インフィニット・ストラトス a Inside Story 作:鴉夜
また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)
「あ! お~い、京夜~」
「どこ行ってたのよ! 探したじゃない!!」
「……」
海の家擬きで購入した数本のペットボトルが入ったビニール袋を手に、死屍累々状態の美少女達(もちろん箒とセシリア)の横たわるパラソルの下へと戻ってきた俺。
そして向こうから歩み寄ってきたのは3人の女子。多分。
分かり易く言えば、2人+1。
より正確に言えば、シャルロット&鈴―――feat.ミイラ。ミリオンヒットは微妙に無理そうなネーミングだが、そこはどうでもいい。問題はミイラ。
そう表現せざるを得ない。2人の横に立っているのは頭から足まで全身バスタオルで覆われたオバケだからだ。炎天下で見るオバケって結構シュール。当然そこに肝試しの納涼はない。あるのは周りの冷ややかな視線。若干憐みの。
状況証拠や消去法からこの痛々しい子が誰かは分かるけど、とりあえず放置プレイを敢行しとこう。そうしよう。
その異形に奪われていた目を2人へと向ける。するとシャルロットがモジモジしながらも口を開く。
「ど、どうかな?」
「ん? 何がだ?」
「え、えっと、その、水着……」
「別に。特に。何とも」
もちろんそんな訳はない。ピクリとキョウちゃんのキョウちゃんが反応してしまう程に、胸元を強調するデザインの水着を身に纏ったシャルロットは魅力的だった。
だが、俺は素直に褒めない。それでは面白くないからな。
俺のにべない返事にシャルロットは色を失うも、流石の察し女子。紫電一閃、悪ふざけに気付き、切り返しを放ってくる。
「もぉー、そこはちゃんと褒めて欲しいよぉ?」
「前屈みになるな。上目使いするな。口を尖らせるな。あざと過ぎるわ」
「でも好きでしょ? こーゆーの」
「好物だ。もちろん強調されたその胸元も大好物だ。3度の飯よりシャルロットの谷間だ」
「ふぇっ!? さ、流石にそれは……直球過ぎて、は、恥ずかしいよ……」
「何を言う!! 『ちっぱい』全日本代表の鈴をまるであざけ笑うかのようなその2つのお山が俺は―――」
「誰がぁぁぁ全日本代表だぁぁあーーーーー!!!!!」
「げふうぅ!?」
とても通信教育の賜物レベルではない美しいローリングソバットが顔面へと見舞われ、吹き飛ばされ、放物線を描きながら数メートル飛んでいく俺。
美しい海に、綺麗な砂浜に、汚い虹が掛った―――ガクッ。
「(きょ、京夜さん……大丈夫ですか?)
「(いい気味だわ。ほっときなさい、茜。どーせすぐ復活するし)」
辛辣だな。おい。まぁ復活するけど。オート復活はデフォルトだから。それに大体誰も期待しないでしょ? 砂浜に突っ伏した瀕死の俺の正確な描写なんて。需要と供給のバランスは大事ってお前が言ったんじゃないか、ティーナ。
俺は立ち上がり、砂を払いながら、顔を摩りながら鈴へと近付く。
「いててててっ……ちょっとは加減してくれよ。鈴」
「ふん! 誰が悪いのよ、誰が!」
「そんなに怒るなよ。鈴の水着姿にドキドキし過ぎてちょっと恥ずかしかったからからかっただけさ」
「え!? そ、そうなんだ……っ」
鈴は顔を少し背け、視線を泳がしながらアタフタする。その動きに、華奢な体躯を包み込んでいるオレンジの水着に付いたリボンはゆらゆらと揺れるものの、慎ましい膨らみの乳房は微動だにしない。
子供体型と言っても差し支えないであろうその姿。ロリコン以外、食指が動かないという人がほとんどだろう。
