暇つぶしに転生させられるって酷い   作:百鬼夜行

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第十九話

 

浅上葵side―

 

「いやぁ~、有意義な戦いだったわ。」

 

「全く、何を言ってるんですか?あなた完璧にプレシアをボコボコにしてましたよね?さすがにやりすぎでしたよ?」

 

時の庭園からフェイトの家に転移して私とリニスは帰ることにしたんだけど・・・。リニスが帰り始めてからやけにうるさいなぁ。私は少しプレシアさんの考えを改めさせようとしただけじゃない。でも今はリニス猫モードになってるから目立つよなぁ。そこら辺の公園のベンチにでも座ってますか。

 

「そうかな?半殺しにすらしてないんだから感謝してほしいくらいなんだけど?そもそもあんな自分に嘘ついてるような考え方私は好きじゃないし。」

 

「そうかもしれませんが・・・。はぁ・・・。葵、あなた性格が前とかなり変わってますね。」

 

「そう?自分ではよくわからないんだけど。」

 

「えぇ、間違いありませんね。多分碧が表に出られるようになってからですかね?碧の性格に引っ張られてるみたいですね。」

 

うわぁ~。それは嫌だな。だってあの性格だと私そこら辺の知らない人をゴミくらいにしか見れないんだもの。それにあれと変わると殺人衝動が常時でるようになるし。あれ?確かに最近少し自制が聞いてない部分が多いわね。気をつけなきゃ。碧に飲まれる気はないからね。

 

「そうね。気を付けておくわ。・・・それと一つ頼みがあるの。」

 

「どうしました?急に真剣な表情で。」

 

これだけはどうしても言っておかなきゃならない。なのちゃんやフェイトに迷惑をかけないようにするためには頼めるのは事情を完璧に理解しているリニスぐらいだから。

 

「管理局がそろそろ介入してくるはずよ。」

 

「えぇ、その通りですね。」

 

「管理局員が誰かしら戦いに介入なりなんなりした場合、すぐになのちゃんとフェイトを離脱させていざとなれば私を止めて頂戴。」

 

「っ!?・・・・それほどまでに憎いですか?管理局は。」

 

そう、管理局が来たら私は間違いなく葵から碧になってしまうだろう。それを武力で止めるのはなかなかに難しいと思う。だが、リニスならきっと止められる。・・・だって葵も碧も認めてる優秀な使い魔で家族だから。

 

「間違いなくすぐに人格は入れ替わるわ。そして碧の状態で戦ったら間違いなくその管理局員は肉塊になるでしょうね。だって、私の中では父や母、そして兄を殺された時の恨みや怒りが消えてないんだもの。それにフェイトやなのちゃんを巻き込んでしまうのは気が引ける。だからあなたに頼んでおきたいのよ、リニス。」

 

「・・・わかりました。使い魔である私が全力をもってあなたを止めて見せましょう。」

 

うん、やっぱりリニスは最高の使い魔ね。本当にいい使い魔を・・・いいえ、いい家族を持てて幸せだわ。

 

「それにしても、葵。あなたのその負の感情はやはり消せませんか?」

 

「簡単に言ってしまうけど、無理ね。それにこの感情には私も感謝してるわ。なんせこの感情がなかったら私は間違いなく完璧に壊れていたでしょうからね。」

 

「・・・・そうですか。それでは最後にこれだけは答えてください。・・・葵、あなたは今の日々が楽しいですか?」

 

「・・・えぇ、楽しいわよ。なのちゃんをからかったり、フェイトをかわいがったり、ありさをおちょくったり、すずかと話したり、忍さんをノエルさんと一緒にいじめたり・・・。ほかにも色々と日々を楽しめることがいっぱいあるよ。だから、この日々を壊そうとする者は、すべて私が破壊する。例えそれが人殺しになろうとも。」

 

「・・・・・そうですか。(葵、あなたはやっぱりどこか壊れているんですね。ですが私がきっとあなたの傷をいやして見せますよ。)」

 

そういいながら空を見上げる。そろそろ学校は放課後かな?っていうことはなのちゃんも帰ってくるね。こんな風に平和な日々が続けばいいのに。―――――はぁ・・・。

 

「こういうのをフラグっていうんだろうなぁ。」

 

「何を馬鹿なこと言ってるんですか?ジュエルシードが発動したみたいですね。」

 

