インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)


第46話 俺って大人だなぁ~

 

 

 

 シャルロットの言葉に踵を返し、連れてこられたのは水着売り場だった。

 夏も本番。流石のこの時期に展開された特別売場にはビキニやセパレート、ワンピースタイプなど様々なタイプが各色各種、所狭しと展示されていた。

 これだけ幅広く網羅されているのであれば、マイクロビキニやスリングショット、もしかしたら貝殻水着も存在するかもしれない。やるな、レゾナンス。あなどれん。需要は俺のような高度なエロスを兼ね備えたような奴にしかないだろうけど。

 

 

 

「来週から臨海学校が始まるでしょ? せっかくだから京夜に選んでもらおうかなぁって」

 

 

 

 頬をほんのり染めながらも笑顔で提案するシャルロット。あざといな、やっぱり。どこぞの生徒会長並みだぞソレ。マジやっべーわ。可愛いからいいけど。

 シャルロットの言う通りでIS学園1年生は来週から臨海学校のカリキュラムが組まれている。あくまで学業の一環ではあるので授業というか訓練はあるのだが、どちらかと言えば旅行、いや遠足に近い。なので自由時間が比較的多く、海水浴を楽しむことが出来るそうだ。

 さてこの提案、どうだろうか。美少女に好みの水着を選んで着せるというイベント。ギャルゲーでも結構な好感度が要求されるであろうレアイベントであり、男子諸君は、心はおろか魂まで歓喜に震えることだろう。

 だが、今の俺は違った。

 それは「楽しみは最後に残しておく」的なカンジで、敢えてここでは見ずに砂浜で初めてお披露目されたいという欲望故にではない。

 この状況を心底楽しめない理由。それは言い訳が利かないからだ。誰にだって? そりゃあ学園駅前からずっと尾行してきている初心者探偵達にさ。

 それにシャルロットだけならまだしも――

 

 

 

「ラウラ。水着って持ってるか?」

「ああ。学園指定の水着を持ってきている。我が隊の優秀な副官曰く、私に似合う最強の水着らしいのでな」

 

 

 

 だよな。ってか相変わらずだな、お前の所の副官は。

 IS学園は旧型スクール水着。恐らく胸には平仮名で「らうら」と書かれているのだろう。確かに最強クラスだが、既にそれは先程ティーナでやったばかりだし、クラス中が様々な水着で着飾っている中に1人だけスク水っていうのは……ただでさえ色物なのに、余計際立ってしまうではないか。

 はぁ~。仕方ない。シャルロットだけでなくラウラにも選ぶならそれこそ逃げ道がない。ダブルデートはここまでかな。

 

 

 

「よし! 任せろ! 最高の水着を2人に選んでやるぜ!」

「う、うむ! 任せたぞ! 流石は私の嫁だな。頼りになる」

「あ、ありがとう、京夜。で、でも、お願いした僕が言うのは何だけど……そんなにやる気満々だと、ちょっと恥ずかしいよ……」

 

 

 

 やらないと決めたら全力でやる気を出さない『面倒くさがりの神』を豪語する俺だが、やるからには全力で楽しむのがモットーなんでな。たとえ引かれても俺は気にしないぜ! 

 俺はラウラと若干引き気味のシャルロットをその場に残し、売り場を駆け巡りながら水着を選別していく。身長や体型を考慮し、且つ他の人と被ることのないよう、それでいて奇抜になり過ぎないような最高の水着を探し求める。

 

 

 

「(京夜さん、熱いです。無駄に熱いです)」

「(茜、それはいつものことでしょ? 京夜は省エネから1番遠い所にいる変人なんだから。だが、お前のその熱さ、嫌いじゃないぜ?)」

 

 

 

 ニヤリ笑顔で何をカッコいいことを言ってるんだティーナ。無駄にカッコいいわ。

 それから数分、いや数十分を掛けて俺は厳選に厳選を重ねた水着を()()()持って2人の所へと戻った。そしてその内の2つをそれぞれに渡す。

 

 

 

「まずシャルロットはこれだ」

 

 

 

 渡した水着、それはセパレートとワンピースの中間的なヤツで、上下に分かれているそれを背中でクロスして繋げる構造になっている。色は夏を意識した鮮やかなイエローで、正面のデザインは胸元を強調するように出来ており至極の品と言えるだろう。

