今日も左手で飯を食う   作:ツム太郎

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彼は、飲み込まれる。


強欲

強欲

 

私があの人を初めて見たのは、あのホテルの部屋の中から…鍵穴越しだった。

いつものように、母さんがくれた玩具で遊んでいると、外から声が聞こえたんだ。

母さんの声、でもいつもと違った。

 

(なんだろ…すっごく楽しそう)

 

母さんは、物心がついた時からずっと沈んだ顔をしていた。

作り笑いをすることはあっても、本当の笑顔を見せる事が無かったんだ。

それは「あの男」の近くに居た時もそう。

だから、あの母さんが楽しそうに話している事がすごく気になったんだ。

 

でも私は外に出ちゃ行けなかったから、つい鍵穴越しから見ようとした。

それであの人を見たんだ。

最初は怖かった、服に隠れていない部分は傷だらけ、しかも右足を引きずるように歩いていたその人は、昔母さんが見せてくれたホラー映画に出てくるゾンビのようだったんだ。

だけど母さんは、そんなゾンビさんとお話ししていて、すっごく楽しそうだった。

あんな綺麗な笑顔、私も見た事がなかった。

 

 

 

その夜、お仕事から帰って来た母さんにその人が誰なのか聞いた。

 

「ねぇ、母さん」

 

「ん? なぁにシャル」

 

帰って来た母さんはとても上機嫌だった。

 

「さっきね、鍵穴から外を見てたんだけど…母さんが楽しそうに話してた人って誰なの?」

 

「っ、み、見ちゃったんだ…そっかぁー…」

 

母さんはマズい事がバレたというより、気恥ずかしそうな顔をした。

 

「あの人はね、太一さんっていうの。 一ヶ月くらい前から来た人でね…とっても優しい人なのよ」

 

母さんは優しく微笑み、私を抱きしめてそう言った。

その温もりはいつもより優しく、温かかった。

 

「…私達がデュノア様のもとを離れて数年…やっと自分を見せても良いって思える人に会えたの。 …最初は変な人だなって思ってた…でもね、私はあの人の中に光が見えたの」

 

「光…?」

 

「そう、光。 多分、この世界のどこを探しても無い…あの人だけが持つ光。

それに私は惹かれたの」

 

私の頭を撫で、母さんは天井を見上げながら話を続ける。

光…か…私はあの人にそんなもの感じなかったんだけどなぁ。

 

「勿論それだけじゃないわ、あの人の笑顔、仕草、そして優しさ…全てが好きで…愛しいのよ。 貴方の前じゃ隠していたけどね」

 

見ると母さんの顔は真っ赤に染まっていた。

その顔は青春まっただ中の乙女のようで、思わず娘の私が見蕩れる程だった。

 

「でも、ごめんねシャル。 まだ貴方の事を言えないの…怖くって。 今もあの人には同い年だって偽って一緒にいる。 その全てを言って…今までの関係が壊れてしまうのが、とても怖いの。 こんな臆病な私を許して…」

 

「…いいよ、分かってる。 …そもそも、私が生まれなければ母さんはこんな所に来なくて済んだのに。 それでも私を娘だって愛してくれる…それだけで十分なんだ」

 

「シャル…!」

 

母さんは私の一言に感極まって強く抱きしめた。

それに私も応えるように強く抱きしめた。

そっか、あの人が母さんの恋人…母さんに本当の笑顔をあげた人。

 

私の…本当の父さんになってくれる人…か…。

 

 

 

それから私は太一さんをよく見るようになった。

鍵穴からは勿論、ベランダからもよく見ていた…一回通気口から外に出ようとした時は。バレてものすごく怒られたけど。

何度もあの人を見て、母さんが好きになる気持ちがわかるようになった。

あの人は確かに綺麗じゃない、お金だってあるわけじゃない。

 

でも、その中にある優しさが感じられたんだ。

クシャって笑うその顔は、僕は凄く可愛く思えた。

その動きの一つ一つがすごく人間臭くて、暖かみを感じた。

 

