情けは人の為ならず   作:@@@@

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今決めましたが、この作品は二千から三千文字の短い話で構成することにしました。
そうするとわりと簡単に書き上がるんですよ。



02:誰よりも幸運な男

僕の名前は園部幸人(そのべ ゆきひと)

趣味は人助けで、仕事は今のところない。

親元で暮らして大学を出たばかりで、今は一人暮らししてるけど決まった収入はなく、所謂フリーターをやってる。

気が向けばだいたいは日雇いだけど、コンビニでバイトでも、工事現場で作業でも何でもやる。

 

一人暮らしのフリーターで今仕事がない、というと苦しいように感じるかも知れないが、僕の場合はそうでもない。

実はバイト以外にも二つの収入があるのだ。

一つは株取引。これはまぁ、大学時代につけた株取引の知識を元に、なんとかやっているものだ。

 

……いや、やっぱり嘘だ。勉強自体はしたが、実際は自分の生まれ持った『幸運』のおかげでバイトの必要性がなくなるくらい稼いでいる。

とはいっても、家に引きこもるのも好きじゃないし、大体いつもバイトか人助けをしてるけれども。

 

もう一つは所謂『人助け料』。とは言っても別に人助けに料金が発生してるわけじゃない。

たまに人助けをした後、気のいいおじさん、おばさんやおじいちゃんおばあちゃんが小遣い代わりにくれるものだ。

ファミレス一食分でなくなったりしてるけど、そのおかげでそこらのフリーターよりは美味しいものを食べれてると思う。

 

それに、たまに小遣い以上のものを貰うこともある。

例えば、今住んでるボロ……もとい、歴史を感じさせるアパートは、ある人助けの結果、大家さんから無償で借り受けたものだ。

その人助けというのは、架空請求の防止。

井戸端会議で『最近は○○の請求が高くなってーー』という愚痴をこぼしていた大家さんに『そんな請求は普通ないはず』と教えると、不審に思って役所に相談。そんな請求はしない、という確認が取れて今度は警察に相談。すると最近ここらを荒らしてる詐欺グループの犯行だという話になり、大家さんの協力で逮捕。

いや、文系で少しは法律関係かじっててよかったよ。

どうやら大家さんが長いこと詐欺に引っかかっていたことに味を占めた詐欺グループが、最近になって活動を活発にし、被害の多さに地元警察も頭を悩ませていたらしい。

 

まぁそんな感じで、人助けしたりバイトしたりで日々を過ごしてるわけだ。

そして今日もまた、人助けをする。

 

 

HELP:アパートから斜め向かいのおじさん

おう、ユキ。実はちっとばかし困っててなぁ、話だけでも聞いてくれねぇか?

そうかそうか、聞いてくれるか、助かった!

実は来月のウチのガキの誕生日に、最近流行りのゲーム機がほしいんだ。

そう、あのナーヴギアだよ。

だけどなぁ、どこ言っても全然見つかりゃあしねぇ。

そりゃもちろん、売り切れしてるってぐらい想像ついてたさ。なんたって俺がガキの頃から誰もが夢見てたモンだからな。

でも十件以上回っても再生産後の予約さえ取れねぇんだ、こっちも大分参っちまってよ。ネットで探してみようかとも思ったが、パチモンだらけでてんでアテにならねぇ。

こうなったら、今時の若モンに話聞けば少しはなんとか何じゃねぇかってな!

あ?生まれてこの方ゲームを買ったことがない?

ハッハッハ!今の時代にそんなやつがいるとはな!

まぁ、それでもいいさ。取りあえず相場の二倍、十万くらい渡しとくからよ。見つけたら買っといてくれねぇか?手間賃だ、釣りは貰っとけ。

そんなに貰えねぇってか?気にすんな!買えなかったら回収するだけだからな!ハッハッハ!

 

 

 

おじさんの家を出て、思案する。

ゲームショップにもあんまり入ったことがない僕だが、ナーヴギアがほとんど手に入らない、所謂品薄状態であることはよく知っている。

ナーヴギアが販売されてから3ヶ月近く経つが、店頭に五分以上並んだことはないという噂さえあるんだ、入手は並大抵の努力では出来ないだろう。

と言っても、知識も何もない僕がこうして考え続けていても大した収穫は得られないだろう。

考えている間に家についたことだし、出かける準備をして近所の大型ゲームショップに出かけることにしよう。

 

電車で十分少々揺られ、その後に数分歩くと近辺の人がよくお世話になるというゲームショップに着いた。

だがーー

 

「着いたはいいけど、そう言えば時間見てなかったなぁ……」

 

そう、まだゲームショップが開いてなかったのだ。

と言っても後2、3分で開くので、わざわざ他の場所で時間を潰す必要もないのだが。

 

「ん?この貼り紙……」

 

そこには有名なゲーム企業が長年出し続けている、とあるシリーズものの新作の広告があった。

そしてその広告にはーー

 

「あ、もしかしてこれならーー」

 

あんなに苦労したおじさんには悪いけど、もしかしたらもう解決してしまったのかもしれない。

 

 

SOLVE:アパートから斜め向かいのおじさん

お、ユキか。大方、ゲームショップにでも行ってきたんだろう。

ナーヴギアが品薄だってのはよく分かったーーハァ!?もう予約して来ただと!?

は、ハハハハ、ハッハッハ!!

お前の運がいいのは知ってたが、まさかここまでとはな。恐れいったぜ。

ところで、どうやって予約して来たんだ?まともにゃ出来ねぇだろう?

何?新作ゲームの特典として?

ーーあぁ、なる程なぁ。

たまにある、ゲームの絵やらが入った本体がついてくるやつを買ったのか。

ああいうのはかなり高ぇからな。尻込みするやつも多くて、すぐに品切れにならないことも多い。

それに加えて絶賛品薄状態のナーヴギアだ。それにしても随分高ぇ値段だったんじゃねぇか?

99800円?はは、じゃあお前の取り分はたった200円か!

ったく仕方ねぇな、今度俺の奢りで飲ませてやらぁ!

それで我慢しろ。こっちはゲームで懐が寂しいサラリーマン様だからな。

んじゃ、今回はありがとな。お陰で息子に嫌われずに済みそうだ!

 

 




気が乗ったときに書き始めて書ききれる分量ってのは魅力的ですね。
もしかしたらこれからはもすこし更新が早くなるかもですね。
と言っても次話は少し長くなる予定なんで今回よりも遅いかもですが。


あ、次に竿入りします。

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