暇つぶしに転生させられるって酷い   作:百鬼夜行

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先日から同ハーメルンで新しい小説を投稿しだしました。

詳しくは活動報告に書いてありますのでもしよければご利用ください。



第三十九話

 

浅上葵side―

 

「まずはすずかを助けてくれたことに対してお礼をさせて貰うわ。本当にありがとう、葵ちゃん。」

 

「すずかが望んだから手を貸しただけです。たいしたことはしていません。」

 

今私は月村邸ですずかのお姉さんで私とノエルさんの玩具、月村忍さんと向き合っている。その後ろには恭也さんが控えてるけど・・・。本当にお似合いのカップルだよね。忍さんが心理戦、恭也さんが肉体戦って配置なのかな?それよりも恭也さんの雰囲気がやばいなぁ。私が殺人をしたってことにすぐに気が付いてからかなり怒ってるみたいなんだけど・・・。黙って口をきいてくれなくなっちゃった。

 

「・・・・・5人も殺しておきながらたいしたことはしていない、か?お前はいつから道を間違えた、葵。」

 

「恭也今はそのことは置いておきましょう。それよりも大事な話があるから・・・。その後にあなた達で話せばいいじゃない。」

 

喋ってくれたけど殺気がすごい。流石の私でも手の平に汗をかいちゃうな。でも、逆にこういう人ほど殺したくもなっちゃうんだよねぇ♪・・・・・はぁ、やばいなぁ。かなり碧の方の性格の影響が出て来てる。私まで殺人衝動が出るようになっちゃうなんてね。

 

「大事な話って何ですか?忍さん。私は早く帰りたいのでさっさと用件を済ませてしまいましょうよ。」

 

「そうね。まずは私達のことについてからね。多分あなた私達が人じゃないこと知ってるでしょ?」

 

「えぇ、随分前から。」

 

「・・・・・・・・ちなみにそれはいつから?」

 

「すずかと初めて会った時かな?なんだか人とは違うような気配だったし。恭也さんもやろうと思えば気配探って認識できるんじゃないですか?」

 

「お前と一緒にするな。僕はお前よりも気配探知は苦手だよ。せいぜいどこに敵がいるかがわかるだけだ。」

 

「・・・・・・2人とも人外よ。」

 

「「私(僕)は人外じゃありません(ない)!恭也さん(葵)と同じにしないでください(れ)!!!」」

 

ちくせう。恭也さんとまとめて人外扱いされてしまった。私はあくまでも人間で恭也さんみたいに“神速”なんて言うありえないスピードで動くことなんてできないもん!しかもあの人あれで膝にある古傷のせいで本気が出せない状態なんだよ?もう、絶対に人外だよね。

 

「まぁ、それは今は置いておいて。あなたには2つの選択肢があるわ、葵ちゃん。」

 

「選択肢?なんかめんどくさい予感がビンビンしますね。」

 

「そこまでめんどくさくもないわよ?あなたが私達“夜の一族”のことに関して周りに話さないことを誓うか、それとも私に今この場で記憶を消されるかどちらか1つよ。さぁ、選んで頂戴。」

 

「それ私が今までも誰にも話してなかった時点で選択肢決まってるようなものですよね?」

 

「ふふふ。これは一応確認みたいなものだからもう一度お願いね。」

 

「別に誰にも言いませんよ。正直すずかが吸血鬼とか面白展開にも使えないようなことですし。・・・でも忍さんをテレビ局に売りつければ意外と高く売れるんじゃ?」

 

「うん、待ってお願い!なんですずかは大丈夫なのに私の方に危機が迫ってるのかな?しかもテレビ局に売りつけるってかなり酷いよね?自覚ある?」

 

「いつもあなたが私にやってきたことを考えれば当然の報いだと思えるのは私だけなんでしょうかねぇ?」

 

「・・・・・・・・忍、すまん。」

 

「恭也!?」

 

「そうですね。いつもいつも遊びに来ていただいている葵様に防犯システムを強化しては仕掛け、強化しては仕掛けしていた忍様にはちょうどいい仕打ちかもしれないですね。」

 

「ノエルまで!?っていうかあなたいつからいたの!?」

 

