インフィニット・ストラトス a Inside Story 作:鴉夜
また、オリジナル解釈が多めです。矛盾や、つじつまが合わない等はあるかと思いますが、本当にご勘弁ください(泣)
チュンチュンチュン……
雀のさえずりが聞こえる。ブラインドの閉じられた窓の隙間から清々しい光が差し込んでいた。暦の上では初夏とはいえ、体感的にはまだまだ春の朝日に眩しさを感じ、目を細める。
椅子に腰かけていた俺は、操作していた備え付けの端末のモニター端に表示されている時計で時刻を確認する。6時半過ぎ。どうやら徹夜してしまったようだ。
背もたれに寄りかかりながら両手を上げて伸びをした後、キーボード横に置いてあった目薬を両目に点す。流石に部屋の中では眼鏡をしていない。元々そんなに目は悪くないしな。
薄暗い部屋の中、立ち上がり窓際のベッドで寝ている箒を見る。布団や寝間着には一糸乱れなく、真上を向いて安らかな寝息を立てていた。相変わらず寝相の良いことだ。
俺は起こさないよう音を立てずにキッチンの方へ移動する。
IS学園の学生寮の各部屋には、入ってすぐ右側に簡易型のキッチンが備え付けられている。火を使わない所謂IHクッキングヒーターが2口に、さほど広くないシンク、そして少し小さめの2ドア冷蔵庫と電子レンジ。以上。調理器具等々は自分で持ち込まないといけないそうだが、学園内の購買というか売店にはまな板や包丁、鍋やフライパン、炊飯器や電気ポットなんかも販売されているので、本格的なものが使用したいという料理マニアの生徒でもない限りは外にわざわざ買いに行って持ち込む必要はないそうだ。
ちなみに部屋に入ってすぐ左側は洗面所とシャワールームになっていて、ある一点を除けば、内装に高級感はあるものの一般的な1kアパート並の設備と言えるだろう。ある一点のトイレだけが共用となっており、各階の両端に2か所あるそうだ。
トイレについて詳しく知らないのは、そのトイレは当然女性用だからだ。元々女子寮だからなココは。男性用は校舎の1階にある教員用のみとなっており、この距離の移動が毎回結構面倒くさい。その距離を歩く度、排泄行為をしないアイドルに生まれたかった、などというバカなことを思う俺を許してほしい。
俺はキッチンに置いてあるコーヒーメーカーのスイッチを押す。これは俺が持ち込んだものだ。名付けて『如月ゆきこ』。フルネームではなく、名前だけを「ちゃん」付けではなく、「たん」付けで呼んだとしても別にスノーマークの回し者ではない。あしからず。
豆を挽く所からドリップまで全自動のコイツの最大のウリは、何と言っても静かであること。自動でも手動でもミルを使って豆を挽くと多少なりとも音がするのだが、コイツはほぼ無音に近い。お陰で箒を起こさず挽きたてのコーヒーが飲めるって訳さ。
数分後、出来上がったコーヒーを近くに置いてあるカップに注ぎ、手に持って香りを堪能しつつ、一口含む。美味い。いい眠気覚ましになりそうだ。
カップ片手に部屋へと戻った俺は、何気なく箒の寝ているベッドの端に座る。1メートルはないくらいの距離にある箒の顔を見つつ、指で彼女の額に掛かる前髪を分けるように触れた。
いつも思うが、整った綺麗な顔をしている。箒には「笑顔が可愛い」といつも言っているのだが、いつも眉間にしわを寄せているんだよな。それについて「誰のせいだ」と言われるのもまた、いつものことか。
この「いつも」は、いつまで続けることができるんだろうと思いつつ、現実の厳しさに何度となく舐めさせられてた苦汁を思い出し、コーヒーの苦みと共に舌で味わって、喉へと流し込む。
すると箒が眉を歪める。どうやら夢の世界から現実に呼び戻してしまったようだ。
「……ん」
「起こしたか? おはよう箒」
「……ああ、おはよ…って、な、何をしてるんだ!?」
寝ぼけ眼であったのも一瞬。箒は薄手の掛布団で胸元を隠して、体を少しだけ起こし後方に引く。顔を少し赤らめつつ、前髪を梳かして冷静さを取り戻そうとしているその姿に、相変わらず可愛いリアクションだなぁと思う俺の中のイタズラ心が顔を見せる。