「うん、なのちゃんもフェイトも向かってるから私は少しゆっくり向かうとしますか。」

 

座っていたベンチから立ち上がるとリニスを抱きかかえてジュエルシードの発動した場所へ歩いて行った。

 

 

sideout

 

 

フェイトside―

 

葵が帰ってからしばらくアルフに言われて家で休んでたんだけど・・・。ジュエルシードは私を休ませてくれる気はないらしい。今度は海の近くの公園で発動した。すぐに向かった私が見たのはあのなのはっていう魔導士と化け物のような木だった。

 

「フォトンランサー、ファイヤ。」

 

――――ギンッ!!

 

フォトンランサーは木の張ったバリアのようなものではじかれてしまった。まさかバリアをはれるなんて思ってもなかった。木の方もただやられるだけではいてくれないらしく地中から根っこを出して襲い掛かってくるけどその根っこは黒い魔力糸で地面に縫い付けられた。こんな魔法を使うのは

 

「「葵(ちゃん)!!」」

 

やっぱり、下の方に葵がいてのんびりと状況を眺めていた。というかこれ以上の介入はしないつもりなのかな?攻撃手段は潰してあげたから後は勝手にどうぞって感じの顔してる。でも、ありがたくこのチャンスをいかさせてもらうからね!!

 

「行くよ!レイジングハート―――ディバイン、バスタ――!!!」

 

「貫け!轟雷!!―――サンダー、スマッシャ―――!!!」

 

私となのはの砲撃を受けた木は最初はバリアを張って耐えてたんだけどだんだん地面にめり込んでいって最後にはバリアが砕けて消滅し封印することができた。よし、後はなのはを倒してあのジュエルシードを奪えば終わりだ。でもとりあえずはジュエルシードと距離を置かないと・・・。

 

「ジュエルシードに衝撃を与えちゃダメみたいだ。」

 

「うん、またあんなことになったらレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュもかわいそうだもんね。」

 

よかった。これで一応ジュエルシードから離れることができそうだ。って思ってたら葵が近づいてきた。

 

「なら、一時的に私が預かっておくからあなた達は思う存分暴れなさい。」

 

そういって葵がデバイスにジュエルシードを収納させる。葵が預かってくれるなら安心できるね。

 

「それじゃあ、私が審判を務めさせていただきましょうか。これより第三回フェイト対なのちゃんの一騎打ちを行います!賞品はこちらの先程封印されたばかりのジュエルシード!!無制限、一本勝負!!はじめ!!」

 

葵の合図とともに私はバルディッシュをなのははレイジングハートをふるい交差しようとする。しかし私たちのデバイスは間に現れた一人の少年によって止められてしまった。

 

「ストップだ!!ここでの戦闘は危険すぎる。時空管理局クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか。」

 

時空管理局!?やばい早く逃げないと!ジュエルシードは葵が収納しちゃってるから手に入れられないけどとりあえずアルフと一緒に離脱しないと!そう考えすぐにアルフと離脱しようとする。

 

「あっ、待て!!」

 

そういってクロノがこちらに向けて魔力弾を撃ってくるがそれは私でもなくアルフでもない人物に消された。それは黒い糸で魔力弾に突き刺さったと思ったら魔力弾は一瞬のうちに消えてしまった。

 

「お前、何のつもりだ!!」

 

「・・・・何のつもり?」

 

私はその声を聞いた瞬間その場に止まって振り返った。だってその声は私がなのはを落とした時に聞いた恐ろしい声でその後会った時にそのことを教えてもらった声だったから。その声の重圧はあの時より強く私は恐怖でほとんど動けなくなってしまった。そして私は見た

 

「それはこっちのセリフなんだよ!このクソ管理局が!!」

 

完璧に怒りにのまれて人格が入れ替わり恐ろしいほどの殺気を放っている葵、いいや碧の姿を。

 

 

sideout

 

 

ユーノside―

 

もう見ることはあまりないと思っていた。というよりは見るのが正直怖かった。そんな見たくなかったものをまた僕は見ることになってしまった。最初はなのはが落とされた時だった。あの時の雰囲気は嫌でも覚えてる。体にまとわりつくような殺気、そしてその殺気を表すかのような驚異的な暴力。もう二度と見たくなかった葵のもう一人の人格碧がまたこんなすぐに表に出てくるなんて。

