と、言う訳で第18話です
「あ、私、貴方のお父上に貴方の保護を命ぜられました惑星保護機構の八坂ニャル子です」
「同じくクー子…」
「えっと、協力者のハス太です」
「現地協力者の兵藤一誠です」
「同じく、岸波玉藻です」
「うむ、余はアレイスター・クロウリー。『マスターテリオン』とも『黙示録の獣』とも呼ばれていた。こやつはエセルドレーダだ」
「よろしくお願いします」
軽く自己紹介を終えたところで、ニャル子は今日この場所に来た本題を語り出した。アレイスターは黙って話を聞いていたのだが、ニャル子が語り終えた所で一言。
「だが断る」
「ナニッ!!」
「このアレイスター・クロウリーが最も好きな事の一つは、絶対に「YES」と答えると思っているナイアルラトホテップに「NO」と断ってやる事だ」
「そう言う訳ですので、お引き取りを」
にべもなく会話を打ち切る二人。
「いえ、あの、一応我々も仕事で来てるんで“はい、そうですか”と言う訳には……」
ニャル子が粘ろうとするが、二人は全く聞く耳持たず。いそいそと大型テレビに向かうと、ゲームを始めてしまった。仕方がないので一旦帰ろうと立ち上がった瞬間、アレイスターのアーケードコントローラーを見たニャル子とクー子が眼を見開く。
「そ、そそそそソレはぁッ!? 開発者にしか配られなかった『機械神vs機械神 エクストリームバーサス マキシブースト』の専用アケコン、『アーケードコントローラーEx ver.リベル・レギス』じゃあないですかあああああッ!!」
「この血の様な紅色……間違いない、ヤフオクにも出回った事の無い、世界にたった23台しか無い幻のアケコン……! 一体どうやって……」
余りにも凄まじい二人の剣幕にドン引きしている一誠達だが、二人は全く気にせずに食い入る様にアケコンを見つめている。
「フッ、知れた事。バ○ダイに『機械神vs機械神』のアイデアを与えたのが余であったからだ!」
アレイスターは集中線が引かれそうな位のドヤ顔でそう言い放った。
「「な、なんだってー!?」」
急に90年代のマンガの様な顔になって絶叫するニャル子とクー子。
わなわなと慄く二人を放置してゲームを始めたアレイスターだが、何かを思いついたのか、くるりとニャル子達の方を振り返る。
「ニャルラトホテプよ、余とゲーム勝負をしようではないか。貴公達が勝ったのならば、余は潔く父君の元へ帰るとしよう」
ゲーム勝負という単語が琴線に触れたのか、ニヤリと笑みを浮かべるニャル子とクー子。二人はまるで鴨が葱と鍋とコラーゲンを背負って来たかのような目でアレイスターを見やる。
「フッフッフ、言いましたね? この私とクー子にゲームで挑むと!」
「女王は伊達じゃない……」
ニャル子とクー子が全身から謎のオーラを発しているが、対するアレイスターはまるで微風でも浴びているかの様な余裕の表情。
「では、早速始めようではないか。エセルドレーダは下がっていろ、余一人で釣りが出る」
「イエス、マスター。勝利の栄光を、マスターに」
恭しくアレイスターに一礼したエセルドレーダが下がると、意気揚々とテレビに向かう3人。慣れた手つきでキャラ選択を済ませて試合開始。
ニャル子のデモンベインとクー子のアイオーンがアレイスターの駆るリベル・レギスと向かい合い、カウントダウンが始まる。
「フフフ、私のデモンベインを持ってすれ「
開始した瞬間に光の雨が降り注ぎ、ニャル子の選んだ機体が削られる。
「
ダウン状態になったデモンベインにリベル・レギスが接近、黄金の剣で斬り上げて空中に浮かせると、白い焔を纏った手刀で一刀両断。
