インフィニット・ストラトス a Inside Story    作:鴉夜

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※誤字、脱字は多いかもしれないです。表現も統一性がないかもしれません。なるべく修正します。ご勘弁ください。

また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)


第19話 俺は意識を手放した

 

 

 

 

「くっ……」

 

 

 

 勢い良く向かって行ったはいいものの、俺と鈴は完全に防戦一方だった。まるでコマのように長い腕を振り回しての近接攻撃と、その状態でのレーザーによる中距離攻撃に俺たちは回避行動に専念する時間が徐々に長くなっていく。

 攻撃に転ずることができない状況に焦り始めた俺は、ハイパーセンサーに表示されているシールドエネルギー残量を確認する。鈴からも、あの敵ISからも直撃こそ受けていないが、徐々には削られており、あと4割といった所だった。

 

 

 

「! 一夏!!」

「!! しまった!?」

 

 

 

 マズイ! 数値に気を取られて敵への集中を僅かに切らしてしまった。鈴の声に反応し、回避を試みるが間に合わな――

 

 

 

「!?」

 

 

 

 次の瞬間、俺は何かに腕を掴まれて引っ張られる。先程まで自分が存在していた空間に熱線が通り過ぎた。まさに間一髪、危うく胴体に風穴が空く所だった。

 

 

 

「ふう。しっかりしてくれよ、我がクラス代表の刹那快楽主義者くん?」

 

 

 

 俺は救いの手を差し伸べてくれた救世主に顔を向ける。そこには『打鉄』を身に纏ったクラスメイトで、友達で、仲間で、同じ境遇の男子操縦者である京夜の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「京夜! 助かったぜ! っていうかなんだ? その言い方」

「だってお前の名前って、織斑(オリムラ)一夏(ヒトナツ)・アバンチュールっていうんだろ?」

「『ひとなつ』じゃない! 『いちか』だ! しかもなんかミドルネームになってる――――し!」

 

 

 

 一夏のツッコミも、それにダメだしするかのような所属不明機によるツッコミレーザーに阻まれ、飛び回る俺たち。アイツも空気が読めてないな。この後の俺のボケプランも台無しだよ。

 

 

 

「っていうかアンタ、どうやってここに来たのよ!」

「へ? ああ、あそこから」

 

 

 

 凰さんの問いに、俺はアリーナの壁を指差す。そこは先程、所属不明機のレーザーによって遮断シールドが破られ、壁が崩れ落ちている場所だった。

 本当は普通にAピットから侵入したんだけどな。「全ての扉がロックされている」となっているので、一応辻褄を合わせたでっち上げの理由だ。

 すると、一夏がふいにこんなことを言い出した。

 

 

 

「なぁ、アレって本当に人が乗ってるのか?」

 

 

 

 一夏のヤツ、やはりなかなかの観察力だな。あまり頭の出来が良ろしくないが、感覚や感性は評価に値する部分ではある。

 

 

 

「は? 人が乗らなきゃISは動かな――そういえばアレ、さっきからあたしたちが会話してるときってあんまり攻撃してこないわね。まるで興味があるみたいに聞いてるような……」

 

 

 

 思い返すように凰さんは真剣な顔つきで今までの戦闘を振り返る。彼女もなかなかの洞察力をお持ちのようだ。

 しかし、やはり凰さんも感覚でモノを言うタイプのようだな。まぁ思い立ったが吉日思考で転校してくるんだからそりゃそうか。本人はそれを直感とか言っていたが。

 

 

 

「ううん、でも無人機なんてあり得ない。ISは人が乗らないと絶対に動かない。そういうものだもの」

「そうなんだよな~。京夜はどう思う?」

 

 

 

 見解を求める一夏の発言に、俺はどう答えるものかを考える。

 確かに一夏の言うとおり、あれは無人だ。それは間違いない。()()()()()()()()()()()()()。だがここでそれを2人に伝えるべきか否か……

 

 

 

「一夏の言うとおり、恐らく無人だろう。動きや反応に人間味が全くない。どういった仕組みなのかはわからないが……」

 

 

 

 結果的にそれらしい理由で誤魔化すことに。この2人は信用できるし、プライベートチャネルでなら学園側に、あの鬼教官に知られることはないだろうが……それ以外の薄いリスクを考慮した結果だ。

 

 

 

「でも、やっぱり……」

「あり得ないか? けどあり得ないなんてことはないと思うぜ? 絶対あり得ないとされていた男の操縦者が目の前に2人もいるんだからさ」

「!……そうね、そうかもね」

 

 

 

