ハイスクールD×Dに転生した   作:ユウタロス

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前回の後書きで『1週間以内に更新する』と言ったな、アレは嘘だ。

…いや、ホントすいません。頑張ったんですけど書き終わりませんでした(泣)

今回は粗雑な捏造設定が入りますので『そういうのはNG』と言う人は、どうかご容赦を。


と、言う訳で第16話です








第16話 どうしようも無ぇや!

 夕方。浜で十分遊んだ一誠達は『民宿まりん』に戻ってきていた。

 

 

「しっかし、まさか一誠が魔法使いだとは思わなかったよ」

 

「いや~、俺はむしろ、真尋に邪神の彼女がいる事よりも、タダの人間が一誠にフォーク当てられた事に驚いたよ。ですよね、ギンさん?」

 

「せやなぁ、つくづく人間はごっつ生き物やと思ったわ」

 

 

 白野、真尋と会話をしているのは森丘 銀影(もりおか ぎんえい)。かつて、とある事件で一誠と出逢った青野月音の仲間で新聞部の先輩である。

 

 現在は恋人で同じく陽海学園のOGである音無 燦(おとなし さん)と共にここ、『民宿まりん』で働いている。

 

 

「まあ、そら置いておいて。お前ら、ホンマの所誰が1番なんや?」

 

「は、何が?」

 

「何がやないわ、しらばっくれたらアカンで! あないにぎょうさん可愛ぇ娘侍らしよって!」

 

『はぁ?』

 

 

 一誠、白野、真尋が全く同時に口に出す。

 

 

「“はぁ?”やないわ! 特にお前やイッセー! お前一人で何人女の子連れ回してんねん!?」

 

「……10人?」

 

 

 少し考えてから答える一誠。

 

 

「多いわ! 月音かて6人やぞ!? 裏モカ入れても7人やで!」

 

「芳芳をカウントするのはやめて差し上げなさい」

 

「確かに、言われてみれば凄い数だよな」

 

 

 銀影に指摘された事で、冷静に考えると凄まじいまでのハーレム状態である事に気付いた白野と真尋。

 一誠は2人を、“余計な事に気付きやがって……”とでも言いたげな、苦虫を噛み潰した様な顔で見る。

 

 

「余計な事に気付きやがって……」

 

 

 訂正、口に出していた。

 

 

「……いや、まあ、半分は娘みたいなもんだから。明確にLOVEなの3人だけだから」

 

 

 だからセーフと言い張る一誠。分かっていて放置している時点で、ちっともセーフでは無いのだが。

 

 

「―――イヤね? 俺だってこういうのは良くないって分かってますよ? でも、選べないじゃん。もし誰か一人を選んだら、他の娘が悲しむかもしれないじゃん」

 

 

 不意に、一誠がポロっと愚痴を零す。

 

 

「……イヤイヤイヤ、“選ぶ”とか“悲しむかもしれない”とか一体何様だよ俺は……

 ぶっちゃけ、俺なんてただ強くて魔法が使えるだけの高校生だし……なんでここまで好かれてるのか、自分でも分かんないんだもん……

 かと言って、皆に他の男は好きになって欲しくないし……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛、自己嫌悪で鬱ってきた……」

 

 

「お、おう……何や、その……苦労、しとるんやな……?」

 

 

 銀影は、自分が壮絶な地雷を踏み抜いた事に気付いたが、時既に遅し。

 

 一度口に出してしまったが為に、一誠はドンドンと愚痴と自己嫌悪の言葉を溢れ出させていく。

 

 やはり前世含めて30年彼女がいなかった男にとって、現在の『美少女数名に恋い焦がれられている+美少女数名との同居生活』は些か精神的にキツいものがあったらしい。

 

 ついでと云わんばかりに、()(兵藤一誠)なだけに、辛そうである。主に下半身が。

 

 自分と同じ様な境遇の男子が居る事も相まって、堰を切った様に『普段は言えない本音』を吐き出していく一誠のそのザマは、正に『ヘタレ』の一言に尽きた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「……ふう。なんか、吐き出したら結構ラクになったわ。ありがとな、みんな」