「流石ノエルさん!わかってますね。それとお久しぶりです。」

 

「えぇ、お久しぶりですね。葵様。それと忍様。私は最初からいましたよ?まさか月村家当主が私にすら気が付けなかったなんてことはありませんよね?」

 

「ぐぅ・・・・。そういえばすずかの様子はどう?」

 

「えぇ、傷1つなく今は眠っていらっしゃいます。ファリンをそばに残してきているので大丈夫でしょう。本当にありがとうございました、葵様。」

 

「はぁ、何で皆私にお礼を言うのかなぁ?私はすずかが求めたから助けただけなのに。」

 

「それでも助けていただいたという事実は変わりませんので。」

 

「はいはい、了解。お礼は受け取っておくね。」

 

「あの~。そろそろ話を元に戻してもいいかな?」

 

気が付けばすずかのことを誰にも話さないっていう話からノエルさんとの忍さん虐めへと移行していた。いやぁ、久しぶりにやったけど、流石ノエルさん!全然なまってないね。私とのコンボのつなげ方もばっちりだし。忍さんを追い込むのも手慣れたものだったわね。まぁ、そろそろ話を戻してあげようかな?

 

「じゃあ、私浅上葵はここに誓う。あなた達の秘密を決して公言しないことを。そしてあなた達に危害が加わるようなことがあれば必ず助けましょう。・・・・こんなものかな?」

 

「まるで騎士の誓いね。」

 

「ただしこれはすずかにのみ適用されるから気を付けてね♪」

 

「最後ので本当に台無しね!?何で?私は駄目なの!?」

 

「あなたは恭也さんがいるでしょうに。私が守るのはすずか1人で十分だと思うけど?」

 

「何々?すずかを貰ってくれるの?」

 

「くれるんなら貰うよ?ネコ耳つけてメイド服着せて可愛がってみたいから♪」

 

「葵、お前はいつから道を踏み外したんだ・・・・。」

 

「恭也さん、あなたは間違っている。可愛いは正義。これは絶対よ。このくらいのことは忍さんでもわかるでしょ?」

 

「えぇ、あなたも返り血さえついてなければ可愛かったのになぁ。」

 

「「返り血はメイドの嗜みですので。」」

 

「なんでノエルも被るの!?それに返り血が嗜みって何!?聞いたことないよそんな怖いメイド!!」

 

「ねぇねぇ、そろそろ帰ってもいい?私の帰りをお腹を空かせて待ってる人達がいるんだよね。」

 

「それは悪いことをしたわね。じゃあ、最後の質問にしましょうか。」

 

そう言って顔の前で手を組んで机に肘を置いた忍さんは目を閉じて真剣な雰囲気を纏ってからまた目を開いた。その目が紅く染まっているのを最後に私は意識を闇へと強制的に落とされた。

 

 

sideout

 

 

月村忍side―

 

正直こんな手段は使いたくなかった。私が葵ちゃんに使ったのは魔眼。効果は催眠術をかけるようなもの。しかしこの魔眼にも弱点は色々あったりするんだけど・・・。まぁ、別に今はなさなくてもいいでしょう。それよりもさっきから葵ちゃんの雰囲気が変わってるような気がするんだけど催眠術にかかってるからかしらね?まぁ、当初の予定通り質問していきますか。

 

「葵ちゃん、あなたは一体どんな力を持っているの?」

 

恭也に聞いた話では犯人はもうすでに人間と呼ぶには相応しくない体をしていたらしい。体中が捻じ曲げられたような形に曲がっていて胴体でさえまるで雑巾を絞ったような形で曲げられていたらしい。勿論葵ちゃんがやったことだとは思う。だけど、はっきり言ってそんな殺し方は吸血鬼で人間よりも力が強い私達でも出来ない。それを行った方法が私はどうしても知っておきたかった。

 

「凶がれ。」

 

その声とともに私の机の上に置いてあったスタンドが捻じ曲がり始めた。私も恭也も全く今の状況についていけずただスタンドが雑巾を絞ったように捻じ曲げられ最後には折れるのを見ているしかなかった。一体何が起こっているの?これも葵ちゃんがやったっていうの!?次の瞬間葵ちゃんの体から噴き出した凄い殺気で私と恭也、ノエルは戦闘態勢に入った。

