暇つぶしに転生させられるって酷い   作:百鬼夜行

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ヒロイン候補に挙がっていた彼女達が参戦!



空白期
第四十五話


浅上葵side―

 

「げふっ、ハァ・・ハァ・・・。やっぱりきつかったかな?」

 

あの後フェイト達の前から歩いて立ち去った私はあの丘の近くの林の中でリニスが来るのを待っていた。そう、転移魔法を使わずに歩いて移動したのは単に今魔法が使えない状態だからだ。樹にもたれかかって休んでいると向うからリニスが来た。

 

「葵!?なんですかこの私に流れてくる乱れた魔力は!?ってあなたどうしたんですか!?」

 

「あぁ、リニス?ちょっと悪いんだけど少し無理しちゃったからこの前あなたが探してくれたあの基地まで転移させてくれない?今魔法使うとどうなるかわからないんだよね。」

 

「くっ!・・・・後で何をしたのか説明してもらいますからね!」

 

「了解。よろしくね?少し寝るわ。」

 

そう言って私は意識を暗闇に落とした。次に気が付いたのはリニスが1人で少しずつ探して見つけたいい研究所だった。ここも違法研究所で確か最強の魔導士を作り出す研究を行っていたのかな?誘拐されていた子供達を救おうとしたけど助ける寸前で毒ガスを流し込まれて皆死んでしまった。その研究所の一角にあるベッドに私は寝かされていてそばには般若のような顔をしたリニスが座っていた。

 

「おはよう、リニス。」

 

「あなたの体を診察しましたが、なんて無理をするんですか!!防衛プログラムをコアごと自分の体に移すなんて!下手したら死にますよ!?」

 

「今はどのくらい浸食されてる?」

 

「大体20%で拮抗してます。正直、どうやって防衛プログラムと戦っているのかわかりませんが多分この拮抗状態も長くは持ちませんよ?」

 

「えぇ、私が勝つもの。こんなプログラム風情に負けてたまるもんですか。」

 

「そう言う問題ではありません!そもそもそのプログラムは魔導書に付属していたものがその魔導書の持ち主を喰い殺すような代物なんですよ!?いくらあなたが人外だとしてもそれを体にいれるなんて無茶にも程があります!何とか摘出はできないんですか?」

 

「無理。もうかなり私のリンカ―コアに浸食を始めてるからもう摘出は間に合わない。しばらく寝てれば治るよ。」

 

「風邪と同じにしないでください!というよりもどうやってその浸食を見極めてるんですか?あなたは今魔法が使えませんよね?」

 

「感覚?」

 

「・・・これだから人外だと言われるんです。」

 

リニスに呆れられた。でも本当にどうしようかな・・・。今の私は防衛プログラムとの内部の戦いで手一杯で魔法を使う余力がない。正直、リニスへの魔力供給もかなり不安定になり始めている。これだけは絶対に譲らないけどね。あっ!そうだ!そう言えばこの研究所確か役立ちそうなものがあったよね?

 

「リニス、この研究所って生体ポッドがあったよね?」

 

「えぇ、ありますが・・・。まさかあなたそこに入っていようと考えてるんですか?」

 

「うん、今から眠りに入ってちょっと1人であの闇の書の闇と戦って従えてくるから生体ポッドに私突っ込んでおいてくれないかな?」

 

「それではそれが終わったら私も生体ポッドに入っていましょう。」

 

「ん?別に外で研究しててもいいよ?」

 

「いいえ、あなたの今の状況では私が外で活動しているのは不利にしかなりません。なので私も魔力消費をできるだけ少なくするために眠りにつきたいと思います。」

 

「・・・・ありがと。じゃあ、一緒に眠ろうか?」

 

「うふふふ、あなたと一緒に寝るのは意外と久しぶりな気がしますね。」

 

「そうだね。まぁ、次起きたら一緒にまた頑張ろ?」

 

「えぇ、では生体ポッドまで運びますね?」

 

そう言ってリニスが私のことをお姫様抱っこで運んでくれた。どちらかと言うと運びたい方だったからこれはかなり恥ずかしかったけど嬉しかった。そのまま私は生体ポッドの中に入れられて数ヶ月の眠りについた。その間体内の防衛プログラムとの戦いを続けていたけどそれはまた別のお話。

 

 

sideout

 

 

三人称side―

 

「確かあの人の話ではここら辺の筈ですが・・・。」

 

「そのようだな。座標ではここを示している。」

 

「あの建物じゃない?おぉ~、なんかいかにも秘密研究所っぽくってカッコイイー!」

 

