BLEACH Fragments of Remnant   作:ヴァニタス

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冥き闇の地にて

「もう一度問う――貴様は何者だ」

 

 不動の月を白が斬り裂く。満ち足りた円を削るが如く月を二分に両断し、冷たい光が降り注ぐ乾いた砂漠に影の雫を滴らせる。影が白い流砂に沈み込み、完全な黒となった時――中性的な耽美なる声が、止まった大気を震え上がらせた。

 月を二つに裂く白は、鮫の牙の如く研ぎ澄まされている。右腕と一体化したその刃に巨大な巌さえも押し流してしまいそうな、美しくも恐ろしい密やかな(みどり)の光彩をのせて。命少ない餓狼の男を指し示しながら、最上級大虚(ヴァストローデ)は冷ややかに彼を見下していた。

 

「…………」

 

 その無音の圧を発する眼に呑みこまれる男、御蔭丸は、少しだけ眼を細める。呼吸は整っているが、身体は砂と血の混ざった泥と、凄まじい損傷を外気に晒す有様だ。上半身は纏う衣服すらなく、下半身の死覇装は襤褸(らんる)も同然、獅子か虎と食らい合いをしたが如き容貌の彼だったが、その額から血が流れ込む紅い瞳は欠片も恐れを抱いてはいなかった。その代わりに、別の感情が宿っているわけでもなかったが。

 ――ヴァストローデか……随分とまあ、星の巡り合わせが悪い。

 無論、御蔭丸は己の現状を認識していないわけではない。むしろ正しいという言葉が割に合わないくらい、正しく今を理解している。すなわち、絶体絶命――どうしようもなく詰んでいる事を、痛いほどよく分かっていた。

 

 御蔭丸は今、五十近い最下級大虚(ギリアン)数十体と中級大虚(アジューカス)との戦闘直後でかなり疲弊している。霊力は残り僅かで、肉体もとても戦えるような状態ではない。その上アジューカスに融合された右腕は封印しているため、実質左手一本で戦闘をしなければならないのだ。アジューカスの更に上位に位置する、虚圏(ウェコムンド)に数体しか存在しないと云われるヴァストローデを相手に、である。

 その霊圧は並みの隊長格を超えるとされており、彼は今見聞に留めていたその情報を直接肌で感じていた。元柳斎には及ばないが、霊圧で身体が灰になってしまいそうな錯覚。並みの死神ならば即刻昏倒してもおかしくない、底知れぬ力を有するヴァストローデを前に――彼は暗然と、不気味なまでに慈愛に満ちた笑みを、傷だらけの顔に浮かべた。

 

「……ッ」

 

 ヴァストローデの刃の切先が、僅かに揺れる。敵意を向けられて笑うという彼の行動がまるで理解出来なかったからだ。威嚇をして突撃してくるか、降参の姿勢を取るか、一目散に逃走するかなら、まだ分かる。鼠が獅子を前に取る行動を思い浮かべればせいぜいがそんなものだろう。

 だが、彼は笑った。だらりと力の抜けた腕に掴む刀を構えもせず、微塵の悪意も存在しない慈母の笑顔を、何の躊躇いもなく形作ったのだ。酔狂を超えた気が狂ったとしか思えない彼の挙動を目にして、一体どんな反応を返せばいいのか、ヴァストローデは一瞬分からなくなっていた。

 その心の隙間を縫うように、風穴があきかけている喉から言葉を響かせる。浮かべる笑みと同等の優しさを含んだ薄気味悪い音を、眼前のヴァストローデに投げかけた。

 

「……色々聞きたい事はあるでしょうが、まずは質問にお答えしましょう。僕は“死神”です。尸魂界(ソウルソサエティ)と現世の調整者(バランサー)であり、世界を護る大儀を背負う護廷十三隊に属する、死神の一人でございます」

 

 月の光を反射する淡い黄金の長刀を左手だけで鞘に納め、彼は慇懃に頭を下げた。非の打ちどころのない完璧な辞儀。自らに敵意と刃を突きつける相手に返す反応では絶対に在り得ない男の行動に、我に返った彼女(・・)は僅かに露出している神秘的な褐色の肌に苛立ちを刻む。

 

「貴様……巫山戯(ふざけ)ているのか」

 

 ガシャン、と刃と右腕の繋ぎ目が音を立てる。おそらくは虚特有の仮面が鎧のように全身を覆っているその姿は白く硬質で、他を寄せ付けない威圧感を放っている。一方でその鎧は余分な空洞が出来ないよう、肉体にぴっちりと貼りつく造りをしているので、彼女の艶めかしい肢体を強調していた。

 ――こんな状況でなかったら、思わず立ち尽くしていたかもしれんな。

 まるで心知らぬ人魚のような謎めいた美しさを纏うヴァストローデを優しい目付きで眺めながら、御蔭丸はこんな状況でなかったら見惚れていたと笑みを深くする。死神である彼が、もしも普通に出逢っていたら虚に心奪われたと考えたのだ。心臓を掴まれているような修羅場の中でそんな事を思う異常性、それは言葉にせずとも彼女にはひしひしと伝わったらしい。陰影が強くなるヴァストローデの眉間に気付いて、御蔭丸は嘆息するように微笑んで左腕だけを天に掲げた。

 

「別にふざけてなどおりませんよ。貴女のような強大な虚を相手に(たわ)けた態度などとれる筈もありません。僕はただ貴女に殺されまいと、誠心誠意命乞いをしているだけです」

「命乞い……? それは本気で言っているのか?」

「はい、勿論でございます」

 

 とてもそうしているとは思えない死神の態度に、彼女は怪訝そうに眉根を潜める。それもそうだ、片手を上げて笑いながら語らう男を見て、命乞いをしていると思う存在がいるだろうか。いや、いない。彼女のような怪物(ホロウ)ならば尚更である。

 仮に御蔭丸の言い分を信じたとしても、これは勝てる見込みの無い相手にする態度ではない。これを命乞いと呼ぶのなら、喉を掻っ切る仕草をして親指を地に落とす挑発でさえ哀訴嘆願に値する。それくらい彼の行動は常軌を逸していた。

 加えて、御蔭丸は今も微笑み続けている。毒気の無い、敵意も何も無い柔らかいだけの笑顔が、彼女にはかなり薄気味悪いものに見えたようだ。不可解と煩わしさを同居させていた彼女の瞳に嫌悪が混じる。そして忌々しげに眼を逸らして刃を降ろし、頭部から伸びた長い尾ヒレ状の鎧を大きく揺らして背を向ける。

 

「……気味の悪い奴だ」

 

 冷たくそう言い捨てて、彼女(ヴァストローデ)は歩き去っていった。津波のような霊圧が遠ざかっていくのを感じて、御蔭丸はほっと一息つく。瞬時に笑みを消した後には荒れた顔が残っていたが、そこには確かな安堵が漂っていた。

 正直な話、ここまで消耗した状態でヴァストローデと遭遇して生きられるとは思ってなかった。遭遇するのがヴァストローデでなくともアジューカスや虚の群れとぶつかれば即、死に繋がる。死神等の密度が高い魂を好む虚相手に、交戦を避けて生き残る事など通常では考えられないのだ。