「箒の寝顔に見蕩れてたんだよ」
「なっ!? ね、寝が!? えっ、み、見蕩れ――」
「思わずキスしたくなった」
「!!!――――」
真顔で、若干微笑みつつそんなことを言う俺の発言に、箒の赤みを帯びた顔の形容詞が「少し」から「凄く」に変化し、布団に包まって隠れてしまった。どうやら相当恥ずかしかったようだ。俺の性格を分かっている箒は、からかわれているということを理解しているだろうが、リアルにそのシーンを想像してしまったのだろう。初々しい乙女心ってヤツだ。
俺は立ち上がり、布団に包まってシルエットだけの箒に話し掛ける。
「箒も飲むか? コーヒー。美味いぞ?」
「……もらう」
箒はゆっくりと布団から顔を半分だけ出してこちらを見ながら呟く。そんな萌え萌えキュンな箒の姿に、抱きしめたい衝動に駆り立てられる気持ちを抑えつつ、俺はキッチンへ向かう。
箒専用のカップにコーヒーを半分程注ぎ、近くに置いてある小瓶から角砂糖を2つ投入、さらに冷蔵庫から牛乳を取り出し、カップへ注いでスプーンでかき混ぜる。キョウちゃん特製カフェオレの出来上がりだ。
箒はコーヒー自体があまり得意ではないそうだ。別に無理して飲まなくてもいいぞ、と毎回言っているのだが、それでもと言うので俺は比較的飲みやすいであろうカフェオレを毎回提供している。
それについて話を聞いていく内に分かったことだが、どうやら俺が好きなものを理解したいということらしい。いじらしいというか、そんな健気さも箒の魅力の一つだ。
再び部屋へと戻り、箒にカップを手渡した俺は自分のベッドに腰を下ろす。受け取った箒は牛乳が混じったことにより、温度の下がったカップの中の液体に口をつけた。
「……美味しい」
「そいつは良かった」
箒の賛辞に笑顔で返す。どうやら落ち着いたようだ。よかったよかった。からかった俺が言うのは間違っているかもしれないがな。
俺はカップに残ったコーヒーを胃に流し込み、立ち上がる。
「先に行って席を取っておくから、それ飲んで着替えたら来いよ」
「わかった」
俺は空けたカップをシンクに置いて部屋を後にし、食堂へと向かう。俺の腹は夜食なしの徹夜で、獰猛な肉食獣の唸りのような警鐘が鳴り響きそうな程にペコペコだ。
IS学園では1時限目の前にSHRがあり、8時半から始まる。それまでに教室の自分の席に着席していなければならないので、身支度をして自分の部屋を8時くらいに出るのが平均的な時間だろう。そこからさらに逆算すると朝食は7時半くらいに取る生徒が多く、その時間が朝の食堂の混雑ピークとなる。
俺と箒もまた7時半前くらいに食堂に行く(連行される)のだが、そんなピーク時間でも俺たちはいつも大体同じ席に座ることができていた。
なぜか。それはセシリアがいつも俺たちの席を人数分確保してくれているからだ。本人曰く結構早起きな生活習慣らしく、毎朝早めの時間から食堂に来て朝のティータイムを満喫しているらしい。
食堂に着くと、朝の定位置となりつつある奥の6人掛けのテーブル席にセシリアの姿が見て取れた。遠目からでも分かるほどに鮮やかなロールがかった金髪が朝日に照らされて、まるで輝いているようにも見える。
だがそんな優雅で、神々しささえも感じる佇まいとは裏腹に、大きな欠伸を何度となくしている。その様はとても早起き上手の朝型人間には見えない。
俺はセシリアに気付かれないように近づき、声を掛ける。
「おはよう、セシリア」
「ふぁぁぁぁ……、!? きょ、京夜さん!?」
手を当てはいたものの、大口空けての欠伸を異性に見られるのは相当恥ずかしかったようだ。それにまさか俺がこんな時間に来るとは思ってもいなかった驚きと相まって、セシリアの顔はお祭り騒ぎといった感じだ。
セシリアの反応に、俺の加虐愛が満たされて、笑みがこぼれそうになるのを抑えつつ、隣に座る。
「……いつもありがとな、セシリア」
「! ……いえ、そんな……わたくしが、したくてしていることですから……」