 

 

 

「け、結構大胆な水着だね……特にその……」

「ん? 胸元か? もったいぶるなよ、シャルロット。同世代では大きい方なんだからその谷間を見せつけてやれ」

「京夜は……その……僕の胸……見たいの?」

「ああ、見たい! 見たいぞ!! 今すぐにでも――ぐへぇ!?」

「きょ、京夜のエッチ!!」

 

 

 

 俺のノータイムの返答に負けずとも劣らずな速さで俺の頬へと繰り出された右ストレート。せ、世界を狙えるぜぇ、その右。普通そんなに頬を火照らせた破顔で放たれるパンチではないけどな。

 俺は生まれたての子鹿並みに震える足を奮い立たせる。

 

 

 

「つ、次にラウラはこれだ。レースをふんだんにあしらった黒のビキニ。一見すると大人の下着(セクシー・ランジェリー)にも見えるこの水着が、ラウラのその未成熟な肢体に纏われることによって、絶妙なアンバランスさを生み出し、ラウラの魅力をより高めてくれること間違いなし!」

「そ、そうか。……。な、なぁ嫁よ。私がこの水着を着たら、そ、その……興奮……したりするのか?」

「もちろんだ! そんな可愛いラウラを見たら興奮し過ぎて胸のドキドキが止まらないな。寧ろドキがムネムネするまである」

「か、可愛い……」

 

 

 

 乙女回路はショート寸前、いや既にショートしたのだろうラウラは顔を真っ赤に染め上げて頭から湯気がシュ~っと吹き出ている。ウチの旦那、可愛過ぎるやろーー!!

 その後、2人は俺の選んだ水着を持って試着室へと入ってもらった。サイズの方は間違いないはずだけど、一応確認してもらった方がいいしな。

 

 

 

「(なんで2人の正確なサイズを知ってるんですか、京夜さんは……)」

「(フッ、俺の持っている特技の一つ、『スリーサイズスカウター』をもってすれば造作もないことよ)」

「(そろそろ京夜には最適化が必要かもね。無駄スキルが多すぎるわ)」

 

 

 

 人をフリーズ多めの中古パソコンみたいに言うな。こう見えて俺は変人であることを除けば基本高スペックなんだぞ!? 目は腐ってないし、友達だって多いし。ちなみに俺の友達には『赤いドラゴンの宿主』も『やたらイケメンボイスの中2病患者』もいない。

 さて、じゃあそろそろ行きますかね。

 俺は気配を殺し、身を低くしてその場を移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ! 見失った!」

「どうやら潜伏モードを展開しているようですわね。位置が特定出来ませんわ」

「きっとまだ近くにいるはずよ!」

 

 

 

 女3人寄れば姦しいとはよく言ったものだ。俺は身を潜めながら目の前にいる3人の様子を伺っていた。

 誰かは言わずもがな。読者への挑戦を挟まなかった俺としては答え合わせをする必要性はないと感じているが、何事も一応やっておけば損はないだろうからお伝えすることとしよう。

 その3人とは、学園を出てからずっと尾行してきているIS少女探偵団の箒、セシリア、鈴だ。恐らく今回のデートは俺から誘ったので気になったのだろう。

 ちなみにこんな場面で説明する話でもないが、セシリアの言っていた潜伏モードについてちょっとだけ。

 ISは特殊なネットワークを通じて互いの位置を把握することが出来る。

 このネットワークについては後に詳しく説明するので省かせてもらうが、互いの許可登録があれば相手の位置座標を正確に把握することが出来るのだ。もちろん俺の場合、一方的に許可を要求されて登録されたことはご想像通りだが、そのネットワークからの位置特定を避ける場合に使用するのがこの潜伏モードってわけだ。

 さて、いつまでも隠れている訳にもいかない。別に真犯人ではないけれど、名乗り出ることにしましょうか。

 

 

 

「追うぞ! セシリアは東側を! 鈴は西側を探索してくれ! 私は北側へ向かう!」

「ええ!」

「わかったわ!」

「じゃあ俺は南側を担当すればいいか?」

「「「!!??」」」

 

 

 