 だが結果として、彼は戦わずに生きる事が出来た。運が良かったとしか言いようがないが、彼の対応が奇想天外だった事も遠因にはなっている。

 

 御蔭丸は異質だと分かってあの態度を取っていた。これまでも似たような態度はとってきたが、今回のは少し違う。今までは殺してもらう(・・・・・・)為にあえて諦念に身を委ねていたが――あのヴァストローデに対する態度は、正真正銘生きる為にやった事だ。

 ――あのヴァストローデ……俺に刃を向ける割には、殺気が無かったからな。

 周囲を警戒しつつ、御蔭丸はさっきのヴァストローデの顔を思い描く。上半分しか見えない顔には敵意や戦意、彼への警戒心がありありと浮かんでいたが、その影にはひっそりと、どこか戦いを嫌がっている気配が見え隠れしていた。戦闘への厭悪という点で己と似通っていたせいか、彼はその匂いを即座に察知出来たので、一か八かで刀を納めて先の行動をとったというわけだ。

 ――無理に戦おうとしないのなら、戦いの意志を削ぐ真似をすればいい。

 ――その上で嫌悪を植え付けられれば、見逃す事もまた有り得る。

 ――要は関わり合う事が無駄であると、指し示せればいいのだから。

 

 命を預けるには危険すぎる賭けだったが、生き延びられたのだから文句をつける必要もない。そも、文句が欲しいなら生きて尸魂界に帰らなければな――と、周囲の霊圧を捕捉した御蔭丸は、とりあえず虚の眼から逃れるように移動する準備をする。その前にもう一度、彼女の表情を思い返した。

 荘厳で非の打ち所のない美しき最上級大虚(ヴァストローデ)。深い水面の底の様に冷たく、それ故の澄んだ美貌を持つ彼女は、何処か張り詰めた雰囲気があり――魂無き女神の彫像が死と戦慄を命の源に動いている様にも、在る筈の無い心を巨大な檻に閉じ込めている様にも感じられた。

 ――だからどうした、という話だがな。

 ――この子と対話してから、妙に心が昂っている。

 

 腰に差した斬魄刀の、柄を握る。彼の持つ力の象徴――敵と戦い、敵を斬る為の道具である斬魄刀は、『浅打』であった頃よりも彼に沿った造りになっている。より大きく、より長く、生前に使っていた斬馬刀の役割を果たしていた刀のような姿になっていた。

 だが彼は、彼の斬魄刀の名を知らない。本来ならば精神世界で対話し、同調する事で初めて真の力を引き出せるのだ。それが名も知らぬ状態で形だけ変容していると云う事は――

 

「――これは所謂(いわゆる)、『半始解』という状態なのだろうな」

 

 少々憮然とした表情でそう呟く。静かに空気を震わせるその声には、あまり好ましくないといった響きが含まれていた。

 半始解とは、斬魄刀の通常状態と始解状態の中間に位置する解放形態だ。実例はほとんどないが、彼のように名を知らぬまま形を変える事もあれば、斬魄刀の名を知り、解号を唱えても何らかの要因で中途半端に解放された状態になる事例もある。原因も様々なので一概に解決できない問題だ。

 ただ、彼のように名を知らぬまま形が変わる場合、斬魄刀との対話が足りないか、極限の状況下によって覚醒した“戦いの本能”に斬魄刀が引き摺られた事が原因である事が多い。だからいずれにしろ対話を重ねればいずれ完全始解状態へ移行できるだろうが……彼にそんな気はさらさらなかった。

 

 ――積極的にはなれんな。

 ――誰かの願いを叶える以外で、戦いたくはない。

 もしも、誰かの願いを叶えるために始解をする必要があるのなら、彼は迷わずそうするだろう。彼にとって己は全てのものの最下層に位置する無意味な存在だからだ。だが逆に言えば、他に優先するものがない状況なら彼自身の心が首をもたげてくる。戦いを厭悪する意志、戦いを憎む心が。

 ――とにかく、今はこいつに構っている暇はない。

 ――さっさと潜伏に都合の良い場所を探して傷を癒そう。

 弾くように柄から手を離して、御蔭丸は隠遁の鬼道を発動する。両手の平に光が生まれ、淡く全身を包み込むと、彼の身体は霧が風に散らされるように消えて見えなくなる。そして世界の写像から蒸発した御蔭丸が、歩き出そうと足を踏み出した瞬間――黒と白の地平線の彼方で、複数の霊圧が確かな力を持った風となって響いてきた。

 

 ――……これは……

 ちらり、と首を動かして霊圧が響いてきた方角を遠望する。無窮の砂漠と不動なる夜が延々と続いている視界の遼遠で、複数の霊圧がぶつかる余波が風となって砂を巻き上げてくる。吹き荒ぶ砂礫から左手で眼を守る御蔭丸は、腰の弊衣と傷痕に砂をまぶしてくる嵐の中、不気味なまでに穏やかな微笑みを頬に刻んだ。

 ――もしもあのヴァストローデが俺の思った通りの奴なら、行ってみる価値はありそうだ。

 斬魄刀の鍔に手を掛け、不毛の砂漠を踏み締める。戦いの気配などない、安穏を湛える表情のまま――御蔭丸は、戦地へと駆けだした。

 戦いを厭う心はそのままに。

 それが、彼女の願いを叶えるために必要な行動だと断じて。

 

 そして断じたが故に、御蔭丸は気付かなかった。

 彼の心に引き摺られ、斬魄刀が真の姿に近づいた様に。

 彼が断じた心もまた、斬魄刀に毒されているという事に。

 

 

 

   φ

 

 

 

 鋼の爆ぜる音色が響く。あらん限りにぶつかり合い、理を無視する頑冥たる夜に刹那の火花を打ち上げる。一閃、二閃、三閃と音撃の彼方で舞い散る鋼の舞踏会は、大気を泳ぐ終焉の牙によって打ち払われた。

 苦悶の絶叫が夜に吸い込まれ、その断末魔すらも両断される。脳天から股間まで一直線に噛み裂かれた蜥蜴型のアジューカスは、濁った赤黒い血を断面から一気に噴出させて絶命した。白い砂漠が血に塗れ、辺りに鉄と腐肉の臭いが急速に漂う。思わず眼を逸らしたくなる酸鼻な光景を生み出した、彼女(ヴァストローデ)の流麗たる白き身体にも腐った血肉が降りかかる。

 命をその手で断つ感触、耳を離れぬ絶叫と身に染み憑いた血と肉の臭い――口元で牙を為す仮面にかかった血痕の裡で、冷血を巡らす双眸は底の見えぬ血の海に沈んでおり。それでも彼女は灰の浮かんだ地獄の淵で、痛ましいほど華麗に舞った。

 

「くそっ! 雌如きがなめんじゃねえぞっ!」

 

 群がっていく、蟻の如く。遥か高みから見下ろす鮫を掴み落とさんと、数十のアジューカスが冷淡に満ちる彼女に飛び掛かる。蝙蝠の姿をした鉤爪の脚を振りかざす者、頭から生やした牛の二本角で突進する者、巨大な蚯蚓(みみず)の身体で足首から締め上げようとする者――膨れ上がった殺意をなりふり構わず叩き付けてくる心無き怪物の群れは、彼方に舞う彼女に傷一つつけられず命を奪われた。