 

『あ、ああ、うん……』

 

 

 しばらくボソボソと愚痴を吐き出した事で胸につっかえていたものが取れたかの様な、スッキリとした笑顔を浮かべる一誠。代償はとことんまで沈んだこの空気である。

 

 

「さて、俺のせいでだいぶ空気が悪くなったし……いっちょやりますかな。うん。

 白野、真尋、悪いけどみんなを下のテラスに集めといて」

 

「? 分かったけど……何するんだ?」

 

 

 不思議そうな顔をする白野に、一誠はニヤリと笑って応える。

 

 

 

「夏の夜にやるものなんて、一つに決まってるだろ?」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「【昇銀龍千輪菊光露】!!」

 

 

 気合一閃。

 

 一誠が抜き放った刀から飛んでいった光弾は、空高くまで上昇すると爆発。巨大な光の花が広がった。

 

 

『おお〜〜〜!!』

 

「よっしゃ、まだまだいくぞーーー!!」

 

 

 みなが歓声をあげて花火を見ているのに気を良くした一誠は、抜刀速度を上げて次々に花火を打ち出していく。

 割物、型物、ポカ物と、様々な花火が大量に飛び交う様子に、民宿どころかそこら中から見物人が集まってくる。

 風鈴と花火、うずまき蚊取り線香とスイカ。まさに日本の夏のオンパレードである。

 

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃああああ!!」

 

 

 ……あと、暑苦しい男。

 

 

「せりゃりゃりゃr「イッセーさん、暑苦しいのでもう少し静かにやって下さいませんか?」アッハイ」

 

 

 『雄叫びをあげながら刀を振り回す男子高校生』は余りに見苦しかったのか、タマモにかなり冷たい眼を向けられ、静かになる一誠。それでも腕の動きは一切止まっていない。

 

 

「……つくづく僕と同じ地球人とは思えないな。イッセー、本当は邪神なんじゃないのか?」

 

「だからイッセーとオレ達を同列にしちゃ駄目だって……」

 

 

 男2人は失礼な事を言っているが、幸運にも花火の音にかき消されて本人には聞こえていなかったようである。

 

 

「ねぇねぇイッセーくん! 私の顔の花火飛ばしてよ!」

 

『は?』

 

 

 黙々と花火を打ち上げている一誠の元にやって来たヴァーリがぶっ放した凄まじいまでの無茶振りに、みんながざわめき出す。本職の花火職人でも難しそうな注文なので、当然と言えば当然の事なのだが。

 

 

「のう、ヴァーリよ。それは些か無茶振りが過ぎるのでは「ん、良いぞ」えっ、出き『出来るの!?』……ぬぅぅ、余のセリフに被せるでない!」

 

 

 見かねたネロがヴァーリを諌めようとした所で、まさかのOKが出て場のざわめきに拍車が掛かる。

 

 まさか出来ると思っていなかったのか、ヴァーリもポカンと口を開けている。

 

 

「……師匠、別に見栄を張る必要葉無いんだぞ? 出来ないんだったら出来ないって言って良いんだぞ?」

 

「出来る、つーのっ!!」

 

 

 ゼノヴィアの『出来もしない事を出来ると言ってしまい、途方に暮れている子供を諭す様な優しい口調』に若干イラッとした一誠が、通常よりも長めに溜めてから居合抜きを放つ。

 

 光弾は空中で爆発すると、満開の向日葵のような満面の笑みを浮べたヴァーリの顔になる。

 

 雪の様な肌は透明感のある白色、日の光を浴びるとキラキラと輝く髪は白銀色。形の良い耳や整った鼻どころか、まつ毛や八重歯まで再現しており、如何に一誠がヴァーリの顔を覚えているかをまざまざと見せ付ける。

 

 

「す、凄いな…よく再現出来てるよ」

 

「当たり前だ、俺がヴァーリの顔を間違える訳が無いじゃないか。何年見つめてたと思ってんだ」

 

「ふ、ふぇぇぇ……」

 

 

 その余りの精密さに、若干引いた様子の真尋が話かけるが、当然だと返す一誠。

 

