予告通り今回はフォワード陣の中でもスバルとティアナ。
それでは、どうぞ!
ティアナside―
「ここも危険です!非戦闘員の方は至急退避してください!」
「お年寄り、子供、けが人に手を貸してあげて!邪魔になる手荷物はなるべく持たないようにしてください!」
現在私とスバルは市街地でいまだに避難できていなかった人達の避難誘導をしている。キャロとエリオはフェイトさんに呼ばれて何か他の仕事をしに行ったみたいだ。とりあえず、この地区も何とか全員避難ができそうで安心している。ここまでの間にあった局員の誤解を解きながらだったから少し時間がかかってしまったけど仕方がないだろう。何せ敵はあの黒蜘蛛団なのだ。そうして避難誘導をしていた最中、急に飛んでいたゆりかごの姿が消えた。
「ティア!あれどうなってるの!?」
「わっかんないわよ!私ならわかるとか思うな、この馬鹿スバル!」
「なら、私が特別に教えてあげましょうかぁ~?」
背後から聞こえてきた間延びした声にスバルとともに戦闘態勢になりながら振り向いた。そこには長いウェーブした金髪の女性がにこやかに微笑みながら立っていた。纏っているバリアジャケット、そして強すぎる魔力反応にこの女性が敵であることは疑いようがない。しかし、どうやってこの魔力反応を隠しながら近づいてこれたのかがわからない。この人、もしかしなくてもかなりの強者だ・・・。
「うふふ、口を開く余裕もありませんか?まぁ、簡単な話私があの船を幻覚として見せていただけですよ。」
「そんなッ!?あの規模の幻術を使ったというんですかッ!!??それにあのゆりかごにはちゃんと影があったはずです!」
「あぁ、影を作るのは大変でした。すっごい力技ですけど無理矢理魄翼で作りましたけどねぇ~。あれは流石に少しだけ疲れたのでもうやりたくありませんね~。」
「あのゆりかごが幻術だったとすれば・・・・本物は何処にッ!?」
「さぁ、どこでしょうねぇ~?リニスさんが今頃何処かで中身の研究をしてるでしょうねぇ~。」
「は、早くこのことを隊長たちにも伝えなきゃ、スバル!」
「あっ、はやてさんはもうこのことを知ってますからその他の人だけでいいですよ~。」
なぜ教えてくれたのかよくわからないけど、確かにゆりかごへと向かった八神部隊長なら知っていてもおかしくない情報だ。なのでスバルにはフェイト隊長に私はなのは隊長に連絡を取ることにした。と言ってもいつ彼女が襲ってくるかわからないので最低限の注意を払っていたけれども、その注意すら無駄というかの如く彼女はぼーっと空を眺めているだけで特に何もしてこなかった。
「ティア!こっちは連絡とれたよ!フェイト隊長はこれからゆりかごの捜索に入るって!」
「わかったわ。スターズ1!応答願います、スターズ1!応答してください、なのはさん!」
「あ~、そういえば高町なのはさんはシュテルが撃墜してしまったので連絡はとれないと思いますよ?」
「・・・なのはさんを・・・・撃墜?」
「そ、そんな・・・・・・。ティ、ティア!ロングアーチに伝えないと!」
「う~ん、そのロングアーチも葵が既に占拠してますので返信なんて来ないでしょうねぇ~。」
「うっ・・・・うそ・・・・・。ロングアーチ!ロングアーチ!応答願います!こちらスターズ3!応答願います!」
目の前の女性が言ったことが信じられなかったのか、スバルは必死になってロングアーチに連絡をとろうとしている。でも、私は何となくこの人が言っていることは嘘じゃないと思えてしまった。先ほどから私たちに興味も示さず、ただ空を見上げている彼女の存在感が、言ったことが全て本当であるように錯覚させる。実際に連絡が取れなかったらしいスバルが落ち込んでいることから言ったことは嘘ではないらしい。
「黒蜘蛛団No.1であるユヌさん・・・本名ユーリ・エーヴェルバインさんで、あってますか?」
「あらら~、やっぱりわかっちゃいますかぁ~。まぁ、この程度のことも理解してもらえないようでは興ざめですけどねぇ~。」
「ティア・・・・どうするの・・・・?」
「・・・例え勝てないとしても足止めだけでもしなきゃいけないと思わない、スバル?」
「・・・うん、そうだね!」
「うふふふ、ちゃんと壊さないように加減だけはしてあげますから、何処からでもかかってきてくださいね。」
