遊戯王に転生したら何か百合ハーレムになった   作:雹衣

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初めてのまじめなデュエル
主人公が少しノリノリになってきた模様


第4話

「ねえ、ナオミは?」

「あ、アキさん。ナオミなら授業が終わったら直ぐに出て行ったよ。もう驚く位ビューンって」

 

デュエルアカデミアのある教室。そこで私が周りを見渡すといつもは「お姉さまー!」っと駆け寄ってくる女の子の姿が見えなかった。

 

「……珍しいわね」

「本当だねー。あ、アキさん!今日こそミュージカルデュエルを!」

「ごめんなさい。私今日遊星の所に行かないといけないから」

 

私は友達である開花の誘いを断り、教室を出る。

 

「うーん、アキさん!まだ私は諦めていませんからねー!」

 

そんな私に開花の声が聞こえてくる。親しくしてくれるのは嬉しいけど、ミュージックデュエルはする気がないのよね……。

にしてもナオミは何処に行ったのかしら?私は普段ちょっと迷惑な位近づいてくる彼女の行方について少し考えていた。そういえば今日は全体的にそわそわしていたというか、心ここにあらずだったような気もするわね。

その時、私の心にちょっとだけ陰りが入る。何なのだろうか悲しいというよりは寂しい?そんな感覚。

それに私は少し疑問を感じながら廊下を歩く。

 

「……ま、ナオミの事だし大丈夫よね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は「CAFA LA DEEN」の前の噴水広場のベンチに座りながら、待ち人を探していた。

良く思ったらデュエルアカデミアの生徒のナオミとの待ち合わせはかなり曖昧な時間にしてしまった。

俺は元々待ち合わせをすると相手を待たせないように集合時間のかなり前に来てしまうタイプなので昼前には来てしまった。うーん、もっと部屋で調べものとかするべきだったかな……でも女の子との待ち合わせについついドキドキしてしまい、ジャンクフードを食べた後は前の世界じゃ手に入らないようなレアカードを使ったりして新しいデッキを作っては崩してを繰り返して時間を潰してしまった。なんという非生産。

 

「……ん?」

 

俺がベンチに腰かけのんびりと待っていてると、何処かから足音が近づいているのに気が付いた。

足音は規則的で遅すぎず、速すぎず。どこか機械的と思わせるペースだ。

そんな足音は人気の少ないこの広場では良く聞こえた。俺は自然に足音の方向に顔を向ける。

 

「……」

 

歩いていたのは銀髪の少女だった。髪を二つ後ろで束ねていて、ゆらゆらと揺れてるのが見える。彼女の着ている服は赤く、デュエルアカデミアの校章が胸元に有る。

彼女は俺の前に来ると表情をまったく変えずに口を開いた。

 

「イレギュラー発見」

「……は?」

 

少女の言葉に思わず変な声が出た。「イレギュラー」というのは俺のことだろうか?いったい何の?

そんな俺の心の動揺を気にせず、少女は話を続ける。

 

「昨日、ネオデオミノシティの一部で大きなエネルギーが観測された。あなたのせい?」

「昨日?」

 

少女の話に耳を傾け、俺は首をかしげる。昨日、それはもちろん俺がこっちの世界に転生を果たした日。もしかして彼女はなんかの研究者で俺に目を付けたのか!?この世界ならありえそう!

 

「……い、いや。何も無かったわ」

「本当?」

 

俺がシラを切ると少女は俺の目を見るかのように顔を近づけてくる。それに対して思わず目を逸らすと、少女は顔を離し、デュエルディスクにデッキを入れた。

 

「じゃあ、デュエル」

「へ?」

「私が勝ったら私の言うことを全て答えてもらう」

「一方的じゃない?」

「あなたが勝ったら私を好きにしていい」

「え、ええ?!」

 

俺は少女の要求に思わず声を上げる。だが、そんな事を気にせず少女はデュエルディスクを構える。

俺としては「神様に転生させてもらいました」なんて言っても良さそうだが何か彼女にそれを話すと面倒くさくなると直感が告げている。

それにデュエリストならデュエルから逃げることは許されない。そう思い、俺もデッキをディスクにセットする。

 

「「デュエル!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再道ユウLP4000VS???LP4000

 

「私の先行。ドロー」

 

少女がカードを一枚引き、デュエルが始まる。そして直ぐに彼女はデュエルディスクの端っこを開き、カードを入れる。

 

「アンデットワールドを発動」

「なっ!」

 

少女が宣言した瞬間、俺の周りの世界が変わる。足元は一瞬にして髑髏の山へと姿を変え、ねじれ曲がった不気味な木や、毒々しい赤い沼の見えるおぞましい光景になった。「アンデットワールド」はフィールド上と墓地のモンスターをすべてアンデット族に変え、アンデット族以外のモンスターアドバンス召喚出来なくする少し変わったフィールド魔法だ。

 

「馬頭鬼を召喚。攻撃表示」

ATK1700

 

