」

 

 生きていた姉の姿に涙を浮かべ、駆け寄ろうとしたティアを制するように金髪の少女ステラが前に出る。

 

 「そこまでだ。お前がアレン・セイファートだな。私はザフト軍所属ステラ・ルーシェ。こちらに来てもらう。拒むならば―――」

 

 懐から銃を取り出しアストに向けた。

 

 それを見てこちらも持っていた銃を構える。

 

 ティアが驚きながらもステラに詰め寄った。

 

 「ステラさん、何故アレン様に銃など向けられるのですか? やめてください。それにお姉さまとも―――」

 

 「これは任務だ。貴方はさっさと下がって」

 

 アストが引き金に指を掛けたその時、唐突に例の感覚を感じ取った。

 

 「これは……」

 

 「アスト、反対側だ!」

 

 キラの声に反射的に反対側の入り口に視線を向ける。

 

 そこから三人の男女が入ってくるのが見えた。

 

 「ステラ!!」

 

 「待って、少尉」

 

 「あの金髪が……ステラか。もう一人はティア・クラインだろ。あいつらは誰だ?」

 

 銃を持ったアオイに、ルシア、スティングの三人だ。

 

 こんな時に乱入者とは。

 

 アオイはステラに銃を向けているアストに気がついて、こちらも銃を構える。

 

 「ステラから離れ―――ッ!?」

 

 その時、傍にいる少女に気がついた。

 

 「ティア・クラインがどうしてこの場所に?」

 

 それだけではない、すぐ傍にはもう一人ティアと似た少女がいる。

 

 そしてティアもまたアオイの存在に気がつき、ぽつりと呟いた。

 

 「アオイ様?」

 

 「うっ、ア、オイ。そうか奴がターゲットの一人か。……ならば」

 

 鈍い頭痛に額を押えながらステラが手を挙げて合図する。

 

 すると周囲に隠れていたザフトの諜報員らしき者達が劇場の客席から一斉に立ち上がり、銃を向けてきた。

 

 そこで同時に現れた存在にアストは目を見開いた。

 

 「リースにヴィートか!?」

 

 アストの姿を見つけたリースは笑みを浮かべる。

 

 「ようやく会えたね、アレン」

 

 「……リース、奴は敵だ。ここで奴を倒すのが任務だぞ」

 

 ヴィートにとってアストは憎悪の対象だ。

 

 この場で今すぐ八つ裂きにしてやりたい。

 

 だがそれに対するリースの答えも決まっていた。

 

 「ふざけないで。アレンを傷つけたら―――殺すよ」

 

 殺意を宿した鋭い視線に、内心ため息をついた。

 

 だからリースとの任務は嫌だったのだ。

 

 「……奴の方は後だ。先にアオイ・ミナトの方をやらせてもらう」

 

 「好きにしたら。私はアレン以外どうでもいい」

 

 「……ヒルダ、さっさとティア様を連れて行け。邪魔だ」

 

 無線にそう言い放つと、機嫌が悪そうな声で女性が「分かった」と返事をする。

 

 「ティア様、こちらへ」

 

 「待ってくださ、アレン様が!」

 

 ヒルダが居やがるティアを連れ、舞台を降りると同時に諜報員が発砲する。

 

 銃声に合わせ、全員が飛び込むように舞台の陰に隠れ、銃弾をやり過ごした。

 

 「ティア!」

 

 「アレン様!」

 

 「必ず迎えにいく、それまで待ってろ!」

 

 アストの声に返事をする事も出来ず、ティアは連れ去られてしまった。

 

 

 

 

 アオイは銃弾を避けつつ、ステラの姿を探していた。

 

 だがすでに外に向かったのか、姿が見えない。

 

 「くそ!」

 

 ルシアと共に銃を撃ち返すが、当たらない。

 

 訓練はしていたがアオイにとっては初めての銃撃戦である。

 

 やはり訓練と実戦は違う。

 

 「頭下げろよ、アオイ!」

 

 スティングの射撃が諜報員の頭を正確に撃ち抜き、血をまき散らす。

 

 さらにもう片方の手で構えた銃でもう一人を射殺。

 

 同時に舞台の陰から飛び出して次々に屠っていく。

 

 「すごいな、スティング」

 

 「ここは任せろって!」

 

