インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)


この話には、サブストーリーを書きました! 
外伝的な話ではなく、ヒロイン視点です。別に読まなくても繋がりが分からなくなるわけではありません。


ちょっとでも気になる読者様がいらっしゃいましたら、ブログの方で掲載していますので、良かったら見てください!
(URLは後書きに記載しています。ブログ内の第45話③の本文の「プレゼント」をクリックすると閲覧出来ます)


第45話 俺は祝ってやりたかったのだ

 

 

 

 ベタというのは大事だ。っていきなり何の話だって思うかもしれないが、唐突にそれを語りたくなった。もちろん今伝えたい「ベタ」とは漫画の原稿の黒く塗り潰された部分のことでもタイのメコン川流域原産の闘魚のことでもない。「ありきたり」なことを指している。

 その中で今俺が熱く語りたいのはベタなイベントやハプニング、シチュエーションについてだ。たとえば毎朝隣に住む美少女幼馴染が部屋まで来て起こしてくれるイベントとか、通学中の曲がり角で美少女転校生に衝突してパンツ見ちゃうようなハプニングであったりだ。ちなみに「美少女」という単語が常に付きまとうのはデフォルトであり、そして暗黙の了解なのでそこには触れないでもらいたい。

 さてさて。

 そこで俺が何を言いたいかといえば、どれだけ新しいモノや意外性のあることがこの世の中に生み出されていても、結果一番効果があるのは「ベタ」なものであるということだ。だからこそそれは「ありきたり」であり、長く語り継がれているということなのだ。

 ということで最後の約束消化予定日である今日、それを含めて色々と検証しようかと思う。いってみよう。やってみよう。

 

 

 

「(さて、始まりました『ベタシチュ検証バラエティ・やはり俺の嫁は二次元だけか!? TV』~♪ メインMCを務めさせて頂きますキョウちゃんです。ハイよろしく~)」

「(ア、アシスタントの茜ですぅ)」

「(……)」

「(コラ、ティーナ! お前も自己紹介するする!)」

「(……ティーナよ)」

「(おいコラ、ティーナ。ノリが悪すぎるぞ? どうしたんだ?)」

「(……何なのよ……何なのよ!! 茜と私の衣装のセレクトは!?)」

「(何って……水着じゃないか。よくお色気担当で番組アシスタントがバニーガールだったりするだろ? アレだよ)」

「(何で茜がビキニで、私がスクール水着なのよ!!)」

 

 

 

 もちろんティーナの現在着用しているスクール水着は水抜き穴有りの旧スクで、胸元には平仮名「てぃーな」と書かれている。当然その文字は読みやすい(笑)。

 

 

 

「(わかってるくせに~。ここで早くも1つ、この世のベタが証明されたな)」

「(ガァァァァー!! コロスコロスコロス!!)」

「(テ、ティーナ先輩!! お、落ち着いてくださいぃぃ~)」

「(いいぞ茜! そのまま押さえてろ! 今この猫耳と紺白ボーダーのニーソを装備させるから!!)」

「(それはもうベタ検証じゃないじゃない!! ただの京夜の趣味でしょ!? 属性盛り過ぎでしょうがぁぁぁぁ!!!)」

 

 

 

 失礼なちっぱいアシスタントだな。俺の趣味だったらまだまだこんなもんじゃないぞ? 少なくともあと「セーラー服」と「メガネ」の属性付与はするね。間違いなく。そこは敢えて選別はしない。特盛り・おかわり・消化不良は恐れない。それが俺のジャスティス。

 さて。脳内彼女達とのいつも通りの戯れはこの辺にして番組を進めましょう。まぁ約束のデートがメインなんだけどさ。

 そんな俺は休日なのにIS学園の制服に身を包み駅前にいる。

 IS学園は人工島の上に建てられている。教育機関ではあるが軍事施設と言っても過言でない為、本土から少しばかり離れた沖合に5年程前に建設された。また日本の領海に100%日本国政府出資で設立されてはいるが、日本国に属しているという訳ではなく、IS委員会管理の元、治外法権に近い形で存在している。そんな学園と本土を繋ぐのは専用道路とその上を走る専用モノレールのみとなっている。

 俺はそんなIS学園側の最寄駅「IS学園前駅」の改札口目の前の、円形花壇の前に立って今日の約束相手を待っていた。

 

 

 

「京夜~!!」

 

 

 

