暇つぶしに転生させられるって酷い   作:百鬼夜行

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第七話~無印開始~


浅上葵side―

 

「はぁっ!」

 

「っ!」

 

こんにちは皆さん。私は浅上葵、私立聖祥大附属小学校3年生です。ちなみにただいま高町家の道場にて試合中。お相手は勿論、戦闘民族高町家筆頭!我らがドS兄貴!恭也さんです。まぁ、兄のような存在なだけで実際は兄ではないんですが。

 

「戦闘中に考え事とは余裕だな!そして・・・誰がドSだ!!」

 

「無自覚だったんですか!?質の悪い!」

 

「恭ちゃん・・・。今回は私も否定できないよ。」

 

「なん・・だと・・。」

 

こんなことを言いながらも小太刀での攻撃をやめない恭也さんの攻撃をなんとか紙一重でよけつつ、6歳の誕生日に士郎さんと恭也さんがくれた鋼糸(これを渡されて喜んでいた私を見て桃子さんはかなり複雑な顔をしていた)で罠を張りなんとか恭也さんを捕縛しようとするが、もう慣れたのか全然当たる素振りがない。

 

「ちっ!とうとう慣れてしまいましたか。人外だとは最初から思ってましたがこれほどとは。」

 

「お前にだけは言われたくなかったよ、葵。自分の年齢考えてみろ。十分人外だっ!」

 

「っ!!女の子に対して人外って、なんて酷いことを!!忍さんに言いつけますよ!?」

 

「私からしてみたらどっちもどっちだけどなぁ・・・。」

 

「「今、なにか言(いましたか)(ったか)?美由希?」」

 

「すいません!何も言ってません!」

 

恭也さんの猛攻を避けたり、私の糸での攻撃を躱されたりしていると美由希がなにかしら変なことを口走ったので恭也さん共々一旦距離をとりちょっとOHANASHIをすることにした。

 

「恭也さん、私の頭にちょうどいい美由希の鍛錬方法が思いついたのですが。」

 

「なんだ?言ってみろ、葵。」

 

「私が糸で縛りますので恭也さんがメッタ斬りにしてください♪」

 

「なにその鍛錬!?いじめだよね!?なんで二人がかりなのさ?」

 

「何言ってるんですか?これはあなたの多対一の鍛錬と同時に、私と恭弥さんのコンビネーション技の練習にもなるという素晴らしく画期的な一石二鳥の鍛錬なんですよ?」

 

「いやいや、葵ちゃんと恭ちゃん同時とかとんでもないから!もう軍隊呼んできてほしいレベルだから!!」

 

「どうでしょうか?恭也さん。」

 

「いい、いじm・・・ゲフンゲフン・・・鍛錬になりそうだな。早速殺ってみようか?」

 

「ちょっとぉぉぉぉ!!待って、二人共待ってぇぇぇぇぇ!!字が、字が違うからぁぁぁぁぁぁぁ!!!しかも恭ちゃんいじめって言いかけたよね!!??」

 

私と恭也さんが武器を構え、美由希が全力で逃げ出そうとした瞬間、道場の扉が開き我らが天使!高町なのはことなのちゃんがやってきました。

 

「皆~。お母さんがそろそろご飯だって~。」

 

「な、なのはぁ~~~(泣)」

 

「うわっ!?お姉ちゃんどうしたの?」

 

「「ちっ、逃げられたか。」」

 

流石になのちゃんの前ではあまり美由希をいじめるのは良くないので自重して私は鋼糸の回収を始めた。

 

「葵ちゃん。またお姉ちゃんをいじめてたの?」

 

「違うんだよ、なのは。あれは美由希の方がいけないんだよ?」

 

「うっうっ、あの純真だった頃の葵ちゃんはどこに行っちゃったんだろう。」(メソメソ)

 

「最初からいなかったんだよ?」(ニコッ)

 

「鬼ぃぃぃ!悪魔ぁぁぁ!!あの頃の葵ちゃんを返せぇぇぇぇ!!」

 

「にゃはははは(汗)」

 

