インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)


第25話 俺自身はこの発言を後悔することになる

 

 

 

「くっくっく。随分と面白い顔をしてるじゃないか一夏」

「う、うるせー。俺のせいじゃない!」

「鈴。片方だけじゃ不釣り合いだから、右頬にも付けてあげたらどうだろうか?」

「プックックッ、そうね! 一夏! ちょっと面貸しなさいよ!」

「イヤだ!!!」

 

 

 

 用事を済ませて学園に戻って来た俺は、痛い思いをして面白い顔になった一夏の顔を見てお腹を痛めていた。当然笑い過ぎてだ。クラスが違うので俺と同じくその現場を見ていない鈴もまた大爆笑中だ。

 そんな転校生とのショートコント(笑)を間近で観覧していた箒とセシリアに聞いた話。同じ描写を2度お伝えするのは心苦しいのでざっくりと説明するが、転校生は自己紹介後、一夏に近づきビンタ炸裂。最初戸惑っていた一夏は我に返ってブチギレ。転校生は何食わぬ顔でそのまま着席して現在に至るのだそうだ。

 そんな一夏の左頬は、腫れてはいないものの大振りな紅葉の葉が真っ赤に色付いている。

 集まっているいつものメンバーの隙間から、その転校生の姿が目に入る。一番後ろである俺の席からは彼女の輝くような銀色の髪しか見えないが、漂うオーラというか、身に纏う雰囲気は一女学生の持つようなものではない。

 さらに聞けば、あの席に着席後、目を瞑って腕を組み、そのまま微動だにしていないのだそうだ。その止まり具合たるや、ストップモーションを得意とする路上パフォーマーも顔負けな程と言っても過言ではないだろう。

 『ラウラ・ボーデヴィッヒ』ね。彼女のことは新たに情報を収集する必要はない。もう知っているからな。

 すると、一夏が話題を変えて話しかけてきた。自分の自虐的なネタに心が耐えきれなくなったのかもしれないな。

 

 

 

「そういえば京夜、ドコ行ってたんだよ?」

 

 

 

 俺は一夏の発言に、どう答えるか考える。

 とっさに思いついた選択肢は3つ。

 その①「野暮なことは聞くなよ……」

 その②「麗しき姫を救うべく、魔王城へ単身赴任さ」

 その③「ヒ・ミ・ツ」

 あれ? おかしいな。どの選択肢も、目の前にいる女子3人の瞳からハイライトが消える結果しか生まない気が……ど、どうする!? どうするよぉ俺!?

 するとティーナから、ある1つの情報がもたらされる。それを聞いた俺の回答は、その瞬間に決まる。

 

 

 

「……IS委員会からの呼び出しさ。内容は主に『所属企業選定について』だ。俺は一夏やデュノアとは違うからな」

 

 

 

 デュノアは当然デュノア社。一夏は『白式』を制作した『倉持技研』所属と仮ではあるがそうなっている。

 現在どの国家にも、どの企業にも所属していない俺だけが呼び出されたことは、理由として誰が聞いても納得のいくものだろう。

 

 

 

「へぇ~。それで、どこの所属になりそうなんだ?」

「今のところは『トライラックス社』が最有力だな。先日、日本国政府からIS開発企業としてコアを授与されたばかりだし」

 

 

 

 一夏の問いに俺は、最近何かと話題らしいIS関連企業の名前を挙げた。

 

 

 

 『トライラックス社』

 

 

 

 元々はセキュリティシステムのソフトウェア開発を基幹業務としていた企業で、とても有名と言えない零細企業であったが、突如5年程前にIS業界に新規参入。その際に発表されたIS基幹ソフトウェアは、PICなどの基本システムを最適化し、その運動性を飛躍的に向上させ、IS業界全体を10年は進歩させたとして、その知名度を上げた。

 最近では後付装備・換装装備メーカーとして世界中で注目を集めるだけでなく、ISスーツの分野でもその性能と芸術性に人気を集めている。

 

 

 

「だから今後、データ採取とかテストとかで本社に呼び出されることもあるみたいだな。あ~面倒くさい……」

「そんなこといって京夜。本当は授業がサボれるとか思っているんだろう?」

「頭ん中スケスケよね、京夜って」

「分かりやすいですわ、京夜さん」

 

 

 

   

 俺の頭を、脳みそを、考えを、まるで見透かしたように呆れ顔で語るは箒、鈴、セシリア。なんですか、そのリアクションは。俺はそんな視線に興奮するような異常性癖の持ち主ではないんだぞ! 俺をそんなレベルの変態と位置付けるなんて心外にも程があるわ!