彼女はにこやかにそんなことを言うと背後に浮かんでいた赤黒い塊から一対の細い腕を生やした。これが恐らく彼女の武器なんだろう。とりあえず牽制と後退のための目潰しとして何発か閃光弾を放ってからスバルと一緒にビルの蔭へと走った。悔しいけど閃光弾はどうやら全く意味をなしていなかったようで、私達を目で追うような動きをしている彼女とビルの蔭に隠れる際に目が合った。
「とりあえず走るわよ、スバル!多分あの人に幻術や目くらましは一切効かない!正攻法とごり押しで戦うしかないわ!」
「でも、すっごく強そうだけど大丈夫かな?」
「今回の勝利条件は勝つことじゃなくて時間稼ぎをすることよ。私達じゃとてもじゃないけどあの人には勝てない。だけど一分一秒でも長くこの場所に足止めして見せるわよ!」
「了解!ティアッ!」
「わかってる!」
「鬼ごっこですか~?」
上から降ってきた彼女の腕を左右に別れることで躱した。彼女の一撃でどでかいクレーターが出来ているのだが、あの細い腕にどれだけの威力があるのだろうか。そんなことを考えながらも魔力弾を生成して発射、様々な弧を描きながら迫った攻撃は彼女の腕の一振りで全て消された。スバルが飛び込んでいって殴りかかるけど、全部紙一重で躱されてかすりもしていない。しまいには彼女に掴まれて投げ飛ばされ、私の方へと飛んできた。空中で体を捻りながら着地するスバルを見ながらも、魔力弾を撃ったが先程と同じ結果に終わった。
「こんなものじゃ無い筈です。真面目にやらないと瞬殺ですよ?」
「こっちは結構真面目にやってるわよ!スバル!」
「うん!―――ウィングロード!」
「これは・・・クイントと同じ魔法ですね。」
彼女は周りを包むように展開されたウイングロードを特に驚く様子もなく受け入れた。慢心しているのか油断しているのかは不明だが特に動きが無いのでこのまま攻める。片方のクロスミラージュから魔力糸をビルまで伸ばして固定し、一気に縮めることで上へと飛び上がり、唯一囲まれていない上から魔力弾を雨のように降らせる。流石にそれを受ける気はないらしく上空に向かってシールドを張られて防がれた。だけど、これで動きは封じたはず!
「スバルッ!」
「ディバイン・バスター!!!」
「甘いとしか言いようがありませんね。」
スバルが放った砲撃に対してウイングロードをぶち破って先ほどより巨大な赤黒い腕が飛び出してきた。一瞬だけ腕と砲撃は拮抗したが、一瞬で腕が押し込んでいった。何とか腕がスバルに当たる寸前に操作した魔力弾でスバルを横に叩き出して躱させた。その際、体勢を崩して転がったけどあいつなら大丈夫。それよりも彼女に対して魔力弾を撃つ方に集中していたが、魔力弾は撃っても腕によってはじかれてしまった。
「操作性はセンスを感じます。しかし、威力が低いのとコースが正確過ぎて逆に避けやすいですね。」
「なら、リクエスト通りに威力を上げて差し上げますよ!行くわよ、スバル!」
「了解!」
持久戦を想定してあえて使っていなかったカートリッジを3発ロードさせながら、スバルに声をかける。それを合図にスバルが横から殴りかかる。スバルのことを見もせずに拳を躱した彼女は、こちらへ歩きながらスバルを腕を使って完璧にさばいている。正直ドン引きしたくなるような光景だけど、焦らずに魔力弾を形成する。そんな私の様子を見て、彼女の目が少し細くなったように見えたけど・・・きっと気のせいだろう。
「クロスファイヤ・シュート!!!」
「ティーダより量でも質でも劣りますが、普通に考えたら上出来でしょうね。まぁ、私には効きませんが。」
「ブレイクゥゥゥゥッ!!!」
「あなたの拳もまだまだクイントには届きませんね。故に私にも届きません。」
私の魔力弾もスバルの拳も全て彼女の後ろから生えている腕一本で対処されてしまった。こうなることは予想できていたとはいえ、実際にやられると流石に辛いものがある。正直、私たちが彼女といまだに戦えているのは彼女が相当手を抜いているからだ。なぜ手を抜いているかはいまいちわからないが、これが無かったら私たちは瞬殺されて終わりだっただろう。エリオが瞬殺されたと聞いていたけど、確かにこの強さなら納得だ。
「さて、あなた達の観察も終わりましたし、そろそろ私は他の場所に行きますね。別にあなた達を倒すのが仕事ではないので邪魔をしないのであれば手は出しませんが・・・・どうしますかぁ~?」
