インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)


この話には、サブストーリーを書きました! 
外伝的な話ではなく、ヒロイン視点です。別に読まなくても繋がりが分からなくなるわけではありません。


ちょっとでも気になる読者様がいらっしゃいましたら、ブログの方で掲載していますので、良かったら見てください!
(URLは後書きに記載しています。ブログ内の第51話③の本文の「望んだ形」をクリックすると閲覧出来ます)


第51話 俺は責任と取っただけ。

 

 

 

 

 

 海で遊ぶ。

 臨海学校の初日から海水浴な俺。遊ぶと一言で言っても色々あるだろう。では具体的にはどんな遊びがあるだろうか。

 海に入っての遊び。水の中へと潜るならシュノーケリングやダイビング。波と戯れるならサーフィンやボディーボード。あるいはちょっとお金が掛かるがウェイクボードやパラセイリングなどが挙げられる。

 だがここはサンゴ礁など見所があるダイビングスポットという訳でもなく、サーフスポットと呼べる程の高めの波など起きない穏やかで砂浜の綺麗な海水浴場。もちろん授業の一環で来ている為、お金は掛けられない。

 ちなみに俺は遠泳を海での遊びには含めない。現在進行形の一夏と鈴には悪いがな。なぜなら基本的に泳ぐだけな遠泳は別にプールでも出来るからだ。無人島まで遠泳プラス探検ならアリだけど。

 そう考えると、後は膝丈あたりまで海に浸かって女子達とキャッハウフフしながら水を掛け合ったり、ビーチボールでトスし合うくらいだろう。

 では次に海に入らない遊び、砂浜での遊びについて考えてみよう。

 まぁ定番はビーチバレーやビーチサッカーなんかだろうな。後はスイカ割りとか、夜に花火とか。

 俺はそんなことを考えながら、今挙げた中にはない定番中の定番の遊びに興じていた。箒達はそれを見届けるかの如く、傍らに佇んでいる。

 

 

 

「凄いな。こんな特技も持っているなんて。流石だ」

「まあな。こう見えて俺、芸術家を目指してるし。現代の夢二とは俺の事だ」

「騙されちゃ駄目だよ、ラウラ。そこで竹久夢二の名前が出るあたり、京夜にとって芸術なんて美人と知り合えるチャンスくらいにしか考えてないんだから」

 

 

 

 シャルロット、お前本当にフランス人か? 別に俺は今美人画を描いているわけじゃないんだぞ? 日本について詳し過ぎるだろ。

 俺が現在進行形の遊び、それはもちろん砂遊びだ。だが過小評価しないで頂きたい。そんじょそこらのレベルじゃないぞ、俺の砂遊びは。こうゆうのが得意なキャラは結構いるが、俺はその中でも圧倒的だと、群を抜いていると断言出来る。

 定番のシンデレラ城はもちろん、スフィンクスや万里の長城など数々の世界遺産だけでなく、ルーブル美術館にあるような彫刻の数々さえも俺には全て砂で完全再現出来るのだ。

 今作成してるのは『ミロのビーナス』だが、他にも幾つか作成してこの場所をさっぽろ雪まつりのように、あるいは東武ワールドスクエアのようにしてやろうかなんて思っている。もちろん思うだけだ。これ以上は遊びといえど、流石に面倒い。

 なら何でそんな面倒くさい遊びをしているのかって? そりゃ可能ならパラソル下で昼寝とかしてたかったさ。だがまぁ当然その許可が下りない。なのでこの砂遊びは海に入れない俺が出来る遊びの中でビーチバレーとかの肉体労働系を回避した結果という訳だ。

 

 

 

「それよりさ。やっぱ水着回だし、もっとエロスな要素が必要だと思う訳よ、箒、セシリア」

「京夜さん、おっしゃっている意味が……」

「だから2人でちょっとその辺りで水遊びしてきてくれよ。おもいっきり。主に上下運動多めで」

「何だ? 上下運動多めって……」

「バッカだなぁ。上下運動によって、その豊満な胸が淫らに揺れて俺を刺激してくれるんじゃないか!! そしてさらにハプニングを誘発し、ポロリがあるかも―――ブッ!?」

 

 

 

 ズシュァーーー

 

 

 

 俺 in ミロのビーナス。

 これだけ聞けばとてもエロティックかもしれない。俺のマイサンがミロの中に包まれて、2人の男女は結ばれたみたいな。

 だがもちろん違う。箒とセシリアの2人が『瞬間、心重ねて』、作業中の俺の背中にツインキックを放った。それにより俺は目の前の砂で出来たミロのビーナスへ頭から突っ込んだ、ということだ。

 衝撃で崩れ去る俺の芸術。無駄になる俺の時間。

 

 

 

「ブァハァ!! はぁはぁ……。あ~あ、もう少しで完成だったのに……それに砂まみれになっちまったじゃねぇか」

 

 

 

 砂山から頭を抜いて立ち上がり、バサバサと髪の毛に交じった砂を払いながら、パンパンと服に付いた砂を払いながら、振り返る。

 

 

 

「もう!! 京夜さん!! いつもいつも発言が過激過ぎますわ!! もっと紳士としての振る舞いを―――」

「その通りだ!! お前の頭の中はそんなんばっかか!! 破廉恥なことしか頭にないのか!!」

 

 

 

 フッ。分かってない。分かってないぞ、箒、セシリア!!