さらに少女は頭が馬で、足が蹄の斧を持った不気味なモンスターを召喚する。……間違いなく彼女のデッキは【アンデット】。墓地からモンスターを何度も出してくる厄介なデッキだ。

 

「カードをセット。ターンエンド」

 

その後、彼女は魔法、罠ゾーンにカードを一枚伏せ、ターンを終わらせる。にしてもアンデットワールド……かなり不気味だ。そんな中、彼女はよくもまああんな無表情で居られるものだ。

 

「じゃあ、私のターン!ドロー!」

 

俺は勢いよくデッキからカードを引く……ふむ、手札はまずまずといった所か。

 

「俺はライトロード・パラディン ジェインを召喚」

ATK1800

 

そういうと同時に俺の前に白い鎧を纏う白髪の騎士が現れる。攻撃力はこちらの方が上ならばやることは一つ!

 

「バトル!私はジェインで馬頭鬼を攻撃!」

 

俺の言葉と共に、白い騎士は地面の髑髏を容赦なく踏みつけ、馬頭鬼の元に一気に近づく。

 

「この時、ジェインの攻撃力は300ポイントアップする!」

ATK1800➝2100

 

その瞬間、ジェインの持つ剣が光り輝き、残像を残しながら、馬頭鬼の体を見事に真っ二つにする。ジェインにはモンスターを攻撃している間攻撃力を上げる効果が有る。これによって一時的ではあるが低レベルモンスターの中でトップの威力を誇る。頼もしいライトロードの1人だ。

 

「……」

 

???LP4000➝3600

 

少女はダメージが少ないとはいえ瞬き一つせず、その場に立っていた。

 

「俺はカードを一枚伏せる。そしてエンドフェイズ、ジェインの効果でデッキから墓地へカードを2枚送る」

 

俺はそんな少女を見ながらデッキの上からカードを墓地へ送る。このカードを墓地へ送るという効果は【ライトロード】の特徴の一つだ。大体のモンスターはカード墓地へ送る効果を持っている。

墓地へ送られたのは「死者蘇生」と「ライトロード・プリースト ジェニス」……うーん、死者蘇生は少し痛いな。

 

「ターンエンド」

「……私のターン」

 

少女は必要最低限の声を出してカードを手札から魔法カードを発動する。

 

「魔法カード、手札断札」

 

その後、素早くカードを2枚墓地へ送り、カードを2枚ドローする。そしてジッと俺を見つめる。

 

「あっ、そっか私もカード交換しなくちゃいけないのか」

 

少女の視線で思い出す。手札断札は2人のプレイヤーがカードを2枚墓地へ送り2枚ドローするカード。相手は【アンデット】だから捨てたカードも作戦に組み込んでくるはずだ。だが、俺のデッキも【ライトロード】だと分かってるはず。なら出てくるのは……エースか?というかここからじゃ相手が捨てるカード見えねえ……。

俺は「ライトロード・ドラゴン グラゴニス」と「ライトロード・ビースト ウォルフ」を送る。とそれを見ていた少女がデュエルディスクのボタンを押す。

 

「永続罠発動。リビングテッドの呼び声」

「……そう来たか!」

「真紅眼の不死竜を特殊召喚」

ATK2400

 

彼女がそう宣言した途端、彼女の墓地から体全身から紫色の火を吹き出す死体の黒龍が姿を現す。

 

「ゾンビ・キャリア、召喚」

ATK400

 

さらに畳みかけるかのようにつぎはぎの人型モンスターを手札から召喚してくる。成程、手札断札は真紅眼の不死竜のために使ったのか。

 

「バトル。真紅眼の不死竜で、ライトロード・パラディン ジェインを攻撃」

 

少女は無表情のままバトルフェイズへと移る。俺のジェインの攻撃力は1800。2400の真紅眼の不死竜には敵うわけがない。少女の宣言によって黒龍は動き出し、目の前の騎士を焼き払うために火を放つ。その攻撃に騎士は耐え切れず俺はその炎に巻き込まれる。

 

「グッ!」

LP4000➝3400

 

これがこの世界に来てからの最初のダメージ、痛みは感じないが思わず腕が体を守る。

 

「真紅眼の不死竜の効果。ライトロード・パラディン ジェインを特殊召喚」

 

少女は平坦な口調で効果を宣言する。その瞬間、少女のフィールドの地面からまるで墓地からよみがえるゾンビの如く現れる。これが「真紅眼の不死竜」の効果。

「真紅眼の不死竜」が攻撃したモンスターがアンデット族だった場合、自分のフィールド上に特殊召喚するというアンデットらしい効果だ。さらに「アンデットワールド」によってフィールド上のモンスターはすべてアンデット族になっている。見事なコンボだ。

 

「バトル、ライトロード・パラディン ジェインでダイレクトアタック」

「させるか!永続罠閃光のイリュージョン!」

 