「ば、馬鹿なあああああッ! アレイスターさん、貴方は私の……ッ!」
言い終わる前に機体は爆発。このゲームにおける暗黙のルール『
「さて、次だ」
クー子の駆るアイオーンに狙いを付けると、リベル・レギスは一直線に突っ込んで行った。
「ば、馬鹿な……私とクー子が、たったの3分で…」
「ブラックロッジの機械神はバケモノ……」
そして2分後、そこには2対1にも関わらずボロ負けした結果、灰のように燃え尽きているニャル子とクー子の姿が。
「―――さて、次は誰がやるのだ?」
アレイスターが一誠達の方を振り返りながら問うてくるが、一誠は今のプレイを見ていて早々にこのゲームで勝つ事は不可能だと悟った。何故ならば―――
「アレイスター・クロウリー! あんたこのゲームやり込んでいるなッ!」
―――ローディング画面にて、カンストしたプレイ時間が見えたから。無論、操縦技術が優れていたのも分かるが、それより何よりプレイ時間がブッ飛んでいるのだ。9999時間とか、何をどうしたらそんなプレイ時間に至ると言うのか。
一誠はふと、『黙示録の獣』がゲーマーだと知ったら、アザゼルはどんな反応をするのかと気になった。
それは置いておくとして、わざわざ相手の得意分野で戦う必要は無い。
そもそも、一誠はロボットゲーはアーマード・コアの様なリアル系しかやらないので、この手のロボットプロレスものはすこぶる苦手なのだ。
「答える必要は無い……と言いたい所だが、プレイ時間を見られてしまってはどうしようもないな。いかにも。余はこのゲームにおいて、全国オンラインで1位をとる程度にはやり込んでいる。時間は幾らでもあったからな。魔人は伊達ではない」
ドヤ顔で答えるアレイスターに対し、一誠は必死に“ソレは廃人です”と言おうとする口を押さえ付ける。目の前にいる存在は、その気になれば瞬き一つする間もなく自分を消し飛ばせると理解しているからである。
「…とにかく、そのゲームを使うのは止めて、公平に勝負出来るモノ……そうですね、トランプ、ポーカーなんかで勝負しましょう」
「ほう、何故それを選んだのだ?」
アレイスターは、興味深そうに一誠を見やった。
「決まってます。TVゲームと違って、運さえ良ければ弱者でも強者に勝てる余地があるからですよ。まあ、麻雀なんかもそうですけど、アレは時間がかかり過ぎますから」
「フ、ハッハハハハハハ!!」
一誠の言葉に、アレイスターが盛大に吹き出した。怪訝な顔をする一誠を他所に、その後も暫く笑い続けるアレイスター。5分程経った所で、ようやく笑いが収まったアレイスターが“スマンな”と言いながら呼吸を整えて一誠の方に向き直る。
「フゥ…ハハッ、まさか余に幸運のみを武器にして挑みかかってくる者が居るとは思わなんだ。気合と根性で挑んで来た者は居たが、この様な手合いは初めてだ。良かろう、貴公とはポーカーで戦おうではないか」
一誠は内心でガッツポーズを取った。ようやく勝率が30%を超えたあたりだが、現状ではコレが限界であろう。
アレイスターがトランプを取り出し、シャッフルしようとした所でニャル子が待ったを掛けた。どうしたのかと思うと、ニャル子は懐から赤地に金の十字架が描かれているトランプを取り出した。
「これはラウズカードと言うトランプでしてね、私の高校時代の友人であるオンドゥル八世に頂いたモノです。これを使用してもらいましょう。相手が用意したトランプなんて、何が仕込まれてるか分かったモンじゃありませんからねぇ」
その場のニャル子以外の全員が、“お前が言うな”と思ったが、空気を読んでスルーした。