 流石にエクステンデットといったところだろうか。

 

 撃ち込まれる銃弾が明らかに減った。

 

 感心したのと同時に感じた悲しさを吐き出すようにアオイも銃を構えようとした時、横からヴィートが飛び込んでくる。

 

 「なっ!?」

 

 「見つけたぞ!!」

 

 側面からの蹴りを片腕を振り上げて防御するが、すぐに転ばされてしまう。

 

 「少尉!?」

 

 「モビルスーツ戦闘に長けてはいても、対人戦闘は大した事無いな」

 

 「このぉ!!」

 

 ヴィートが構えてきた銃を足を振り上げて逸らすと、アオイの顔を掠めるように銃弾が撃ち出された。

 

 危ない。

 

 アオイは冷や汗をかきながら、ヴィートを転ばすように足を掛けようとする。

 

 だが流石特務隊といったところ。

 

 飛び上ってアオイの足蹴りを避け、再び銃を撃ち込んで来た。

 

 床を転がりながら銃弾をやり過ごしていくと、そこにルシアが立ちふさがる。

 

 「邪魔だ。目的はアオイ・ミナトだけ、お前らには用はない」

 

 「少尉をやらせる訳にはいかないわ」

 

 「じゃあ、仕方ないな」

 

 ヴィートがルシアに襲いかかった。

 

 ルシアは通常の兵士に比べれば、十分に優れている。

 

 しかしコーディネイター相手に生身の戦闘では分が悪いと言わざる得ない。

 

 振りかぶられた拳を体を沈み込ませ何とか避ける。

 

 しかし反撃に移ろうとした次の瞬間、ヴィートの膝が振り上げられた。

 

 「ッ!?」

 

 避け切れないと判断したルシアは腕を交差させ、蹴りを止めるが倒されてしまった。

 

 「きゃああ!!」

 

 「手間を取らせんな」

 

 ヴィートは銃を構え、ルシアに狙いをつけた。

 

 「大佐!? この!!」

 

 アオイが飛びかかると、ヴィートはルシアからターゲットを変えて銃を向ける。

 

 「チィ!」

 

 丁度良い。

 

 ここで終わらせる。

 

 「お前を殺ったら次は奴だ!」

 

 しかしそこで倒れていたルシアが持っていた銃をヴィートに向けて投げつけた。

 

 不意をつかれたヴィートは避ける事が出来ず、腕に当たって銃を逸らした。

 

 「今だ!」

 

 立ちあがったアオイは持っていた銃ごと右手を思いっきり振り抜いた。

 

 「くっ」

 

 咄嗟に首をひねり回避しようとする、ヴィート。

 

 しかしそれが良くなかった。

 

 なまじ反射神経の良いコーディネイターだからこそ、避けるという選択をしてしまった。

 

 アオイの拳を避ける事はできた。

 

 だが彼はその手に銃を持っていた。

 

 銃身がヴィートの左目を抉るように直撃した。

 

 「ぐああああああ!!!」

 

 吹き飛ばされたヴィートは左目を押え、思わず蹲った。

 

 指の間から血が流れ、激痛が襲いかかる。

 

 「貴様ァァァァ!!」

 

 ヴィートは怒りのあまり絶叫しながら、左目を押え、銃を構えた。

 

 

 

 

 銃弾が床に当たり弾けると火花が散る。

 

 銃声が途切れる一瞬のタイミングを見逃さず、アストは撃ち返すとキラ達に呼びかけた。

 

 「キラ、ここは任せてティアを追え!」

 

 「分かった!」

 

 キラが銃を撃ち返しながらラクスを連れ、ティアを追って走り出した。

 

 それを見届けたアストの前にリースが笑って立っていた。

 

 「アレン、戻ってきて」

 

 「リース、俺はザフトに戻る気は無い。これ以上デュランダルに利用されるつもりは無いんだ」

 

 「……何を言ってるの? やっぱりあいつらの所為かな?」

 

 最後に会った時にも思ったがリースはどこかおかしい。

 

 そこにマユが銃を構えて前に出た。

 

 「アストさん、下がってください! この人は危険です!!」

 

 「マユこそ下がれ!」

 

 「……貴方がマユ? また邪魔を!!」

 

 リースが怒りに任せマユに銃を向ける。

 

 こいつは、いつも、いつも!!!

