息抜きで書いたHxH(仮)   作:せとり

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第2話

 

 

 それから数か月後、私は爺に森から連れ出され、ハンター試験とやらを受けにザバン市にやってきていた。

 なんでもハンター試験に合格してハンターライセンスを手に入れれば、それだけで人生がイージーモードになるらしい。

 ちなみに今は一人である。爺は私が帰らせた。本人はここまで案内したがっていたが、持病があるというのに子守をさせるのは忍びなかったからだ。

 

 その所為でここに辿り着くまで何度か迷いかけたが、親切な人に道を尋ねたり案内してもらったお蔭でそれほど苦労もしなかった。

 動物を追い払う感じで威圧しながらお願いすれば、いい感じに言うことを聞いてくれるからちょろいものである。

 初めて触れた異世界の文化は新鮮なモノばかりだった。

 自然に暮らして植物のような生活も好きではあるが、こういう刺激溢れる雑多な世界も意外と好きかもしれない。

 

「……奥の部屋は空いてる?」

「はい。ご注文は?」

「ステーキ定食。弱火でじっくり」

 

 定食屋に入り存在しないメニューを注文する。

 

「かしこまりました、こちらへどうぞ!」

 

 どうやら情報はあっていたようだ。店員さんに奥の個室へと案内される。

 適当に肉を焼いて待っていると、部屋がエレベーターのように下がり始めた。

 なるほど、こうやって試験会場まで行くのか。

 納得して焼いた肉を腹に詰め込んでいく。試験は非常に厳しいというし食事が出されるかもわからない。なので今の内に食いだめしておこうという意図である。

 しばらく黙々と食事していると、エレベーターが止まった微かな浮遊感に、チーンという音。扉が開かれる。

 残っていた物を口に詰め込みお茶で無理やり飲み込むと、口元を袖で拭いながら私は外に出た。

 値踏みするような視線が一斉にこちらに向いた。

 森では動物に舐められないように、意識を向けられたら格の違いを見せつけるように威圧するようにしていた。ここでもその癖が出て、無意識の内に凄みをきかせる。

 脱兎のごとく、一斉に視線が逸らされた。

 一部の視線は未だに残っていたが、それも個別に威嚇していけばただ一人を除いて逸らされていく。

 

「……」

「……◆」

 

 ピエロのようなふざけた恰好をした男がこちらを笑って見つめている。

 森では支配者として暮らしていたからか、舐められるのは嫌いである。

 私の威圧には負けない程度には『使える』ようだがそれでも大して脅威には感じない。

 身の程を弁えない不届き者に格の違いというのを教育してやろうとオーラを漲らして……。

 

「あ、あのー……こちら、受験番号です……」

 

 ビーンズとか渾名されてそうな、豆を連想させる外見の人に止められる。

 私から放たれるオーラに当てられて顔を真っ青にしながらも、職務を全うしようというのか406と刻まれたプレートを差し出してきた。

 気分が萎えた。私はピエロから視線を外し、振り撒いていた威圧を引っ込めると豆の人からプレートを受け取った。

 

 未だにピエロから向けられている挑発するような感じにイラッとするが、さめた頭でよく考えれば、こんな所で森の掟を振りかざしても仕方がない。

 縄張り争いでもないくだらない事で消耗しても面白くないし、悠然と構えて、手を出して来たらその時は全力でぶっ潰そう。

 そう思い、私はピエロを無視することに決めた。

 

 それから数分も経たずに受付終了の鐘が鳴らされる。

 結構ギリギリだったのだと内心で冷や汗を流していると、サトツと名乗る紳士っぽい試験官が出てきて一次試験が始まった。

 

 内容は試験官についていくだけというが、ちんたら走りすぎてて正直つまらない。

 現在試験官の真後ろ、最前列。

 もっと速く走れよ、と批判を籠めて試験官の背中を睨んでみれば、なにか嫌なモノから逃げるように、試験官に足が微妙に早まった。

 偶然の出来事だったが、その結果は私にヒントを齎した。

 今度は殺気を籠めて睨んでみる。

 後ろに迫る私という脅威から逃れるように、試験官のスピードが上がった。

 反応を見るのも楽しいし、試験の時間短縮にもなる。一石二鳥だと、私は口元を歪めた。

 

 階段を上り、湿原を抜けて次の試験会場と思しき場所に出た頃には試験官の息は大分乱れていた。

 だが、私の内心はそれよりもっと乱れていた。

 なんと、次の試験は12時にならないと始まらないらしいのだ。

 これは事前に決まっていた事だったらしく、試験官に鞭打ち足を速めさせ、時間を短縮した意味は皆無である。

 超ハイペースな先頭の速度に何とかついて来れていた少数の人々も愕然と……していなかった。

 むしろ大部分は休憩が取れると喜んでいる。

 時間までは何をしててもいいということで各々が好き勝手しているのを見て、私も適当に時間を潰すことにした。

 とはいえ暇を潰せるようなものなど何もないので、超早めの昼食をとることに。

 おいしそうな獲物を求めて、私は霧が立ち込める森へと入って行った。

 

 

 


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