インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)


この話には、サブストーリーを書きました! 
外伝的な話ではなく、ヒロイン視点です。別に読まなくても繋がりが分からなくなるわけではありません。


ちょっとでも気になる読者様がいらっしゃいましたら、ブログの方で掲載していますので、良かったら見てください!
(URLは後書きに記載しています。ブログ内の第43話の本文の「料理を習う」をクリックすると閲覧出来ます)


それからキャラクター設定画も書きました。(正確には書き直しました(笑))

第1弾は主人公『黒神京夜』です。

まだまだ未熟でお見苦しいかもしれませんが、アニメの公式サイト風に描いてみました。こちらもブログの方でに掲載していますので、良かったら見てください!


第43話 俺は最低なんだなと思い知らされる

 

 

 

 怒涛の約束消化体制、第2弾。鈴と一夏と共に彼らの地元へ遊びに行った日の翌日。日曜日。俺は朝から学園の第2アリーナに来ていた。

 ちなみにサラリーマンと同様でIS学園の生徒は週休2日制だ。遊びに行った昨日の土曜日も休日だった。自習や自発的訓練など生徒の自主性を重んじているそうだが、多国籍の生徒が半数近くを占めるということもあり、その国の慣習や宗教的な観点から自由に扱える時間をある程度確保しているということだ。

 そのかわり通常の授業、特に座学は予習復習が大前提の濃縮授業となっている。正直その濃度に胸やけ必死だ。朝の100%フレッシュジュースレベルではない。カルピス原液といい勝負だったりする。

 まぁ授業のことはおいといて、実際休みはある程度ないと生徒達の身が持たないのは確かだ。特に代表候補生ともなれば、専用機のデータ収集や調整等にかなり時間を取られ、ろくに体を休める時間がないこともあるそうだ。

 

 

 

「京夜さ~ん!」 

 

 

 

 そんな1年生の代表候補生の一角。イギリス代表候補生のセシリアがこちらへと掛けてくる。専用機同様の鮮やかな青いISスーツに身を包み、ふくよかな胸を揺らしながら俺の前へと辿り着く。

 

 

 

「相変わらずセクシーだな、セシリアは」

「え!? そ、そんな、は、恥ずかしいですわ」

 

 

 

 頬を赤らめ、くねくねと体をひねる。ひねりの加えられたその引き締まったウエストは、まるでファッションモデルを彷彿とさせる程に綺麗な流線形を見せていた。観賞用として部屋に飾っておきたいくらいだ。くびれ最高。

 

 

 

「(おっぱいが好きだったり、くびれに興奮したり、京夜の方こそ相変わらずよね)」

「(俺の辞書に『偏食』は存在しないからな)」

「(京夜さんなら『(くるぶし)』や『(かかと)』にすら興奮しそうですよねぇ)」

 

 

 

 失礼な奴だな。たしかにどこぞのスポーツ少女と同じで『(くるぶし)』という漢字が『(はだか)』に見えてドキドキしたりするかもしれんが。

 とはいえ、そんな美しい肢体を観察する為に朝早くからわざわざアリーナへと足を運んでいる訳じゃない。特訓の為だ。それこそがセシリアとの約束なのだから。

 俺は少し真面目な顔をして空気を締める。

 

 

 

「さて。やるか……っと、その前に言っておきたいことがある」

「? なんですの?」

「今から教えるやり方なんだが……セシリアが今まで行ってきた訓練とは全く違うモノになると思う」

 

 

 

 姿勢を正しながら、ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえてきそうな程に緊張感ある顔へとセシリアはその表情を変化させる。その真剣さが全身から伝わってくる。

 

 

 

「難易度が高い上、その成果が現れるまでには恐らく相当な時間が掛かるだろう。正直どれくらい先になるかも検討が付かない」

 

 

 

 なぜこんな話をしているか。それは成果の見え辛い訓練を継続的に行っていくというのは困難を極めるからだ。成果のなく過ぎ去る時間は疑心や疑念を生みだし、焦燥感に囚われていくものである。