「……良かろう。では、始めようではないか。そこのハスター、シャッフルを」
「は、はい!」
アレイスターはニャル子の取り出したトランプを検分した後、ハス太に手渡す。ハス太は慣れた手つきでシャッフルを終えると、あっという間に配り終える。
「勝負は七回戦、その内一度でも貴公が勝てば、余は潔く帰るとしよう」
「盛大なハンデをどうも…」
苦笑しながら手札を確認する。配られたのは♤A、♤2、♡5、♤9、♧Q。初戦は手堅くいくべきと判断した一誠、♡5と♧Qをチェンジした所、ものの見事に♤3と♤6がやって来た。
アレイスターが手札をチェンジしたのを確認し、お互いに手札を開く。
「スペードのフラッシュ」
「ふむ、ダイヤのロイヤルストレートフラッシュだ」
「ふぁッ!?」
いきなりの最強役に驚愕する一誠。不正はないかとハス太の顔を見るが、ハス太は黙って首を横に振る。即ち、不正無し。
「マジか、おい…」
「マジだ。さあ、兵藤一誠。勝負を続けようではないか」
戦慄する一誠にニヤリと笑みを魅せるアレイスター。その怪しげな魅力に、一誠の背筋に冷たい冷たいものが走ったが、悟られないように不敵な笑みを浮かべ返す。
「……上等」
◇◇◇◇◇
ゴクリと、誰かの生唾を飲み込む音が聞こえる。ぴりぴりとした空気が部屋に充満し、全員が瞬き一つせずに固唾を呑んで見守る中、金色の少年――『黙示録の獣』アレイスター・クロウリーが手札を開く。記されていた絵柄は蟷螂、百足、狼、欄、そしてパラドキサカマキリ。
「―――♡のロイヤルストレートフラッシュだ」
悠然と放たれた言葉、示された最強の役。
「そ、そんな……」
「な、7回連続……」
余りにも無情な現実に皆が絶望的な表情を浮かべ、顔を俯かせて震えている一誠を見やる。
「ああ、終わりだ……俺の勝ちでな!!」
絶望に咽び泣いているかと思われた一誠は、しかし。獰猛な笑みを浮かべた貌を上げた。
宣言と共に一誠の手札と捨て札のカード、合計13枚が光り輝く。それだけでは終わらず、今度は一誠自身も輝き始めた。カードはそのまま独りでに空中に浮かび上がると、光の粒子となり黄金に輝く5枚のカードになる。
「あ、あれは……!」
「知ってるのニャル子ちゃん!?」
「ええ、アレはギルドラウズカード! 実体が無いカードであり、封印されているカード13枚と融合した時に初めて使用可能になる物です! その力は他のカードとは一線を画し、対抗できるのは同じく13枚のカードが融合したワイルドカードだけと言われています!!」
ハス太の問いにニャル子がドヤ顔で語り出す。玉藻はその内容を胡散臭そうな顔をして聞いているのだが、ニャル子は全く気付いておらず。
もう『実体が無いカード』等と言っている時点でポーカーのルールがガン無視されているのだが、アレイスターが楽しそうに空中に浮かび上がったカードを観ている為に、黙って彼の側に侍るエセルドレーダ。
「いくぞ、アレイスター! 集いしスートが一つになる時、新たなカードが未来を照らす! 光射す道となれ! コール! 覚醒の輝き、ロイヤルストレートフラッシュッ!!!」
黄金のヘラクレスオオカブト、スカラベ、鷲、山羊、そしてコーカサスオオカブト。尋常ではない力を内包したカードはAのヘラクレスオオカブトから順に一列に並ぶ。
「いっけえええええ!!」
一誠の叫びと同時に、ラウズカードから『ウェエエイ!』という謎の音声と共に謎の光線が放たれ、アレイスターを包み込んでいった。
「ふっ……余の、負けだ」
ポーカーにおいて、並ぶ物の無い最強の役の頂点に位置するスペードのロイヤルストレートフラッシュ。ソレを最後の最後に引き寄せた、絶大な幸運に感服したアレイスターは、自らの敗北を認めた。