全く、こんな家に4年間近く住んでいたら正確だって歪みますよ?だって人が普通に練習してるだけで試合を仕掛けてくる人が3人もいるんですよ?何なんでしょうね?この家は。

 

【<それにしてもマスターは変わりすぎだと思いますよ?>】

 

【アラクネ?珍しいわね、あなたが念話で急に話しかけてくるなんて。リニスはどうしたの?】

 

【<リニスならもう先に下に降りて多分リビングにいると思いますよ?>】

 

【ありがと、アラクネ。】

 

遠距離でアラクネが突っ込んできたのでそれに答えて会話をしているとなのちゃんが不思議そうな顔をしてこちらを見ていたのでとりあえず頭を撫でてからリビングへ向かった。

 

「おはようございます。桃子さん、士郎さん、リニス。」

 

「あら、私のことはお母さんって呼んで欲しいのにな♪おはよう、葵ちゃん。」

 

「おはよう。今日もまた美由希をふたりがかりで鍛えてたのかい?」

 

【おはようございます、葵。】

 

リビングにいたのはいつも笑顔な桃子さんと新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる士郎さん、そして私の使い魔で今はこの家の猫としてのんびりしつつも私に魔法を教えてくれているリニスだった。

 

「なのは、葵ちゃん。早く食べていかないと遅刻するわよ?」

 

「あらら、もうこんな時間ですか。急がないとね、なのちゃん。」

 

「いや、葵ちゃんもだからね?・・・って、なんでもうすでに出る準備が出来てるの!?」

 

「?なんとなく?急がないと置いていっちゃうよ?」

 

「それはやめてほしいの!?」

 

「じゃあ、急ごうね♪」

 

「葵ちゃんが鬼に見えるの・・・。」

 

「なのはもやっとわかってくれたのね。お姉ちゃん嬉しいよ。」

 

「うるさいよ?美由希。縛られた上で恭也さんにメッタ斬りにされたいの?」

 

「おい、葵。美由希をいじめるのはいいが、俺を使うな。」

 

「恭ちゃん!?いじめるの自体を止めてよ!!」

 

「自分の力でなんとかしろ。」

 

そんなやり取りをやっているうちになのちゃんの準備が出来たみたいなのでなんか嘆いてる美由希はほっておいてなのちゃんとバス停へ向かった。そして学校行きのバスに乗り込むと金髪の元気な女の子と紫色の髪のおとなしめな女の子が声をかけてきた。

 

「なのは!葵!こっちよ!席取っておいたわよ。」

 

「なのはちゃん。葵ちゃん。おはよう。」

 

「おはようなの。すずかちゃん。アリサちゃん。」

 

「ありがとね。すずか。アリサ。」

 

「お礼はいらないわよ。友達でしょ?」

 

「確かにそれもそうね。」

 

そんな話をしている4人組は実は学校ではかなりの有名人で「聖祥四大美少女」として祀られていたりもする。もしこの中の誰かが喉が渇いたなぁなどといったら男子のうち誰かが自動販売機まで走り買ってこようとする始末である。そんなことはまず起きないが。

 

「だけど葵も運がないわよね~。私たち皆同じクラスなのに葵だけ別のクラスだもんね。」

 

「そうだよね~。葵ちゃんのあの時の落ち込み方はひどかったよね。」

 

「にゃはは。きっと来年は同じクラスになれると思うの!」

 

「お弁当食べながら一番最初にするのが私いじめって、なにこれ・・・。」

 

ちなみに今はお昼休み、いつも通り皆で屋上に集まりお弁当を食べているのだけれども・・・。新学期始まってからずっと言われ続けている結構気にしていることを言われかなり精神的に来ている私です。そうなんですよ。なんで3人は一緒のクラスなのに私だけ別にされるんでしょうか?先生のいじめが酷いです・・・。あ、なんかだんだん気分が暗くなってきた。ウフフフフ。

 

「ま、まあまあ。あまり落ち込まないで、葵ちゃん。きっと来年度は一緒のクラスになれるよ。」

 

「ほ、ほら。元気出しなさいよ。あんたが暗くなるとなんか怖いのよ。」

 