「ティア・・・・どうする?」
「そうね・・・・。私たちがあなたを止めようとしても1秒と持たないと思います。でも、もしその1秒で何かが変わるかもしれないなら・・・・私たちはその可能性に賭けます!!!」
「そうですか。では、あなた達を倒して先へ進ませていただきますねぇ~。」
「スバル!やるわよッ!!!―――ファントム・ブレイザーッ!!!」
「ティアがやるなら私だってやってやるッ!!!―――ディバイン・バスターッ!!!」
限界までカートリッジをロードして繰り出した私達の攻撃は、彼女が繰り出してきた腕と一瞬だけ拮抗して砕けた。私もスバルも吹き飛ばされてそれぞれビルに叩きつけられた。背中に鈍い痛みが走るのと同時に、先程の腕が振りかぶられているのを目にし、来るであろう衝撃に備えて目を瞑った。しかし、いつまでたっても痛みが襲ってこず、恐る恐る目を開いてみた私の目に映ったのは男性の背中だった。
「おいおい、ユーリ。いくら俺の妹が可愛いからってそんなにいじめないでやってくれよ。」
「あ゛ぁッ!?」
「あっ・・・、やっぱり何でもないです。いや、ほんとちょっとした冗談なんでそんな顔でこっち睨まないでください。」
「うふふ、いくらムカついたからと言って女の子がそんな声を出してしまってはダメよ、ユーリ。それに私たちはあなたがどれだけ葵のことを愛しているか知ってるから。」
「・・・それならいいんですけどねぇ~?それにしてもあなた達がこうやって外に出てこれているということは、あなた達は無罪放免されたっていうことですかねぇ~?」
「あぁ、おかげさまでな。それで、地上本部に念のためということで隔離されてたのさ。この騒動が終わるまでっていう期限付きでな。」
「それが、なぜ今ここにいるんですか?」
「葵が地上本部を潰すっていう宣言をしたせいで見張りとか警備とかがもろもろいなくなったのよ。それで、隙をついて出てきたって訳。後で何か言われるかもしれないけど、私は娘を助けられたからもうどうでもいいわ。」
「そうですか・・・・・。それで、あなた達はもちろん私の敵なんですよね?ティーダ、クイント。」
「「当然。」」
私の前には兄さんが、スバルの前にはクイントさんが立っていて振り降ろされていた腕を止めていた。そのまま兄さんは腕を横に弾き飛ばして、動けなかった私を抱き上げてクイントさんと合流し、結界を張ってくれた。スバルと一緒に入れられた結界には回復効果も付与されているみたいで徐々に先ほどの戦闘でできた擦り傷などが治り始めている。その分もろくできているみたいなので怪我を直して逃げろっていうことなんだと思う。兄さんとクイントさんはそのまま結界の前に立ちはだかって彼女を見つめていた。
「そういえば、どうしてあなた達はここに来たんですか?シュテルやディアーチェのところに行けば戦況は替えられたかもしれませんよ?」
「・・・そうね。確かにあなたと戦うよりはシュテルやディアーチェの方に行って人数を少しでも削る方が良策だたでしょうね。」
「あぁ、実際にそうするかどうかでしばらく悩んださ。だけどな、俺たちは気がついちまったんだ。」
「「俺(私)達って家族らしいこと何一つできて無くない?それに、家族のピンチに駆けつけられればカッコイイかも、ってね!!!」」
格好良く決めポーズまでつけてそう宣言した2人の後姿を私とスバルは何処か白けたものを見る目で見守った。早く傷を治してここを離れることが私たちにできる一番の良策。ならば今は2人に任せて私たちはじっとしているべきなんだろう。そんなことを考えながら無意識にかみしめてしまった唇から少し血の混ざった味がした。
sideout
毎日毎日凍えるレベルで寒いですね。
風邪とか気を付けてくださいね、皆様方。
という訳で、今回はスバティアVS魔改造ユーリでした!
勝てるわけねぇよ、いくら何でも。
書いている間も何回か、勝手に2人を倒してしまって書き直しをしなければならなかった今回。
敵を倒さないっていう制限がここまで難しいものだとは・・・・・。
ユーリさんには相当手を抜いてもらいました。
次回はこのまま魔改造ティーダ&クイントVS魔改造ユーリを書きたいと思っています。
投稿はいつになるかわかりませんができるだけ頑張りますので応援よろしくお願いします。
感想と評価お待ちしております!