暇つぶしに転生させられるって酷い   作:百鬼夜行

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夏休みが終わったと思ったらもうテスト1週間前。

ハハハ、また更新が遅れるかもしれません。



第六十四話

 

浅上葵side―

 

ティーダと別れた私は不穏な気配へ向かって移動した。そこにいたのはどこかで見た覚えがある中年男性と紫色の髪で全く表情のない少女だった。中年男性の方は私のことを見て驚いているみたいだけど少女の方は首をかしげているだけだ。っていうか何この娘。ちょっと可愛いじゃない。歳的にはエリオ君とキャロちゃんと同じくらいかな?

 

「浅上、葵か?なぜこんなところにいる。」

 

「ん?あなたってどこかで見た覚えがあるのよねぇ~。名前を教えてくれない?そっちの少女と一緒に。」

 

「・・・・・俺はゼスト・グランガイツだ。こっちの子はルーテシアという。」

 

「ふ~ん・・・・・あっ!思い出した。クイントさんの元上司じゃん。へぇ~、あの後生き残ってたんだ。」

 

「クイントを知っているのかっ!?あいつは無事でいるのかっ!?・・・・・まぁ、今の俺には関係のないことか。」

 

「あなたのその考え方、私は好きじゃないな。まぁ、どうでもいいか。あっ、一応言っておくけどクイントさんは無事で今は私の仲間として動いてくれてるわよ。・・・・それじゃあ、ルーテシアちゃんだっけ?う~ん、ちょっと長いからルーちゃんって呼ぼうかな。ルーちゃんは何者?」

 

余り興味がわかなかったゼストさんからさっきから反応があまりなかったルーちゃんへと目を移した。ルーちゃんは私の質問の意味が解らないのか首を傾げたまま私のことをじっと見つめている。ゼストさんも私達の会話に口を出すつもりはないのか静観している。

 

「・・・・・私はルーテシア。それ以上でもそれ以下でもない。・・・あなたは博士の敵?」

 

「博士?・・・あぁ、スカリエッティのことか。うん、敵だね。なのはやクイントさんに傷を負わせた罪を支払ってもらわなきゃいけないしね。あいつは私が殺すよ?」

 

「そう・・・・。なら私の敵?」

 

「ん~、ルーちゃんが私の邪魔をするなら敵だね。だけど邪魔をしないなら別にどうでもいいや。」

 

「そう・・・・・。」

 

それだけ言うとルーちゃんはまた顔をホテル・アグスタの方に向けてしまった。むぅ~、つれないなぁ~。私としてはまだちょっと聞きたいことが残ってたんだけど仕方ないかな?まぁ、ゼストさんの方に聞けばいいか。

 

「で、あなた達はなんでこんな場所にいるの?ルーちゃんの台詞からしてスカリエッティが関係してそうだけど?」

 

「俺は特に用事はない。だが、ルーテシアがスカリエッティにあるものの回収を頼まれたんだ。今はそれを回収しているところだ。」

 

「・・・・・・・・もしかしてそれってこの鉱石じゃないわよね?」

 

そう言ってゼストさんの前に空間ディスプレイを出して今回リニスに頼まれた鉱石のデータを出したところゼストさんが驚愕していた。・・・どうやらこの鉱石は科学者にとってかなり気になるものらしい。本当に何なんだろうね、この鉱石。それにしても同じものが狙いということはルーちゃんと私は今は敵っていうことになるのかな?

 

「・・・もう私のガリューが向ってるから無駄。」

 

「残念ながら私の方も頼れる味方が取りに行ってくれてるわよ?それにしてもガリューね・・・。恐らくルーちゃんの魔法はベルカ式ベースの召喚魔法ってところかな?ガリューっていうのはルーちゃんの召喚獣でしょ?」

 

私の推測が当たったせいかルーちゃんの無表情が崩れて驚いた顔になっている。まぁ、それはそうなるよね。初見の相手に魔法すら見せていないのに自分の魔法を当てられるのはびっくりするもんね。ゼストさんも私への警戒心を強めてるみたいだけどあまり意味ないよ?私今は余り戦闘する気分じゃないし。

 

「・・・・・・あなたは何者?」

 

「私は広域SS級犯罪者の浅上葵だよ。世間では“黒蜘蛛”なんて呼ばれてるわね。」

 

「あなたは危険。ここで仕留めr「止めておけ、ルーテシア。」・・・・ゼスト、何で止めるの?」

 