 するとIS学園の方から小走りで駆けてくる約束相手の2人の制服姿の女子。共に目を引く美少女だが、その走る姿から受ける印象は全く違う。

 手を上げ、長めの金髪をなびかせながら笑顔でこちらへと近づいてくるのはシャルロット・デュノア。そしてまるで訓練でもしているかのように綺麗なフォームでその隣を走るのはラウラ・ボーデヴィッヒだ。

 

 

 

「ハァハァ、待った?」

 

 

 

 膝に手を当て、乱れた呼吸を整えながら上目使いで話しかけるシャルロット。

 聡明な皆様方にはお分かり頂けたであろう。なぜベタについて検証するなんて遊びがしたくなったのかを。

 それはシャルロットの存在だ。コイツはあざとい。悪く言えばだが。

 良く言えば、シャルロットは頭の回転が速いタイプだということだ。客観性に優れ、『察する力』が強く、その上男になりすます為の訓練の副産物なのか、男心に対する理解度が高い。

 だから試しに俺は「外での待ち合わせ」を提案した。そうすればシャルロットは「小走りで駆けてきて上目使いで「待った?」」という「ベタ」を使って俺の胸キュンを狙ってくるのではなかろうかと読んだのだが、案の定だったな。もちろん「俺がそれを望んでいるのでは?」と彼女が読んだ可能性も否定出来ないが。

 ではこのベタ、どうだろうか? シャルロットのその姿を直接見ることが出来ない皆様方は、その豊かな妄想力で映像を脳内展開して頂いての評価となることを心苦しく思っておりますが、きっとサムズアップして頂けていると私、確信しております(笑)

 では「ベタ」に対する返しの「ベタ」をいってみよう。

 

 

 

「イヤ、今来たトコだ」

 

 

 

 笑顔で返した俺の言葉に、シャルロットは頬を少し赤らめつつも満足げな笑みを見せる。やはり女子にも「ベタ」は有効で効果的なようだ。

 そんなシャルロットの様子を、息を切らすことなく毅然と隣に立つラウラは少しばかりキョトンとした顔で見つめていたが、その視線をこちらへと向ける。

 

 

 

「嫁よ。同じ場所に住んでいて、なぜわざわざ待ち合わせなのだ?」

 

 

 

 誰もが知る「ベタ」だが、流石にラウラは知らないか。コイツは世間知らずだからな。悪く言えばだが。

 良く言えば、純真無垢ということだ。素直で、常識や世俗といったモノに汚されていない無地。だが無知という訳ではなく、正しく現実というものを知っていて、自身の中にある汚水や泥を理解している。この無垢さは、それでも尚そうであり続けることの出来る強さを持っているということなのだろう。

 良い意味でも悪い意味でもシャルロットとラウラは正反対と言えるのではないだろうか。そして間違いなく言えるのは、互いの存在は良い刺激になるだろうということだ。

 

 

 

「いいか、ラウラ。この待ち合わせも含め、今の『待った?⇒ 今来たトコ』という一連のやりとりは近々ほぼ間違いなく道徳の教科書に載るであろう『男女交際の礼儀作法』のその①だ! 今後全世界で誰もが避けて通ることに出来ない程に浸透する重要通過儀礼的事項と言えるだろう!」

「な、何!? そ、そうなのか?」

「う、うんうん!! 大切だよ!! 絶対!!」

 

 

 

 俺の意見に対して若干悪乗り気味にシャルロットは同意する。そんな追撃にラウラは素直に「なるほどな」と関心顔を見せた。

 まぁこれは半分くらい本当だったりするのだがな。女尊男卑の風潮の影響からか、女性側の結婚相手に求める条件が厳しくなり、男女共に未婚率が上昇傾向にある。それに比例して出生率が徐々に低下しつつあり、それに対して少なからず危機感を覚えた各国は下げ止めを図るべくそういった教育を幼い頃から施すべきではと考えているとかいないとか。

 まぁそれはおいといて……

 

 

 

「今日は3人だが初めてのデートだ。俺の旦那なんだろ? 色々レクチャーするから、しっかりついてこい。」

「! うむ! わかった!!」

 

 

 

 固い決意を良い笑顔と共に見せたラウラは、ポケットからボールペンとメモ帳を取り出しメモする。本当に素直で真面目な可愛い奴だ。

 俺はそんなラウラに惹かれてその頭を優しく撫でる。ラウラも俺の手を受け入れ、先程より柔らかい穏やかな笑みを見せた。

 その横に立つシャルロットはというと、羨ましそうな視線をラウラへと向けていたかと思えば、おねだりするかのような目をこちらへと向ける。懐かしの某金融会社のチワワのような瞳だ。あざとさ全開だな。