 

 

 

「(それはそうよね。以前『語尾に「にょ」を付ける』っていう罰ゲームを箒ちゃんにやらせていたりしたっけ)」

「(あの時の恥ずかしそうにしていた箒の顔は、今思い出してもヨダレが止まらないなぁ)」

「(京夜さん、ドン引きです……)」

「(ほう? 言うようになったな、茜。ティーナさんや、やってしまいなさい)」

「(イエス、マイロ~ド)」

「(ふぇぇぇぇ~)」

 

 

 

 ティーナに両手で頬を左右に引っ張られている茜のその顔! その表情で俺はゾクゾクし過ぎてイッ……これ以上はこの国の条例に抵触しそうなので控えます。控えます。だから通報しないで。

 それはさておき。どうですか? この理由なら納得して頂けたでしょうか? 教室の廊下で聞き耳を立てている我がクラスの担任の織斑先生? 俺に対して四方八方探りを入れていることは存じていますが、盗み聞きみたいなのはあまり感心しませんよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♪ どうしてお腹が減るのかな? ケンカをすると減るのかな? 仲良ししてても減るもんな 母ちゃん母ちゃん、お腹と背中がくっつくぞ! ♪ ってもしそんなことになったらすぐに救急車を呼んでください。内臓破裂の疑いがあります。お子様の命は一分一秒を争います。

 時刻は酉の刻。場所は食堂。ってどうでもいいけど、なんか飯の時間の描写が多い気がするなぁ。まぁ授業中とかじゃ一夏や皆と話が出来ないから仕方ないと言えば仕方ないけどさ。けどこれじゃあ飯ばっか食ってるキモデブニートみたいじゃないか! こう見えても、どう見えなくても、俺は結構スリムよ? モデル体型よ? 筋肉質な良い体してるんだから!

 

 

 

「(グエッヘッヘッ、兄ちゃんイイ体してんじゃないの~)」

「(そういうお譲ちゃんは……いい洗濯板をお持ちで)

「(ウガガガガガガーーーーーー)」

「(ダメですよぉティーナ先輩! お、落ち着いて下さい~)」

 

 

 

 時代を逆行し続ける暴走洗濯板はおいといて、俺たちはいつも通りのメンバーで食事中だ。ホント飯ばっか食ってるな。大丈夫だろうか。もっと他の描写もあるだろうに。まぁいいか。

 

 

 

「そういえば、箒。ルームメイトとは上手くいっているか?」

「ああ。あまり互いに干渉し合わない距離感で、それなりには上手くやっている」

「そうか。それは良かった」

 

 

 

 箒は朝から晩まで四六時中と言っていい程に俺の部屋に入り浸っているからな。それをルームメイトは快く思っていないのではと心配していたのだが、杞憂に終わってくれているようだ。

 まぁ入り浸っているのは箒だけでなくセシリアや鈴、それに一夏に至ってもそれは同様なのだけれども。

 ちなみにデュノアが転校してきた際に、他の部屋にも移動があったそうで、セシリアと鈴は同室となったそうだ。その時にはお互いの文句を、俺は別々に聞かされ、正直ウンザリしたものだが、今ではそれなりに仲良くやっているようだ。代表候補生同士、分かりあえる苦労などもあったのだろう。

 

 

  