 蝙蝠は鉤爪が届く前に牙に食われ、牛は角を容易く止められ首を落とされる。絞め殺そうとして飛び掛かった蚯蚓は空へ跳躍されて避けられ、他のアジューカスの死体に押し潰されたのち、彼女の右手と一体化した牙より放たれた虚閃によって跡形もなく消滅させられた。その攻防が繰り広げられた時間は十秒にも満たず、それが数十のアジューカスと彼女(ヴァストローデ)の戦力差を如実に表している。

 

 出したかどうかもわからないくらい透明な吐息をついて、彼女は刃の血のりを払う。水平に振り抜いた白を取り戻す己の牙を、ほんの少しだけ構えるように降ろして、鋭く煌く翠の瞳を動きの止まった敵に突き刺した。

 アジューカスの数は未だ数十、今の圧倒的な惨殺を目にして多少の恐れが漂っている。だが、戦意は失せていない。ちっぽけな矜持(プライド)が逃走を許さないのか、怒りに駆られて正常な判断力を失っているか、あるいは冷静に殺す算段をつけているか。殺気で仮面を歪めながら様子をうかがうアジューカス共に共通しているのは、誰一人として仲間を殺された義憤を抱く者などいないという事くらいだろう。

 あくまでも己の事だけを考える。何処までも自己中心的な虚らしい在り方に、彼女はひたすらに冷たい視線を送り――意図的に抑えていた霊圧を解放した。

 

「――――ヒィッ!?」

 

 それは誰の声だったのか。引きつった悲鳴は瞬く間にある感情をアジューカスのあいだに伝播させる。すなわち恐怖――人間の脚に踏み潰させる直前の蟻が思う死への直感を、その場にいた彼女以外の全ての魂魄が強制的に思い知らされていた。

 空間が耐えきれないと震えている。彼女の放つ霊圧は、空の全てが大海となり大地を飲み込むような、想像の埒外をゆく隔絶した力を示していた。その場にいるだけで肉体が圧殺されるような錯覚。心に淀んでいた恐怖を揺り起こされたいくつかのアジューカスが、脱兎の如く逃げ出し始める。その弱腰に怒号を発するアジューカスも居たが結局、残ったのは十弱のアジューカスだけだった。

 

「このッ……弱え雌風情が……ッ!!!」

「…………」

 

 屈辱に塗れた形相で声を震わせるアジューカスを、霊圧を閉じた彼女は冷ややかな眼で凍りつかせる。それで蛇に睨まれた蛙のように身体を硬直させるも、すぐさま怒りと殺意で力を漲らせた。彼女もまた、直立不動の姿勢のまま右手の牙を真横へ水平に伸ばす形で構え――再び、血で血を洗う怪物の宴へ身を晒す。

 その開幕を告げるように、三体のアジューカスが立て続けに虚閃を放った。禍禍しい霊圧が籠もった虚閃は静止する彼女を飲み込んだかに見えたが、そのまま砂漠を吹き飛ばして砂煙が立ちのぼった直後、燕が地表を飛び翔けるように彼女は煙を突っ切って、一体のアジューカスに急接近した。

 

「なっ――……」

 

 亀型の仮面の口腔から虚閃を撃ち出したまま止まっていたそのアジューカスが驚愕の悲鳴を上げる前に、首と胴体が泣き別れになる。綺麗に切断された頸椎の断面がまだよく見えるうちに、彼女は首を失くした胴体を足場に水平に跳躍し、虚閃を放ったもう一体のアジューカスを狙う。亀のアジューカスと同じく撃ち込んだまま硬直していたそいつが一刀両断されてようやく、首を失くした胴体から血が噴き出した。

 数瞬で二体を斬った彼女が、そのまま虚閃を撃った最後の虚を狙おうとした瞬間、空から無数の霊子の弾丸が降り注ぐ。上空に居る翼の生えた人型のアジューカスが両手の指から放っているものだ。彼女は焦る事なくすぐさま回避するが、撃ちながら両手を動かして狙いをつけてくるので彼女も避け続けなければならない。だが、逃げるばかりで反撃せぬ理由もない――水面に飛び込む人魚のように側転した彼女は左手を地面につき、霊圧の収束した右手の刃を上空に向けた。

 

 直後、広範囲に広がる極大の虚閃が放たれる。上空に居たアジューカスは逃げ足に自信があったのか動く素振りもせず撃ちまくっていたが、小さな山一つ程の虚閃は流石に避けられなかったようだ。断末魔を上げた表情のまま虚閃に飲み込まれ、跡形もなく消滅する。

 霊圧の消失を感じ取った彼女は、すぐさま体勢を立て直そうと左腕に力をこめた。だが、次の瞬間――肉体を上下逆さにしていた彼女の真下の地面が二つに裂ける。

 

「!?」

 

 翠の瞳を驚愕に見開く彼女の視線の先には、ひどい死臭が吐き出される深い闇が広がっていた。そして闇の淵には、不気味なまでに綺麗に並んだ白い歯がある――彼女がしなやかな手を突いていた地面の真下に、鮟鱇のように身を潜めていた巨大なアジューカスが居たのだ。それが今死臭だらけのねばつく口腔を開き、不意を打たれた彼女を喰らおうとしている。

 そして彼女が反応を起こす前に、左右から二体のアジューカスが同時に飛び掛かって来た。右は身体中に亀裂の走った人型、左は筋骨隆々の鬼型、そして真下に腐った唾液が糸を引く闇――同時に三攻撃を受ける彼女は反射的に、右手の刃で人型のアジューカスの腹を貫いた。

 

「――かかったな、莫迦がっ!!!」

 

 だが、刃からは肉を貫く嫌な手応えは感じない。へその辺りを串刺しにされた亀裂の入ったアジューカスが、凄まじい狂笑で仮面を三日月に引き裂いた。その瞬間、肉体の亀裂がぎしぎしと軋り――罅割れた体内から百に届くほどのあばら骨が、鉄の処女(アイアンメイデン)の如く彼女の周りを取り囲む。脳髄から心臓から踵から飛び出した無数の骨を前に、眉間を絞る彼女は嵌められた事を自覚した。

 そう、虚閃を放たれ、霊子の弾丸で誘導され、彼女はアジューカスの罠にまんまと引っかかったのだ。それでもこの程度なら切り抜けられるが、無傷では済まない。あばら骨か、鬼の爪か、真下の口腔か、いずれかに傷付けられる――それを覚悟した、その瞬間。

 

「――縛道の六十一、『六杖光牢(りくじょうこうろう)』」

 

 朗々と謳い上げる、聖人の如き調べが響き――彼女の牙を固定していたアジューカスが、六つの光に自由を奪われた。

 

「――――!?」

「なっ!?」

「何だ!?」

 

 声の無い更なる震撼、あばら骨を刺そうとした恰好のまま空中に射止められた戦慄、爪を振り上げたまま面食らう鬼。三者三様の驚倒が席巻する最中、その影は何よりも無に近い顔貌で蠢き――気付けば鬼のアジューカスの胸元から、一本の黄金色の刃が生えていた(・・・・・)

 

「ごっ…………」

 