 先程までのヘタレっぷりがウソの様な堂々とした返事に、ヴァーリは顔を真っ赤にし、他の皆は気圧されて只々同意するしか無かった。

 

 その後、ポケモンやらカービィやらタマモを押し倒している白野やら、真尋を押し倒しているニャル子等、様々なリクエスト通りの花火を打ち上げた一誠であった。

 

 

 因みに。

 

 後日、あの花火が一般人達にも見えていた事を思い出して、1人ベッドで悶え苦しんでいる銀髪ポニーテールを目撃した酒好きの堕天使が居たらしい。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「あ、そうだ。一誠君、最後の1人はいつ来るんだい?」

 

『最後の、1人…?』

 

 

 女将さんが花火を上げ終えた一誠へ掛けた問に、ドライグ達が不思議そうな顔をする。

 

 ドライグとアルビオン。ヴァーリ、レイナーレとミッテルト。アーシアにゼノヴィアとイリナ。そして祐斗とさよ。およそ兵藤家の面々と言える者は全員揃っているのに、他に誰が来るというのか。

 

 

「相棒、誰が来るのだ? アザゼルか?」

 

「ん? ああ、ちょっと弟子入り志願者とその保護者がね…まあ、その辺はおいておいて。皆でコレでもやろうじゃないか」

 

 

 ドライグの質問に軽く答えると、懐からWi○ U本体とリモコンを取り出す一誠。明らかに懐に入る大きさでは無いのに誰もツッコまないあたり、一誠の仲間内での評価がよく分かる。

 

 

「フッ……師匠、今日こそ勝たせてもらおうか! 私のクッパで!!」

 

「相棒! 私はピーチだからな! 真似しちゃダメだぞ!」

 

「そうだぞイッセー! デイジーは私のだ!」

 

「ロゼッタは私専用、異論は認めない」

 

「はっはっは! お前ら有象無象なんぞ、この俺のヘイホーで蹴散らしてくれるわ!」

 

 

 その後、歓声を聞きつけたニャル子達も乱入。そのまま民宿のスタッフも含めた、全員参加のマリカー王者決定戦へと発展した。

 

 なお、キチンと防音・遮光結界を敷いていた為、ご近所から苦情が来る事は無かった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 翌日、まだ朝日が登りきっていない時間。一誠はテラスの椅子に腰掛け、瞑想していた。

 

 

「……お、来たか」

 

 

 一誠が目を開けたのと全く同時。空間が斬り裂かれ、そこから2人の男女―――アーサー・ペンドラゴンとルフェイ・ペンドラゴンが現れた。

 

 

「こんにちは、兵藤一誠君」

 

「お、おはようございますッ!」

 

「はいはい、おはよう2人共。待ってたよ」

 

 

 随分とスタイリッシュな登場をしておきながら、何事も無かったかの様に平然と挨拶するあたり、この三人はだいぶ一般常識と言うものが吹っ飛んでいる。

 

 

「おや、割りと早めに来たつもりでしたが、待たせてしまいましたか?」

 

「ああ、様式美だから気にしないで……さて、ルフェイ」

 

「は、はい!」

 

 

 一誠に名を呼ばれ、緊張しながらも手を挙げるルフェイ。

 

 

「約束通り、今から君に俺の魔法の一部を教えてあげるけど。約束の内容は覚えてる?」

 

「もちろんです! “決して他人にこの魔法についての情報を与えない”、“決して不当な目的にこの魔法を使わない”…ですよね?」

 

「うん、覚えてるなら良いよ。じゃあ、早速やろうか。アーサー、悪いけど君にはここで待っててもらうよ?」

 

「構いませんよ、そう言う約束ですから…その代わり、後で私と一戦交えて下さい。……ではルフェイ、頑張るんですよ?」

 

「ハイ、兄さん!」

 

 

 ルフェイはアーサーの言葉に元気に頷くと、一誠が用意した魔法球に入った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 用意しておいた携帯型魔法球(内部時間4倍速)内。

 一誠は伊達メガネを付けて黒板の前に立ち、ルフェイは靴と靴下を脱いで地面に正座しながら小さい勉強机にノートを広げて一誠を見ている。

 