 俺はそんなシャルロットの願いを叶えて……やったりはしない。お前が輝くのはそんなあざとさではないからな。俺は敢えて無視を決め込んでラウラを撫でつつシャルロットを観察する。

 察し力高めのシャルロットは気付いたのだろう。がびーんっという効果音が鳴り響きそうな顔を見せ、若干涙目になる。

 そう! それだよ、シャルロット!! 茜に次いでお前は虐めらてこそ輝きを放つタイプなんだから(笑)

 

 

 

「(京夜の特異な性癖を埋める、新たな犠牲者の誕生ってわけね)」

「(ああ。爆誕だな。素直に虐められる直球タイプの茜とは違うタイプだな。互いに思惑を共有した上で、敢えてその期待を裏切り虐めるという変化球タイプと言えるだろう。うんうん)」

「(何の評論家なんですか、京夜さんは。ちょっと引きます)」

「(……。茜、脇の所に糸くずがついてるぞ? 取ってやろう)」

「(えっ? ありがとうございま―― い、いやーーーー、あ、あは、あはははは!? っ、ちょっ、そ、そんな、そんなとこ、く、くすぐらないでくださいーーーー!!!)」

 

 

 

 涙枯れ果てるまでくすぐり続けてやるわ。ギネス級虐めて娘め。

 ラウラの幸せ顔とシャルロットの涙目を堪能した俺はラウラの頭から手を降ろして両手をポケットへと突っ込み、そして脇を少し広げる。

 

 

 

「さて。じゃあ行くか」

 

 

 

 その動作に、察し力のパラメタカンスト気味のシャルロットは「う、うん!」と顔を赤らめながらも嬉しそうに俺の右腕にくっ付いて腕を絡める。ラウラはそんなシャルロットに「な、なるほど」と感心しつつも照れくさそうに俺の左腕を取った。

 そして俺達は目的地へ向かうべく改札を通ったのだった。ずっと感じている後ろからの突き刺さるような、いや寧ろマジで何かが実は突き刺さってるのではないかという強烈な複数の怨視線については、ふ、触れないでおこう。

 べ、別に震えてなんてな、ないぞ。ちょっと俺の足元にだけ局地地震が起きてるだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モノレールから乗り継いで2駅。周辺の交通網の中心地である当駅下車数分の位置にあるショッピングモール『レゾナンス』。駅舎を含み、周囲の地下街と全て繋がっており、レストランエリアは欧・中・和を問わず、高級レストランからB級グルメ目白押しのフードコートまで完備され、ファッションエリアでは、量販店から一流ブランドまで幅広く網羅している。その他レジャー施設も充実しており、書店や家電量販店はもちろん、日用雑貨や住宅設備に関する商品まで扱っており、「ここに無ければ市内の何処にもない」と言わしめる程に老若男女問わず幅広く対応が可能なのだそうだ。って、随分と細かい説明だがレゾナンスの関係者ではない。ステマとかじゃないから。広告費貰ってないから。只のグーグル先生の受け売りだから。

 俺達は目的地であったそのレゾナンスの、恐らくはメインストリートと呼ばれているであろう通路を歩いている。辺りは主に10代の女子男子で溢れかえっており、週末の賑わいを見せていた。

 俺は左腕を掴むラウラへと目を向ける。あまりこういった場所に来たことがない故の物珍しさからか、何やら真剣な顔つきで周囲をキョロキョロと見渡している。目をランランと輝かせているとは言える程ではないが興味津々といった顔だ。

 逆腕に陣取るシャルロットはというと、なにやら深いため息をついていた。「どうした?」と尋ねると、こちらに注目している周囲の目を気にしながら「何でもないよ。ただ箒の苦労が今スゴく分かっただけ」だとさ。

 

 

 

「(今まで描写がなかったからアレだけど、京夜はカッコいいから毎回こうやって結構注目されているのよね。そういえば織斑一夏も相当モテてるみたいだけど、京夜と織斑一夏はタイプが違うわね。織斑一夏は爽やか系イケメンってカンジだけど、京夜は色っぽいっていうか、フェロモンが凄い綺麗系の美男子ってカンジ。私は当然、そして断然京夜派ね。茜は?)」