もちろん俺は違うがな!! だが勘違いしないでもらいたい。いつも巨乳というカレーばかり食べてると、たまには貧乳というラーメンが食べたくなるという意味じゃない。俺はカレーラーメンが食べたいのだ!! 良い所取りではない!! 全部漏れなく頂きたいのだ!! 性的な意味で。
俺は脳内彼女達の「この変態!!」という応援を受けながら、ゆでだこ顔の鈴の右頬に触れる。
「本当に可愛いな鈴は。思わず抱きしめたくなる衝動を我慢するのが大変だ」
「……べ、別に我慢しなくても、ア、アンタがしたいなら……」
「こんな所で何をするつもりなのかな~。京夜~? 鈴~?」
「!!? べ、ベツニナニモシマセン。シャルロットサン。ハイ、ゲンキデス。アシタノアサヒハオガミタイデス」
恐怖は行動を制するだけでなく、言語中枢すら支配するらしい。
いつも以上に帰国子女被れのカタコト日本語へとなってしまった俺だけでなく、勝気な鈴ですら顔が若干青ざめ、途切れ途切れの乾いた笑い声を上げることしか出来ないでいた。マジ怖い。『ギャップ萌え』ってあるけれど、『ギャップ恐れ』っていうのもあるんだなと強く実感する。
正直シャルロットが一番怖い。普段から笑顔が絶えないシャルロットはそのまま笑顔でキレる。ハイライトオフで。影を落としながら。
そして全身を恐怖で凍らすのだ。それはもしかしたら彼女がいれば地球温暖化が止められるかもしれないレベル。
なんて冗談言ってる場合じゃない。ここは話を逸らす。全力で。全身全霊で。下手を打てば、まさかのヤンデレルート一直線だ。
「そ、そういえば、ラ、ラウラはどうしたんだ? 一緒じゃなかったのか?」
ハッとし、彼女の眼球に光が戻る。ふぅ。危ない危ない。こんな所でモザイク必死の状況が生まれかねない所だった。もちろん残虐的な意味で。
通常へと戻ったシャルロットは右に立つバスタオルのおばけを指さす。ああ、やっぱりそうなのね。
「ほら、ラウラ。出てきなってば。大丈夫だから」
「だ、だ、大丈夫かどうかは私が決める……」
「何恥ずかしがってんのよ! いいから出てきなさいってば!」
「ま、まて鈴! こ、心の準備というものがだな―――」
鈴は全身に巻かれたバスタオルの引き剥がしに掛かる。頑固として抵抗し、その姿を見せたがらないラウラ。
うむ。これはこれでいいものだな。自信満々で、裸を見られることに躊躇すらしなかった羞恥心皆無気味なラウラの恥じらい。是非とも姿も顔も拝みたい。
では欲情という炎を燃やす太陽の俺は、北風の鈴とは違う方法で丸裸にして見せようぞ。
「なんだ、ラウラ。俺にその姿を見せてはくれないのか?」
「い、いや、嫁よ。まだちょっと覚悟というか―――」
「せっかく俺が似合うと思って選んだのに……俺のこと信じてもらえてないってことなのかなぁ~。それにラウラは夫と嫁の間に隠し事を持つのか~。いいのかなぁ~それで」
「!!! ま、待ってくれ!! ぬ、脱ぐ!! 今すぐ脱ぐから!!」
こうやるのだよ2人共。分かったかね? ってなんだ鈴、その白々しいと言わんばかりの呆れたような顔は。なんだシャルロット、その苦笑いは。
ぱぱぱっと数枚のバスタオルをかなぐり捨て、俺のベストセレクションで着飾ったのラウラが現れた。
あちかこちらにあしらわれたレースが特徴の黒のビキニスタイル。流石俺のチョイス。きっと誰も褒めてくれないから自分で褒める。ナイス俺。
髪型もいつもとは違い左右で一対のアップテールになっており、可愛らしさを際立たせると共に、普段見えない綺麗なうなじは俺を誘うかのよう。
「似合ってる。可愛いぞ、ラウラ。流石は俺の夫だな」