 

「―――さて、ルフェイ。魔法とは何か分かる?」

 

「私たち人間や神話の存在などが魔法力を消費して発動する超常現象です」

 

 

 一誠の質問に、スラスラと淀みなく答えるルフェイ。

 

 

「ふむ。じゃあ、魔力と魔法力の違いは?」

 

「魔力は悪魔の体内にのみ存在する物で、魔法力は悪魔以外の存在が保有している「うん、それ間違い」……え!? ち、違うんですか!?」

 

 

 魔法使い…と言うか、『裏』に関わる人間の一般常識が間違っていると、キッパリと言い切った一誠に驚愕するルフェイ。

 

 

「実はね、どっちも同じ物なんだよ」

 

「……え?」

 

「“魔力は悪魔にしか使えない”んじゃなくて、“悪魔は魔力の直接操作が出来る”って言う事なんだよ」

 

「魔力の直接操作……ですか…?」

 

 

 如何に天才児と言えど、流石に突拍子も無さ過ぎる説明だったのか。ルフェイは怪訝な顔をして小首を傾げている。

 

 

「おう。と言っても、急に言われても分かんないか……例えるなら、そうだな……車を動かすにはガソリンが必要だよな?」

 

「は、はい」

 

「人間は石油(魔力)からガソリン(魔法力)を精製しないと(超常現象)を動かせないけど、悪魔はダイレクトに石油(魔法)ぶち込んで車を動かせるんだ。簡単に言うとこんな感じだな。分かった?」

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

 

 かなり粗雑な例えだが、一応は伝わったようである。

 

 

「……でも、どうして悪魔は魔力の直接操作が出来るんですか?」

 

「それは悪魔たちが魔力で出来てるからさ」

 

「…へ?」

 

 

 本日2度目の爆弾発言に、ルフェイはポカンと口を開けて呆けてしまう。だが、一誠は気にせずに話を続ける。

 

 

「“超越者”は知ってる?」

 

「……あ、はい。“サーゼクス・ルシファー”と“アジュカ・ベルゼブブ”、“リゼヴィム・リヴァン・ルシファー”の三人ですよね?」

 

「そうそう。そのうちのサーゼクスさんの能力は?」

 

「サーゼクス・ルシファーは自身を滅びの魔力に……」

 

 

 途中まで言った所でルフェイが固まる。

 一誠の“悪魔は魔力である”と言う言葉をそのままに信じるならば、つまり。

 

 

「気付いた? アレが、悪魔の本来の姿なんだよ。って言うか、フェニックスなんて正にそうでしょ? いくら肉体が傷付いても、意識さえ保てるなら何度でも蘇るんだから。ちなみに、死んだ悪魔が粒子になって消滅するのは魔力に還元されるからだよ」

 

 

 ルフェイは一誠の話を聞きながら、“何をどうしたらこういう発想が出来るのか”と考えていた。

 

 

「……なんか全く関係ない話になってたな。よし、話を戻そう。俺の魔法についてだったな」

 

 

 ここで、ようやく本来の話に戻る。

 

 

「あ、ハイ! ぜひ赤龍帝様の魔法を教えて頂きたく…」

 

「そんな、固っ苦しく呼ばなくても、普通に呼べばいいよ。じゃあ、ハイこれ」

 

 

 ポンと手渡されたのは、先端部分にハートの付いた小さ目の(ワンド)。『ネギま』原作でも登場した、子供用練習杖である。

 

 

「あの、コレは……?」

 

「それを振りながら【プラ・クテ・ビギナル 火よ灯れ】って唱えてみ?」

 

「わ、分かりました! 【プラ・クテ・ビギナル 火よ灯れ】!!」

 

 

 尊敬する大魔法使いである一誠が言うのだから、とにかくまずはやってみよう。

 

 そう思いながら呪文を詠唱するが、杖は全く反応しない。

 

 

「あの、何も起きないんですけど……」

 

「貸してみ? 【プラ・クテ・ビギナル 火よ灯れ】」

 

 