 余計なことを吹き込まないで頂きたいな一夏くん。そんな凰さんの思考に自由度を広げるようなことを。変な考えを持ったらどうしてくれる。

 

 

 

「京夜、人が乗っていないなら……」

「ああ、そうだな。()()()最大出力でも問題ないだろう」

「?」

 

 

 

 俺と一夏の会話に、意味不顔の凰さん。

 実は試合前、一夏の【雪片弐型】にはリミッターを掛けていたのだ。正確には『零落白夜』の最大出力の制限だ。競技用として扱うには威力が高過ぎで、下手をすれば絶対防御すらも凌駕して相手を殺傷してしまいかねないからな。だが、人が乗っていないのであればそんな事態を想定する必要もないだろう。それに……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「けど、どうすんのよ! このままじゃ――」

「確かにな……京夜、なんか良い策はないか?」

 

 

 

 相変わらずの丸投げ。一夏の脳って本当にツルっツルだな。まだISになれることが大優先なので、しょうがないかもしれないけど。ちなみに脳のしわは頭の良さに関係ないことが最近証明されたらしいが。

 ではでは作戦を発動するとしましょうか。題して「IS学園の救世主・織斑一夏、誕生!」って感じだろうか。

 

 

 

 

「俺が接近して足を止める。凰さんは衝撃砲で牽制してフォローしてほしい。そこを一夏が『零落白夜』で攻撃するって感じでどうだろうか?」

「けどアンタ、一夏と同じで初心者でしょ!? 危険すぎるわよ!」

 

 

 

 即反対の凰さん。一夏はともかく俺なんかを心配してくれるのはちょっと嬉しくもあるが、君たち2人でどうにもできなかったんだからさ。そんなことをホントは言ってやりたいが、そうもいかないよな。

 

 

 

「俺の『打鉄』が一番防御力が高いし、それに無理はしないつもりさ」

「……わかった。それでいこう」

 

 

 

 

 一夏の同意を合図に、俺は一気に所属不明機に詰め寄るべく加速する。この状況下。観察されている、監視されているこの環境では当然、本領発揮という訳にはいかない。だからといって一夏を勝たせる為に全力でフォローをしなければならないので、即戦線離脱という訳にもいかない。

 

 

 

「(茜、シールドエネルギー減少時に駆動エネルギーを少しずつ転化してくれ。監視されている前提で不自然にならないようにな)」

「(わ、わかりました!)」

 

 

 

 駆動エネルギーとは、IS自体を稼働させる為に必要な基礎エネルギーであり、PICを始めハイパーセンサーやスラスターなどに使用されている。シールドエネルギーとは別に蓄積されており、本来なら転化するなんてことはできないのだが……それは操縦者の制御ではできないというだけだ。

 俺の接近に、地上に立つ不明機はレーザーを放って対応してくる。その攻撃を僅かに掠りながら右手に近接ブレードを展開、相手の頭部に斬撃を繰り出した。

 鈍い金属音。長い右腕で俺の攻撃を阻む不明機。反時計回りに回転して裏拳を放つように左腕を振るってくる。

 その動きに、俺は肩部に浮く武者鎧のような物理シールドで防御態勢に入る。

 左側に受ける衝撃。その威力に弾き飛ばされないよう、ホバリングに意識を集中する。すぐさまの不明機の追撃には、凰さんの衝撃砲がフォローに入った。

 不明機の意識が俺から凰さんに向いたその瞬間、完全な死角からの一夏の攻撃。『零落白夜』での必殺の一撃が放たれるが、それでも反応し、回避する不明機。

 だが流石に多勢に無勢といったところか。僅かに一夏の刃は不明機の肩を掠めて破損させる。シールドエネルギーの減少と物理ダメージをハイパーセンサーで確認する。

 それから数回。同じような展開で追い詰めにかかるも、決定的なダメージが与えられずジリ貧状態に。俺たち3人は互いに会話を交わしていないが、ハイパーセンサーに表示されている一夏のシールドエネルギー残量に「このままでは……」と焦りを感じていた。

 一夏の攻撃によって削り取っているエネルギーより『零落白夜』発動にかかるエネルギーの方が多いからだ。このままでは先に『白式』の方が戦闘不能となってしまうだろう。

 やはり現段階での一夏の実力ではこんなもんか。俺が当初に考えていた作戦では、不明機を羽交い締めにするくらいに動きを拘束しなければ無理だろうと考えていたので、この結果は俺の見通しが間違っていなかったという証明とも言えるな。

 『零落白夜』での一撃は後1回くらいといった状況。残り1回の一夏の攻撃にオールベットできる程ギャンブラーではない俺はセシリアと箒の助力を組み込んで再編成した作戦を実行に移す。