「かかか、可愛い……はうぅ……っ」
ラウラは赤面し、両手の指先を弄びながら狼狽する。その反応に、俺だけでなくシャルロットもまた嬉しそうな笑顔を見せた。
「良かったね、ラウラ! あ、ちなみにラウラの髪は僕がセットしてあげたんだ。せっかくだからオシャレしなきゃって。ちょっと鈴とかぶっちゃったけどね」
「本当よ! なんか私のアイデンティティが侵された気分っ」
「そんなことないだろ。ツインテ美少女が2人揃って可愛さ倍増だ」
並び立つ2人の頭に優しく手を置き、撫でる。顔は当然似ていないが、この2人は体格や背の高さは殆ど同じだ。
まるで双子のよう。将来3人で二子玉川……もとい二子魂川で探偵事務所でも開こうか。大丈夫、イカ焼き作るのは得意だから。
「そ、そう? な、なら別にいいけど……っ」
「か、かわ、可愛い……」
「ははっ、まだ戻って来てないのかラウラは」
「あ、あの~京夜? ぼ、僕のその、な、撫でて欲しいなぁ~」
「手が空いてないから無理」
しょぼーんシャルロット。いいね、その顔。フィギュア化しようぜ。水着姿だし丁度いい。『にいてんご』とかじゃなく、リアルなヤツ。任せろ。マーケティング力には自信がある。爆発的な大ヒット商品にして見せるから。
それで自分のあられもない姿のフィギュアが全世界にネット発売されて売上ランキング上位に君臨していることを知ったシャルロットの顔が今から楽しみでしょうがないわ。
その後、平等主義者の俺はシャルロットへ当然のナデナデフォローをし、3人に箒とセシリアの状況を説明した。鈴とシャルロットは若干引いてた。なぜだろうか。ウィンウィンだと思うのだが。
解せぬ。やはり不条理だな、世界は。
◇
「ほ、箒、大丈夫? はい、お水」
「あ、ああ、シャルロット。ありがとう。もう少し休ませてもらえばなんとか……っ」
「で、ど、どうだったのよ、箒、セシリア? ど、どんな感じ?」
「え、ええ……も、もう、凄かったとしか言えませんわ、鈴さん……」
「そ、そうだな……それ以上はちょっと……は、恥ずかし過ぎて……そ、その……」
「? 先程から良く分からないんだが、どういうことなんだ、嫁よ? あんな歯切れの悪い箒を初めて見るのだが」
「さぁ? 俺はサンオイルを塗っただけだぜ?」
そんな怨めしい顔でこっちを見るなよ2人共。頬を染めながらじゃ別に怖くないぜ?(笑)
箒とセシリア介抱中。2人は体を起こし、買ってきたドリンクを口にしながら一息ついている。水分補給はちゃんとしておけよ? いい汗掻いただろうからな。
何なら俺がその汗を舐めと―――自主規制します。だから電話から手を離して。1・1・に続く3つ目のボタンを押さないで。
ふう。変態には住みにくい世の中になったものだ。まぁいつの時代もそうか。
「やっと見つけたぜ、京夜。ココにいたのかよ~」
振り返ればヤツがいる。まぁ一夏だが。っていうか邪魔するなよ。これから3人にもサンオイル or 日焼け止めを薦めようかと思っていた矢先に。
部屋を出る時と同様でリュックを肩に抱えているが、既に更衣を終えた一夏は股下4分丈程の所謂サーフ型の水着姿だった。上半身には何も羽織ってはおらず、意外にも鍛えられた肉体美を惜し気もなく―――ってこの描写必要か!? 誰得だよコレ!! これこそ需要ないだろ!!
「(駄目よ! ウチは今後幅広く対応していかなきゃいけないんだから!)」
「(そ、そうですよ。こ、こーゆー描写は、ド、ドキドキします……)」
老若男女だけでなく、オタク層から腐女子まで抱え込みってか!? っていうかダメだ! 茜! そっちの海は腐っているぞ!! 帰ってこい!!