 今日日の男子高校生の頭の中なんてエッチなことでいっぱいだ。オッパイだ。僕元気だ。街中で制服姿やミニスカートの女子を見かけたら神様に「今すぐ強風を!!」 って脳内の神社にお百度参りするくらいだ! 何時だって興味があるのは女子の布地の向こう側だ!!!

 分からないだろう!? 今2人のその、胸を両手で隠すような恥じらいポーズにどれだけ興奮しているかなんて! 

 分からないなら語ってやろう。覚悟しろ。もう俺は止まらないぜ!!

 俺は腰に手を当て、肩幅程に足を広げて仁王立つ。

 

 

 

「何を言っているんだ2人共。男なんてそんなもんだぞ? さらに言えば、俺は自覚症状アリの生粋の変人。常に俺は多重並列思考でおっぱいやパンツについて思考を巡らせて、様々なエロスシチュエーションに対応するべく脳内で疑似体験して備えている。そんな俺の変態度は世の中の変態達を一瞬で置き去りにする程と言っても過言では――――」

「(京夜! リンリンが―――)」

「(!!)」

 

 

 

 突然のティーナの言葉に、止まらないはずだった俺の言葉にピリオドが放たれ、俺は走り出す。

 そんな唐突な行動に、若干引き気味の表情だった箒達は驚きの表情へと変えるも、俺の足は止まらず彼女達を置き去りに海へと向かう。

 入らないつもりでいた海。出来得ることなら入りたくなかった。だがそうも言ってられない。ピンチの時は絶対に駆けつけるって約束したから。たとえどうなろうとも。

 俺は上着を脱ぎ捨て、海へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その場のノリで始めた一夏との競争。あたしはブイを折り返して浜へと戻るトコだった。

 パフェを賭けたこの勝負は敗色濃厚。フライングなんてハンデは最初からなかったみたいに、一夏はあたしの数メートル前を泳いでる。

 正直甘く見てた。暑さで冷静さを失ってたワケじゃないけど、それでも体力には自信があった。代表候補生になるべく、そしてなってからもそれなりの訓練をしていたから。たとえ男の一夏相手でも、互角に競えるくらいだろうって。だからハンデさえあれば負けないだろうって。

 でも現実はコレ。今も必至で泳いでいるけど、一夏との距離は徐々に開いていくばかり。納得出来ない。

 もちろん理解出来ないわけじゃない。毎日毎日あれだけの訓練してるんだし。

 けど悔しい! このままじゃ終われない! 奢るのもヤダけど、ここで負けて一夏のドヤ顔なんて見たくない!

 よし! と気合を入れ直し、少しでも一夏との距離を詰めようとさらに泳ぎのペースを上げたその時。足に痛烈な痛みが走る。

 ヤバ!? 足攣った!? 

 浜まではまだ少し距離があってこの深さじゃ足が着かないし、それにこの足がとても泳ぎ切れそうにない。

 

 

 

「い、いち、ご、ごぼぼっ!!」

 

 

 

 近くにいる一夏に助けを求めようにも水が口の中に入って声を出せず、攣った足では立ち泳ぎもままならず、水の中へと沈んでいく。

 パニックに陥り、水の中で自分がどこを向いているかも分からず、もがく。だけどそれでも海面へと浮上出来ない。

 ついには呼吸が持たず、口を開いてしまった。海水が体の中に一気に流れ込む。

 そうして空気を失った体は沈みゆく。どうにも出来ない。徐々に失われていく意識。目の前は暗くなる。もしかしたら目を閉じてしまったのかもしれないけど、もう自分では分からない。

 そんなあたしには出来たのは、助けを求めることだけだった。

 必死に心の中で。聞こえるはずのない心の声で。いつでも助けに来てくれるって約束してくれた大好きなあの幼馴染に。

 

 

 

 京夜――――

 

 

 

 そう思うより早く、誰かがあたしの右手首と後頭部に触れたような気がした。意識が朦朧としてるからそんな気がしただけかもしれない。反応も出来なかった。

 だけど次の瞬間―――ううん、瞬くより早く、あたしは気付く。ちょっとだけだけど息苦しさが楽になったことに。それってつまりは空気があたしの肺に送り込まれたってこと。

 視界は再び光を取り戻す。

 

 

 

 その視界に映ったのは―――京夜の顔だけだった。

 

 

 

 あたし達の距離。それは額と額が触れ合う程の距離。鼻と鼻が触れ合う程の距離。そして―――

 

 

 

 そして―――口唇と口唇が触れ合っている距離だった。

 

 

 