 鬼のアジューカスは自身の胸から突き出ている、その赤い斑に包まれた黄金に愕然と目を見開いて、声帯を逆流した血液で低く震わせる。牙が秩序だって並ぶ仮面の口から鮮血を吐き出す鬼に、彼女は翠の視線を釘づけにしていた。正確には、鬼の背後に在る眩い影――宵闇の銀河に明確に浮かび上がりながら全く生気を感じさせない、紅い光芒を滴らせる白き死神に。

 その紅き無色の炯眼が、逆シマの彼女を網膜に焼き付けている。血塗られた鏡面の如く無条件に世界を逆さにする中で、無様な姿を晒す己を彼女は確かに見た。途端、満月の様に開かれていた眼がギンッ、と鋭く絞られ、空中に固定されたあばら骨のアジューカスへ突き立てた刃を梃子に空中へ跳躍し、断頭台のような真下の口撃を避けた。

 

 煌く金の毛髪が夜の舞台に高く羽撃(はばた)く。不抜の月に縁取られ、荘厳に舞う彼女(ヴァストローデ)は刃の根元に左手を添え、月下二体のアジューカスへ(ろう)たけたる翡翠の眼で死を宣告した。

 

「――――虚閃」

 

 凜とした清涼な声が、為すすべなく莫大な霊圧に飲み込まれたアジューカスの最後の認識。音も感触も何もない光に塗れ、彼らは虚圏を構成する霊子の藻屑と化した。

 二体のアジューカスが居た地点は、霊圧で焼かれた砂煙がもくもくと上がっている。まだ残っているアジューカスから身を隠すためにその煙へ飛び込んで華麗に着地した彼女のすぐ目の前で、丁度両腕を断裂された鬼のアジューカスの首が地表へ墜ちていった。腹に響く音を立てて倒れる巨体が砂煙を払い――その奥から、刀の血を払う白い死神が現れる。

 

「…………」

 

 刃毀れが無いか確かめるように顔の前で刀を波立たせる死神を、着地した姿勢からいつでも動けるように身を構える彼女はきつい眼光で睨んでいた。その上半分のみの表情に募っているのは、多少の嫌悪と多大な不審の念である。

 何故、という言葉が思考に浮かぶ。目の前にいるのは先ほど出遭い、そして見逃してやった死神だった。

 当たり前の様に動いているその男は、どうして動けているのか理解出来ない程の重傷を負っている。全身をくまなく浅い傷で覆い、その上から所々に乾いた血が残る箇所がある。更に衣服の無い上半身には肩から腰に掛けての内臓まで達していそうな裂傷の痕跡があり、腹と背中には貫かれた痕が鮮明に残っていた。

 感じる霊力もそう強くなく、ともすれば今消えてしまってもおかしくない燈火のようだ。その上でこの死神は、理由は分からないが右腕を黄色の鎖で封じている。これだけ戦闘を妨げる要素を抱えた死神が、どうして虚を助けるような真似をする。

 

 一体何が目的なのか――彼女の頭に渦巻く不審は段々と渦を大きくしていく。助けたところで意味などない筈だ、という感覚やそもそも何故死神が虚圏に居る、と言った今更な疑問が思索の渦を加速させる。それ以上にこんな弱弱しい霊圧で(・・・・・・・・・・)アジューカスを殺せる(・・・・・・・・・・)わけがないという確信(・・・・・・・・・・)が、脳裏を走る思考を外へ溢れ出させた。ばしゃりと器から漏れた思考の水が、彼女の口を動かそうとしたその時――死神は何の前触れもなく、刀の切先をヴァストローデに向けた。

 やはりそうなってしまうのか、と彼女は金粉をまぶしたような燐光の舞う睫毛の位置を下げる。当然だ、死神と虚が出遭えばそうでなければならない。我々はどちらかの(のど)を食い千切るまで殺し合わねばならないのだ。無言のまま、彼女も刃を構えた刹那――無貌の死神の刀に霊力が集まり、先端から細く青白い光が発射された。

 

 だが――その光を裂く雷閃は彼女の側を通り過ぎた。褐色の肌を白く照らしあらぬ方向へ飛んでいく白撃を反射的に目で追いかける。空気を焼いた軌跡が奔った先には、『白雷』が目に直撃したアジューカスが鎌の腕を振りかぶっていた。

 一瞬の驚きと、直後に冷淡な眼付きで、振りかぶった腕で目を押さえて呻くアジューカスの首を腕ごと刎ねる。どこかへ飛んでいく首と腕と倒れる身体に目もくれず、彼女は再び無貌の死神を睨みつけた。

 倒れたアジューカスの霊圧に彼女は気付いていなかった。霊圧を隠すのが上手い奴だったに違いない。故にあのまま死神に気を取られていたら、彼女は確実に不意を打たれていただろう。それをあの死神が未然に防いだ。 

 

「……危なかったですね。もう少し反応が遅れていれば、貴女が怪我をするところでした。御無事で何よりです」

 

 顔に何も表さないまま、死神は平然とのたまう。元はと言えば、死神自身が彼女の注意を引かせたから不意打ちをされそうになったというのに。

 ……いや、本当はそんな事は無い。いくら死神への疑念に駆られていたとはいえ、今斬ったアジューカスは彼女の警戒を潜り抜ける程に隠遁が上手かった。だから死神が居たからこそ、不意を打たれずに済んだと考える方が正しい。

 刀を降ろす死神から目を離さず、彼女は翠の瞳を研ぎ澄ます。とても不快な話だが、何をどう解釈しようが、あの死神に一度ならず二度までも助けられたのは事実。ならばこちらも、それ相応の態度を取るべきだろう、と。彼女は地を飛び、何の素振りも見せない死神の背後へ回り込んだ。

 

「ぎゃあっ!!!」

 

 その直後、悲鳴と血飛沫が空に飛びだす。虚ろな顔をした白い死神が緩慢に首を動かして後ろを見やれば、そこでは黄金の髪を美しく揺らす彼女がアジューカスを一刀に斬り捨てていた。先程『白雷』を撃ち込まれ首を刎ねられたアジューカスと同じように、死神に襲いかかろうとしたのだろう。つまり彼女は、死神を守ったという事になる――刃を振るった体勢を戻して、彼女は冷涼な眼を死神の視線に糾わせた。

 

「……これで借りは無しだ」

 

 強く断言する彼女に、死神は無の相貌を少し崩す。ため息を突くように微笑み、優し過ぎる色を唇の端に浮かべた。そして肩越しに目をやりながら肩をすくめる。

 

「ふむ、貴方への貸しは二つ程あったように思うのですが」

「……さっき見逃してやっただろう。それで差し引きゼロだ」

「成程、それもそうですね。では――これから僕が貴女と共闘する事については、どう思われますか?」

「決まっている――貴様が勝手に、私の周りの蟲を叩き落としているだけの事だ」

 

 言葉と視線を互いに切って、背中合わせに刃を構えた。しかし砥がれた眼を緩めない彼女は、猜疑の目線を死神に向ける。果たして信用してもいいのだろうかと、当然の警戒を強める彼女だが、死神は全く無防備の背を晒していた。まるで彼女が後ろから刺さない事を、心の底から信じているように。

 気味が悪いし、あまりにも怪しい。こんな死神の言う事など、普通なら信じるかどうかさえ考慮に値しないが――少しは付き合ってやってもいいという感情が、不思議と彼女の中で芽生えていた。

 

「手前、何者だァッ!?」

 