◇◇◇◇◇
―――七戦目にして逆転勝利を手にした兵藤一誠。かくして、一誠達は究極の存在である『黙示録の獣』の脅威から世界を守ったのであった 〜fin〜 」
「ニャル子さん、くだらない事してないでサッサと荷造りしてくれない?」
「アッハイ」
一誠が世紀の大逆転勝利を飾ったポーカー勝負から10分後、一誠達は里帰りをするアレイスターの荷造りを手伝っていた。
どうやらアレイスターはちょくちょく人間界を訪れていたらしく、昔は大して物が無かったと言うこの十字架内は、ここ百年の間に集めた様々なサブカルグッズで満たされており。
端的に言うと中野ブロードウェイの様な有り様だった。
「ああーッ! コレは幻の『黒鉄のストライバー DVD BOX 完全限定生産版』じゃないですかああーッ!?」
割り当てられた区画内のコレクションを黙々と分類分けして梱包していく一誠を他所に、ニャル子は先程からお宝を見付けては騒いでおり、全く作業が進んでいない。
「うっひょおおおおお! コンプリートセレクションのアマダムがあああ痛たたたたああああああッ!?」
大興奮中のニャル子の影が揺らめいだかと思うと、一瞬で蛇のようになりニャル子に絡み付く。そのままコブラツイストに移行してニャル子の身体を絞め上げた。
「ちょ、痛い痛い痛い!! 一誠さん何をするだあああああ!?」
「真尋に“ニャル子が働かなかったら傷が残らない程度に傷め付けて働かせてくれ”って言われたからね」
ニャル子の方をちらりとも見ずに、淡々と言い放つ一誠。友人に頼まれたからとは言え、(見た目)美少女に平然と関節技を極める辺り、大分イラッと来たのだろう。
「くっ! 流石ですね真尋さん…まさか友人に妻の折檻を依頼するとは、なんという鬼畜…! コレは私も被虐趣味に鞍替え…あ、スミマセン。真面目にやりますです、はい」
能面の様な無表情の一誠を見たニャル子は、いい加減真面目にやらないとマズいと悟ったのか、
「バーベキューの準備あるんだからサッサと終わらせてくれよ…」
「ほう、バーベキューとな?」
「え?」
◇◇◇◇◇
「白野、肉野菜20本出来たぞ」
「はいよ。イッセー、追加20本と運搬20本頼む」
「ん、了解」
夜の砂浜にて、一誠、白野、真尋の男三人組はひたすらにバーベキューを作っていた。なにせ、並の男子の倍は食べる女子が10人近く居るのだ。焼いた端から串は消えていくので、三人は食べる暇がまるで無い。
一誠が具を串に刺すのと運搬と串洗い、真尋が味付け、白野が焼き担当である。
焼き上がった串を一誠が影を操作して女子+男子(?)の元に運びこむと、皆あっという間に串を持っていく。
「やべぇ、玉葱と豚肉切れた!」
「こっちもハチミツが無いぞ!」
「イッセー! 炭がもう限界だぞ!」
ちらりとテーブルの方を見た所、女子達はまだまだ食べ足りないようで、ガールズトークに花を咲かせながら追加の串を要求している。
「ふむ、これがバーベキューか…良い味だ」
「マスター、こちらを。ミディアムです」
バーベキューを食べた事がないと言うアレイスターとエセルドレーダの二人も交えてだが。
「ええい、かれこれ200本は焼いてるっつうのに…女子の胃袋は底無しか!? いや、まあ、男子もいるけど!」
転移魔法で行きつけの業務用スーパーに移動、不足した食材を買い込んで再び海辺へ転移。食材を補充したら無人の山に転移し、適当に小さ目の木を斬り倒して【紅き焔】で炭にする。この間、わずか4分である。
「なあ一誠、コレ、僕達の分は……」