俺の謝意に、彼女は顔をほんのり赤くしつつ健気な返答。顔を見つめ合いながらの短い会話。その数秒のやりとりだけで俺の言いたいことを理解し且つ、それに対して言い訳をしないセシリア。知り合ったばかりで、一緒に過ごしてきた時間は到底長いとは言えないが、互いのことが理解できるようになってきていることに、俺の心は穏やかな気持ちで満たされてく。
するとセシリアは少し俺に顔を近づけて、観察するような目を向ける。
「京夜さん、もしかして……寝ていらっしゃらないのでは?」
「ああ。ちょっとだけの夜更かしのつもりが、徹夜してしまった」
「大丈夫ですか? 睡眠は大事ですわ。もっとお体を大切になさってくださいね」
少し心配そうな顔つきで、俺を気遣う発言をする。正直、それをこんな時間に食堂で大きな欠伸をしている貴方が言うんですか? と思ったことは否定できない。もちろんそれを言うなんて無粋な真似はしないけど。俺は朴念仁ではないからな。
「心配してくれてありがとう。大丈夫さ。けど――よくわかったな。寝てないって……」
「京夜さんの目の下、いつもと違って隈が酷いですわ」
そんなに酷いのか。そりゃ徹夜でモニターを見続けていればそうなるか。確かに俺は夜更かし必須の生活リズムではあるが、夜中端末にかじりついているようなネトゲ廃人とかの部類の人間ではない。やらなきゃいけないことをできる時間にしているだけさ。それはさておき……
「いつもと……か。セシリアはいつも俺を見てくれていて、俺のことを知ろうとしてくれているんだな。嬉しいことだ」
「え!? あ、あの……それは――」
「俺もセシリアのこと、知ってるぜ? 実は泣き顔も超可愛い」
「!!!――――――」
カーァという表現が適切であろう勢いで、顔色を変化させるセシリア。可愛いヤツめ。
俺はその後、照れくさそうに、そしてそれを誤魔化すように拗ねたような表情をする彼女と楽しげな会話を続ける。新しい出会いから生まれた何気ないこんなやり取りが、いつしか当たり前に存在する「いつも」になったら喜ばしいことだと思いつつ、それはお伽の中の話と自身の心に釘を刺す。
「……ずいぶん楽しそうだな、京夜」
そこには武神がいた。武道をつかさどり、戦の神と言われ……ない。間違えた。可愛い篠ノ之箒さんだった。手には鉄板の和食メニューが乗ったトレーを2つ持っている。わざわざ俺の分まで持って来てくれたようだ。
「おはよう、セシリア」
「おはようございますわ、箒さん」
箒は不機嫌オーラを身に纏い放出系念能力で俺に攻撃しつつ、挨拶を交わす。2人のその会話だけ聞いていれば、聴覚だけで判断すれば、それはなんてことはない、クラスメイト同士の朝の何気ない挨拶に感じるだろう。だが、そこに視覚情報が入ると、とてもそんな穏やかな雰囲気に感じないのはなぜだろうか。目と目が火花を散らし、正に一触即発といった状況。ここで君らがバトってどうする。本日のメインバトルを繰り広げるお二方がこちらに向かってきたぞ。
「ウッス! おはよう京夜、箒、セシリア」
1組と2組のクラス代表のお出ましだ。2人の登場に箒は俺の隣に座る。一夏と凰さんもまた、空いている俺たちの前の席に着いた。
それからしばらくの間、一夏を中心に歓談。だが俺はその何気ない会話の中での、時偶チラ見の視線に少し困惑気味だった。左右の箒やセシリアではない。当然一夏でもない。凰さんからのものだ。
先日の屋上での一件以降、こうして一夏が連れてくる彼女と行動を共にする時はいつもそうだ。実際の所、何か直接言ってくる訳でもなく、視線を合わせようとする訳でもないのだが。
当然俺から話しかけることもないので、彼女が何を考えているかは推測の域を出ないのは確かだが、恐らく屋上での心地良くさえ感じたあの空間に、何か思う所があったのだろう。彼女が気にかけていたことに対して助長するような行為ではあったことを、後になって後悔した事実を否定するつもりはないが……まぁしかたない。