 

「なっ!?管理局を馬鹿にするのか!」

 

そう、碧を表に出してしまったあの少年の運命はもう決まったも同然だ。死あるのみ。こんな言葉が適切なんてなんて哀れな少年だろうか・・・。でも、あんなに碧が管理局を罵倒するなんて何があったんだろう?そこが少しだけ気になった。

 

「ユ、ユーノ君。葵ちゃんの様子がおかしいの!!何かジュエルシードの影響を受けちゃったのかな?」

 

なのはがこちらに飛んできて聞いてきた。そうか、なのはは碧の存在を知らないままだったね。僕も話そうとは思ったんだけど葵に口止めされちゃってたしな。そういえばリニスと名乗っていた葵の使い魔はどこにいるんだろう。とりあえずこの場所にいるのは危険かもしれない。

 

「なのは、ここから離脱しよう。今の葵はなのはの知っている葵じゃない。」

 

「・・・・ユーノ君はあの葵ちゃんの状態を今まで見たことがあるの?」

 

なのはは変なところで鋭いな。これはもう話すしかないのかな?たぶん葵も許してくれるような気がする。

 

「あるよ。なのはが落とされた時にも葵はああなったんだ。葵はね、二重人格なんだよ。あの状態の葵は自分のことを碧と名乗っていたよ。」

 

「二重人格!?・・・なんで葵ちゃんは私にそのことを教えてくれなかったのかな?」

 

「それは僕にはわからない。多分なのはが葵に聞かなきゃならないんじゃないかな?」

 

「ここでの話し合いはそこまでにしてください。」

 

急に会話に一人の女性が割り込んできた。というか、リニスさんだった。どうやらフェイトの方はもう逃げたらしくその場にはいなかった。

 

「ここは非常に危険です。碧が何をしでかすか私にもわかりません。すぐにここから離脱してください。」

 

「えぇっと・・・。どちら様ですか?」

 

「私は葵の使い魔のリニスです。とにかく早くここから離脱してください。私は早く葵を止めに行かなければならないんです。」

 

「っ!?私も行きます!!」

 

なのはが葵を止めるといったのを聞いて自分求めると言い出した。けど、僕の予想が正しければ

 

「あなたは邪魔になるだけです。それにたぶん碧はあなたの言葉に耳を傾けたりはしませんよ。」

 

「なっ!?そんなことやってみないとわからないの!!」

 

「いいえ、やらなくてもわかりますよ。それにっ!?・・・はぁ、こんなことに時間を使ている暇もないようですね。あなた達せめて邪魔にならないようにそこで大人しくしていてくださいね。」

 

そういってリニスさんは碧の方へ向かって飛んでいった。それを目で追った僕となのははその先で行われていた恐ろしいまでの暴力を見ることとなった。

 

 

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浅上碧side―

 

久しぶりだ。久しぶりに暴れられる。今は完璧に葵が憎しみでおかしくなってるから俺がこの体を使うことができる。ただ、その代わりあのうるさい管理局員をだまらせなきゃならねぇな。まぁ、そのために俺が出てきたんだがな。

 

「なっ!?管理局を馬鹿にするのか!」

 

「クックック、その通りさ。俺は管理局が大嫌いだからな!!」

 

「このっ!これでも喰らえ!!―――スティンガー!!」

 

あの魔導士も怒ったようで俺に魔力弾を撃ってくるが・・・。さっきどのように魔力弾消されたのか忘れたのかこいつ。魔力糸を展開して魔力弾にぶつけて魔力を吸い取り俺のものにする。全く、もう少し楽しませてくれる奴を送り込んでくれればいいのによ。まぁ、殺しやすくていいか。

 

「くっ!?さっきからどんな力を使ってるんだ!?」

 

「それを敵に教えるやつはいないだろうぜ?さぁ、こっからは俺の反撃だ。まぁ、楽しんでくれや。アラクネ、出力60%、糸で俺のこぶしをコーティングしな。」

 

<了解、マスター。>

 

魔力糸によって俺の手をコーティングした。これによって簡易的なグローブの出来上がりだ。まぁ、最初はこんな感じでいいだろ?後は簡単、近づいて殴ればいい。

 

「せいっ!!」

 