 そうして背中合わせに刃を構える二人と、砂漠に赤の斑を残す同胞の成れの果てを目に焼き付け、残存するアジューカスの一体が動揺混じりに問い質す。その焦燥と隠せない怯えを含む叫び声に、僅かな笑顔を顔に形作っていた死神は、その笑みを無に還し刀を左腕だけで正眼に固めた。下半身に垂れた死覇装の上から白い砂漠と同化し、闇夜に浮かぶ双眼に鮮血の光を揺らめかせる死神に、音も無く圧されたアジューカスが無意識に後ずさる。表情の視えぬ顔の無い貌で、彼は乾いた唇を開いた。

 

「率直にお教えしましょう。僕は死神――純然たる貴方がたの“敵”にございます」

 

 明瞭に、静かな流星の如く言葉は放たれ――それを合図に、彼らは死闘の夜に踊り狂った。

 それは時間にして僅か一分にも満たない刹那の舞踊である。天道を渡る月が燃えて逝く流星を見(おく)るように、虚圏の住人達は刃の吭に呑まれて消えた。

 そして残るは、残骸と霊子。血を流し、肉を燃やし、骨を砕いて大気に還す。輪郭を崩して存在を塵とする死骸から刃を引き抜き、死神――御蔭丸は血を払って左手だけで器用に納刀した。淡い金色の光を黒い鞘に包み隠し、ほう、と一息ついて笑顔を取り戻す。ついでに髪を適当に梳かし、形見の髪留めを取り出そうと武骨な手を脚へ這わせた瞬間、彼は一瞬で凍りついたように動きを止めて、柔らかな視線を背後に投げる。

 そこでは、翠の瞳に妙な感情を渦巻かせる彼女(ヴァストローデ)が刃を突きつけていた。

 

「…………」

「…………」

 

 しかし、それから動かない。彼女は鋭い敵意を復活させて御蔭丸に相対しているが、言葉を発する事はなかった。色合いが淀む眼を見るに、どうも聞きたい事は固まっているようだが、御蔭丸の行動が奇怪過ぎてどう切り出すか慎重になっているようだ。確かに御蔭丸のような予想外の行動を起こす死神を前にすれば、慎重に慎重を重ねたくもなる。怜悧な目付きで睨んでくる彼女にクスリと笑って、御蔭丸は身体を反転させて彼女に向き合った。左手のみを迎え入れるように広げて微笑む御蔭丸に当然、彼女の敵意が膨れ上がる。それを見越した上でなおも純粋に笑い、彼は薄い唇から大地に倒れ伏す虚の仮面と見分けがつかない白い歯を覗かせた。

 

「聞きたい事は山ほどあるでしょうが、まずは率直に僕の目的を御話しましょう。僕の目的は『生きて尸魂界に帰還する』事です。その目的を達成する為に僕は貴女を助け、助力を請うつもりで馳せ参じました」

「助力を請うだと……死神の貴様が、私にか?」

「はい、その通りでございます」

 

 我が意を得たりと満面の笑みを咲かせる御蔭丸に、翠の瞳を尖らせたままの彼女は警戒の意識を一段階上げた。当たり前だ、彼女からしてみればこの死神は得体が知れなさ過ぎる。この状況下で笑える精神には異常を疑えるし、その言動も死神として考えれば尋常ではない。虚の天敵である死神が、よりにもよって彼女(ホロウ)に助けを願う……何か裏があると考えるのが正常な思考だ。

 そしておそらく、この死神は彼女がそう考えるであろう事を分かった上でやっている。死神の紅い眼が反射する光は明哲で、明らかな知性を感じさせる。そんな男が馬鹿けた事を言い放っているのだ。そうなれば、考えられるのは一つ――この死神は、間違いなく狂っている。

 

「僕には貴女の力が必要なのです。残念な話なのですが、僕には虚圏(ここ)で生き抜ける程の力はありません。そして虚圏を脱出する術も持ち合わせてはいないのです。ですので虚圏で生き抜くにせよ脱出するにせよ、どちらにしても僕には貴女のような力ある者が必要なのですよ」

「……それで、私が素直に協力するとでも思っているのか?」

「とんでもありません。例えば僕が虚から助力を願われても、僕は死神の責務を果たすでしょう。それは貴女にも言える事です。ですが貴女には、僕に対する殺意がありませんでした。それに他の虚とは違い、本能のままではなく理性によって行動しているように見受けられます。それを鑑みれば、交渉によっては貴女に協力して頂く事も可能ではないかと、こうして話しているのです。それに――」

 

 高らかに話す死神を半ば無視しながら、ジリ、と彼女のすらりと伸びた足先が砂を押す。死神が妙な行動をとればすぐにでも斬りかかれる姿勢から、後ろへ跳んで逃げる準備に切り替える。冷え切った双眸を上半分の顔にのせる彼女の思考の八割は、ここからの逃走を選んでいた。深淵を覗けば、深淵もまた此方を覗き返す――これ以上死神の狂った話を聞いてしまったら、こちらまで狂ってしまうかもしれない。

 身体を巡る力の行く末を指定する。腰を通し、脚へ流し、千里を羽撃く雲の様に忽然と姿を眩まそうとした、その瞬間。

 

「――何よりも、貴女はとても淋しがって(・・・・・・・・・・・)いる様に見受けられた(・・・・・・・・・・)ので、僕がその寂寞を癒す存在となれば貴女の側に居られるだろうと、下賤な発想に至った次第で――――…………」

 

 歪んだ笑みから吐き出された他愛ない言葉が、彼女の脳髄を激情で塗り潰した。

 ずぶり、と小さな水音が砂漠に墜ちた。赤い赤い、無数の水滴が途方もない白を赤く汚す。ぽたぽたと濡れていく音はぼたりと鈍重に激しく変わり、血が溢れる源には亡くした中心(こころ)が生んだ刃が、浅く突き刺さっていた。

 それは御蔭丸の鳩尾のやや左上、心の臓腑が絶え間なく脈動する位置を正確に刺突している。胸の見下ろす御蔭丸の表情はある種呆けたようなものだったが、絶命を感じさせるものではなかった。どうやら心臓を傷付けるか傷付けないか、限限(ぎりぎり)の処で刃は止まっているらしい。

 だが、その寸分でも揺れれば心臓を裂く刃が完璧に静止しているのとは裏腹に、牙の持ち主である彼女の表情は動揺に満ちていた。翠の瞳孔がはっきり見えるほど眼は見開かれ、噛み殺しきれぬ吐息が短い間隔で漏れている。

 

 黄金の髪が逆立つほどの感情を猛らせる彼女は、刃を押し込めようと一歩踏み込む。乾いた砂を踏み潰し、死人よりも白い男の心臓の壁へ(きっさき)が届いたその刹那、彼女の瞳に理性が舞い戻って来た。

 荒い息を呑んで、刃を止める。動揺に塗れた表情から一転、見開いた眼を苦々しく鋭くする彼女の肌に、玉のような汗の粒が滴っていく。憤怒と、そして“殺意”が浮き彫りになった翠の眼には、僅かな恐怖が見え隠れしていた。

 

「……ふむ、どうやら逆鱗に触れてしまいましたか。申し訳ございません、成果を急ぐあまり失態を犯してしまいました。貴女に心よりの、謝罪を致します」

 