「(彼女達は同士だけど、同志でもあるからね~。そろそろ同盟を結ぶ時期かもしれないわ)」

「(同盟? 一体何の同盟だよ?)」

「(決まってるじゃない! 殺京同盟よ!!)」

「(薩長同盟みたいな感じで言ってるけど、何その危険極まりない同盟!?)」

「(読んで字の如く、『殺す京夜同盟』のことよ!)」

「(極悪過ぎる!! 平和的な会談が設けられていない!! 坂本竜馬は何処にいるんだよ!?)」

「(彼は命の洗濯……命の選択を間違え、帰らぬ人となったのよ。さぁ京夜、次は貴方の番ね!)」

「(……相当根に持っていらっしゃるのね、ティーナさん)」

「(ゴメンなさい、京夜さん。先輩を止める手段はもう……」

「(諦めないで茜サン!! 諦めたら俺の命が試合終了だよ!?)」

 

 

 

 脳内でそんな地獄の新時代が幕を開けそうな俺を他所に、食事を終えて一息ついているいつものメンバーの話題は月末に行われる『学年別トーナメント』に。

 セシリアは、フフンと鼻を鳴らすかのような自信満々な顔を見せる。

 

 

 

「いよいよわたくしの強さと、そして優雅さを皆様にお見せ出来る機会がやってきますわ!」

「は? 何言ってんのセシリア。あたしの方が強いし。優勝は間違いなくあたしね!!」

「何をおっしゃっているのかしら、鈴さん。優勝するのはこのわたくし、セシリア・オルコット以外にはあり得ませんわ!!」

「ふ、2人とも、凄い気合いだなぁ」

 

 

 

 セシリアと鈴のやる気に、デュノアは押され気味に呟く。

 すると一夏は、箒の「我関せず」といった態度が気になったようだ。

 

 

 

「箒は……あまりやる気なさそうだな」

「ああ。私は別に興味がない。そもそもIS自体好きではない」

 

 

 

 さらに「IS学園に来たのだって京夜が誘ったからだ」と話を続ける箒。そういえばそうだったね。だがそれ以前に、進路に関して言えば、中学時代の俺の進路調査票は箒に管理されていたけどね。なぜか。

 まぁ箒のそういう所を可愛く思っていることは確かだが、せっかくの高校生活だ。高校で行われる行事に参加できるのは、高校生である3年間だけなのだから、たとえISばかりの催し物であったとしても、積極的に参加してもらいたいと考えていることも確かだ。

 そこで俺の取る作戦は……

 

 

 

「それでは面白くないなぁ箒。じゃあ、こーゆーのはどうだろうか? もし箒が学年トーナメントで優勝したら……」

 

 

 

 俺は無限の大宇宙広がる内ポケットから、2枚の紙切れを取りだした。1枚1400円(税込)で、無限には広がらないまでも、未知なる世界である大海原に生息する生物を拝見できる代物だ。

 

 

 

「キョウちゃんと行く水族館デートチケットをプレゼント~♪」

「……やる。全力で勝つ」

 

 

 

 モノで釣る作戦だった。だがお願いだ、皆。チョロいヒロイン、略して『チョロイン』とか言わないであげて。

 俺のその提案に、立ち上がって低い声で決意表明を口にした箒の、その目の奥に秘める決意の炎は、提案した俺自身が気圧されてしまう程だ。ちょっと怖い。

 そして当然の如く俺に不服申し立てを申請するのはセシリアと鈴だ。

 

 

 

「ちょっと!! 箒ばっかりズルイわよ!!」

「そうですわ! 京夜さん! わたくし達にもその権利を是非!!!」

「お、落ち着いて、わ、わかった、わかったから。じゃあ、優勝賞品ということで」

 

 

 

 その提案に納得したセシリアと鈴は、箒と同じく立ち上がり、視線でバチバチッと火花を散らす。3人が作り上げたその空間に、正直全力で触れたくない。たとえどんな言葉を掛けたとしてもダメージ必須な理不尽時空がそこには発生している。

 すると一夏が「羨ましいなぁ」と声を漏らす。何? Mなの? ウエルカムダメージなの? それとも……

 

 

 

「なんだ一夏? 俺とデートしたかったのか?」

「違うわ!! そうじゃなくて、モチベーション的な話だ」

 