 だが【BT兵器】で高みを目指すには必要不可欠であり、避けては通れない。

 

 

 

「だから――」

「大丈夫ですわ」

 

 

 

 俺の言葉を遮ったセシリアは、微塵にも迷いのない瞳でこちらを見つめてきた。

 

 

 

「わたくしは、京夜さんの事を信じております。だから貴方の言葉を、信じます」

「……わかった」

 

 

 

 そのあまりにも凄まじい全幅の信頼に正直驚かされる。なら俺もその信頼へ答えることに腐心することとしよう。

 

 

 

「じゃあ、始めるか」

「お願いしますわ!」

 

 

 

 セシリアは専用機である『ブルー・ティアーズ』を展開する。流石の代表候補生は展開まで1秒と掛からない。

 全身に纏わせ、PICの制御により僅かばかり宙へと浮いたことを確認した俺は話を続ける。

 

 

 

「まずはレーザービットを1機出してくれ」

「? 1つだけでよろしいのですか?」

「ああ」

 

 

 

 セシリアは肩部ユニットからビットを射出し、俺達の目の前に浮遊させる。

 

 

 

「セシリア、『レッドアローズ』は知ってるよな?」

「ええ、もちろんですわ」

 

 

 

 『レッドアローズ』とはイギリス空軍の戦闘機アクロバットチームのことだ。日本では航空自衛隊の『ブルーインパルス』が有名だな。

 とはいえ今では知らない人も多いかもしれない。編隊飛行しながら同時に曲技飛行を行うアクロバット飛行は、戦闘機による航空ショーのメインアトラクションではあったが、現在ではISがそれに成り代わり、廃れつつあるからだ。

 

 

 

「あれを、セシリアとそのビットとでやってもらう」

「!!」

 

 

 

 セシリアは先程を軽く凌駕する程の驚きをその顔に表現する。それは当然かもしれない。

 今までのセシリアはビットを自由自在に動かすことに重点を置いていた。それは自分自身の位置をビット稼働範囲外に固定し、ビットを空間座標に配置するという手法であり、今告げた特訓内容はその概念からして違うものだからだ。

 俺はさらに続ける。

 

 

 

「ただ編隊飛行をするだけならさほど難しくはないだろう。だがそうではない。ビットとの距離や位置を常時固定し、様々な旋回(ターン)を織り交ぜながら同じ動きをさせつつ共に飛行してもらう。まずはそれが第1段階だ」

 

 

 

 そもそもセシリアには無駄が多過ぎる。まずはそれを削ぐ所から始めなければならない。

 何が無駄か。それは思考だ。1つ1つのビットに対する意識と思考が強過ぎる。故にパターン化せざるを得なくなり、その軌道が読まれやすくなる。さらに不測の事態にも弱い。

 そこを改善する。だが、いきなりは無理だろう。

 だからこそこの第1段階だ。まずはビットと一緒になって自由に動き回ることだけ行う。ビットとの距離や位置を固定し、同一の動きを行うという操作は手足の延長線上にあるように捉えることが出来る為、難易度が少し下がるだろう。

 とはいえ――

 

 

 

「難しいとは思う。だからじっくり時間を掛けてやっていくしかないだろうな。今は1機だけだが、徐々に増やして全6機で出来るようになってもらう。大丈夫、今後もセシリアの特訓には付き合うからさ。一緒に頑張ろう」

 

 

 

 これがそつなくこなせるようになる頃には、動かすだけならさほど意識せずとも操作出来るようになるはずだ。

 もちろんこの訓練はそれだけではない。その先を強く意識している。【BT兵器】の真価を発揮する為の布石として、この特訓は絶対必要だ。とはいえ今はそれを言う必要はないだろう。

 

 

 

「は、はい!! 京夜さん!!」

 

 

 

 良い返事だな。その表情も頬を少し赤らめているもののやる気に満ちた良い顔だ。

 

 

 

「違うぞセシリア! 特訓中はコーチと呼べ!!」

「はい! コーチ!!」

 

 

 