 一誠が杖を受け取って詠唱すると、杖の先端部分から大きい火柱が立つ。

 

 それを見たルフェイは、再び一誠から杖を受け取って詠唱するが、火柱どころか火の粉すら出ない。

 

 

「どうして……?」

 

 

 如何に魔法力を込めようと、うんともすんとも言わない杖に、困り果てるルフェイ。

 

 

「それじゃあ、いくらやっても無理だよ。ヒントあげるから、どうしてか考えてみ。じゃあ、ヒント。F1カーにどれだけ軽油を入れたって、絶対に動かないよ」

 

 

 一誠の言葉に考え込むルフェイ。

 

 如何に魔法力を注ぎ込んでも、全く反応しない杖。F1カーが杖ならば、軽油は魔法力。F1カーを動かすのに必要なのはハイオクガソリン。このハイオクガソリンを魔法関係のものに当てはめるなら……

 

 

「……魔力を、込めるんですか?」

 

「正解。俺の魔法は“魔力を使って発動する”んだ」

 

 

 その答えに唖然とするルフェイ。当然だ、魔力を使って発動すると言う事は、魔力を直接操作していると言う事であるのだから。

 

 人間には、それが出来ないはずなのだから。

 

 

「……先生は、悪魔なんですか?」

 

 

 故に、ルフェイは思わずそんな言葉を投げかけていた。

 

 

「まさか、俺は立派な日本男児だよ。そもそも、お前らみたいな魔法使い達はみんな勘違いしてる。人間にだって魔力は使えるぞ? って言うか、俺使ってるし」

 

 

 だが、一誠はハッキリと“自分は人間だ”と宣言する。その上、“魔力は人間にも使える”と。

 

 

「ど、どうやるんですか!?」

 

 

 食い気味なルフェイの質問に、一誠は初めて難しそうな顔をした。

 

 

「ひたすらその杖使って練習してれば、半年もすれば使えるようになる……と、言いたい所なんだがな……」

 

 

 難しそうな顔をしたまま考え込む一誠に、不安が募っていくルフェイ。

 

 

「何か、問題があるんですか…?」

 

「……うん、ルフェイはだいぶ魔法力のクセが染み付いちゃってるからな……多分、ただ闇雲に練習しても出来無いかもしれないんだ」

 

「そ、そんなぁ……」

 

 

 憧れの赤龍帝の魔法が使えると思った所でこの言葉。ルフェイは目に見えて落ち込んでしまう。

 

 

「安心しな、ちゃんと方法はあるから」

 

「ホントですか!?」

 

 

 駄目だと思った瞬間にこの言葉。本人は意識していないのであろうが、見事なまでの飴と鞭である。

 

 喜ぶルフェイを尻目に、一誠はチョークで地面に人2人分程度の大きさの魔方陣を描く。

 

 

「と言う訳で、ルフェイ。ちっとこっちおいで」

 

 

 トコトコと魔法陣に入ってきたルフェイに、人差し指を出してもらうと、断りを入れてから細い針で軽く突付いて出血させる一誠。

 

 一誠は、ルフェイの血液を指で掬い上げると、自分の片手にも針を突き刺して出血させる。

 

 

「ん。じゃ、ちっと申し訳ないんだけど。この血飲んでもらえる?」

 

「は、はい……え、えっと、コレは、何の儀式魔法なんですか…?」

 

「“従者契約”のお試し版さ。じゃ、いくよ?」

 

 

 魔法陣が発光するのと同時に、拭い取ったルフェイの血を飲む一誠。

 

 

「は、ハイ! えっと、えっと…あむっ」

 

「ちょ!?」

 

 

 発光を始めた魔法陣に焦ったのか、一誠の様に指で拭い取らずに、直接一誠の人差し指を咥えてしゃぶりだすルフェイ。

 

 

「ん…ちゅぷ…んぅ…」

 

「あ、ちょ、別に指は……ええい、【仮契約】!!」

 

 

 血を零さないように、一誠の指を丁寧に舐め回すルフェイ。

 