母さん達が二人で庭を歩いていたときもそうだ。

太一さんは母さんと手を繫いで、顔を真っ赤にしていた。

母さんも真っ赤、本当にできたてのカップルだよ。

 

その時。

 

(あ、キスした。 …うわぁ、母さん大胆だなぁ)

 

母さんが太一さんにキスした。

太一さんは只でさえ赤かった顔をさらに赤くさせ、クラクラと頭を揺らしていた。

…もしかして、のぼせちゃったのかな。

 

 

 

そう思っていたとき、手に何か違和感を覚えた。

 

 

 

痛い、見てみると右手の甲から血がにじみ出ている。

どうやら左手の爪で抓っていた様だ。

 

(あれ? なんで? 私、なんでこんなことしてたんだろう…どうしてだろう?)

 

どれだけ考えても答えは出ず、その日の夜は転んで擦りむいたと言って誤摩化した。

それから数日、やっぱり答えは出ずに悶々とする日が続き、母さんと太一さんが仲良くしているのを見るたびに同じ事をしていた。

多分、母さんを笑顔に出来た太一さんに嫉妬していたんじゃないか、結局納得できる答えが出なかったから勝手にそう考えて終わらせた。

 

 

 

でも、今だからこそ分かる。

僕があの時、なんであんなことをしてしまったのか。

僕が嫉妬していたのは、太一さんにじゃない。

その隣にいる人に、だったんだ。

 

つまり、僕は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、岡山はいつもより一時間も早く目が覚めた。

 

(…なんだろう、遅く起きるのはよくあるけど、早く起きるなんて初めてだ)

 

何か嫌な事が起きるかもしれない、しかしよくよく考えれば今以上の最悪などないだろうと思って上体を起こした。

 

「はぁ…」

 

そして「綺麗すぎる」周りを見てため息をつく。

本来この部屋は誰も寄りたくないと思う程汚い部屋であった。

しかし、ある人物が突然この部屋に入り、勝手に掃除していってしまったのだ。

 

「織斑…一夏………くそっ」

 

その「ある人物」である織斑一夏のことを思い出し、思わず悪態をついてしまった。

 

 

 

 

 

数日前、彼はいきなり複数の女生徒を引き連れて岡山の部屋にやってくると、両手をついて岡山に話しかけて来た。

 

「岡山さん、俺の話を聞いて下さい!」

 

「な、なん…ですか。 僕は、貴方の…ことなんて…知りません」

 

「あっ、すいません。 俺の名前は織斑一夏っていいます。 …貴方に消せない傷を与えてしまった、織斑千冬の弟です」

 

分かっている、岡山は内心そう呟いた。

岡山は彼の事を、そして彼の周りの人物の事を良く知っている。

故に、気が気で無かった。

 

(なんで、あの女の弟…しかも主人公が…嫌だ。 今度は何が起きるっていうんだ…)

 

そう思い、岡山は織斑一夏を怯えるように睨んだ。

しかし、そんな威嚇程度で織斑一夏が怯むワケも無く、そのまま話を続ける。

 

「貴方がどれだけ千冬姉を憎んでいるかは分かっている。 でも、千冬姉もずっとそのことで悩んで来てたんだ…謝りたいって思ってたんですよ!」

 

「だ、だから…なんなんで…すか…」

 

いきなり熱弁をし出した織斑一夏を前に、岡山はあまり彼を刺激しないように言葉を返した。

 

「だから、千冬姉を許して欲しいんです! 今はまだ無理でも…少しずつ、姉の事を!」

 

到底、快諾などできないことだった。

岡山が彼女や篠ノ之束に抱いている感情は怒りと恐怖のみ。

しかも一回や二回の出来事で生まれた事ではなく、何年も続いた苦しみに寄るものである。

さらに二度と戻らない傷を与えられ、何もかもを壊されたのだ。

 

そんな織斑千冬を許す。

それは今の彼の存在を全否定する申し出だった。

 