 いいねいいね!! その感じ!! いろんなモノが狙えそうだな! エースとか、トップとか。今度セシリアのことを『ミセス・バタフライ』と……呼んだりしたら超怖そうだから止めておくことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初日にしては上出来だと思うぞ、セシリア」

「有難う御座います、京夜さん。でも……」

「仕方がないさ。今までの扱い方とは概念からして違うんだ。早々対応出来るものじゃない。焦んなくていい」

 

 

 

 俺達は着替えを済ませて、寮の廊下を並んで歩いていた。

 あれからほぼ休みなしでセシリアは特訓に励み、気付けば現在午後1時を既に回っている。まだ思考の負担が減らすことの出来ていない現状、流石にこれ以上は脳へ負荷が掛かり過ぎる為、「今日はここまで」と俺の方から訓練を終了させたのだ。

 成果的な話をすれば、だだ真っ直ぐ飛ぶだけの編隊飛行にはついては30分程で形になった。これは今まで脳内に展開していた座標空間の中心点を相手から自分へと置き換えるだけなのでさほど難しくはなかったのだろう。だが旋回においては単純なモノであっても位置と距離を保ち続けられるのは連続2回までが限度だった。無理もない。未だビットへの思考が強い証拠と言えるだろう。

 現在のBTシステム適正は、単純に空間認識能力と思考能力に比例して高くなる傾向であり、A判定であるセシリアはこれらの能力が高いことを示している。そしてそれらをビット操作において遺憾なく発揮している。

 だがこの訓練はどちらかと言えば感覚や感性を要求されている。極端に言えば、それは今まで思考全開で動かしてきたセシリアに「思考するな」と言っているようなものであり、正直戸惑うのは仕方のないことだろう。

 もちろん今までと同じ操作方法でその精度を上げていくことも出来なくはない。だがその方法で100%の能力を引き出せるのは多重並列思考を可能とする限られた天才だけだろう。

 だから変える。操作方法を。概念を。そして何よりこれこそが正しい扱い方だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 時間を掛けてじっくりやっていこう。それに――

 

 

 

「それにそんなに早く出来ちゃったら、一緒に特訓する時間がなくなっちゃうぜ? そうか~、セシリアはそんなに俺と居るのが嫌なのか~」

「そ、そんな訳ありませんわ!! わたくしは京夜さんとずっと――」

 

 

 

 ずっと――何かなぁ?(笑)。続く言葉をニヤニヤした笑顔で待つ俺の顔を見て、セシリアは少し頬を膨らませる。 

 

 

 

「からかってますわね!? も~、京夜さん!!」

「ハハハッ。まぁとにかく飯にしよう。もう昼時を過ぎちゃってるし」

 

 

 

 セシリアのリアクションに色々満足した俺は食堂の方へ向かうべく、角を曲がる。

 するとセシリアが立ち止まった。振り返ると、もじもじしながら頬を火照らせている。

  

 

 

「あ、あの……京夜さん?」

「ん? なんだ?」

「よろしかったら……その……」

 

 

 

 続く言葉の、その意外なお誘いを了承した俺はセシリアと一度別れて再び合流し、ある場所へと向かった。

 そこは何てことはない只のベンチだ。寮や校舎から少し離れた場所にある、大きな木の下に備え付けられた4人掛けくらいの木製のベンチ。それがポツンと1つあるだけ。俺達はそこに腰かける。

 

 

 

「風が気持ちいいですわね」

「そうだろ? ココは俺のとっておきだ」

 

 

 

 IS学園は敷地が広大だ。前にも話したが無駄に広い。その広い園内には、至る所にこういったベンチが備え付けられている。中には屋外テラスのような屋根・テーブル付きのベンチもあるのだが、俺はココが好きだった。IS学園を隈なく徘徊して見つけた場所で、人目に付かない・人通りの少ない・人気のない絶好の喫煙・昼寝スポットとして屋上に次いで日々活用している。

 

 

 

「つまり、京夜さんが授業をサボっている時はココにいらっしゃると」

 

 

 