 ガッシリと引き締まった少年の指を、少女の小さな舌がチロチロと這い回り、その唾液で塗らしていく。その光景は、ルフェイの幼い容姿も相まって凄まじいまでの扇情的で背徳的な雰囲気を感じさせる。

 

 簡単に言うとめちゃくちゃエロい。それはもう、一誠のキバットバットⅡ世がウェイクアップしてダークネスヘルクラッシュしそうな位エロい。

 

 止めさせようにも契約魔法は既に起動している為、即座に契約を終わらせにかかる一誠。

 

 

「んっ…ふぁ…!」

 

 

 魔法陣が一際強く輝くと、空中に仮契約カードが現れる。それと同時に、魔法陣の光が弱くなっていき、最終的にフッ、と掻き消える。

 

 

「―――ふぅー、契約完了っと……ルフェイ、気分は…ルフェイ?」

 

 

 現れた仮契約カード(へちゃむくれ版、効果は同じ、アーティファクト無し)をキャッチしてルフェイの方を見ると、そこには地面にへたり込んでいるルフェイの姿が。

 

 ルフェイは顔を真っ赤にして、ハァハァと荒い呼吸を繰り返している。

 

 

「しゅ、しゅみましぇん……こ、腰が抜けて……」

 

「え、あれで?」

 

 

 確かに【仮契約】の際には多少の性的快感が生じるが、【契約執行】に比べれば微々たる物。

 

 あの程度でこの有り様では【契約執行】なんて使った日には、とてもお茶の間に放送出来ないような展開になる事は明々白々である。

 

 

「しっかし、困ったな……仮契約でコレじゃあ、とてもじゃないけど【契約執行】なんて使えないよなぁ……」

 

「いえ、大丈夫です! 私、イケます!」

 

「いや、そう言われても……正直、さっきのよりキツいよ? その……性的快感が」

 

「だ、大丈夫です!」

 

 

 顔を赤くしながらも続行を求めるルフェイに、これ以上何か言うのは無粋と判断したのか、一誠は仮契約カードを構える。

 

 

「……分かった。じゃあ、取り敢えず10秒いくぞ? 【契約執行 10秒間 一誠の従者 『ルフェイ・ペンドラゴン』】」

 

「ひゃあああんっ!?」

 

 

 体中を一誠の魔力が駆け巡った瞬間、ルフェイの背中にゾクゾクとした快感が走り、思わず大きな嬌声が漏れる。そのまま10秒が経過すると、ルフェイはぺたりと腰砕けになっていた。

 

 

 

「えっと、今、ルフェイに魔力を供給したんだけど…分かった?」

 

「はぁ…はぁ…」

 

「ルフェイ〜?」

 

「すみ…ハァ…ません…ハァ…もう一度、お願いします…もっと…ハァ…長めで…」

 

「お、おう……」

 

 

 その後も……

 

 

「【契約執行 30秒間】」

 

「んんんんッ!!」

 

 

「【契約執行 90秒間】」

 

「ひぎぃっ!!」

 

 

「【契約執行 120秒間】」

 

「〜〜〜〜〜ッ!!」

 

 

 少しずつ【契約執行】の時間を伸ばしていき、200秒を超えたあたりでようやく詠唱練習が開始。

 

 そうして【契約執行】が6分を超えると……

 

 

「イキます…【プラクテ・ビギ・ナル 火よ灯れ】!」

 

 

 気合いを入れて詠唱すると、杖の先端部分から30センチほどの火柱が発生した。

 

 

「で、出来た〜! 出来ましたよ先生!」

 

 

 水に沈めてみても燃え続けている事から、ちゃんと【火よ灯れ】が発動しているのだと判断した一誠は、ルフェイに労いの言葉をかける。

 

 

「おお、出来てる出来てる。たった1時間ぽっちで大したもんだよ」

 

 

 ルフェイは詠唱が、魔力を用いた魔法が成功した喜びのあまり、杖を地面に置いてからぴょんと一誠に飛びついた。

 

 

「おっと」

 

 

 落っことさないように、飛び付いてきたルフェイをギュッと抱き締める一誠。しかし、ルフェイは忘れていた。未だ一誠からの魔力供給が続いていた事を……

 