「げ、元気出して欲しいの、葵ちゃん。」

 

「うん。皆ありがとう。なんとか落ち着いてこれたわ。」

 

ハイライトが消えたような目で遠くを見つめながら笑っていたら、みんなが引きつったような笑いを浮かべながら励ましてくれた。実際かなり助かった。大体落ち着いたところでなのちゃんが話題を変えてくれた。

 

「今日の授業で聞かれた将来の夢についてのアンケート皆どうかいた?確かアリサちゃんとすずかちゃんは決まってるんだよね?」

 

「まだ明確に決まってるわけではないのよ?パパの会社を継ぐくらいしか決まってないし。」

 

「私も工学系の仕事がしたいなぁって思ってるだけだし・・・。」

 

「それだけ決まってれば十分なの知ってた?あなた達まだ小学3年生だからね?」

 

「いや、それはあんたもでしょうが。」

 

「そういえば葵ちゃんのやりたい職業ってなんだっけ?聞いたことがなかったような・・・。」

 

すずかの的確な指摘により私は自分の将来の夢を話していないことに気がついた。まあ、どうせ言っても信じられないだろうし、言っちゃっていいか。

 

「暗殺者になりたいわね。」

 

「・・・はぁ!?暗殺者ってあんた・・・。考えつかなかったにしろもっとましな職業を選択しなさいよ!」

 

「流石にそれは冗談でもどうかと思うなぁ。」

 

「にゃはは。たまに葵ちゃんはとんでもない冗談を言うの。」

 

「そこまで言わなくてもいいじゃない。ところでこの話題を出してきたなのちゃんがまだ喋ってないんだけど?」

 

私は標的を自分からなのちゃんへとすり替えつつも心の中で苦笑いする。本当のことを喋ったつもりなんだけどな。

 

「うん。私はまだ決まってないの。翠屋を継ぐっていうのもあると思うんだけど。他にもなにかないかなぁって思ってたりするの。」

 

「まあ別に今から焦って決めることなんてないしね。大体決まってるアリサ達の方が少数派だし。」

 

「そうだよ、なのはちゃん。まだまだ焦るようなことじゃないよ。」

 

「うん。そうなんだけど・・・私ってなんの取り柄ないし・・・。」

 

「このバカチン!!」

 

アリサがなのちゃんへ向かってスライスレモンを投げつけたので私がそれをはしで止めるとなのちゃんの猫みたいな悲鳴が聞こえたけど気にしないでアリサへ向き直る。

 

「アリサ、食べ物は粗末にしちゃいけないよ?」

 

「ご、ごめん。って違うわよ。なのは!大丈夫?目に汁が入ってたように見えたけど?」

 

え?と思って手元のはしを見てみるとスライスレモンが絞られるような形で挟まっていた。・・・とりあえずお弁当の唐揚げにかけておこう。「あんたは何のんびりレモン絞ってるのよ!」・・・ちっ。現実逃避失敗。しょうがないね。

 

「ほらなのちゃん。大丈夫?はい、ハンカチ。」

 

「にゃあああ。止めるならもうちょっと被害を出さずに止めて欲しかったの。」

 

「嫌だよ?自分に取り柄がないなんてバカなことをいう娘にはお仕置きが必要だし。」

 

「実は狙われてたの!?」

 

そうだよ?気がつかなかったならなのちゃんもまだまだだね。うん?なんかアリサとすずかが向こうでこそこそ話してるわね。私かなり耳いいから全部聞こえるのに。

 

「葵って実は結構えげつないわよね。今更だけど。」(ボソボソ)

 

「うん、確かにそう思う。なんで飛んでるスライスレモンをあんなに的確につまめるんだろ?」(ボソボソ)

 

「ほらほら、そこで二人でブツブツ言わない。ちなみに全部聞こえてるよ?」

 

「・・・あんたの聴覚ホントどうにかしてんじゃないの?」

 

「褒めても何も出ないよ?」

 

「褒めてないわよ!耳鼻科でも言って調べてもらいなさい!!」

 