「くっ!?」

 

魔導士はデバイスの柄で防ぐが後ろに弾き飛ばされる。そこをまた追いかけて殴る、飛ばされる、殴る、飛ばされる。そんなことを4,5回繰り返したらあの魔導士が急上昇して距離をとった。

 

「ブレイズキャノン!!」

 

そのまま砲撃魔法を撃ってきたが、俺には余り関係ない。左手を前に出してマジックドレインを発動させる。砲撃を無効化しているうちに右手の糸にフェイトから奪った雷資質の魔力を付与させる。そして砲撃が終わったと同時に懐に潜り込み思いっきり腹を殴って地面にたたき落す。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!!??」

 

あいつは地面を2,3回バウンドして転がり立ち上がろうとするが、雷を纏ったこぶしで殴られたせいかしびれてうまく立ち上がれていない。その状態であいつの下に魔方陣を展開。そこから雷を纏わせた黒糸を伸ばして

 

「縫い付けろ、雷黒糸。」

 

「ぐぅぅぅぅ!!??」

 

地面に縫い付け雷を流し込む。さて、これで動きは止めたな。もう一度雷を纏わせたこぶしで高度を活かして腹に一撃を入れる。血を吐いたが気にしない。駄目だな。この程度じゃ面白くも楽しくもないや。しかもこの弱さじゃ復讐にもなりゃしない。

 

「もういいや、お前死ね。アラクネ、コーティング解除、魔力糸4本連結、糸球大きさ大展開。」

 

頭上に魔力糸を練り合わせて作った直径が3メートルはある球体が現れる。それは4本の糸を連結させて作った縄のようなもので俺の手元とつながっていて今まさにそれを俺が振りかぶっている。この不運としか言いようがない少年は顔を真っ青にして震えている。だが、俺は止める気はない。急に顔の近くに空間投影モニターが現れた。

 

『待ってください!!戦闘をやめてください!!』

 

「・・・あぁ?邪魔すんじゃねぇよ。お前も殺すぞ?」

 

『うっ・・・。あなたは公務執行妨害、傷害罪、殺人未遂等の罪に当たります。早急に武装を収めてください。』

 

「管理外世界で管理局の法律が通るとでも思ってんのか?それによくある話だろ?若手魔導士の殉職なんて。」

 

『くっ!?それではあなたを危険分子とみなしそちらに武装隊を送ります。そしてあなたを捕縛します。』

 

「黙って送ればいいものを何いちいち口上述べてから送り込もうとしてんだ?あぁ、わかったわ。こいつがお前らの所の最高戦力なんだ。だから、俺に少しでも圧力をかけて動きにくくしようとでも考えたのか?わかりやすいな。まぁ、さっさと送れよ、武装隊。少しは楽しめるんだろ?」

 

そういった瞬間、周りに魔方陣が大量に展開され魔導士が15人ほど現れた。そいつらはこちらにデバイスを向けて魔力弾を砲撃を撃とうとしているがこの女が教えてくれたおかげで対応策はもうできている。

 

「糸球、モード殲滅、伸ばせそして薙ぎ払え、黒棘糸(こくしし)!」

 

先程から頭上に展開されたままになっていた糸球から大量の棘のような糸を出して武装隊を一気に全員攻撃する。ある一人は腹に糸を当て吹き飛ばし、ある一人はデバイスを折ってから体に糸を巻き付け投げ飛ばし、ある一人はデバイスを折りつつも下から上へ顎を打ち上げて意識を飛ばした。そして蹂躙が終わった後には意識はないが一応誰も傷は負っていない武装隊が倒れていた。

 

「つまらん。殺す価値もなかった。」

 

『そんな・・・。この数の武装隊が一瞬で全滅!?』

 

「俺とやりあって本気を出させたいならこの3倍は連れてこい。さて、そろそろこいつを殺すとするか。」

 

「駄目ですよ?碧。」

 

そういわれて見た先には優しい笑顔を浮かべてこちらを見るリニスとその後ろに驚きすぎて何も言えないといった表情のなのちゃんとフェレットが立っていた。

 

 

sideout

 

 




はい、長くなりすぎました。
反省はしてますが、後悔は・・・少ししてます。

次回はリニスによる説得ですね。というか止まるのかな?これ。


感想と評価お待ちしております。

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