本当なら「ふざけるな」と言って殴り飛ばしたい所だ。

「知った事か」と言って終わらせたかった。

しかし。

 

 

 

「…分かり…ました…。 少しずつ…考えていきます」

 

 

 

「ほ、本当ですか!?」

 

そう答えてしまった。

自分の全ての考えを度外視し、機械的に即答したのだ。

 

恐怖したのだ。

今、彼の目の前に居るのは織斑千冬達とは全く違う異質。

「世界の中心人物」ではなく「世界の中心そのもの」なのだ。

その認識が、彼に反抗的な態度をさせなかった。

この世界の中心、織斑一夏に反抗した後、次になにが自分に降り掛かるのかまるで分からなかったのだ。

 

どこまでも普通な彼は、どこまでも異常な彼に逆らえなかった。

ただ、それは口上でのみの事、本当は許すつもりなど微塵もない。

今この場を乗り切れればソレで良い、そう思っての行動だった。

早くいなくなれ、そう願い続ける。

そんな姑息な行動をとらざるを得なかった。

 

(くそっ、くそっ。 もう何もしないって決めたのに…はは…もうどうでもいいか)

 

そして、ソレさえも諦めた。

これから、織斑千冬も頻繁に此処に来るのだろう。

その度に適当な事を言う。

そんなことをしなくてはならない状況に、自分から落ちてしまったのだ。

 

その後、織斑一夏たちは彼の汚すぎる部屋を掃除しだし、丸一日かけてピカピカにして帰ってしまった。

そのせいで、部屋を見るたびに結局世界に抗えなかった情けなさを思い出し気分が沈むのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、すいません」

 

 

 

そんな時、部屋を訪ねる者がいた。

その声を聞いて、彼はいつものような憂鬱な気分ではなく、言いようも無い不思議な気持ちになった。

 

(なん…だ…? 聞いた事ない筈なのに…)

 

普段なら居留守をしても構わなかったが、とりあえず出ようと思った。

出なくてはならない気がしたのだ。

 

「…はい、誰で…す………え?」

 

扉を開けようと立ち上がった瞬間、扉が勝手に開いた。

その訪問者を見て、彼は言葉を失った。

目の前に現れた存在、それは彼にとって懐かしく、淡く、愛しく、そして二度目の挫折を教えてくれた者。

この世の理不尽さを今一度叩き込んだ者。

 

 

 

「…はじめまして、なのかな。 うん、はじめましてだよね、太一さん」

 

 

 

かつて自分の目の前から去っていった、エレンがそこにいたのだ。

 

「…エレー…エレン…?」

 

彼は思わずそう呟いてしまた。

しかし、ソレと同時に不思議に思う。

若い、若すぎるのだ。

彼女は見た目以上に年を取っている事は知っている、しかし目の前の女はそれ以上に若く見えるのだ。

 

「あはは…やっぱり母さんと間違えちゃうか…えっとね、ボクはエレン・デュノアの息子、シャルル・デュノアだよ」

 

快活に笑いながら彼女はそう言った。

ソレを聞いて彼は瞬時に思い出す。

そして体を震わせ己の過ちに気がついた。

 

(しまった…デュノアって名前で思い出すべきだったんだ…。 エレンの子ども…つまり愛人の子どもは…シャルロット・デュノア…!)

 

自分の事を男と偽るこの女は、確か織斑一夏の情報を盗むためにここに来たと記憶している。

そして途中で彼に女である事がバレ、逆に懐柔されたはずだ。

そんな彼女が、今更なんで自分の目の前に来たのか。

 

「ふーん、一夏の言う通りだね。 こんな狭い所に住んでたんだ…」

 

部屋を見渡しながら部屋の中に入り、心底楽しそうに笑っている。

こう見ると、本当にただの高校生に見えた。

 

「…何が…目的なんで…すか…?」

 

「え? 目的なんてないよ? ただ貴方を一目見たかったなーって思って」

 

「う、嘘だってことくらい…僕でも分かります。 …ここには、貴方の欲しがるものは…ない。 女である事を隠して…行くべきなのは織斑の方だ…」

 

そう言って、彼はまた自分の過ちに気付いた。

ただの清掃員である筈の自分が、なんで「彼女の欲しがるもの」を知っているんだ?