「(もちろん京夜さんの方がその、あ、あの、す、素敵ですぅ。そ、その、箒さんが入学時に、髪型をボサボサにさせて眼鏡を掛けさせた気持ち、私も分かりますから)」

「(まぁ最近は箒ちゃん、注目されないようにすることは諦めたみたいだけどね。だから常に一緒にいることで周りの女子に牽制しつつ、京夜の心と体を繋ぎ止める作戦にシフトしたらしいわよ? せっちゃんやリンリン、今両腕の2人共と協力してね)」

 

 

 

 「繋ぎ止める」というよりは「縛り付ける」って感じだがな。やっぱり最近の女子高生は総じて一度はやってみたいのかしら? 拉致監禁って。勢い余って去勢されないよう気を付けよう。

 

 

 

「それで、何処へ向かうのだ? 嫁よ」

「まずは服屋だな。それから飯食って、時間があれば小物系でも見て回ろう」

「そう……だね。うん。それが一番無駄のない流れだと思うよ」

 

 

 

 通路に設置されていた案内板を見ながらシャルロットは俺に同意する。ラウラもそれに目を向けるが、数秒して首を傾げる。

 

 

 

「ふむ。よく分からんから2人に任せる」

「ああ。俺がプロデュースするから大船に乗ったつもりでついてこい」

「じゃあ、ここから行こ!」

 

 

 

 そう言うと、シャルロットは通路左側のすぐ近くの店舗へと俺の腕を引っ張っていく。

 店の名前は『サード・サーフィス』か。随分と――

 

 

 

「変わったというか意味不明な名前だな。そうは思わんか、嫁よ」

「激しく同意するが、気にするな。こういうのは気にしたら負けだ」

「ネットで調べたんだけど、結構人気のあるお店みたいだよ。ほら、女の子もいっぱいいるし」

 

 

 

 シャルロットの言う通り、確かに多くの女子中学生・女子高生が店内にはおり、活況を呈している。セール中であることがそれに拍車を掛けており、正直騒々しいと感じる程だ。

 だがいいね、ココ。肌色多めな夏服に身を包んだ女学生達の、世間の荒波に晒される前のその未成熟な輝き。正直……たまりません。是非ともお近づきに―――って、痛っでででぇぇーー!!??

 

 

 

「京夜~? 何を考えているのかなぁ?」

「嫁よ。それはいかがなものか」

「ベ、ベツニ、ナ、ナニモカンガエテナ……オリマセンデス、ハイ」

 

 

 

 いつのまにやら極寒の空気をその身に宿した2人の美少女に両腕の関節を極められていた。俺の腕が曲がっちゃいけない方向へと!? ダメ、それ以上は、ほらミシミシ言ってるからーー!!??

 

 

 

「と、とりあえず、中へ進もうか。な? ホラ、あちこち回る予定だしさ。それに人目もあるし……」

「「……」」

 

 

 

 2人はジト目のまま、渋々ながら関節技を外す。ふぅ助かった。下手をすれば両関節決められて前屈み気味状態のまま俺を連行するつもりかもしれないと心配したが、流石にそこまでではなかったようだ。もちろん今日の夜はいろいろと酷くなりそうだが(涙)

 さてさて。店長らしき人とその部下数人がおずおずとした態度でこちらへと向かってきたことだし、始めるとしましょうか。これ以上ないくらいに2人には着せ替え人形になってもらうから覚悟して頂こう。

 じゅるりっ、ああ、想像しただけでも涎が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、疲れたな」

「まさかあんなに試着させられるとは思わなかったよ」

「そうか? まぁ俺は2人の可愛い姿を色々と堪能させてもらって至福の時間ではあったけどな」

 

 

 

 俺の言葉に、照れながら嬉しそうに「エヘヘッ」と笑うシャルロット。俯きながら顔を赤くして「あうあうっ」としどろもどろになるラウラ。本当に極端だなお前らは。

 時間は間もなく14時。これから少し遅めの昼食を取るべく、レストランエリアへと向かっている所だ。

 ちなみになぜ遅くなったかといえば、俺がハッスルしすぎたからだ。R18的なことではなく、2人にあれやこれや試着させたくなって暴走しただけだ。何、いつものことだ。

 

 

 

「(そのルーティーンな暴走で私も茜もいつもこんな恰好を色々とさせられているわけだけど……)」

「(ティーナ先輩……。最近、慣れつつある自分がいてちょっと怖いです……)」

 