「考えるな! 最悪その辺のラーメン屋にでも連れてってやるから、今はひたすらに手を動かせ!」
「クッ、アーチャーさえ居れば……!」
結局、その後も300本程焼き続け、最終的に500本近く焼いた辺りでようやく女子から満腹宣言。
空きっ腹を抱えた逸搬人三人組は、後片付けを女子に任せ、フラフラと食事を求めて街へと歩き出すのであった。
◇◇◇◇◇
深夜。食事を終えて、帰宅の準備をしていた一誠の元にアレイスターとエセルドレーダが訪れた。今から故郷に帰るので、久々に楽しませてもらった礼に渡したい物が有るとの事。
「なに、余が渡したいから渡すだけだ。遠慮せずに受け取るが良い」
“大した事はしていない”と言って断ろうとするがアレイスターの言葉とエセルドレーダの無言の圧力に屈した一誠は、アレイスターが懐から取り出した、均整のとれていない不格好な筺を受け取った。
一誠が筺を開き、そっと中を覗いてみると、そこには7本の支柱で支えられた、黒い結晶体が……
「お返ししますッッッッッッ!!!!」
刹那の内にアレイスターに返却する一誠。コレはタダの人間程度に御しきれるモノでは無いと、本能が全力で叫んでいたからだ。
「マスターの贈答品が受け取れないと言うのですか? ヒトの子風情が、随分な態度ですね」
贈り物を突っ返すという失礼極まり無い一誠の態度にエセルドレーダが激おこぷんぷん丸状態で睨み付けるが、ソレで引く訳にはいかない一誠。
「いや、そうじゃ無くてですね? コレは余りにも俺の手には余る物ですよ? コレ、アレでしょう? 『輝くトラペゾヘドロン』でしょう?」
『輝くトラペゾヘドロン』。クトゥルフ神話に登場する黒い結晶体で、あらゆる時間と空間に通じていると言われる超常物体である。
こんなトンデモ物質は受け取れないと言い張る一誠にイラッと来たのか、エセルドレーダが“聞き分けの悪い奴は軽くド突き回してやろう”とばかりに指をポキポキ鳴らすが、アレイスターがソレを手で制する。
「よい、エセルドレーダ。兵藤一誠、ソレはもはや余には必要の無い物だ。先程も言ったが、遠慮なく受け取るが良い。貴公ならば多少は扱えよう、余が保証するぞ」
「いや、保証するじゃ無くって……」
一誠があーだこーだと言い続けていた時。
「―――見付けた」
不意に届いた背後からの声に一誠とアレイスター、エセルドレーダが振り向くと、そこには黒い少女が居た。
「久しい、マスターテリオン」
「……ふむ、オーフィスか。なるほど、数千年振りだな」
黒い少女――オーフィスがアレイスターに話し掛けると、懐かしそうな顔をしてアレイスターは応じた。
「それで、今日は何用だ? ああいや、言わなくてもいい。グレートレッドを倒すのに手を貸せと言うのだろう?」
「話が早い。マスターテリオン、いや
「だが断る」
オーフィスが不気味な笑顔で差し出した手を、アレイスターは鼻で笑って弾く。オーフィスは何故自分の申し出が断られたのか理解出来ず、先程とは打って変わって困惑しきった表情を浮かべ、アレイスターに何故と問うた。
アレイスターは哀れとでも言いたげな目でオーフィスを見やると、こう答えた。
「―――下らんな。己の住処など、己が力のみで勝ち取るべき最たるモノ。ソレを自分よりも格上の存在に勝ち取らせよう等と…全く、コレだから生まれついての神はつまらない。少しは人間を見習ったらどうだ? あの男は、絶対に勝てない相手にも数え切れない程――それこそ無限に等しい数の戦いを挑み続け、遂には打ち破ったのだぞ?」
そう言って
それに、とアレイスターは続け。