 再び題して「IS学園の救世主・織斑一夏、誕生! PART2 ~幼馴染のあの子は俺が守る!~」って感じだろうか。

 俺は自身と不明機の配置を確認して再び詰め寄る。レーザーの雨を掻い潜りながら残り数メートルといった所で『瞬時加速』を使用して体当たりを繰り出した。肩に痛みを感じると共に互いに体勢を崩す。

 俺はそのまま後方に位置するAピット真下に大きく下がる。その動きに不明機は反応し、俺を追いかけるように距離を詰めてきた瞬間、アリーナに大声が響いた。

 

 

 

「一夏ぁっ!」

 

 

 

 アリーナ内の一夏と凰さん、そして不明機は動きを止める。その声の主に視線を奪われていた。俺の真上のAピットの、さらに上に位置する観覧席から大声を発した箒の姿に。

 

 

 

「男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」

 

 

 

 驚きによる間。動きの沈黙。それが最も顕著に表れていたのは所属不明機だった。頭部の複数のセンサーレンズは全て箒を捉えて見入っている。

 この勝機を、箒に囮紛いなことをさせてまで作ったこの隙を無駄にするつもりはない。

 

 

 

「セシリア!」

「はい!」

 

 

 

 プライベートチャネルを使用した俺の合図に、箒の真反対であるBピット真上の位置、現在所属不明機の背後の位置にスタンバイさせていたセシリアのレーザーライフルが火を噴く。2連射。放たれたレーザーは不明機の両足をスラスターと共に打ち抜き、膝をつかせた。

 この状況に危機感を覚えたのかは分からないが、不明機は残されたスラスターを吹かし、離脱の予兆を見せる。

 当然逃すわけにはいかない。飛び出す前に俺は腰下にしがみつく。俺の動きの抑制に、不明機は薙ぎ払おうと腕を振り回すが「させないわよ! 」と凰さんの衝撃砲がそれを阻止する。

 

 

 

「決めろ! 一夏!」

「――オオオッ!」

 

 

 

 俺の檄より早い反応を見せる一夏。右手に握られた【雪片弐型】は今までより一回り大きいエネルギー状の刃を形成していた。『零落白夜』を最大出力で展開している証拠だ。

 一夏の必殺の一撃は、左肩から右腰まで通り抜けて不明機を真っ二つにした。

 それを確認した俺は即座に離脱。切り分けられた頭部側の体半分が爆散した。残った左腕を含む下半身側の体もその場に倒れこむ。

 討伐完了。セシリア、箒を含む俺たち5人には安堵の表情を浮かべる。とりあえずなんとかなったようだ。

 

 

 

「(ギリギリですよ! シールドエネルギーも駆動エネルギーもほとんどゼロだったんですから!)」

「(ああ。茜のおかげでどうにかなった。ありがとな)」

 

 

 

 俺の笑顔で告げた感謝の言葉に、茜は照れ全開の表情を浮かべる。二度目の実戦でここまでの成果を得られるのは、茜の俺に対する理解が高いことに依る所が強いことを実感する。

 さて、ティーナの方はどうだろうか。そろそろそちらもフォローに……

 

 

 

「(きょ、京夜さん! まだです!)」

「(!?)」

 

 

 

 茜の言葉に俺は所属不明機に視線を移す。すると爆発せずに残された半身の左腕に高エネルギー反応。イタチの最後のと言うにはあまりにも強大なエネルギー。さらに最大出力形態(バースト・モード)へと変形させている。

 その狙いは一夏……ではなかった。乱入してきた箒でもなく、狙撃したセシリアでもなく、そして……ただの2番目の俺でもなかった。

 次の瞬間、レーザーは一直線に向かっていく。緊張が切れた状態でのハイパーセンサーからの警告。一夏を始め、アリーナ内の誰一人が反応できず目の前の状況に静止していた。だが俺の体はレーザーが放たれる前にもう既に動いていた。

 

 

 

「(茜! 残っているシールドエネルギーを全て駆動エネルギーに転化しろ!)」

「(そんなことしたら、京夜さん――)」

「(早く!!!)」

 

 

 

 転化されたエネルギーを全て『瞬間加速』に使用し、背中を盾にするかのように間に割り込む。今まで一度として呼んだことのない、呼ばないようしていた名前を叫びながら。

 真っ白になっていく視界。背中に受ける衝撃と痛み。熱。そんな中、僅かに見える涙を浮かべた彼女の表情が網膜に焼きつく。そして俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 




『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
 設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。


【ブログ名】妄想メモリー
【URL】http://mousoumemory.blog.fc2.com/

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