 見た瞬間は、夢かと思った。実は死んじゃってて、ここは天国なのかとも思った。

 でも、あたしの体を掴む京夜の手の感触と、柔らかい口唇の感触。

 そして何よりも、その触れ合う口唇から入ってきた空気と、絶対あたしを助けるという強い思いがあたしの体を満たし、現実を、生きてることを実感させてくれた。

 あたしは返すように空いている左手で京夜の肩に触れる。あたしの意識が戻ったことに気付いた京夜は口唇を離してこちらを見る。

 ―――もう大丈夫だ。安心しろ。

 水の中だから言葉には出来ないけど、そんな思いが込められた笑顔を向けてくれた。

 あたしは小さく頷き、京夜の腕を抱きしめる。すると京夜は力強い泳ぎで海面へと浮上した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴! 大丈夫か!?」

「ごほっ! けほっ! だ、大丈夫……」

 

 

 

 浜からそれなりの距離で、かなりの深さまで沈んでいた鈴を海面へと引き上げて様子を伺う。

 呼吸困難からの復帰による嗚咽が酷いものの、質疑応答はしっかりしており、意識がはっきりしている。これなら問題なさそうだ。

 それにしても、良かった。いつも以上に監視網を広げていたことが発覚までの時間の短縮となり、それが功を奏したようだ。

 とはいえ―――

 

 

 

「すまなかった。もっと俺が注意しておけば良かった」

「はぁはぁ……。……き、気にし過ぎよ……っ、あ、あたしが勝手に溺れたんだし……っ、そ、それより……」

「?」

 

 

 

 先程まで青白かった鈴の顔に赤みが差す。その変化は元気を取り戻しているというのであればそれは安堵なのだが、どうやらそれが主な理由ではないらしい。何やら視線も表情も動きも態度も落ち着かない。溺れたことが恥ずかしいから誰にも言うな、とかそーゆー話だろうか。

 だが、そんな挙動不審気味な鈴の、ある一つの仕草で合点がいった。鈴はしきりに指で自分の口唇に触れていたからだ。

 

 

 

「ああ、悪いな。緊急事態だったからさ」

「!! ……べ、別に、あ、あたしを助ける為にしてくれたんだし……」

 

 

 

 正解のようだな。やはり先程の施した人工呼吸のことのようだ。

 俺が沈む鈴のそばへ到着した時。正直鈴の意識に混濁の様子が見て取れた。既に結構な深度まで達しており、これでは鈴を抱えて海面へ浮上するまで彼女の体内の酸素が持たないかもしれない。低酸素脳症を引き起こす可能性すらあった。

 もちろんこれはかなり悲観的した見方ではあることは自覚していたが、その時の俺には楽観的な行動など出来なかった。

 そこで酸素ボンベなどを持ち合わせていなかった俺は自らの体内の酸素を送り込んだのだ。

 水中での人口呼吸。マウスツーマウス法。それはつまり花も恥じらう女子高生の気にする所というわけだ。

 まぁ恥ずかしそうにはしているものの、嫌悪が伺える表情ってわけではない。もし目の前でゴシゴシと腕で口唇を拭かれたら、溢れ出る俺の涙で海水塩分濃度が1%以上は上がっていただろうな。

 

 

 

「ともかく、砂浜に戻ろう。少し横になって安静にした方が―――」

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 

 

 何を? ここに用はないだろ? それに小柄とはいえ鈴を抱えながらの立ち泳ぎって結構疲れるんだが。まぁこの程度で力尽きて2人して溺れることはないけど。

 引き留めた鈴は俺の腕を掴んだまま、今世紀最大の狼狽振りを見せる。

 

 

 

「そ、その、さっきのは、ちゃ、ちゃんとしてなかったっていうかさ、えっと、そ、その、あ、あたし、そーゆーこと、は、初めてで、それがなんていうか、こんな事故みたいのじゃない方がいいっていうか、そ、その、きょ、京夜がしたんだから、それは、ちゃ、ちゃんと責任をとるべきっていう――――!?」

 

 

 

 その止まらなくなりそうな鈴の支離滅裂な発言に隠された思いを、感じ取った俺は止めた。物理的に。

 より正確な描写で語るなら、語られる鈴の口唇を俺の口唇で塞いだ。

 突然の俺の行動に、鈴は体を一瞬強張らせるも、受け入れるかのように力が抜けていく。

 

 

 

 それはもちろん人口呼吸ではなく……口唇と口唇の触れ合い。

 

 

 

 きっと、これが鈴の望んだ形。それは確信も確証も持てないけれど、きっと。

 ものの数秒のやりとり。しばらくは放心気味な表情を浮かべるも、鈴は掴む俺の腕に顔を埋める。

 

 

 

「戻るぞ。背中に乗れ。その足じゃ浜まで泳げないだろ?」

「……うん……。……あ、ありがと……」

 

 

 

 その感謝の言葉は、決して溺れている所を助けられたからという行為に対してだけの言葉ではない。それは間違いないと思えた。

 鈴は視線を上げることなく俯いたまま俺の背中へと回った為、表情からそれは分からなかったが、俺の首に回された鈴の腕からは、色々な思いが伝わって来たから。

 俺はそれを喜ばしく思いながら、何かが俺の心を満たすのを感じながら、背中に乗る鈴が再び溺れないよう気を付けながら砂浜へと泳ぎ始めた。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。

※ブログは少しだけ先まで掲載されています。


【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/

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