「お前では10年かかっても無理だ。こいつの実力は既にありえないレベルになっている。もし俺とお前が共闘してもこいつに傷1つ負わせられるかもわからん。ここは手を出さないのが得策だ。」

 

「ヒュ~、流石元隊長。状況把握が素晴らしいわね。まぁ、こちらからの交戦意思はないけどそっちから手を出すっていうなら・・・・・殺すわよ?」

 

「「っ!?」」

 

最後の言葉に殺気を込めてゼストさんとルーちゃんにぶつけたらすごい勢いで距離をとられた。交戦意思はないって言ってるのに・・・。まぁ、そんなことははっきり言ってどうでもいい。それにしてもレヴィと召喚獣が今頃戦ってるのかな?まぁ、レヴィなら問題ないでしょ。なんせあの娘頑張れば私に一撃入れることが出来るくらいには強くなってるしね。いや、“黒蜘蛛団”全員で私と戦うことになったら闇蛇を全開で使わないと勝てないくらいにはなってるかもね。

 

「お前のことは局員時代に色々と調べたがまさかそこまでの殺気を出せるとはな・・・。情報不足だったか?」

 

「そもそも私はあなた達局員に対して本気で戦ったことはないわよ?そんな私の情報が管理局にちゃんと入ってくるわけないじゃない。」

 

「ふむ、それもそうだな。少し考えが足りなかったか。」

 

「そもそも私に対して自分の部隊をけしかけて戦闘経験値を得ようと考えてるのがおかしいのよ。」

 

「ん?それも知られてたのか?・・・・あぁ、クイントか。あいつもお喋りだな。」

 

「クイントさんを馬鹿にするっていうならこの場でその考えを叩き直してあげるわよ?」

 

「そんなことはしない。なんせあいつは俺の部隊の中でもかなりの強者だったからな。それに頭もまわる。・・・・いい部下だったよ。」

 

そう言いながらゼストさんは懐かしそうに上を見上げた。多分自分の部隊のことを思い出しているんだろう。その表情はとても和やかなものだった。ゼストさんが上を見上げていると不意に私の後ろに何かしらの気配を感じだ。すぐにそちらに黒糸を伸ばしてその気配を捕らえようとしたけれど驚くことに躱された。

 

「お帰り、ガリュー。どうだった?」

 

「・・・・・・・。」

 

「へぇ~?それがガリュー?蟲かな?」

 

ルーちゃんの声に振り返ってみると赤いマフラーをした人間大の召喚獣がいた。見た目は忍者そのものだが体の所々が焦げているところを見るとレヴィと交戦したらしい。ガリューと呼ばれた召喚獣はルーちゃんの言葉に言葉は出さなかったものの首を横に振った。ルーちゃんはその様子を見て少し残念そうにしたがすぐにお疲れさまと言ってガリューをデバイスの中に戻した。

 

「ゼスト、引き揚げよう?ガリューは失敗しちゃったみたいだし。」

 

「うむ、まぁ、俺としてはそもそもあんな奴を手伝ってやること自体が気に喰わないんだがな。」

 

「あっ、帰っちゃうの?また会おうね、ルーちゃん、ゼストさん。次は敵かもしれないけどさ。」

 

「出来ればお前とは敵になりたくないよ、浅上葵。」

 

「・・・さようなら。」

 

それだけ言うとルーちゃんとゼストさんは踵を返して森の奥へと去っていった。う~ん、私も暇になっちゃったからティーダの方へと向かおうかな?ガリューが失敗したってことはレヴィが成功したってことだし、それならもうそろそろ撤退してもいいはずだからね。そう考えてアラクネにティーダの位置を探してもらいその方向へと私は飛んでいった。

 

 

sideout

 

―――時は少しだけ巻き戻る―――

 

レヴィside―

 

「でぇりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ガッキィィィンといい音がして僕の魔力刃と相手の召喚獣の鉤爪のようなものがぶつかって火花が散る。ここはホテル・アグスタの地下駐車場。本当なら指定された鉱石をとってくるだけの簡単な仕事だったのにまさかこんな変な召喚獣に邪魔されるとは思ってなかったよ。でも、僕は負けないけどね!