 背後からの俺の声にビクッと全身を震わせ、3人は恐る恐る振り返る。いいね、その顔! ゾクゾクするわ。俺の性癖を刺激するなんて流石だな。

 

 

 

「き、奇遇だな、京夜。こんな所で会うなんて」

「そ、そうですわね。い、いらしてたんですか」

「あ、あたし達は3人でちょっと買い物に来てて――」

 

 

 

 えー、誤魔化すつもりなん? どんだけ俺はちょろいと思われているんだろうか。俺の前に立つ3人は揃って激しく目を泳がせていた。寧ろ泳がせ過ぎて溺れてるぞ、策に。ホント嘘が下手だな。俺とは大違いだ。

 

 

 

「ここでいきなりのキョウちゃんクイズ~!! 俺はいつから3人の尾行に気付いていたでしょうか?―― 

 『① 水着売り場についてから』

 『② 洋服選びの最中』

 『③ 最寄駅に着いた時』―――」

 

 

 

 何そのバレてる!? みたいな顔は。そりゃそうだろ。だって俺だよ? 俺だぜ俺。オレオレ詐欺みたいになってるけど、結構俺は一夏とは違って気付くタイプよ?

 

 

 

「……①だ」

「……②ですわ」

「……③よ」

 

 

 

 少しバツの悪そうな顔の3人は綺麗に分かれた答えを告げる。甘いな!

 いつから3択だと錯覚していた?

 

 

 

「残念!! 正解は『④ 昨日の夜に3人でコソコソと尾行の相談をしていたことを知っていた』でした~」

「「「……」」」

「い、痛い!! 無言で脛を蹴るのはヤメテ!?」

 

 

 

 あの立ち往生の弁慶ですら耐えられないと言われている脛への攻撃に俺が耐えられるはずもない。俺はマゾではないのでそんな仕打ちで俺の息子が立ち往生したりもしない。っていうか石抱きもそうだけど、もっと俺の脛に優しさをください。

 

 

 

「さて……随分と無粋なんじゃないか? 3人共」

 

 

 

 痛みに耐えながらの俺の言葉に、ハイライト消え気味だった3人の瞳に光が戻り、再び視線が泳ぎ始める。流石に自分達の行動に、多少なりとも後ろめたさがあるということだ。やれやれ。

 はたして3人の内、誰が俺を納得させられる、言い負かすだけの理由を語れるのだろうか。楽しみだ。言い訳を言わしたら右に立つ所か左にも前後にも立つ者などいないわ! だからって別にぼっちなわけじゃないからな! 勘違いするなよ!?

 

 

 

「デ、デートなんて、ズルいじゃない!」

「鈴ともデートしたじゃないか。一夏と3人で。今日も別に2人きりじゃないし、条件はさほど変わらないんじゃないか?」

「ぐぬぬ……」

 

 

 

 1勝。まだまだだな、鈴。っていうか「ぐぬぬ……」って言う奴、本当に居るんだな。

 

 

 

「い、一日中京夜さんと一緒だなんて、ズルいですわ!」

「最近の平日の放課後は殆どセシリアの特訓に付きっきりで、累計したらセシリアの方が長いんじゃないか?」

「ぐぬぬ……」

 

 

 

 2勝目~。楽勝だな、セシリア。2つ目の「ぐぬぬ……」頂きました! それにしても完膚なきまでに叩き潰すって言うのは中々満たされるものがあるな。鈴とセシリアの、返せる言葉なく悔しそうにしているその顔は正直かなりそそられる。

 

 

 

「う、腕を組んで街中を歩くなど、ズルいだろう!?」

「この間の箒の誕生日の時は手を繋いでただろうが。それに……それ以上の事もあっただろう?」

「そ、それは……はうう」

 

 

 

 完勝。はっはっはっ! 圧倒的ではないか、我が軍は! その箒の真っ赤な照れ顔は完勝記念としてもらっておくことにしよう。

 今日の成果報酬。「ぐぬぬ……」が2つと「はうう」が1つ。まぁ俺のサディズムを満たすには若干足りないが、残りは茜をイジリ倒して満足することとしよう。

 だがそこに危惧していた横やりのような理不尽な攻撃がやってくる。

 

 

 