そんなことを思っている俺を余所に、会話は今日のクラス対抗戦の話題に。一夏は強い眼差しを凰さんに向ける。
「絶対俺が勝つからな!! 鈴!!」
「まぁ楽しみにしてるわよ。……っていうか一夏、もちろんあたしは負けるつもりないけど、いくらなんでもちょっと燃え過ぎじゃない?」
「当たり前だぜ!! 食費が掛かってるんだからな!!」
何なの、この庶民派ヒーロー。悪の組織に子供が誘拐されそうになっていても、スーパーのタイムサービスを優先しそうなヒーローってどうなんだよ。
ちなみに一夏は甘いものがあまり好きじゃないからクラス対抗戦優勝賞品の学食デザート半年フリーパスに心惹かれなかったらしい。負けても損はしないしな。だが凰さんとの賭けは、勝てば1食タダに、負ければ自腹オゴリとなる為、相当燃えているそうだ。先日特訓中に熱弁されたから間違いない。
まぁ熱血できるなら理由はどうでもいい。そんな財布のヒモが固い主夫ヒーロー・一夏の安全と、安心と、安泰を約束しつつ、安堵できる結果を作るのが俺の仕事ということに変わりないのだから。
◇
IS学園における1学年あたりのクラス編成は『操縦者育成科』が8クラスと『整備科』が4クラスの計12クラス。1クラスあたりが約30名なので1学年約360名、全生徒数は約1080名といった所。世界各国の少女たちが受験し、その狭き門を潜り抜けた本学園の生徒たちは、その時点で既にエリート集団と言える。
さらにその中でもクラス対抗戦に出場する育成科の各クラスの代表に選ばれる生徒は、座学・実技共にトップクラスの成績を修めているのは間違いないだろう。羨望の眼差しを浴びるクラス代表の人気は実力と共に当然高い。
だがそれは一般的な話。我が1年1組のクラス代表、存在自体がイレギュラーな男性操縦者である織斑一夏は、お世辞にも成績優秀とは言えないのだが、既にその人気だけはハンパないことになりつつあるようだ。
それを証明するかの如く、一夏の1回戦である1年生クラス対抗戦・第1試合が行われるここ、第2アリーナは全席満員だ。対抗戦に参加しない一般生徒の観覧・応援については自由参加であるにも関わらず立ち見も出るほどの盛況ぶりで、既にアリーナの中央あたりにスタンバっている一夏に黄色い声援があちらこちらから飛び交っている。
イケメン一夏にキャーキャーと声援を送るその姿に、優等生であるIS学園の女生徒も一般的な女子高生となんら変わりないなぁと感じつつ、俺は箒、セシリアと共に女子で溢れかえっている観覧席に座って一夏の試合開始を待っている。ココから見える限りではあるが一夏の顔には、自分の凄まじき人気による動揺から来るものなのか、若干の緊張が伺えた。
すると俺の脳内に騒がしき相方たちが帰ってきたようだ。
「(おつかれ。どうだティーナ、準備は万全か?)」
「(ええ、完璧よ。ちゃんと京夜が大好きな勝負下着の縞パンにしてきたわ!)」
「(グッジョブ!!!)」
俺の脳内で展開されている映像をお見せできないことが残念だ。
「(それはさておいて……どうやら首尾良くいったようだな)」
「(そうね。軍事系の高性能基だけに絞っても350基以上あったし、常時接続可能状態を維持しつつ、自己監視機構を回避し続ける為に基礎プログラムからイジる必要があったけどね)」
「(昨日の夜からの短い時間でそこまでできるのはティーナくらいだよ。流石だ)」
「(当ったり前じゃない! 私を誰だと思ってんのよ)」
凹凸の乏しい胸張って自信満々のティーナ。貴方の出来の良さを誰よりも知っている俺は頼もしい相方を持ったと世界中に自慢したいほどだ。そのちっぱいも含めてな。
俺はもう一人の相方に目を向ける。
「(茜の方はどうだ? 上手くいったか?)」
「(あ、あの……京夜さん。ご、ごめんなさい!!)」
「(ん? どうした? ダメだったのか?)」
「(あの……その……私、いつも浴衣なので、その……下着……つ、つけてないんです!)」
「(がはっ!?)」
俺の脳内で展開されている映像をお見せ……できるか!!!!