 しかし、それでも。彼女の表情を見て、彼女に刃で殺傷される寸前まで追い込まれても、御蔭丸は当たり前の様に微笑んだ。痛みもない、死への恐怖もない、そもそも喜びすらも浮かばない、水面の月を掴んだ感触のような虚無の笑顔を、躊躇なく顔に刻んでいる。

 その笑みを認識した途端、ぞわりと、夥しい蟲が這う様な感触が彼女の全身を駆け巡った。純粋過ぎるその表情は己を殺そうとする者に向ける笑みでは断じてない。限度を超えた異質を目の当たりにすれば、既倒に廻らせた狂瀾が再び荒れ狂う。現に理性で止めた筈の右腕の刃に、彼女は無意識に力を籠めていた。それを何とか解きほぐしつつ、冷静を装ってどうすべきか思案する。

 

 先程はちらりと脳裏を掠めた程度だったが、今なら断言出来る。この死神は、狂っている。それもただの狂人ではなく、かなり悧巧な頭脳を持った狂人だ。なにせ彼女がとうの昔に諦め、心の奥底に閉じ込めていた感情をたった二回の邂逅で暴いてしまったのだ。それ故に許し難く、それ故に恐ろしい……彼女にしてみれば、御蔭丸の眼は深い水底を覗いているようで――どこか、鏡のように自分を写し出しているようで。

 また、感情の獣が理性の檻を噛み砕こうとする。無駄な犠牲を好まない彼女は、とにかくこの死神から離れようと考えた。このまま此処に居たらこの死神を無意味に殺してしまいかねない。いや……この死神を殺せば、彼女の心に平穏が戻ってくる。だけど、そんな理由で殺したくない。歯痒い思いで離脱を決め、刃を引き抜こうと力をいれると、刃はぴくりとも動かなかった。

 

 

「――!?」

 

 気付けば、御蔭丸は心の臓腑を貫かんとする彼女の牙を左手でがっしりと掴んでいた。両刃になっている刃の下を、手の平が斬れるのも構わず固定している。彼女が引き抜こうとしても笑う御蔭丸の手と胸から血が零れるだけで、引き抜く事は出来なかった。

 またしても嵌められたか、と心を冷え切らせる。この死神は狂った振りをして実は彼女(ヴァストローデ)を殺す腹積もりであったと考えた方が、まだ精神衛生に良い。それならば躊躇いなく斬る事が出来る――そう思えたのに、御蔭丸は困ったように微笑むのみであった。

 

「申し訳ございませんが、剣を抜くのは少々お待ちください。何分、かなり痛手を負った身ですので、急に剣を抜かれては止血が間に合わないのです。ここは僕が抜きますから、貴女は楽にしてください」

 

 そう言って、御蔭丸はゆっくりと剣を引き抜き、同時に傷口を塞いだ。それが終わると剣から手を離し……それ以上、何もしなかった。それが彼女の逆鱗を、更に逆撫でる事になる。

 

「……――いい加減にしろっ! 貴様は一体何がしたいんだ!?」

 

 激昂が、彼女の喉を突きあげた。荒い呼気をかなぐり捨てて鋒が赤に染まった牙を御蔭丸の喉元にぴたりと寄せる。憤怒を滾らせる翠の炯眼に射抜かれて、それでも御蔭丸は笑うばかりだった。

 御蔭丸の変わらぬ態度に彼女は眉間を限界まで苦く歪めるしか出来ない。普段の彼女ならもう逃げるか斬るかしていたが、魂の深層に押し込めた心を言い当てられてしまったため、動揺が抜けきっていない。そして死神のイカれた行動・言動がその動揺を冷ます事を許さない。そんな風に頭を悩ませる彼女へ、御蔭丸は左手を差し出す。心の隙間を埋めるような、何処までも暖かい慈母の微笑みを浮かべて。

 

「それは決まっております――

 ――――僕は貴女を癒したいのです。

     貴女の荒んだ心を癒し、

     貴女の冷え切った魂を溶かし、

     貴女を孤独から、解放して差し上げたいのです。

 

 ――――それが、貴女が唯一望む。

     魂の奥底からの、願いなのですから――――」

 

 全てを優しく包み込む、慈母の笑みを携えて。

 暖かな掌が、彼女の前に差し伸べられる。

 傷だらけだ。それを差し出す男も、血と錆の匂いに溢れている。

 ――それなのに。

   どうしてこうも、其の掌を掴み取ってしまいたく、なるのだろう――

 

 許容を超えた震撼に、彼女はただ眼を見開いていた。

 どうしようもなく呆然と、ただ差し伸べられた掌を眺めていた。

 ……そして、動かぬ月も飽き、砂漠の砂が幾度目の風に呑まれた時。

 彼女はひっそりと眼を閉じ、そして静謐に力強く開く。

 

 ――それを、御蔭丸が認識した瞬間。

   彼の左腕は、腰の斬魄刀ごと彼女の刃の腹に払われた。

 

 風鳴りが、遠く閃く。

 白い砂漠に、黒色の鞘が墓標の如く突き刺さる。

 それを見送ったのは、御蔭丸だけだ。

 彼女は長い、永い吐息をついて、刃を払った姿勢を解いた。出遭った時と同じ直立不動の、美しい肢体を月に晒す格好で、彼女は再び深海に沈んだ瞳で、視えぬ唇を静かに開く。

 

「――――――――……貴様は死神だ。

           それ故に、信じる事など出来はしない……――――――――」

 

 それだけを呟いて、彼女は御蔭丸に背を向けた。そして些かの躊躇いもなく、毅然として歩を進めていく。

 これで良かったのだ。彼女は虚で、御蔭丸は死神。たったそれだけの、しかし天と地ほどに隔たっている事実が、二人の間には横たわっている。それを乗り越える事など出来ない……少なくとも、彼女には出来ない。

 彼女は他の何よりも、虚に産まれ堕ちた事を憎んでいる。そして己が虚であるという事実を、他の誰よりも深く受け止めている。だから救いを差し伸べられても、彼女はそれに縋れないのだ。

 大切なものがあるのならば、いざ知らず。

 護るものも無く一人で、虚の戒律に縛られる彼女には。

 (ただ)独り、孤独と云う名の地獄で星を見上げる彼女には。

 

 これで良かったと思う他に、想う事などあってはならない――――

 

 そうして去っていく彼女の耳に「ドッ」と、何かが倒れ伏す音が届く。歩を止めて、肩越しに視線を投げれば、そこには倒れた死神が居た。

 おそらく力尽きたのだろう。あれだけの手傷を負っていたのだ、いつ倒れてもおかしくはなかった。その時が今訪れただけの事だ。それだけ思って、彼女は再び歩き出す。

 もうあの死神と関係はない。どう野たれ死のうと、視えない場所で死んでくれればそれでいい――無意識の内に埋め込まれた理性がそう呟く。だからそのまま、歩き去ろうとした。

 ――在りえる筈の無い霊圧が、御蔭丸の身体から発せられるまでは。

 

「――――――――……何だ、これは――――――――」

 