「み、水着を買いに来るのはズルいわよ!! あたしだって京夜と一緒に来るつもりだったんだから!!」

「! そ、そうですわ! 私も京夜さんをお誘いするつもりでしたのに!!」

「! そうだ! 当然の権利を主張する!!」

「あーー」

 

 

 

 そうくるよね。だよね。何が当然の権利なんだかは知らんけど。

 この展開。まるでオセロの盤面が全て俺色に染まったかのような完勝に、「イカサマよ!」と難癖付けて恰も俺に非があるかのような流れ。

 だから微妙だったんだよなぁ~。それに対して反論出来なくなる完璧な返しがないからさ。なので後でそれにツッコまれて拷問へと発展するならと、ダブルデートを諦めてこうして名乗り出たってわけなんだが。

 

 

 

「はぁ~。そう言うと思ってた。だから、ホレ――」

「ん?」

「えっ?」

「これって――」

 

 

 

 俺は手に持っていた残りの3着の水着をそれぞれに渡す。

 箒には縁に黒いラインの入った白いビキニ。かなり肌の露出面積多めで、特に下はローライズ(2次元的にはローレグか?)でかなりセクシーな印象を与えることだろう。

 セシリアにもビキニをチョイス。その瞳と同じく鮮やかなブルー。スタイル抜群の彼女にはその魅力を際立たせる為に敢えて飾り気はあまりないシンプルなタイプにした。セットのパレオを腰に巻けば、優雅さプラスの付帯効果が期待出来る。

 ちっぱいな鈴はスポーティなタンキニ。オレンジ基調のヘソだしタイプ。本来ならその平らな胸を隠すように胸元にフリルをあしらったもののを選ぶのかもしれないが、巨乳だけでなく『ないちち』も愛する俺としてはもちろんそれを隠すような水着は選んでいない。腰の長めの黒いリボンが可愛らしさを演出している。

 

 

 

「もちろん3人にも選んでおいたに決まってるだろ? 俺を誰だと思ってるんだ?」

 

 

 

 俺の言葉に、手渡された3人は揃ってポッと顔を染め上げるも俺のニヤリ顔が気に入らなかったのか――

 

 

 

「そうね。京夜、変人だし」

「そうですわね。京夜さんは面倒なことはお嫌いですのに、こういうことには本当に積極的ですもの」

「ああ。存在自体が破廉恥だからな、京夜は」

 

 

 

 ――だとさ。何でそこまで言われないといけないのだろうか。けどまぁ、いいか。3人共喜色満面なので良しとしておくことにしよう。俺って大人だなぁ~。

 

 

 

「もぉ~京夜~? せっかく試着した姿を見てもらおうと思ってたのに~こんな所で何して――え!!??」

「「「!?」」」

 

 

 

 真後ろからの声に、俺は振り返る。そこにはシャルロットとラウラ。

 あ~あ、見つかっちゃった。振り返った俺には前に立つ3人の顔が見えないが、恐らく相当決まりの悪い顔をしていることだろう。

 仕方ない。フォローへと回りますか。彼女らの間で不協和音を奏でて欲しくないしな。板挟みになって面倒になりそうという未来予知故の事前回避行動であることは否定しないが。

 

 

 

「ああ、悪い。いや、たまたま箒達と会ってさ。今日は3人で買い物に来てるんだと」

「……へ~。たまたま、ね」

 

 

 

 ジトーッと物言いたげな疑いの目を向けるシャルロット。

 ラウラはというと『謎が解けた!』的な顔つき。流石に軍人。周囲に対する警戒は怠っていないな。その尾行の稚拙さからの実力の程を判断したからこそ放置していたのだろう。

 まぁそれはおいといて。疑わしきは罰せず。そうだろ? 偽りの元・男性操縦者くん。

 

 

 

「まぁIS学園の最寄で1番栄えているのはココだからな。こんな偶然もあるだろ。もしかしたら他にもクラスメイトとかいるかもしれ―――アレ?」

 

 

 

 嘘から出た真というべきか。目を疑うべきなのか。俺はシャルロットとラウラの向こう側に現れた人物に目が止まる。

 俺の目に映った人物。それは俺のお笑いコンビの相方。「IS学園の生徒は俺の嫁」と公式発表目前のイケメン。ドM疑惑のキング・オブ・シスコン。そう、織斑一夏の姿だった。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。


【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/

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