いくらでも言い換えることが出来た筈だ、いくら何でも馬鹿すぎた。

 

「あの………ッ!? ひっ!」

 

とっさに何かを言おうと彼女を見たとき、思わず声をあげてしまった。

彼女はこちらを見て、裂けるように口を歪ませ笑っていた。

先程の少しの時間での彼女はもうなく、狂った化け物がそこにいたのだ。

 

「………ふーん、お見通しなんだ。 はは、少しでも芝居したのが馬鹿だったね」

 

一切の優しさを無くし、彼女はそう言った。

 

 

 

 

 

「ひ…はぁ…」

 

「あはは、何その情けない声。 ………そんなだから、お前は母さんを守れなかったんだ」

 

ゆっくりと、彼女は岡山のもとへと行く。

岡山は後ずさろうとするが、とっさの事で上手く出来ない。

 

「ひぃ、ひぃ…うあぁ」

 

「…あの後、母さんと私がどんな扱いを受けたか教えてあげようか? 帰った後、私と母さんはあの男の慰め者になった。 アイツがヤりたいって思ったとき、何処に居ようといつでも犯されたんだ。 まったく、ロリコンじゃないんだから…フフ」

 

狂った笑みを浮かべ、彼女は淡々と述べていく。

止めろと言いたくても、岡山は上手く声を出せずにもがいている。

聞こうとせずに耳を塞ごうとするが、片腕しか動かない彼にとってそれは不可能な事だ。

 

「私達が運ばれるとき、母さんはホテルの入り口で倒れる貴方をずっと見ていたよ。 飛行機に乗った時にはずっと貴方の名前を呼んでた。 どんな酷い扱いを受けても、ずっとずっと貴方の名前を…だからなのかな。 母さん、いきなり壊れちゃったんだよね」

 

そう言って、彼女は笑いながらビデオカメラを目の前に置いた。

ソレを見て、岡山は血の気が引いた。

嫌な予感しかしない、これを見たらきっと後戻りできない。

 

「や、やめ…」

 

「やめないよぉ。 これはお前が見なくちゃいけない罪だ。 その目をしっかり開いて見ろ」

 

そう言って、彼女はスタートボタンを押した。

 

 

 

 

 

そこには、簡素な部屋でベッドに横たわるエレンが居た。

 

『母さーん、こっち向いてー』

 

そこにデュノアの声が聞こえた。

恐らく、録画しているのは目の前の娘なのだろう。

エレンはデュノアの呼びかけの応じて、上体を起こしてビデオの方を見た。

 

『あら、おはようシャル』

 

『うん、おはよう母さん。 今は何をしてたの?』

 

そう言うと、エレンは近くのテーブルに立て掛けていた写真立てを手に取り、顔の近くに寄せ…。

 

『フフ、お父さんと一緒に寝てたのよ』

 

幸せそうにそう言った。

 

『そっかー、ねぇ、私の父さんって…誰なのかな?』

 

『えぇ? 何を今更そんな事を言ってるのよ。 お父さんの事を忘れちゃダメでしょ? ねぇ、貴方もなんとか言ってよ…』

 

そう言って、エレンは持っていた写真をウットリと見つめた。

 

 

 

『貴方のお父さんはこの人、太一さんでしょ? 忘れちゃダメじゃない、太一さん傷つきやすいんだから…泣いちゃうわよ? フフ…』

 

 

 

写真を優しく撫で、淀んだ目をしながらそう言った。

そんな彼女の顔には生気がまるでなく、数年前の彼女と同じとは思えない程である。

 

『なぁに、太一さん? フフ、そうね。 貴方は泣き虫なんかじゃないわ…優しくってかっこ良くって…いつでも私を慰めてくれる…昨日だって………あれ?』

 