ウソです。ごめんなさい。そんなR18指定確定になりそうな光景にはなってません。恥ずかしそうにしているいつも通りの茜の姿だけです。だがその発言だけで俺は脳内で鼻血が大放出状態だ。脳内で出血ってそこだけ聞くとヤバくない? って思ったのは俺だけではないはず。
「(ふっ……俺にダメージを与えるとは……茜も成長したな……。コホン、じゃあ茜、上手く行ったんだな?)」
「(は、はい。大丈夫だと思います。最上位権限をティーナ先輩に直結して、全システムの表層に偽装機構空間領域を展開してあります。内外部からのどのようなアクセスにおいても、気づかれない……はずです)」
自信なさげに俯き加減で報告する茜に、俺は「茜なら大丈夫」と声を掛ける。それを聞いた茜は顔を上げて満面の笑顔を俺に見せた。
「(京夜の方はどうなのよ? できたの?)」
「(なんとかな。あとは茜に読み込んでもらえばOKだ)」
「(わ、わかりました!)」
ティーナの問いに、俺は答えて茜に徹夜で作成したプログラムを渡す。受け取った茜は自身にインストールを開始した。このプログラムはISを使う以上、必要不可欠であり、必須条件ともいえる。それについてもまた追々説明していくことになるだろう。
それはさておき、ここでは以前話していた俺の中での懸念材料について語っておこうと思う。
それは「織斑一夏の存在が与えた影響」についてだ。俺とは違って世界中に大々的に発表された『世界初IS男性操縦者』を、ISに携わる国家・企業は、
そんな一夏に降りかかる危険が最初に訪れる可能性として一番高いと考えているのがクラス対抗戦だ。
なぜなら、イレギュラーだったクラス代表決定戦とは違って、クラス対抗戦は公開されている学校行事予定表に載っており、一番初めにISを使用した行事だからだ。全校生徒だけでなく、各国のIS関係者や関連企業の人間など、多くの人間がIS学園の行事には集まる。周囲の目を集めたい場合でも、欺きたい場合でも人の密集する場を狙うのは一般的な心理における選択肢の有力候補といえるのではないだろうか。
『それでは両者、既定の位置まで移動してください』
流れるアナウンス。それを聞いたアリーナ中央の2人は、地より足を離し、間合いを少し広げながら空へと上がっていく。一定の高度を保ち、その動きを止めた。
遠目からでも分かる一夏と凰さんの2人が作る張りつめた空気に当てられた訳ではないが、俺の中にも少しばかり緊張が生まれる。そして俺は今後の現実を受け止める準備を再度行う。
恐らく今日、この時から俺の「いつも」は徐々に失われていくのだろう。だが俺の意思は変わらない。俺の根幹はいつだって揺るぎ無いものなのだから。
そんな決意を、ここでは敢えて一夏の言葉で語らせて頂こう。後で見させてもらった、セシリアとの代表決定戦での言葉だ。
『それでは、試合開始』
「俺も家族を守る。」
俺は皆を守る。救ってみせる。強欲だと言われても、命も心も運命さえも全部、救ってみせるさ。
『インフィニット・ストラトス a Inside Story』は自身のブログでも掲載中です。
設定画や挿絵、サブストーリーなんかも載せていくつもりですので、良かったらそちらもご覧戴けると嬉しいです。
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