 

 

 そういうことか。気持ちは分からんではないが、もっと自分自身でモチベーション管理してもらいたいものだ。

 まぁ一夏のやる気は熱しやすいからな。俺からしてみれば上げるのは楽勝だ。

 

 

 

「よし、わかった。じゃあ一夏が優勝したら……」

 

 

 

 俺は再び無限の欲望広がる内ポケットから、切り取り線の入った紙が綴られた1つの紙束を取りだした。1束8400円(税抜)で約30日の間、財布の中身が減ることなく、お腹も減ることがなくなる代物だ。

 

 

 

「IS学園食堂日替わり定食食券1ヶ月分~♪」

「絶対優勝してやらぁ!!!」

 

 

 

 その決意の言葉に、全身から立ち上るやる気の炎に、正直全員が唖然とせざるを得なかった。なるほどな。この気持ちが……ドン引きか。

 モノ一つ言えない程の呆れ状態のこの空気の打開を図ったのか、それとも全く空気が読めていなかったのかは判断出来ないが、もう1人の男子操縦者(嘘)が俺に話しかける。

 

 

 

「ぼ、僕にも何か貰えないかなぁ?」

 

 

 

 お前もか。ホントお前らは欲求メーターがフルスロットルってカンジだな。まぁ今の世の中、女性には『強欲』が初期装備らしいという本を読んだことがあるが。一夏の場合は節約魔人の本領発揮といった感じだけどな。

 それにしても……これは丁度良い展開か。

 

 

 

「ああ、いいぜ。優勝したら何か一つ、願いを叶えてやるよ」

 

 

 

 この発言は、本当に必要となることかは分からない。

 彼女の中の強欲さが、彼女のその口から出てくる時が来ることがあるのかは分からない。

 いや、強欲さではないな。これは。切なる願い……か。

 だが後日談として、俺自身はこの発言を後悔することになる。まさかの俺の最後の発言が、食堂で一夏達だけに話したつもりのこの発言が、学年中に伝播してしまい、その過程で伝言ゲームのように変化し続け、結果的に「学年トーナメント優勝者は織斑一夏、シャルル・デュノア、黒神京夜の誰かと付き合える」ことになるとは。ちなみに2年生や3年生に伝播しなかったのは、1年生の完全なる連携による情報操作によるものだそうだ。

 なぜそんなことになったのか。別に学年女子全員と交わした約束ではないし、無視してもいいのだけれど、既に集団心理における凶悪な強制力がそこにあり、それを聞き及んだ時にはとても抗えるような状態ではなく……といった感じだ。

 しかし、これだけで俺は後悔しない。この約束の中に俺が入っていたことを若干喜んだくらいだ。だが、それが問題だった。喜んだことも問題だった。それを知った箒、セシリア、鈴は、俺に対して言うまでもなく地獄の説教タイム。イヤ拷問だ。たっぷり2時間程。十露盤板と伊豆石なんて何処から持ってきたんだよ。この時代に石抱なんてさせられるとは思わなかった。思いたくなかった。そして……重たかった。石も、そして後悔も。

 こうなったら一夏に優勝してもらうしかないな。俺の平穏はお前の双肩に掛かっている。すぐに地獄の特訓開始だ。別に逆恨みというか、八つ当たりではないからな。決して。軽くPTSDになる程度にやってやるぜぃ。

 

 

 

「(PTSDに軽いも重いもないでしょ……)」

「(ちなみにPTSDとは心的外傷後ストレス障害のことですねぇ~。トラウマと同じ意味で理解している人がいるみたいですが、別物なんですよぉ~)」

 

 

 

 PTSDとは病名であり、トラとウマからの攻撃により、継続的な苦痛を伴えばそれはPTSDに成り得る……って正しい知識と適当な話が入り混じってて訳が分からなくなってるし、大体そんなことはどうでも良いわ。

 石抱によりボーダー柄になってしまった脛を擦りながら俺は得意になりつつある深いため息をついた。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。


【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/

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