 

 

 先程の水着から一転、今の脳内彼女達はメイド服だ。黒のニーハイストッキングが映えるミニスカメイド服のティーナと、スカート丈長めのクラシカルメイド服の茜。最高だ。

 もちろんメイドターンは既に録画済みである。流石の脳内彼女達は俺の期待を裏切らず、ミニスカメイドのティーナはメイドパンチラを、そしてクラシカルメイドの茜は長めの裾に爪先を引っ掛けすっ転んで涙目を披露してくれたことを自慢しておこう。

 

 

 

「でも良かったの? あんなに奢ってもらっちゃって……」

「そうだぞ、嫁。私は軍人で給料を貰っている。自分の分くらい――」

「気にするな。俺がプレゼントしたかっただけだ」

 

 

 

 最初の店を含めて数店舗回り、俺はシャルロットとラウラに服や靴をプレゼントした。2人共にそれぞれ10~15着程、靴も合わせれば20点くらいだろうか。ちなみに全てを持ち運ぶのは重いので幾つかは送ってもらった。

 

 

 

「京夜、結構貧乏性なのに……本当にいいの? この前だって食堂で一夏と家計のやりくりについて舌戦を繰り広げていたのに……」

「うっさい。貧乏性なのは否定しないが一夏みたいな節約バカと一緒にするな。俺は無駄金を払うのが嫌いなんだよ。2人が喜んでくれるなら無駄にはならないだろう?」

「! ありがとう! 京夜」

 

 

 

 何かを納得したような幸せそうな笑顔をシャルロットは浮かべた。もしかしたら今日のデートの趣旨が理解出来たのかもしれないな。

 俺がデートに誘った目的の一つ。それは『服をプレゼントすること』だった。この2人は室内用・外出用共に服をあまり持っていなかったからな。休日デートなのに制服なのもそれが理由だ。

 偽りの男性操縦者として男であることを要求されたシャルロットと、軍人として強さのみを要求されたラウラ。

 そんな着飾ることの出来なかった2人が新たな門出に立つ。それはなんてことはない、ごく普通の有り触れた何処にでもいる女の子が送る生活だ。そんなベタな生活を、俺は祝ってやりたかったのだ。

 もちろん俺は自分勝手な性格なので美少女2人の可愛い姿を拝みたかったのは否定しない。実際はそれが理由の大半だ。なんてな。

 

 

 

「……プレゼント……か……」

「そうだ、ラウラ。これが俺から送る最初のプレゼントだな」

「そうか……これが……」

 

 

 

 ポツリと俯き気味に言葉を漏らしたラウラは顔を上げ、その瞳を水分で一層輝かせながら感慨深い笑みを見せた。

 

 

 

「ありがとう。大切に保管する」

「保管するな。これから事ある毎にいっぱいプレゼントするし。それにせっかく可愛いのを選んだんだ。ちゃんと着飾って俺を幸せな気分にしてくれ」

 

 

 

 何も特別なことじゃない。これからのラウラの人生に、こんな些細な幸せは何度だって訪れるのだから。

 

 

 

「わ、わかった。ちゃんと着る」

「おう、そうしてくれ」

「ああ。だが……そうか……嫁は私が着飾ると幸せになるのか……」

 

 

 

 ラウラは手を顎に当て、何やら考え込んだかと思えば真剣な眼差しをシャルロットへと向ける。

 

 

 

「シャルロット。今度買い物に付き合ってもらえないだろうか? まだ私1人ではどういったものが自分に似合うのか分からん。ご教授願いたい」

「うん! 一緒に行こう、ラウラ! それで京夜に喜んでもらおうね!」

「あ、ああ、そ、そうだな」

「期待してるぜ、ラウラ、シャルロット」

 

 

 

 俺の言葉に、恥じらいながらも無防備な顔を2人は俺に向けた。うむ。幸せそうな良い笑顔だ。俺の善意のプレゼントが良い仕事をしたってことだな。うん。

 ……ってホント、嘘ばっかだな俺は。何が善意だ。

 まあいい。それよりも流石に腹減った。飯にしよう飯に。

 俺達は歓談しつつ、レストランエリアへと続くエスカレーターへと足を掛けようとした。

 その時――

 

 

 

「あ! 忘れてた! 京夜、ラウラ。ご飯の前にもう1ヶ所寄ってもいい?」

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。


【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/

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