 

 引き金を引こうしたリースだったが、その前に飛び込んできた者が居た。

 

 「レティシア!?」

 

 リースの持った銃を弾き飛ばし、即座に懐に飛び込むと蹴りを入れる。

 

 「ぐっ、レティシアァァ!!」

 

 どうにか残った片腕で蹴りを防ぎ切ったリースだったが、銃を撃ち落とされてしまった。

 

 「これ以上は無駄です。降伏してください」

 

 「……殺す。お前も、マユも必ず殺す!!!」

 

 狂気すら感じる表情にレティシアもマユも若干引き気味に顔を歪めた。

 

 アストなど完全に引いている。

 

 そこに別方向からの銃声が鳴り響いた。

 

 兵士達が銃を構え、劇場に突入してきた。

 

 「テタルトス軍だ! 全員、銃を捨てて頭に手を置け! 従わない者はそれ相応の対応をさせてもらう!!」

 

 声を張り上げているのは間違いない。

 

 アスラン・ザラだ。

 

 その姿を見たアストは微妙に嫌な表情を浮かべた。

 

 「あれって」

 

 「よりによってなんであいつが来るんだ」

 

 突入してきたテタルトスを見たリースは舌打ちし、撃ち落とされた銃を拾って威嚇射撃しながら叫んだ。

 

 「殺すから。必ず殺してアレンをお前達から引き離す!!」

 

 兵士に囲まれないうちに離脱を図る。

 

 その動きに迷いがない所を見るとあらかじめ脱出する為のルートを確保していたのだろう。

 

 それはアオイと対峙していたヴィートも同じだった。

 

 テタルトスの介入を不利と判断して銃を下す。

 

 「……アオイ・ミナト、この借り必ず返す!」

 

 左目を押さえ、リースと同じように走り出した。

 

 「逃がすな、追え!」

 

 「はっ」

 

 他の諜報員を撃ち倒し、捕縛しながら兵士数人が逃げた連中の後を追っていく。

 

 指示を出し終えたアレックスは傍にいるセレネを伴い、頭に手を置いている者たちの所に歩き出す。

 

 その表情は実に微妙なものだった。

 

 「なんで貴様がこんな場所にいるんだ―――アスト・サガミ」

 

 アストはその質問に答える事無く、ただ空を見上げてため息をついた。

 

 

 

 

 会議室で始まった会談は開始からずっと平行線のままだった。

 

 初めからデュランダルが『デスティニープラン』を導入すると言い続けているが、他の代表者達はそれを受け入れる事が出来ないと主張していた。

 

 「議長、私達は頭ごなしに『デスティニープラン』のすべてを否定すると言っている訳じゃない。検証を進め問題点などを洗い出し、それを審議する必要があると言っているだけだ。その上で一部導入する事は可能かもしれないと私は思っている」

 

 カガリはデスティニープランのすべてが悪いとは思っていない。

 

 特に遺伝子解析で適性を知るというのは使い方次第では有用だろう。

 

 ただしそれはあくまでも本人の意思で行うかどうかを決めるというのが大前提だ。

 

 さらに第三者への開示を控え、将来の指針の一つとして提示するなどの配慮も必要だと考えていた。

 

 「アスハ代表の言う通りだ。問題点も分からないままで、導入、実行するなど不可能だ」

 

 「それにすべての国家の権限を無視して、導入する権利は貴方にはない。提案の一つとしてなら検証する事もできるでしょうが、それでも導入するかどうかを決めるのは各国家だ。貴方がとやかく言う事ではありませんよ」

 

 カガリを始めグラントやエドガーの発言を聞きいても、デュランダルは笑みを崩さない。

 

 「なるほど。皆さんの言い分は分かりました。しかし私は世界を変える為の『デスティニープラン』を諦めるつもりは毛頭ありません」

 

 「それはつまり武力を使ってでも、と取る事ができるが?」

 

 「どう解釈されても結構です。ただ私はこうも言った筈ですよ。これは人類の存亡を掛けた最後の防衛策であると。それに敵対するという事は――――人類にとっての敵だという事です」

 

 

 

 その瞬間―――閃光と衝撃が襲い、同時に銃声が響き渡った。




少しおかしいところがあるかも。しかも相変わらず出来が悪い(汗
後で加筆、修正します。すいません。

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