「そうみたいですね。あの人は私達を受け入れてくれるでしょうか?」

 

葵が眠りについてから数ヶ月が経った。今、葵が眠っている研究所の近くに4人の美少女が集まっていた。彼女たちはそのまま研究所内に入って行きまるで研究所内を知っているかのように葵が入っている生体ポッドが置かれている部屋へと向かっていく。途中所々に結界が張ってあるがそれはすぐに解除された。

 

「おぉ?あれじゃない?王さま!」

 

「うむ間違いなさそうだな。よくやったぞ?レヴィ。シュテル、ユーリ、行くぞ?」

 

「えぇ、私は早くアオイに会いたいです。」

 

「私もです!シュテルに葵を独り占めはさせませんからね?」

 

「ふふっ、いいでしょう。戦争です、ユーリ。」

 

「負けませんよぉ~。」

 

「せめて葵を起こしてからやらんか!さぁ、早く寝坊助を起こすとするか。」

 

「「えぇ。」」

 

「おぉ~!」

 

そう言って最後の扉を開けた4人の前には裸の葵とリニスが入った生体ポッドが鎮座していた。生体ポッドを解除しようとシュテルと呼ばれた茶色い短髪の女性がコンソールに近づいた瞬間、葵の目が見開かれた。葵は4人の侵入者を見るなり生体ポッドに内側から蹴りを入れるが中には液体が満たされているため上手く力が入らず罅すら入らなかった。その様子を見ていたシュテルはすぐにコンソールを操作して葵の生体ポッドを解除した。

 

―――プシュゥ――――!

 

という音を立てて生体ポッドが開いた瞬間葵が飛び出してシュテルを後ろから羽交い絞めにし、人質にとろうとしたが数ヶ月ぶりに動いた体がついていかず床に転げるだけで終わった。それをシュテルが優しく抱き留めて起き上がらせる。その動作を見て葵はようやく落ち着いてシュテル達4人に敵意がないことを確認した。そして近くの台の上に置いてあったアラクネを掴んでセットアップしてバリアジャケットを展開し裸体を隠すと4人へと向き直った。

 

「あなた達は誰?どうやら敵意はないみたいだけど・・・。それに3人ほど私の知り合いによく似ているようだけど?」

 

「失礼しました。私は理のマテリアル。星光の殲滅者、シュテル・ザ・デストラクターと申します。シュテルとお呼びください。」

 

「僕は力のマテリアル。雷刃の襲撃者、レヴィ・ザ・スラッシャーだ!強くて、早くて、カッコイイ!僕最強!!」

 

「我が名はロード・ディアーチェ。闇総べる王だ。好きに呼んでくれてよい。」

 

「私は紫天の盟主。ユーリ・エーベルヴァインです。ユーリと呼んでください!」

 

「うん、全く分からない。取りあえず、シュテルにレヴィ、ディアーチェにユーリね?う~ん、ディアーチェだけ長いからディアって呼ばせてもらうね?・・・あなた達の目的は何?」

 

「それには私がお答えしましょう、アオイ。」

 

「あなたはシュテルよね?なんか、なのちゃんにそっくりだけど・・・。」

 

「私達は見ての通り全員プログラム体です。闇の書の残滓がナノハをもとにして作り出したのが私です。似ているのはそのせいかと。」

 

「僕のオリジナルはへいとだよ!」

 

「我のオリジナルは嫌な話だがあの小鴉めよ。」

 

「ちょっと待った。なんかシュテル以外の2人のオリジナルがよくわからなかった。もしかしてフェイトと子狸ちゃん?まぁ、見た目でわかるか・・・。それで?こっちの誰にも似てない金髪美人な彼女は?」

 

「あぅあぅ、美人だなんてそんな////」

 

「あれ?何でそんな顔染てるの?私どこかで口説いたことあったっけ?」

 

「いいえ、ユーリは恥ずかしがり屋なので。ちなみに彼女は闇の書の奥深くに封印されていた永遠結晶『エグザミア』を核としたシステムです。紫天の盟主として私達を従える存在でもあります。ちなみに『エグザミア』はすでに封印されているので彼女の制御下にあります。あなたの持っている闇の書の闇と同じだと思っていただければ結構です。」

 

「へぇ~、可愛い顔して強いんだね。そう言えばよく私が闇の書の闇を制御してるの解ったわね?」

 

「元が闇の書の残滓ですので・・・。それに私は理のマテリアルですから。」

 