 中々の名推理だな、セシリア。もっと自慢げな顔を浮かべてもいいんだぜ? そんな不機嫌そうでなくても。

 じゃあ俺は自白したりせず、口止めを図ることとしよう。ココは断崖絶壁ではないからな。

 

 

 

「俺とセシリアだけの秘密だ」

「もう! そんな風におっしゃられたら、何も言えなくなってしまいますわ!」

 

 

 

 隠蔽体質が極まっていると言われる俺には、この程度の口止めなど造作もない。その上、話も有耶無耶にした俺の手腕に正直惚れ惚れするね。自画自賛だ。そろそろ完全犯罪党でも設立することとしよう。

 さて、じゃあ昼飯にしようか。わざわざ俺の為に作ってくれたそうだからな。そういうお誘いでココに来た訳だし。

 するとセシリアはおずおずとした態度を見せながら籐で編みこまれたバスケットをベンチに座る俺達の間へと置いた。

 どうしたというのだろう。前に屋上で食べさせてもらった時はもっと自信満々な表情を浮かべていたというのに。

 俺はバスケットを開ける。するとそこにはBLTサンドが詰め込まれていた。

 それはあの時と同じメニュー。だがその見た目は大きく違っていた。パンも挟み込まれた具材も不揃いに切られていて、トマトに至っては輪切りの形を留めているように見えない。色合いもとても鮮やかとは言えず、パンも少し焼け焦げている。

 俺は少し驚きながらも、いつも通り躊躇なく口に頬張る。

 

 

 

「い、いかがですか?」

「うん。美味い。この間とはまた大分違うな。随分上達したんじゃないか?」

 

 

 

 そしてその味は見た目以上の変化が表れていた。ガリガリした触感であったり、サンドイッチなのに生クリームより甘かった前回とは違い、ちゃんとした一般的な味がした。コックや料理上手な人間が作る様な味ではないが、誰もが食べれて普通に美味しいと言ってもらえる程だった。

 

 

 

「実は少し前から一夏さんに料理を習うことにしましたの」

 

 

 

 そうか。食べたんだな、自分の料理を。セシリアが恥をかく前にフォローするつもりだったんだが、一夏が代わりにやってくれたという訳か。道理で最近セシリアの手が痛々しい程に絆創膏だらけだと思った。

 相当大変だっただろう。見た目重視のオリジナリティ溢れる料理を世間一般へとシフトさせるということは。一夏の頑張りには頭が上がらんな。もちろんセシリアの努力にも。

 

 

 

「そうか。じゃあ、またセシリアの手料理を食べさせてくれ」

「ええ! もちろんですわ!」

 

 

 

 目の前の少女は、無邪気で嬉しそうな笑顔を俺に向けた。昔の高飛車だった頃には見ることの出来なかった普通の女生徒の笑顔だった。

 その後、俺達は仲良くその手料理を食べ終え、買ってきたパックジュースの飲みながら和やかな時を過ごしていた。差しこむ木漏れ日に心地よい眩しさと、撫でるように吹きぬける風に爽やかさを感じる。良い気持ちだ。

 どうでもいいけど、俺はやたら風を感じている気がするなぁ。そんな俺って実は中学時代、皆から『風』と呼ばれて……はいないけど、「お前はホント囚われていないなぁ……常識に」とはよく褒められてたもんだ。箒には「それはお前が非常識だと言われているんだ」って言われていたけど。

 

 

 

「ふあぁぁぁ~。食べたら少し眠くなってきたな……」

 

 

 

 最近ちょっと寝不足でさ。脳内彼女が寝かしてくれないんだよ。毎晩毎晩激しくて……って、そっちの意味じゃないからな。そこのムッツリーニ君、勘違いするなよ? ココには輸血パック置いてないから妄想イコール即死確定だぞ?