 

「光翼斬!!!」

 

「・・・・・・!?」

 

回転する魔力刃を撃って召喚獣をとりあえず退けてからバルフィニカス・スライサーからバルニフィカス・ブレイザーへとデバイスを変化させる。そのまま高速で召喚獣へと斬りかかったけど召喚獣は鉤爪できっちりと防いできた。防がれたことに気が付いた僕は即座に召喚獣の間合いから離れる。僕の戦い方は基本的にスピードを生かしたヒット&アウェイだ。まぁ、やろうと思えば遠距離戦や近距離での打ち合いもできるけどやっぱりヒット&アウェイが一番落ち着く。

 

「電刃衝!!!」

 

7つほどの魔力弾を作り出してから一気に召喚獣の懐に飛び込んだ。召喚獣は魔力弾の方を警戒していたのか僕の接近に対応できていなかった。更に召喚獣の後ろに回り込んで思いっきり魔力弾の方へと斬り飛ばした。そして魔力弾を一気に召喚獣の方へと撃った。そのまま召喚獣は全弾命中して爆発し、その爆煙が消えた時にはその姿は消えていた。

 

「むぅ~、消えた?でも擬態っていう可能性もあるしなぁ~。一応警戒しながら荷物を見に行こう。」

 

止まっていたトラックのコンテナの中身を1つずつ確認して行って目的の鉱石を探すけどなかなか見つからない。とりあえず要らないものは全部ポイポイと後ろに投げ捨てておく。随分と掘り進めたところでようやく目的のものが見つかった。それをデータと照合して本物だと確認してからデバイス内にしまおうとしたところで黒い影に横からかっさらわれた。さっきの召喚獣だなぁ!

 

「あぁ~!!!それは僕のだぞ!返せ!―――電刃衝!!!」

 

すぐに魔力弾を撃って追いかける。だけど意外と召喚獣のスピードが速いせいかあとちょっとの距離が詰まらない。仕方がないからバリアジャケットをスプライトモードに変えて一気に速度を上げて召喚獣を追い抜いて前に立ちふさがった。立ちふさがる前に3回ほど斬ったけどまぁ、気にすることはない!

 

「それを僕に返せ!先に見つけたのは僕なんだぞ!」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「黙ってないで何とか言ったらどうなのさ!それに君程度じゃ僕は倒せないよ!せめてシュテるんや王様、ユーリくらいになってから出直しなよ!」

 

それだけ言って僕はさっきよりも早いスピードで召喚獣の周りを飛び回って斬っては離れを繰り返した。召喚獣もどうにか反応しようとしてるみたいだけどまだまだ遅いよ!10回目くらいに斬り飛ばした時に召喚獣が目的の鉱石を取り落したのですぐにそれを拾って今度はとられないようにデバイスの中にすぐにしまった。そしてもう用が無くなった召喚獣に対して・・・・

 

「天破・雷神槌!!!」

 

十字の斬撃を放って召喚獣を駐車場内の天井を突き破らせて吹き飛ばした。僕もすぐに召喚獣の後を追って突き破った天井から外に出た。丁度ホテル内じゃなくて外だったらしくホテルの裏辺りに出てきた。周りを見回してもさっきの召喚獣はいないから逃げたのかな?まぁ、そんなに本気は出してないから死んではないと思うけどね。

 

「≪おっ、サンクじゃないか。首尾はどうだった?その様子だと上手くいったみたいだけどな。≫」

 

「ティーじゃなくてスィス!そっちはどうだったの?というよりも葵は?」

 

丁度森からホテル周辺の攪乱を任されてたティーダが出てきた。でも一緒に行動するって言っていた葵が側にいない。なんでだろ?まぁ、葵のことだから心配する必要はないと思うけどね!

 

「≪こっちもまぁまぁってところかな?葵はなんか不穏な気配がするって言ってどこか行っちまったよ。≫」

 

「あぁ~、もしかしたらさっきの召喚獣のマスターかも!なんか変なのがいたんだよ!」

 

「≪へぇ~、召喚獣ねぇ。そう言えばメガーヌさんっていう人が召喚獣使ってたなぁ・・・。≫」

 

「ふ~ん、その人って強かった?」

 

「≪ありえないほど強いってことはないってところだな。確かに強くはあったがな。≫」

 

「ならちょっと戦って見たかったかもなぁ~。」

 

そんなことを話してたら葵がやってきたので全員そろって転移魔法で研究所へ戻ることになった。

 

 

sideout

 

 

 





次回でホテル・アグスタ編は終わりですね。

現在ちょっと日常パート挟むか、すぐに次の事件に入らせるか悩み中。


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