 

「ひっ!? あっ! やっ! だ、めぇぇぇ………」

 

 

 一誠に抱きとめられた途端、ルフェイの全身を電流が走る。

 全身に氷の様な冷たさが走り、間髪入れずに爪先からゾワリとした熱が生じ、耳鳴りと共にその熱が足から上へと這い上がっていく。

 瞬く間に全身を熱さと痺れが支配していくその陶酔感に、ルフェイは、完全に頭の中が真っ白になる。

 

 

「ッ!! あッ、あ……ッ!! 〜〜〜〜〜〜ッ!!」

 

 

 その余りの快感に、体を海老反りにさせてビクンッビクンッと痙攣するルフェイ。ルフェイは痙攣が止むと、くたりと力無く一誠に凭れかかる。

 

 

「ちょ、ルフェイ!? おい、ルフェイ! だいじょうb……」

 

 

 シャァァァ…と言う音と共に、一誠のズボンが生暖かい、ツンと鼻に付く臭いの液体で濡れていく。

 

 

「……え?」

 

 

 一瞬、どうしてズボンが濡れるのか理解出来ずに固まり、理解してしまってからは別の意味で固まる一誠。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 沈黙。抱き合った姿勢のまま硬直し、只々沈黙する2人。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……うっ、うぅ……」

 

「!?」

 

 

 重すぎる沈黙を破ったのはルフェイ。嗚咽の声と共に、ジワリ、とルフェイの澄んだ青色の瞳に大粒の涙が浮かぶ。

 

 

「ちょ、待っ…」

 

「……ひっく……う、うええぇぇぇぇん…」

 

 

 ルフェイ、号泣。

 

 

「ひっく、えっぐ、ひぃぃぃん……」

 

「あ、あの、ルフェイ? その、何だ? 俺は、全然気にしてないから……」

 

「びえぇぇぇぇんッ!!」

 

「ハハッ、どうしようも無ぇや!」

 

 

 余りにもあんまり過ぎる状況に、『もう、なるようになーれ♡』と思考放棄を始める一誠。

 

 なにせ中学生程の少女にお漏らしをさせてしまったのである。たかが魔法が使えるだけの男子高校生如きに『慰めの言葉をかけろ、少女の心に一切の傷を残すな』と言う方が酷である。と言うか、大人でもそうそう慰められるものでは無い。

 

 “後でアーサーに殺されるかもしれない”

 そんな事を考えながら、ルフェイが泣き止むまで延々と彼女の頭を撫で続けた一誠であった。

 

 

 

 

 





ハイ、と言う訳で第16話でした

今回は前回に引き続いての海回、ギンちゃん初登場回、イッセー君のヘタレ&本音暴露回、ルフェイちゃんとアーサーの生出演回になりました。

捏造設定で『悪魔=魔力の塊』、『魔法力=魔力の劣化品』と言う事になりました。

一応、理由があってこうしたので。納得がいかない方々もいるでしょうが、目をつぶってやって下さいませ m(_ _)m

具体的にどういう事か伝わらなかったかもしれないので、そのうち本文に修正かけます。


それと、出すかどうか非常に悩んだのですが、今回から『UQ HOLDER!』の技も出す事にしました。一応、ネギま』の世界線上の話だし、問題ないよね!(目反らし)

そして最後の最後で(恐らく)全て持っていった(であろう)、(生では)初登場のルフェイちゃん。


友人に『お前のssってハイスクールD×D原作の癖に、全然エロ描写無いよな(笑)』と言われたので『上等じゃこんにゃろう!!』と逆ギレ。
タイミング良く登場したルフェイちゃんに犠牲になってもらいました(ゲス顔)

しかし、書いといて何ですけど…ルフェイちゃんの描写は大丈夫なのだろうか。ちゃんとエロくなってるのだろうか……(汗)

作者の力量ではコレが限界なので『ちっともエロくねーぞゴラァ』と言う方々には今後のエロ描写については諦めて頂きたく存じますです、ハイ。

次回も引き続きルフェイちゃん回です。

次回こそ、次回こそ何とか1週間以内に更新を……!!


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