 

「ノエルさん、忍を連れて逃げてください。この殺気は正直やばいです。後出来れば父さんを呼んで来てもらえますか?僕じゃあ勝てる見込みもないので。」

 

「了解しました。さぁ、忍様。逃げましょう。正直ここに残っていても私達は足手纏いにしかなりません。」

 

「でも!恭也!!」

 

「これは忍を止めなかった僕の責任でもあるからね。どうやら僕達は葵の触れてはいけないところに触れてしまったらしい。こんな殺気を出している葵を見たことがないよ。」

 

「そんなに簡単に逃がすとでも思っていたのか?正直甘すぎるぞ?貴様ら。」

 

恭也の声に反応したのか葵ちゃんが喋った。だけど、あの口調は葵ちゃんとは全く違う誰かの喋り方だったわよね?でも、声は間違いなく葵ちゃんのだったし葵ちゃんから聞こえてきた。全く!一体どうなってるのよ!?

 

「葵なのか?正直僕には今のお前を葵と呼ぶことができない。お前は何だ?」

 

「クックック。面白いことを聞くじゃないか高町恭也。俺はお前のことを知っているしそっちの女の子とも知っている。だけどお前らは俺のことは知らないだろうなぁ。なんせ葵は上手いこと俺の存在を隠してきたしな。まぁ、俺が自由に表に出られるようになったのは最近の話だがな。」

 

隠してきた?表に出る?私達は知らないけどあっちは知っている?このキーワードどこかで聞いたことがあるような気がするわね。いいえ、どこかで読んだ気がするの方が正しいかな?ええと、確かあれはどんな小説だったかしら?いまいち思い出せないけど・・・。そうよ!主人公が二重人格だったわ。二重人格?それだ!!

 

「あなたは葵ちゃんの裏人格、要するに葵ちゃんは二重人格だったってことでいいのかしら?」

 

「ほぅ?正解だ。俺の名前は浅上碧。浅上葵の裏人格であり性別(?)は男だ。それと殺人衝動持ちだよ。」

 

最後の言葉を聞いて私達に緊張が走った。二重人格までは予想できたけどまさか裏人格の方が殺人衝動を持っているなんて聞いてないわよ!?確かに私はとんでもない奴を起こしてしまったみたいね。これは本当にやばいかもしれない。でもいくらか聞いておきたいことがあるわね。

 

「葵ちゃんはあなたが表に出ている間の記憶はあるの?」

 

「気を失ってなければな。ちなみに今も俺の中で騒いでるぜ?」

 

「そう、それじゃあ、次の質問いいかしら?」

 

「ふむ、最近暇だったんだ聞いてやろう。」

 

「ありがと。葵ちゃんにかけた催眠はどうやって解いたのかしら?あなたに入れ替わっただけなら納得ができるけど葵ちゃんが中で騒いでいるとなると葵ちゃんにもかかっていないみたいだしね。」

 

「クックック。お前らだけが魔眼を持っていると思っていい気にならないことだ、吸血鬼。答えは簡単だ。俺達も魔眼持ちだった、それだけだ。」

 

葵ちゃんが魔眼を持っていた!?そんな・・・。全然気が付かなかった。しかも私の催眠が効かないってことは相当私より上位に位置する魔眼になるわね。まぁ、本来はそれだけじゃ催眠が効かなくなるなんて考えられないんだけどそう考える以外に方法がないわね。ということはさっきの現象は魔眼によるものと考えてもいいかもしれないわね。

 

「大体想像がついてると思うから教えてやろう。俺達が持っている魔眼は“歪曲眼”というものだ。効果は視界に映った指定した場所を歪曲させる。実にシンプルでかつ楽しい効果だろ?俺の殺人衝動もこれで収まるってもんよ。クックック。」

 

「まさか、自分から話してくれるとは思ってもみなかったわ。それよりも私達をどうするつもりなのかしら?さっき逃がさないとか言っていたけど?」

 