 もう一度足を止めて、思わず振り返る。白と黒の視界に在るのは、夜天と砂漠と、その中間で倒れる一人の死神だけだ。周囲には彼女以外の何もない。岩や木の一本さえ生えていない。なのに、どうして――アジューカスの霊圧が(・・・・・・・・・・)あの死神から響いてくる(・・・・・・・・・・・)

 莫迦な、という言葉が彼女の脳裏をよぎった。あの男はどう見ても死神だ。斬魄刀を所持していた事や、死神の鬼道(わざ)を駆使していた事を鑑みれば疑うべくもない事実。だが現実に、死神の身体からは虚の霊圧が噴き出ている。

 ……いや。そうじゃない。

 彼女は眼を凝らして死神の一点を注視する。白い髪と、白い肌に覆われる中で異色を放っている箇所。右腕に巻き付いた、黄色い鎖のその中身。

 少しづつ形を失っていく鎖の隙間から、這い出ては露出した肌に食い込む霊子の糸を、彼女ははっきりと認識した。

 

 莫迦な、という言葉が二度重ねて、思考の海に浮き上がる。死神の肉体にアジューカスが寄生していた事、ではない。それくらいは死神がわざわざ右腕を封印していた事と照らし合わせればすぐに合点がいく。解からないのは、どうして今になって暴れ出したかだ。

 死神が意識を失ったから? ――違う。微小だが死神の弱弱しい呻き声が、今も彼女の鼓膜を震わせている。だから死神にはまだ意識がある……それにも関わらず、右腕のアジューカスが封印を突き破った。

 死神の霊力が底をついたから? ――違う。死神の霊圧は出遭った時から変わっていない。相変わらず風前の燈火の如く、一息で消えてしまいそうな程に儚い。死神の状況は何も変わっていない筈だ。なのにどうして、今更。

 

 そこまで考えると、次々におかしい点が思考に浮かんで渦巻いていく。考えてみればあんな小さな霊圧で、あれ程の手傷を負った身体で、彼女(ヴァストローデ)の手助けなど絶対に出来ない。圧倒的な霊圧の差を持つ者達がぶつかり合った場合、弱い方が攻撃しても、その攻撃の霊圧よりも高い霊圧を無意識に纏っていれば、攻撃した方が怪我をしてしまう。それは何者にも覆せない“力の差”という絶対の摂理だ。狂っているとはいえただの死神の筈のあの男が、それを覆せるわけがない。

 だからその死神が鬼の姿をしたアジューカスを斬った時点で、在り得なかったのだ。あの時の死神の霊圧は今と同じ、そして鬼のアジューカスの霊圧は今死神の手から発せられる虚の霊圧とそう変わりない。つまり今右腕のアジューカスに浸食されている死神が、鬼のアジューカスに勝つ道理は存在しない。

 

 そもそも死神の身体は、どうして動けているか分からない程摩耗していたのだ。生きているのが奇跡に等しい状態だった。その上で死神は鬼道(わざ)を振るい、(アジューカス)(たお)し、あまつさえ彼女がつけた胸の傷を目の前で治してみせた。己の霊圧を一切使う事無く(・・・・・・・・・・・・)

 そこまで思考を巡らせて、彼女はハッと気付いた。水中で僅かな電流を正確に察知する鮫の様に、思い至った思考の先へ、翠の瞳を差し向ける。

 そう、死神は己の霊圧を使わず、別の霊圧を使ったのだ。

 それはさっきまで死神が所持し、彼女が手放させてしまった物。

 遠く離れた砂丘に(そび)える、常軌の二倍以上の大きさを誇る――

 

「――――斬魄刀かッ!!!」

 

 彼女は叫び、全てを思い知った。

 死神が死の一歩手前の肉体でああも自在に動けたのは、斬魄刀が動けるだけの生命力を供給していたからだと。

 死神が遥か格上の相手を斃せたのは、あの淡い黄金色の斬魄刀があってこそだという事を。

 そして――その生命線ともいえる斬魄刀を彼女が手放させてしまったせいで、死神は今、封印したアジューカスに憑き殺されそうになっているのだと。

 

「ッ――――!」

 

 もう一度死神を顧みる。右腕の封印を破った糸は今も浸食を続け、肩の付け根から肩甲骨辺りまで勢力を広げようとしている。

 このまま放っておけば、死神は彼女のせいで確実に死ぬだろう。彼女が救いを差し伸べた腕ごと、斬魄刀を払ったために――彼女に救いを差し伸べてしまったばかりに、虚に喰われて死んでしまうだろう。それはせめて眼に見えない所で死んでくれと願った彼女を悩ませるのに、充分過ぎる現実だった。

 どうする、と焦燥に駆られた脳髄で思案する。このまま放って逃げるのか、それとも助けてしまうのか。前者を取れば、彼女は死神を殺す事になる。ただの死神だが、孤独な己に初めて救いを差し伸べてくれた死神を。後者を取れば、彼女は虚の戒律を破ってしまう事になる。死神と虚が出遭えば互いの吭を食い千切るまで殺し合うという暗黙の不文律を。

 

 どちらを取るにせよ、彼女はもう元の彼女のままでは居られない。差し伸べられた手を自身の手で殺してしまった事実は確実に心を傷付け、虚の戒律を破れば自分が虚であるという存在証明が揺らいでしまう。彼女はどちらをとればいいのか、死神の浸食が肩甲骨から首に至るまでの永遠とも思える時間の中で、考えに考え、考え続け。

 

「――――――――……くそっ」

 

 誰に向けるでもない、苦渋に満ちた悪態をついて。

 虚圏の永遠の夜に、一陣の光となりて羽撃いた。

 

 

 

   φ

 

 

 

 閉じた瞼に鬼火が灯る。青白くはない、瞼越しに眼球を照らしてくる熱の無い光に、闇に慣れ切った眼は小さな痛みを神経にはしらせた。

 目元に苦い皺を寄せて、御蔭丸は浅い眠りから目を覚ました。眩しそうに開いた眼は、左側の妙な色合いをした壁に灯る小さな炎を写している。ゆらゆらと頼りなく揺れる炎は濡れた光を空気に零し、大量の汗が浮かぶ御蔭丸の白い顔を淡く浮き彫りにしていた。

 ――此処、は……

 霧の海を進んでいるような思考の波を朧気に回して、無意識に身体を起こそうとする。が、途端にびちり(・・・)と神経という神経が肉の中から飛び出るような激痛が駆け巡り、思わず短い呻きを上げた。びくんと胸をそらせた御蔭丸は、知らず斬魄刀を掴む力を強くする。すると全身の痛みが素早く引いていき、痛熱で昂った脳が一気に冷えた。

 

「…………」

 

 はあっ、と高い体温で暖まった息を吐きだして、汗の浮かぶ荒んだ顔で左腕をそっと持ち上げる。やはり痛むが、度合は随分小さくなっていた。その事実を忌々しげに認め、斬魄刀を胸元に置く。慣れた重みと、脈動している力の感触。鞘は特有の冷たさを持ち、刀身も鍔も柄もただの物体でしかないが、彼にだけはそこに息衝く存在を感じ取っていた。

 ――これで、この子に救われるのは二度目だな……

 嘆息して、今も左腕を通して注がれる霊力を探査する。斬魄刀からは確かに霊力が送られてきているが、それで彼の霊力が増大はしていない。どうも肉体の修復と封印の維持、そしてアジューカスがこれ以上浸食しないよう堰き止めるのに使用する分と同量の霊力を供給しているようだ。理由として考えられるのは、御蔭丸が斬魄刀からの霊力供給に気付き、斬魄刀を放棄しないように隠していたといったところか。