俺は少女の追撃を避ける為に罠を発動する。「閃光のイリュージョン」は墓地のライトロードを一体だけ特殊召喚する効果。それによって俺は墓地に眠り竜を呼び出す。

 

「現れよ!ライトロード・ドラゴン グラゴニス」

ATK2000

 

その言葉と共に舞い降りたのは白い鎧を着けた巨竜。この竜の出現によって騎士の動きが止まる。

 

「グラゴニスの効果!墓地に存在するライトロードの種類×300ポイント、攻撃力がアップする!」

 

今の墓地は2種類。それによってグラゴニスの攻撃力は2600へと変貌する。これでジェインの剣は届かなくなった。

 

「……私はゾンビ・キャリアとジェインでチューニング」

 

攻撃を無効にされても無表情なまま少女は淡々とつぎはぎのゾンビを緑の輪へと姿を変え白い騎士にくぐらせる。

 

「シンクロ召喚、デスカイザー・ドラゴン」

ATK2400

 

そして現れたのは肉が腐り落ちかけているゾンビの竜。

 

「デスカイザー・ドラゴンの効果、発動。ライトロード・プリースト ジェニスを特殊召喚」

ATK300

 

その少女の宣言と共に墓地から呼び出されたのは白い法衣を着た女性。彼女はいきなり相手のフィールドに出されたことに驚いたのか周りをキョロキョロと見渡している……ああ、少し癒される。

「デスカイザー・ドラゴン」はシンクロ召喚した時、相手の墓地のアンデットモンスターを特殊召喚する効果がある。だが、それでもグラゴニスに攻撃力は届かない。それになぜ彼女は攻撃力の低いジェニスを……。

 

「私は魔法カード強制転移を発動」

「げ」

 

そんな俺の悩みに彼女は嫌な形で答えを出した。強制転移は2人のプレイヤーのモンスターを一体ずつ交換するカード。俺のフィールドにはグラゴニス一体のみ。ということは

 

「私はライトロード・プリースト ジェニスを選択」

「……ライトロード・ドラゴン グラゴニスを選択」

 

俺の頼もしい白竜はたやすく相手に寝返ってしまった。そしてこっちにやってきたのは攻撃力300の頼もしいとは余り言えない司祭さんが1人。彼女も俺のほうを不安そうに見つめている気がする……くそ、どうすれば良い。今の手札じゃ勝てる確率がかなり低い。まずいな……。

 

「私はエンドフェイズにカードを三枚墓地へ……ターンエンド」

 

俺が悩んでいるのを無視して少女はターンを終わらせる。アンデットと戦うのもなかなか難しいが、あの少女の無表情がずっと無表情なのが何気に心を焦らせる。最初に戦ったチャラ男とはいろいろな意味で比べ物にならない強さだ……。

 

「私のターン、ドロー」

 

俺の手から思わず汗が出て滑りそうになりながらカードを引く。そのカードは……

 

「私はソーラー・エクスチェンジを発動!」

 

「ソーラー・エクスチェンジ」……手札のライトロードを一枚捨て、カードを2枚ドローし、デッキからカードを2枚墓地へ送るカード。俺は手札から「ライトロード・メイデン ミネルバ」を捨てカードを2枚ドローする。俺はそのカードを見た瞬間。

思わず笑ってしまった。

 

「?」

 

少女は俺の顔の変化に気が付いたのだろう。不思議そうに首を傾げる。

 

「私はライトロード・サモナー ルミナスを通常召喚!」

ATK1000

 

俺のフィールドに現れたのは褐色の踊り子のような女性。これが俺が「ソーラー・エクスチェンジ」でドローした逆転のカードの一枚だ。

 

「私はルミナスの効果を発動する!私は手札のライト・リサイレントを墓地へ送り。墓地のチューナーモンスター。ライトロードメイデン ミネルバを特殊召喚!」

ATK800

 

俺の言葉共に今度は白いミミズクを従えたかわいらしい幼女が現れる。宣言した通り、彼女はチューナーモンスター。このピンチに彼女を召喚したのだからすることは1つ!

 

「私はレベル3のミネルバにレベル4のジェニスをチューニング!」

 

幼女は三つの緑の輪へ、姿を変えその中を純白の司祭が通る。そして世界が緑の光に覆われる。

 

「現れよ!ライトロード・アーク ミカエル!」

ATK2700

 

俺の前に降り立ったのは黄金の鎧を着た美しき騎士。その姿は思わず頭を下げてしまいそうな位堂々として、神々しい。

俺の出したモンスターに対戦相手の少女は思わず一歩足を下がった。そして少女自身がそのことに驚いたような表情をした。初めて無表情以外の顔を見た気がする……結構可愛いな。そういえば俺が勝ったらなんでもしていいって言ってたっけ。なんて一瞬頭をよぎるが直ぐに目の前のデュエルに集中する。

ひとまず彼女に勝つことが第一だ。そう思い自分を鼓舞するために「デスカイザー・ドラゴン」を指さす。

 

「さあ、ミカエル、悪竜退治よ!」

 


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