 

 

 

「(キャラが増え過ぎて、私達との絡みが減っちゃったんだから、夜中くらい自由にさせなさいよ!)」

「(そ、そうですよぉ! わ、私も、そ、その、もっと……京夜さんと一緒に……居たいですぅ……)」」

 

 

 

 そんなこと言われてもね……今まで描写がないからアレだけど、何だかんだ毎晩3時間くらいは茜のコアの中に3人で一緒に居るじゃないか。遊んでいる訳じゃないけど。まぁこれがネトゲ廃人でない俺が夜更かししている理由だ。

 その上、最近スキンシップの減ったことが不満らしい脳内彼女達の為に、時間を朝方まで延ばした。その延長時間に何をしているかと聞かれれば、頭撫でてあげたり、髪を梳かしてあげたり、抱きしめてあげたり、おんぶしたり、抱っこしたりと、まぁそんな感じだ。

 

 

 

「あ、あの、きょ、京夜さん。でしたら、そ、その、い、いかがですか?」

 

 

 

 するとセシリアは埃を掃うようにスカートのしわを正しながら座り直す。え? いいの? 遠慮しないぜ?

 

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えて、よっと」

 

 

 

 俺は縛っていた髪を解いてセシリアの膝へと頭を乗せる。膝枕だ。羨ましいだろう。

 ほのかな香水の香りが鼻を擽り、後頭部からは程良い温もりが伝わってくる。 

 

 

 

「ふう。柔らかくて、良い気持ちだ」

 

 

 

 俺は下からセシリアを見上げる。その美しい青碧の瞳は、食い入るように俺を見つめていたが、すぐさま視線を外される。

 

 

 

「きょ、京夜さん。そんなに近くで見つめられると……」

「じゃあ、どく?」

「い、いいえ、そんな!」

「なら、問題ないな」

 

 

 

 クックックッ。そりゃ見つめるよ。職業・サディストの俺のバトルコマンドは「茶化す・からかう・いじめる・弄る」の4つしかないからな。どれを選んでも結果は変わらないだろ? 勇者が仲間にしてくれるかは知らんけど。

 とはいえ、やり過ぎは良くない。チラチラとこちらを見るセシリアのその顔にこれ以上血が集まり過ぎて鼻血とか出ても困るし。

 俺は目を閉じる。先程まで気にしていなかった葉の擦れる音が耳を擽る。その爽やかな音はまるで眠りへ誘なおうとしているかのよう。

 するとセシリアが俺の髪を、頭を優しく撫でてきた。その動きに遠慮がちな気配を感じさせながら。

 無料配布はしてないが、別にお触り厳禁という訳ではないからどれだけ触ってもらっても構わんぞ? パワースポット的な効果はないがな。

 俺はそんな思いを込めて目を閉じたまま少し微笑む。伝わったのだろう。セシリアは髪だけでなく、その手で俺の顔を触る。愛でるかのように頬を優しく撫でてくる。

 寝不足の俺はそのまま、深い眠りへと落ちて……いけたらどれだけ幸せなんだろうな。これだけ幸せな環境であっても一切眠れそうにない。

 つくづく俺は最低なんだなと思い知らされる。セシリアのことを信用も信頼もしている。だが絶対に裏切らないと、心の奥底では思えていない。だからこそ俺はこの状況に警戒し、眠ることが出来ない。

 それはセシリアだけじゃない。鈴やシャルロットやラウラや一夏や、たとえ箒であってもそれは変わらない。普段寮のベッドで寝ている時でさえも、頭の片隅は必ず起きている。今も昔もそれは変わらない。

 そういう意味じゃ正反対である一夏が本当に羨ましい……なんてな。俺はそんな下劣な自分に内心苦笑する。

 寝ることは出来ないけど、今は今を楽しむことにしよう。今は今しか出来ないのだから。

 

 

 

「わたくし、こうゆうことに少し憧れておりましたの」

「膝枕に? 乙女だなぁセシリアは。じゃあ『壁ドン』とかも気にいるのかもな」

「『壁ドン』? なんですの? それは」

「その内無くなるであろう言葉だから覚える必要はないけど、機会があったらやってやるさ。楽しみにしといてくれ」

「ええ。楽しみにしてますわ♪」

 

 

 

 膝枕という少女漫画のワンシーンのような情景を作る俺達は、さらなる乙女の夢を叶える未来の話をしながら優雅で穏やかな午後の昼下がりを満喫したのだった。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。


【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/

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