「さっきから気になってたんだけど随分と性格が違うわね。まぁ、元にしてるだけで別の存在みたいだし当たり前か。それで?あなた達の目的は?」

 

「あなたに従うために来ました。あなたの雌犬にしてください。」

 

「・・・・・・・・・・はい?」

 

「あぁ、すまんな。まぁわかっていると思うことだがシュテルとユーリはお主に惚れておる。だからたまにすごく変なことを言うやもやしれんがまぁ・・・気にせんでもいいのではないか?」

 

「気にするよ!?だって凄い無表情で雌犬にしてくださいって言われたんだけど!?びっくりしてもおかしくはないと思うんだ!」

 

流石にシュテルの無表情での雌犬発言は葵でも驚いたらしい。よく見たら少しだけ頬が赤くなっているようだが気が付くにはかなりの観察力が必要だろう。とにかく葵はコンソールに向かいリニスの生体ポッドを解除するとシュテル達に向かって言った。

 

「それじゃあ、あなた達は私と一緒に暮らすということでいいのかな?とりあえず暫くの間はここで暮らす予定だから部屋は勝手に使ってね。あ、後シュテル?雌犬にはしないけど可愛がってはあ・げ・る♪だからユーリと一緒に後でおいで?」

 

「あの~、押しかけてきた私達が言うのも何なんですけど・・・。怪しまないんですか?」

 

「ん?ユーリは怪しんで攻撃して欲しいの?」

 

「いえいえ、そんなことはありませんよ?でも、葵なら警戒はしそうだなぁ~と思って。」

 

「まぁ、私が気を許したのはあなた達が私の名前を知ってるからなんだよね。なのちゃんやフェイトに聞いたにしてはここの場所を知っているのがおかしい。というよりもここって知ってるの私かリニスくらいしかいないからね。だからあなた達に私の名前を教えたのはリニスか私しかいない。でも、リニスも私も今まで寝ていた。これは矛盾してるよね?ここまではわかる?」

 

「えぇ、わかりますよ。続きをどうぞ。」

 

「流石、シュテるん!理のマテリアルなだけはあるね!」

 

「というよりもわかっていないのはお主位だ、レヴィ。」

 

「続けるよ?多分、ありえないとは思うけどあなた達はどうにかして私に出会った。だからこの場所も知ってたし私の名前を知っていた。それにだからこそシュテルとユーリの2人は私に惚れていた。そう考えるしかないんだよね。まぁ、そんな理由であなた達を警戒する必要はないかな?と思ったわけ。だから別に警戒しなくていいよ?リニス。」

 

「そうですか・・・。驚きましたよ。目が覚めたら目の前で葵が4人もの魔導士と向かい合ってるんですから。それよりも体調は大丈夫ですか?葵。どうやら供給されてくる魔力が安定しているので制御はできたみたいですけど・・・。」

 

「ちょっと戦ってボコボコにして隷属させちゃった♪てへっ。だからこんなこともできるよ?」

 

そう言って葵が左腕を出すとその手に紅い紋様がはしり腕に纏わりつくように黒い蛇の形をした魔力が現れた。シュテルやレヴィ、ディアーチェは少し下がって戦闘態勢をとりかけた。ユーリは葵は凄いですと言ってパチパチと拍手を送っている。リニスも一瞬顔が蒼ざめたが葵が平気そうな顔をしているので大丈夫であろうと判断した。

 

「ちなみにそれは?」

 

「闇の書の闇の力を私が使いやすいように改良したもの。面白いでしょ?」

 

「見た目はかなり怖いですけどね。」

 

「う~~~ん・・・。そうかな?まぁ、いいや。それじゃあ私はリハビリとこれの練習のためにそこら辺の次元世界でひと暴れしてくるね?あっ、そうそう。誰かついてくる?」

 

「はいはい!僕が行くよ!!」

 

「私も行きましょう。」

 

「私はお留守番してます。」

 

「我もここの設備を住める環境に整えておこう。気にせずに行って来い。」

 

「じゃあ、ついておいで?シュテルにレヴィ。そっちはよろしくね?リニス、ユーリ、ディア。」

 

そう言って葵は実に数ヵ月ぶりに次元世界の放浪に出かけた。これにより管理局で“黒蜘蛛”再来などと言われていたがそれを聞いた管理局員の何人かが喜んだのはまた別のお話である。

 

 

sideout

 

 

 




はい、ということでマテリアル娘が参戦しました。

ちなみに作者のレヴィと王さまの恋している姿が想像できないという理由で彼女たちはヒロインから外させていただきました。

楽しみにしていた方はすみません!

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