「んなもん決まってんだろ。俺の魔眼にはお前みたいに記憶の修正をできる効果なんてない。なら俺達のことをしゃべらせないためには物理的に口を閉ざしてしまえばいいのさ!」

 

そう言った瞬間更に濃厚な殺気が私達に襲い掛かってきた。まるで殺気が私達の体に足の方からじわじわとまとわりついてくるかのような錯覚を受ける。正直、これはまずい。今この状態化で動けるのは恭也だけだと思う。だけど恭也が動くには私とノエルが邪魔になる。でも私達は碧の殺気で動くことすらできない。堂々巡りで詰みである。それにたとえ動けたとしても恭也があの魔眼から逃げ切れるという保証はない。なんせ碧は歪曲させられる箇所が複数では駄目とは言っていない。正直この部屋の至る所を曲げられたらどうしようもない。

 

「お願いだからもうやめて?葵ちゃん。」

 

部屋の扉を開けて眠っていると思っていたすずかが入ってきた。最悪だ。恭也が動けない要素がさらに増えちゃった。それにしてもなんですずかはこんなに殺気が充満している部屋で笑って歩いていられるのかしら?もしかして、碧がすずかに対しては殺気を放ってない?なら、すずかにだけは交渉の余地があるってことでいいのかしら?

 

「クックック。俺は葵じゃねぇよ。だから故に残念ながら止まれねぇな。」

 

「ううん、違うよ?碧さん。私はあなたの中の葵ちゃんに話しかけてるの。ごめんね?葵ちゃん。多分またお姉ちゃんが何かやらかしちゃったんだよね?私でよければ好きにしていいから止めてくれないかな?あれでも一応大事な家族なんだ。」

 

ふふふ。なぜかしら涙が止まらないわ。とうとう妹にまで弄られるようになってしまった。ちくせう。これも葵ちゃんの仕業ね。ノエルやすずかを葵ちゃんの色に染めることで私を追い込んでいくなんてなんてあの娘らしいやり方だろうか・・・。あれ?碧の雰囲気が変わってる?それに殺気も消えていってるし。もしかして説得に成功した?

 

「うふふふ。駄目だよ?すずか。自分のことはもっと大事にしなきゃ。家族を救うためとは言え私を好きにしていいからはやりすぎだと思うよ?まぁ、私としては来る者拒まずだけどね?」

 

「私は葵ちゃんなら何されてもいいよ?というよりも何かされたいかな?」

 

「あなた私が怖くないの?あなたの目の前で人を殺してるけど?」

 

「守ってくれる騎士様を怖がるお姫様はいないよ?それにあの時の葵ちゃん本当に綺麗だったし。」

 

おかしいわね。どう見ても桃色空間が広がってるようにしか見えない。さっきからお互いの台詞はなんか告白してるみたいなのも入り混じってるし・・・。恭也もポカンとした顔をして何が起こってるのか理解できてなさそうね。まぁ、私もこの空間に入って行きたくはないわね。それにしてもノエル?何でそんなに嬉しそうなのかな?もしかしてすずかが私を弄ることに目覚めたからなんてことはないよね?

 

「じゃあ、そろそろ本当に帰ろうかな?随分と長居しちゃったしね。そうそう、スタンド壊してごめんね。すずか?今回はこれで勘弁してあげる♪」

 

「うんむっ!?・・・ぷはっ。・・・・・いきなり過ぎるよう////」

 

「まったねぇ~。それとそのうちすずかはいただいていくかもね♪可愛いし。」

 

そう言って葵ちゃんは帰って行った。口を限界まで開いた状態で固まった恭也、顔を真っ赤にしていやんいやんと体をくねらせているすずか、嬉しそうな微笑みを浮かべているノエル、扉の側で出待ちをしていたらしいファリンを残して。感じたことを素直に言おう。何このカオス。

 

 

sideout

 

 

 




今回はかなり悩みました。

なんせすずかをヒロインにするには碧にも気に入られなきゃいけないんです。

でも碧が出てくると殺人が起こる可能性がぐんと上がるんです。

何とか無理矢理回避しました。


そして無事にすずかはヒロインになりました。


後悔も反省もしていない!


感想と評価お待ちしております。

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