そんな時、彼女に異変が生じた。

昨日の話をしだした途端、彼女は震え出して写真を落としてしまったのだ。

 

『あれ…? 昨日、私は…デュノア様に…ち、違う。 私は今までずっと太一さんと一緒に…でも、あれ? あれ? アレエェェぇぇぇエエエエ?』

 

人形のように首をだらりと下げ、瞳孔が開いてしまっている目で周りを見渡す。

必死に何かを探している様だ。

 

『太一さん? どこ? どこにいるの? なんで返事をしてくれないの? さっきまでソコにいたじゃない。 太一さん!? どこなの!? シャル、太一さんが…お父さんがいないの! 声が聞こえないのよ! いや、いやぁっ! 私は汚くない! 私はぁ! いやぁぁぁあああ!!!』

 

 

 

 

 

ソコでブツリと映像は途切れた。

デュノアは映像が終わるまで岡山の瞼を掴み、目を閉じる事を許さなかった。

彼は何も出来ず、エレンがどのような結末を辿ったのか、それを見る事になってしまった。

 

「…あの後、母さんは持病が再発して死んだよ。 やっと逝けるって感じでさ…憎らしいくらい穏やかだったよ。 確か、最後の言葉も「太一さん、助けて」だったかな。 あの時の父様の顔、お笑いだったよ…アハは」

 

「…持病?」

 

「あぁ、知らなかったっけ? 心臓の病気だよ。 父様に酷い事されなかったとしても、早いうちに死んでたんじゃないかな?」

 

それで、と。

彼女は岡山の首を絞めて顔を近づけた。

 

「ぎ、あぁ…」

 

「貴方はどう思ったかな? 貴方が何も出来なかったせいで私達は散々な目にあった。 それに関して、どう思ってるの?」

 

「ゴホッ…や、やめて…」

 

「止めないよ。 お前のせいで母さんは精神を壊した。 こんなことなら、お前なんかに会わなければ良かったんだ!」

 

彼女はさらに手の力を強め、彼の首をユラユラと揺らす。

 

「ぼく、僕だって…助けたかった…。 その手を掴みたかった…でも…でも」

 

「何? この期に及んで言い訳? ホント、何処まで経っても弱っちいんだね、貴方は」

 

「ち、ちが…僕は…僕は………ああアアァァアぁぁぁぁアアアア!!!」

 

「狂って逃げるな!! この弱虫が!!!」

 

右手にISを出現させ、それで彼の頭を思いっきり殴った。

彼女は岡山の狂気すら許さなかったのだ。

精神が壊れる事も許されず、彼は強引に現実に戻される。

 

「あぐ、ぐぁ………。 じゃあ、僕は…どうしたらいいんだよ…」

 

「………」

 

「償いたい、出来る事なら彼女に謝りたい。 でも、彼女はもう居ないんだろ? じゃあ、どうしたら良いって言うんだ………」

 

力なく倒れ、涙を流しながらそう呟く。

その姿は極めて惨めで、まさしく負け犬であった。

 

「………簡単だよ、太一さん」

 

そんな彼を、デュノアは次に優しく抱きしめた。

まるで彼女が過去に母親からしてもらったように、彼を優しく抱擁する。

 

「今、私を助けてよ。 それが、母さんへの償いにもなるんだよ。 母さんの娘である、この私を…」

 

何度もそう言い聞かせ、それを岡山は聞き続けた。

真っ白な頭の中で、「シャルロットを助ける」という言葉だけが生まれていき…。

 

 

 

完全に形を成した。

 

「…どうしたらいい? 何をしたら、償いになるの…?」

 

「簡単だよ、太一さん」

 

ソレを見てデュノアはニヤリと笑う。

彼女がこの学園に来る前、父親から言われていた「計画」の成功を確信したのだ。

そして、彼女は岡山の耳元で最後の言葉を言った。

 

 

 

 

 

「織斑一夏の情報を、織斑千冬から盗んで来て」

 

 

 

 

 




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