作者が息抜きで書いてるので基本的に更新は遅いです。放置は絶対にしません。どうかすると二ヶ月とか空いたりするかもしれませんが。
「お主には褒美として『来世』をやろう」
目の前の、人の良さそうなお爺さんはそう言った。
とはいえ、僕には何が何だか分からない。
何せ気がつけばここにいたのだ。
「あぁ、説明をせんとな。
ーーここはお主らの言葉で言うところの彼岸。死した者達が等しく送られる死後の世界。儂はーーそうじゃの、死者を相応しい場所へ送り出す者、さながら閻魔大王であろうかの」
つまり僕は死んだってことなのか。
でも、よく実感がわかないな。生きていたことも覚えてないし。
「まぁ、それで良かろう。それなら死の恐怖に取り付かれることもあるまい。
ーー話が逸れたな。お主は生前の善い行いから、第二の褒美以下の取得が認められておる。その第二の褒美というのが来世じゃ。第五まで褒美があるが、第三が天国行き、第四が就職活動、第五がーー」
待った、タンマ、なんかおかしい気がします。
「全く、最近ここへ来た者は皆そう言うのじゃ。どうせ第四の褒美が分からぬ、罰じゃと言うのであろう?働いたら負けなど知らぬから、まずは話は最後まで聞けい」
あ、はい。そうします。
「ならば、先に第五の褒美を言っておこうかの。第五の褒美とは地獄行きじゃ。どうしようもなく徳を持っていなかった者、つまりは悪しき行いを積み重ねた者が送られる。第四の褒美の就職活動と言うのは、善行は積まなかったが、悪行も積まなかったものが送られる場所じゃ。そこでは天国へ行くための徳を積むために、幾らかの苦行が用意してある。例えば、賽の河原で石を積み続けることなどをしても少しずつ徳が上がってゆく。他にも、現世で彷徨える死者を案内するものなど、苦行とは別の仕事も斡旋しておる」
あぁ、それで就職か……
なるほど、だいたい分かりました。第四と第五は徳が足りない人達の罰みたいなものなんですね。
「まぁ、そうじゃの。儂らのような、神に近いものから与えられるものだから褒美という形になっておる。因みに地獄というのも実際はいくつかある内の最下層を指しているだけで、悪行の程によっては修羅や畜生、餓鬼、そして最後の地獄の四つに分けられ、落とされる」
あ、ところで何で来世は天国行きよりも上なんですか?
仏教でいう転生は悪行を清めることだったりしたと思うんですけど……
「それは儂らが仏教を再現しとるわけではない、というのが一つ。もう一つが、それだけ死者が生を得るということは大きいということじゃ。あぁ、第一の褒美も一応説明しておこうかの。それは
神化、というとつまりーー
「まぁ、お主が想像しているようなものじゃろう。ただ神となり、何かーー世界であったりものや人であったりじゃーーを管理する。こればかりはただ徳を積み重ねた程度では得られぬ。人々に救いと希望を永きに渡って与え続けること。それだけの徳を積み重ねた者は、今までに五人とおらん。彼らはお主の世界で、現代に至るまで、教えで人々を助けておった者達じゃ」
教えーーつまり宗教の開祖か。
なる程、神って随分とすごいハードルだなぁ。
生前僕が何をしていたかは知らないけど、こんなものには到底ーー
あれ?閻魔様?どうしたんですか?
「あ、いや、その、儂は……」
なんですか?
僕に何かーー
「頼む!儂は死者を公平に裁かねばならぬ!嘘を吐くことは出来ないんじゃ!それ以上詮索してくれるな!」
ええと、その……
……何か、あったんですか?
「うぐぐ……仕方ない。
ーーお主は生前人助けを生業としておった。人の笑顔を見るのが好きだと言っての。報酬なぞ貰わず、善意の寄付だけでやっておったのじゃ。どんな小さいことも、逆に世界に影響するような大きいことさえも進んでやった。
ーーじゃがのう、どうしてか、致命的に運が悪かったんじゃよ。ただ街中を歩いているだけでビルのガラスが割れて降ってくる。二階、三階のバルコニーから植木鉢が降ってくることもよくあった。一週間に一度は道路から不注意な車やバイクなどが突っ込んで来おった。入院したのも数え切れない回数じゃよ。他にも挙げればキリがない。郵便の配達忘れや水道管の破裂、新車は頻繁にエンストし飛行機に乗れば行きか帰りはハイジャック。よく天寿を全うできたと誉めてやりたいくらいじゃ。
ーーじゃが、死んでも運は悪かったんじゃのう。後一つ、どんなに小さくとも善行を積んどれば、神化出来た筈だったんじゃ……」
あぁ……何かしっくりくる。僕は運が悪い。そんなことをずっと言ってた気がする。
ん?そうだ!徳が足りないなら賽の河原で石を積めばーー
「それも駄目じゃ。規則的には全く問題ないが、それもまた運が悪いせいか……
よく分からんが、最近は若くして死んだ者の内に転生を望む者が多くてのう。天国に行くことさえ怪しいような者達が何十年単位で苦行や仕事に勤しんでおる。お主は賽の河原で三つも石を積めば神化出来るかもしれんが、次に空いた仕事や苦行を鬼の形相で取り合っておる。それも何百人もの死者が。まるで修羅じゃ。
はっきり言っておくが、絶対に勧めんぞ」
……うわぁ……
じゃあ、いっか。別に生前の僕も神様になりたくて
『来世』っていうのも期待できそうだしね。
あー、その、ものは相談何ですけどーー
「なんじゃ、申してみぃ」
『来世』でもうちょっと幸運になることって、出来ないですか?
「問題ないだろう。お主には褒美を受け取って余りある徳が積まれておる。それを差し出せば大抵のことは叶うだろう。例えば前世の記憶を得ることや、もしやすると神が行使する力の一端のような、世界に影響を及ぼす特別な力を得ることもーー」
あ、そういうのはいいんです。
ただ、僕は次も満足に生きたい、それだけなんです。
「なんじゃ、随分欲がないのう。まぁ、それもいいじゃろう。余った徳はお主の魂に刻まれておる。お主が人一倍善行を積んだならば、今度こそ神化は出来るであろうよ。まぁ、するかどうかはお主次第じゃがな」
ありがとうございます。
じゃあ、お願いしますね。
「うむ、任された。
ーーお主のような善き者は久方振りに見た。次も道を違えることはないようにな。儂も陰ながら応援させて貰おう。
ではな」
はい、頑張ります。
ーー行ってきます。
SAO入りするのは三話か四話。
次話では転生したあと、彼が人助けをしている様でも書く予定です。
あぁ、最後に一つ。
やったことないけど、ネトゲは最低限の定石、時間、そして運で強くなる。やったことないけど。
余り滅茶苦茶なことをしなければ、SAOでは時間の優劣もないし、運が何もかもを決めることになる。ネトゲやったことないけど。
……後は分かるな?