一夏はリュックをレジャーシートの上に降ろして手ぶらになると、グッと背を伸ばして準備運動を始める。
「いっちに、さんしーっと。本当に京夜は泳がないのか? せっかくの海水浴なのにもったいないぜ?」
「いいんだよ、俺は。それよりお前はしっかり泳いでくれよ? しっかりと水を浴びて濡れまくってくれ」
「? 言ってる意味がイマイチ良く分からないんだが……」
「既に予告をしてしまっているからな。織斑一夏のビショ濡れ写真集、今夏発売って」
「オイ!?」
「っていうかなんでブーメランパンツじゃないんだよ。写真集のタイトルが『T・M・R』なんだからそこはちゃんとしてもらわないと困る。 印刷所には料金先払いしてるし、ネット予約の件数も既に100件を超えてるだぞ? 発売中止にしたらキャンセル料取られちゃうだろうが」
「印刷から販売までの流通経路が最早個人販売レベルを超えてるだと!? っていうか『T・M・R』って何の略だ!!」
「凸型・もっこり・レボリューション」
「……マジでヤメテくれ。……頼むから」
「心配するな。タイトルに偽りなく、表紙は裸でジャケットとネクタイだ。もちろん風発生装置も用意してある。いつでも白い息の熱唱準備は万全だ」
「本当にヤメテください! お願いします!!」
鉄板のように熱された砂浜の上での綺麗な土下座。焼き土下座。土下座模範生たる俺の日々の土下座を良く見ているようだな、利根川く……いや、西川く……いや、間違えた。一夏君。
するとそんな土下座中の一夏のことをまるで椅子にするかのように鈴が丸まったその背中に腰を下ろした。
「よっと。何やってんのよ一夏は」
「おい! どいてくれ、鈴! これはだな、俺の肖像権の問題というか、このままじゃ俺の『人として』の、『男として』の尊厳が失われて―――」
「何を今更……京夜と関わった以上、もうそんなのありはしないわよ」
「そんな馬鹿な!? まだだ!! まだ手遅れじゃ――」
「それより一夏、競争ね! 向こうのブイにタッチして、先にココへ戻ってきた方が勝ち。負けたら駅前の『@クルーズ』でパフェを奢りだから! ―――よーい、ドン!!」
「ちょぉぉぉぉっと待てぇぇぇぇ!! 最安値1500円(税込)のパフェなんて奢れるか!! ひ、卑怯だぞ、鈴!! 正々堂々勝負しろぉぉぉーーー!!!」
「あはははっ。ハンデよ、ハンデ!! 男としての尊厳を保ちたいならそれくらい受け入れなさい!!」
「それとこれとは話が別だぁぁぁぁぁぁ!!」
けたたましくさえ感じる程の、そんな叫び声を発して一夏は先走って泳ぎ始めた鈴を追いかけて海へ向かっていった。
一夏よ……いいのかそれで。即座に最安値って。尊厳より現金って。流石に引くわ、それ。誰だって。俺じゃないだろ。お前の尊厳を貶めているのは。間違いなく。
ホラ、見ろよ。「昔はあんな奴じゃなかったんだがな……」って遠い目を向ける箒の顔とか、ぽかーんと口を開けたままのセシリアの顔とか、「あ、あははは」って凄い苦笑いしか出来てないシャルロットの顔とか。
ん? ラウラ? ラウラは……って何で「うんうん」と納得顔で頷いてんだお前。ここは引く所だろ。
ってまさか一夏のヤツにそーゆー教育を施されてんじゃないだろうな? 勘弁しろよ。いくら妹だからって無垢さが魅力のラウラをそんな貧乏性の節約魔人に洗脳しないでもらいたい。
織斑家の末妹の将来を心配しながら、俺はブイへと向かう2人の姿を見つめていた。
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