「―――余は、絶対に「YES」と答えると思っている混沌の神に「NO」と断ってやる事が大好きなのでな」
ニヤリと、少年のような笑顔を浮かべた。
アレイスターの徹底的な拒絶に、これ以上話しても無駄であると悟ったオーフィス。今度は一誠の方へと向き直り、勧誘の言葉を口にする。
一誠は何故そこまでグレートレッドを倒したいのか疑問に思い、オーフィスに問いただす。
「次元の狭間は元々我のモノ。我は、あの静寂を取り戻したい」
帰ってきたのは微妙にズレた答え。グレートレッドを撃退するだけならば手伝えなくも無いが、テロ組織に手を貸す事は出来ないと答えた一誠に対し、オーフィスは不服そうな顔をする。
「…我の力、あげる。だから手伝って」
オーフィスが袖口から黒い蛇の様な物を差し出すが、一誠は決してソレを受け取る事はせず。
頑として蛇を受け取らない一誠に諦めたのか、オーフィスは“また来る”とだけ言って瞬きの間に消え去った。
「……では、我等も行くとしよう」
アレイスターはエセルドレーダの手を取ると、太陽の中心に目が描かれた紋章を持った、厳かで忌まわしい神気を放つ扉が現れる。
「あ、ちょ、ちょっと! トラペゾヘド……」
「さらばだ、兵藤一誠。次は
「え゛」
―――バレてる。一誠がそう思った時にはもう、アレイスターは扉を潜り抜けており、その扉も下から光の粒子になって消え始めていた。
「……はぁ、バレて無いと思ったんだけどなぁ…」
一誠は次元の狭間の果ての世界に到着する寸前、倍加の能力を使用して自身の『幸運』を
ぶっちゃけると、相手が毎回ロイヤルストレートフラッシュ等という、ブッ飛んだ運の持ち主で無ければ最初の一発で勝負が決まってもおかしくは無かったのである。
扉が完全に消え去ると、一誠は頭を掻きながら悩まし気にトラペゾヘドロンの入った筺を眺める。破壊は恐らく不可能であろうし、棄てたり他人に譲る等もってのほか。
「はてさて、どうしたモンかねぇ……」
満月を眺めながら、独り呟く一誠であった。
ハイ、と言う訳で第18話でした。
今回でようやく海編も終わりです。いや〜長かった!
今回はいつもよりカオス8割増しでお送りしましたが、いかがでしたか?
疾風の如く現れて、嵐の様に去って行ったマスター・テリオン。彼は大変な物を置いていきました―――『シャイニング・トラペゾヘドロン』です。
ええ、第零封神昇華呪法です。どうしようコレ……
ちなみに、この二人はトラペゾヘドロンから『クラインの壺を突破したマスター・テリオンとエセルドレーダ』の記憶が流入した、あくまでも『斬魔大聖デモンベイン』に登場したのとは別人です。
まあ、『あらゆる時間と空間に繋がってる』らしいし、記憶の流入位ならするかなぁ…と。
なので、マステリ様の一人称が『僕』ではなく『余』なのは間違いではありません。
次元の狭間を散歩している際に、突如平行世界の記憶が流入。記憶の統制を図る為に行動不能に。ソレを偶然発見した聖書の神が封印しました。
コレが、『どう考えても遥かに格下である聖書の神が、どうやってマスター・テリオン封印したのか?』の答えです。
ハイ、ぶっちゃけますと、全く封印出来てませんでした(笑)
封印も中身弄って家にしちゃってますしね(笑)
そして初登場、『無限の龍神』オーフィスたん。おう、喜べお前ら、幼女だぞ(狂喜乱舞
ちなみに、ウチの一誠君は『おっぱいドラゴン』では無く『歴代最強格の赤龍帝』です。
なので、原作ほどオーフィスたんの興味の対象にはなっていません。せいぜい『あ、こいつ手駒にしたら使えそうだな』位の関心です。
尺の都合で祐斗の話入れられんかったよ……orz