関係者を狙ったテロを未然に防ぐため、世界中を駆けずり回っていたユーノ。
慣れない戦術予報を駆使しながら、最低限に抑えていた。
そして、狙われた関係者の中に、高町家や月村家があった。
ユーノは静かに瞳を開けた。瞳の虹彩が金色から翡翠に戻る。念話を切ると、ホッと息を吐いた。
「よかった。当たってて」
「ハズレだったら、恨んでたよ」
廃墟の陰から、男性が出てきた。
彼も吉報を聞いて、一安心している。
「“フィン”。・・・片付いたの?」
「ああ」
コードネーム、フィン・ザ・デストラクター。本名は高町修平。
永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術―― 通称・御神不破流 ――の正統後継者にて、高町シュテルの夫。
ミッション中はコードネームで呼び合っている。
彼が通った後には、気絶、もしくは、五体満足に動けなくなった人間が転がっていた。
「じゃ、行こうか」
「ああ」
廃墟とはいえ、しばらくすれば、騒ぎに気付いて警察が駆けつけてくるだろう。
そうなる前に、自分たちはこの場から立ち去る。
先ほどから、「アタリ」「ハズレ」と言っているのは、ユーノが予想した戦術予報だ。
ユーノの予報は一度でも当たれば「大当たり」、外れれば予報がことごとく外れる。博打のような確率だ。
ヴェーダからの情報と、地道な情報収取によって、太陽光発電に重要な会談を潰す計画を立てている組織がいることを突き止めた。
そのため、計画に支障が出ると判断され、実行に移された。
標的にされた組織は、二人によってことごとく潰され、闇に葬られることだろう。
その中に、イオリア計画の賛同者を殺す計画も含まれていた。
電子情報なら、ヴェーダが情報規制できる。しかし、手渡しによってもたらされた情報を止めることは難しい。
それを回避するために、ユーノの戦術予報が必要だった。
「見よう見まねとはいえ、確率が五分五分じゃぁね」
ユーノは正式な
戦術予報士とは、統計学や戦術史等の様々な分野を基にして、「事象の確率を推定し、取捨選択で戦術を立てる」、つまり「過去の事例から戦術を予測(予報)する」仕事である。一般的には、参謀役として作戦立案して、司令官に提案するのが主な任務となる。
スメラギ・李・ノリエガの戦術を手元で見ていたからこそ、未来の国家資格を
そのため、予報率はきっかり50%・・・よく当たる占い程度でしかない。
それでも、まだ情報収集に不安をもつヴェーダに頼り切りよりも、未然に防げる。
ヴェーダの未来予測は確率予測でしかない。ある、なしのはっきりした答えにはならないのだ。
二人の活躍により、太陽光発電タワーの建設予定地が決まった。
「あ、そうだ。帰ったらご馳走だってさ」
「うっしゃ! だったら、さっさと帰りますか」