「ツンデレはいいけど、あまり怒鳴るとだめだめだよ?」

 

「やかましいわ!!!」

 

「ア、アリサちゃん落ち着いて。葵ちゃんも煽らないでよ。」

 

ああ、真っ赤になってツッコミ入れてくるアリサ可愛いなぁ。それをなだめてるすずかもお持ち帰りしたくなるくらい可愛いな♪

 

「ハァ、ハァ・・・。ありがと、すずか。なんとか落ち着いたわ。」

 

「にゃははは。なんだか大変なの。」

 

「あんたがその原因でしょうが!!!」

 

「にゃう!?いはいいはい、ほっぺをつねらないで~。」

 

「全く、私より理数系の点数がいいんだから取り柄がないなんて言うんじゃないわよ。」

 

「二人共そろそろ昼休み終わるからクラスに帰ってからやりなさい。どうせ同じクラスなんだから。」

 

「葵ちゃん、僻みは良くないよ?」

 

「うふふ。すずかは可愛いなぁ。よしよし。」

 

そう言いながらすずかの頭を撫でているとすずかが真っ赤になって俯いていた。なんだろう、すっごく萌える♪

 

「あんた達もイチャイチャしてないでさっさと教室戻りなさい。」

 

アリサのその一言で皆立ち上がり自分のクラスへと帰っていった。

 

 

 

~帰り道~

 

「皆今日は塾なんでしょ?途中までは一緒に帰るよ。」

 

「あんたも塾来ればいいのに。」

 

「駄目だよ。そうでなくても高町家にはお世話になってるのに。これ以上はねぇ。」

 

「葵ちゃんももっとわがままを言ってもいいと思うの!」

 

「十分言わせてもらってるわよ。養子縁組も断ったしね。」

 

そう言いながら歩いているとアリサが近道をしようと言い出したのでそっちの方へ歩いて行った。

 

【助けて・・・。】

 

「あ・・・。」

 

「!?」

 

「どうしたの?二人共。急に立ち止まって。」

 

今確かに念話が聞こえたような気がしたんだけど・・・。この世界に魔法技術はなかったはずなのに。いったい誰が?

 

「今なにか聞こえなかった?」

 

「そんなこと・・・。」

 

「なかったよ?」

 

なっ!?なのちゃんに念話が聞こえてた!?そんな・・・。なんで今の今まで気がつかなかったんだろ。っていうか絶対に気がついていそうなのが二人(?)いたわよね。

 

【アラクネ。なのちゃんにリンカーコアがあること気がついていたわね?】

 

【<はい、マスター。この高性能な私が気がつかないわけが・・・ってなんで私を握り締めてるんですか?ちょっとヒビが入りそうなんですけど?>】

 

【なんで教えなかったのかな?後でたっぷりとOHANASHIしようね♪】

 

【ごめんなさい!反省してるのでOHANASHIだけはご勘弁ください!!】

 

「葵?どうしたの?なんか凄い笑顔で胸もと握り締めてるけど。」

 

「ううん。何でもないよ。私は大丈夫。」

 

周りが見えていなかったせいかすずかにいらぬ心配をかけてしまった。これは後でアラクネへの対応をきつくするしかないかもしれない。なんだか、アラクネが胸もとでビクッとしたような気がするけど。デバイスがそんな器用な真似できるわけがないよね?

 

「私は大丈夫よ。それより【助けて・・・!!】・・・なのちゃん!?。」

 

再び聞こえてきた念話に反応してなのちゃんが近くの林の中へ飛び込んで行ってしまったので私達もすぐに追いかける。っていうか、なのちゃん普段は何もない平地でもコケるくせになんでこういう時だけあんなに走れるんだろう?

 

「なのは!」

 

「なのはちゃん!」

 

なのちゃんに追いつくとなのちゃんはその腕に傷ついたフェレットを抱き抱えておりとにかく私たちは近くにあった動物病院に駆け込むことにした。それが事件の始まるきっかけだということにも気がつかずに。

 

 

sideout

 




なのは魔砲少女化まで書こうと思っていましたが、長くなったので切りました。

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