 

 ――随分とまあ、隠匿が上手いものだ。

 ――流石に俺の斬魄刀なだけはある、か。

 自虐に近い感想を抱いて、御蔭丸はどうでもよさそうに眼を閉じた。実際、彼にすれば斬魄刀に生かされている事実は気に入らない。彼が厭悪する戦いの道具に助けられたのもそうだし、元々は御蔭丸そのものである筈の斬魄刀(ぶんしん)が己の意志を無視して己を助けようとするのも虫唾が走る。

 ……だが、斬魄刀が無ければとっくに死んでいたのも事実。願われた以上、生きて帰らなければならない御蔭丸に出来る事は、どうでもよいと意図的に無視する事だけだった。

 ――あまりこの子には構いたくないしな。

 ――これからすべき事もある。

 

 ギシリ、と魂の何処かが明確に軋んだが、それも無視する。今頃あの宮殿の王座で頬を膨らませて拗ねているかも知れないが、知った事ではない。今はそれよりも、あのヴァストローデを優先すべきなのだから、と御蔭丸は横たわっている場所から見える階段に視線を移した。

 ごつごつとした岩の壁に比べて、綺麗に切り取られた階段の奥から跫音が響いてくる。規則正しく軽やかで、心持ちが硬い女性を連想させる足音は、丁度階段を降り切った位置で止まった。足音の持ち主は、深い水面の冷たさを含む翠の瞳を身体を横にした御蔭丸に向け、不透明な表情でぽつりと言葉を漏らす。

 

「――――……目が覚めたのか」

 

 それだけ言って返事も待たず、彼女は後頭部から生えている長い尾ヒレのようなものを左右に揺らして歩き、御蔭丸から一番離れた壁に背を預け、膝を抱えて座った。そして膝に置いた左手の上に刃を重ね、瞼を降ろす。一連の行動を御蔭丸が眼で追っているのには気付いている筈だが、構う素振りは欠片も見せない。あからさまな警戒心だけは剥き出しにしてぶつけてきていたが。

 ――さて、ここからが正念場かな。

 一応彼女(ヴァストローデ)が現れてからずっと笑顔を刻んでいた御蔭丸は、心の中で考える。彼女に斬魄刀を飛ばされた直後から意識はなかったが、潜窟らしい場所で眠っているという事は、彼女がここまで運んできたという事でまず間違いない。それなのにあんな態度を取っているのは、やはり己が死神だからか、あるいはもっと別の理由か。

 

 ――何にせよ、俺の命綱はあのヴァストローデが握っている。

 ――それだけは忘れずに行動しよう。

 柔らかな笑顔の下で肝に命じて、御蔭丸は視線を切った。彼女はどうやら眠るつもりのようであるし、それならずっと見続けるわけにもいかない。彼とてまだ休息が必要なので、穏やかに微笑んだまま眠りにつこうと眼を閉じると、「……おい」と女性にしては低いが艶のある声が潜窟内に響いた。声につられて顔だけを彼女の方向に向けると、黄金の粉雪の様に美しい睫毛に翡翠で出来た下弦の月を隠す彼女が、不愉快そうに御蔭丸を眺めていた。

 

「……その妙な顔を止めろ、不愉快だ」

「ああ……申し訳ございませんが、これは癖のようなものですので、矯正しようがないのです。どうか御容赦ください」

「……………………」

 

 へらへらと笑い返す御蔭丸に、彼女は憮然として眼を据わらせる。上半分しか見えないが、胃が心労で裂けそうな重圧を放つ眼には御蔭丸と、彼女自身に対する怒りと呆れが生じていた。助けた事を後悔しているのだろうと、御蔭丸は「そう思うのもしょうがない」といった風情で微笑んでいる。そんな刺そうが睨もうが笑う御蔭丸に、彼女は呆れの色を強くした。莫迦莫迦しいという様に首を振り、麗しく小さなため息をつく。それからしばらくは、不服そうに瞳を瞼で塞いで壁にもたれかかっていた。

 その様子を御蔭丸は優しく眺めていたが、そうしている内に身体から湧き出る休息の欲求が起きていられない程強くなった。喉をせりあがる欠伸を噛み殺して、御蔭丸は再び浅い眠りにつく事にする。

 

「…………なあ」

 

 横に捻じ曲げていた首を戻し、御蔭丸が紅い眼を隠した数秒後、不意に彼女の声が響く。半ば睡眠欲に支配されつつまた首を曲げると、不透明な表情に戻った彼女がじっとこちらを見つめていた。

 

「……貴様の名は、何と云うんだ……?」

「僕の名前、でございますか?」

「……ああ、そうだ」

 

 眠そうに眼を瞬かせて問い返す御蔭丸に冷徹な口調で首肯する。壁際から動かず、ただ静かに向けられてくる翠の視線を受け止めて、御蔭丸はくすりと笑った。心を包み込み安穏を感じさせる、慈母のように爽然と。

 

「僕は御蔭丸、大神御蔭丸と申します。よろしければ貴女の御名前も教えて頂けませんか?」

「…………――」

 

 そんな、何処までも他者を受け入れようとする御蔭丸を眺め、彼女は何処か憐れむような感情を眼に写す。心無き虚には似つかわしくない他者を想うそれを、二度の瞬きの中に打ち消して、不透明な表情のまま言葉を紡いだ。

 

「――私の名は、ハリベル。ティア・ハリベルだ」

 

 投げ捨てるように呟いて、それっきり話す事はなかった。御蔭丸は休眠に入った彼女を確認して、自身も安息に埋没する。

 

 (くら)き闇の地、虚圏。本来ならば虚しか存在しない悠久の墓場に墜ちた死神と、虚らしからぬ最上級大虚(ヴァストローデ)の、奇妙な共存が始まった。




原作より六八五年前の出来事。
二週間以内と言っておきながら三日ほどオーバーしてしまいました。申し訳ございません。以下、言い訳じみた後書きがいつもより長く続きます。
ティア・ハリベルについて。
彼女の格好はアニメオリジナルの「犠牲の連鎖……ハリベルの過去」を参考に描写しております。また原作よりかなり前の話ですので、従属官三人娘との接点は今のところありません。「犠牲を強いられながら孤独に虚圏を生き抜き、主人公に手を差し伸べられた最上大虚」、というのをイメージして執筆していますので、原作からかけ離れた性格になっているかも知れないです。
斬魄刀について。
『半始解』は綾瀬川弓親の斬魄刀を参考に設定させていただきました。弓親の斬魄刀が『藤孔雀』と呼ばれると中途半端にしか解放しないように、主人公の斬魄刀も中途半端にしか解放しておりません。ただし主人公は弓親とは違い、対話不足で同調のみが先行している為に半始解状態になっているとお考えください。
本編について。
今回早く投稿する事を優先したため、推敲を十分に行っていません。ですので一週間後にもう一度見直し、誤字脱字や修正をしたいと考えております。ひょっとすると大分内容が書き換わるかもしれませんが、御容赦ください。
次話も同じようにしますので、七月中に投稿できるよう努力していきます。

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