戦真館×川神学園 【本編完結】   作:おおがみしょーい

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相当いろいろネタを詰め込みました

わかる人はわかると思います。


第七話  ~夜遊~

 一度寮へと戻った四四八は私服に着替えて川神駅へと向かった。

 こちらに来て部屋着以外で私服を着るのはもしかしたら始めてかもしれない。

 何かプライベートな気分が出てきて、なんとはなしにワクワクしてくる。

 

 川神駅に着いた時はもうすでに18時に近い時間だった、冬馬の姿を探していたら向こうの方から手を振りながら冬馬が近づいてきた。

「こんばんは、流石に時間通りですね。制服姿以外は初めて見ましたがよくお似合いですよ」

「来て早々に服を褒めるのか、随分と口説き文句がうまいな」

「おや? そういう意見が出てくるということは、四四八くんも見かけによらず結構遊んでいる、とか?」

「まさか、一般論だよ、一般論」

「そうですか、まぁ、遊んでたとしても驚きませんけどね。なんというか四四八くんはドキリとおもわせる言葉が多い。もう少し気遣いが出来ればハーレム築くのも可能だと、私は思いますけどね」

「葵みたいにか? 冗談だろ」

「いえいえ、十分可能だと思いますよ。ただ、とても疲れますけどね」

「そんなもの薦めるなよ……」

 

 そんな会話をしていると、大和が到着した。

 

「ああ、やっぱり来てくれましたね。こんばんは大和くん」

「興味があったのは確かだしな。はじめまして、俺2―Fの直江大和。よろしくな。」

「柊だ。話だけは晶達から聞いてるよ、川神先輩達のグループや2-Fの参謀役なんだってな」

「そう言ってんのは仲間内だけだよ。参謀ってんなら葵冬馬の方がよっぽど参謀だ」

「おや、参謀でも種類はいろいろいますからね、個人的には大和くんは敵に回すととても厄介な人物だと思ってますよ」

「そうやって人を持ち上げて、足元すくうんだぜ。柊も気をつけた方がいいよ」

「おやおや、ひどい言われようですね」

「なぁ、おい、どうでもいいけど。なんか見られてないか? どうにも居心地が悪いんだが」

 

 週末の駅前、人通りは溢れんばかりだがその中でも3人はとても目立っていた。

 3人が3人ともベクトルは違うが容姿は人並み以上だ、そんな3人が仲睦まじく話してる姿はなかなかに興味を惹く。

「ねぇ、あの3人ヤバくない?」

「合コンとかかな? いまなら声かけてもいんじゃない」

「マズいわぁ、あのハーフっぽい子ガチで好みだわ……」

「なにあのリアル鬼畜眼鏡……怒られたい……」

「あのパーカーの子めっちゃ可愛い顔してない?お姉さんが可愛がってあげたい」

「くっくっくっ……思い描いてた三角関係、大和を思うとNTRの情緒も相まって……ハァハァ」

 その中に腐った怨念の様のものもあるらしい。

 

 悪寒を感じ大和がブルリと身を震わす。

「どうした、寒いのか?」

「いや、そういうわけじゃない……と、思うんだけど」

「もう秋も深いですからね、風邪をひいたら大変です話はお店に入ってからにしましょう」

 そう言って歩き出す冬馬に四四八も大和つづいていく。

 さて、どんな食事になるか。

 

――夜は始まったばかりだ。

 

 

――――同日同時 川神某所――――

 

 

 童帝! 童帝! 童帝! 童帝! 童帝!

 

 川神市繁華街のとある地下にある中規模ライブハウスは異様な熱気に包まれていた。

 200以上入れるであろう箱は男どもで埋まっている。

 それだけなら特に珍しいことではない。地下アイドルなどのライブも行われるため客が男性だけということもままある。さらに熱気のことを言うなら女子高生等が多く集まるビジュアル系のバンドの時の方が凄い。

 

 では、何が違うのか、何が異様なのか。それは熱気のベクトルだ。

 

 地下アイドルもビジュアル系をはじめとするバンド、演劇、ミュージカルetc、ライブハウスで行われる催しの大半は多かれ少なかれプラスのベクトルを有している。作品自体がポジティブ、ネガティブは関係ない。それは自分の創作物を人前に晒すというエネルギーが基本プラスなものだからだ。

 しかし、今このライブハウスにはとにかくマイナスのエネルギーがあふれている。

 何か怨念のようなものまで感じる。

 悪魔崇拝を標榜する宗教のミサ――そんなものを思い浮かべてしまう位の異様な熱気、異様な雰囲気だ。

 

 童帝! 童帝! 童帝! 童帝! 童帝!

 

 会場のボルテージはドンドン上がっていく。

 

 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!

 そして、舞台にブリーフ姿の首にカメラをかけた覆面男が現れたとき、そのボルテージは最高潮に達した。

 壇上の覆面男が手を振り、観客たちを沈める。あれほどまでに騒がしかった観客たちが瞬間に静まった。が、熱気は収まってない。むしろ声を抑えたぶん内へ内へと溜まっていっているようだ。

 

 覆面男が語りだす。

「同志諸君。今宵は魍魎の宴SP ~もう盗撮なんてしないなんて言わないよ絶対~ に集まってくれたこと、大変嬉しく思う」

そう言って覆面の男は芝居がかったように大きく手を広げる。

「今宵は新たな同志の協力で今話題の千信館のお宝も用意した。もちろん武士娘たちの新たなお宝もぬかりはない……。川神学園を飛び出した今回、時間に制限はないっ!! 諸君っ!! 宴を思う存分楽しもうではないかッ!!!!!」

 

 ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!!

 童帝!! 童帝!! 童帝!! 童帝!! 童帝!! 童帝!! 童帝!!

 

 今まで溜め込んでいたエネルギーを爆発させた魍魎たちにより、ライブハウスの熱気はもはや溢れんばかりだ。

 

「さぁ、同志815(エイコー)の協力により集めたニューフェイスたちの逸品だ、皆準備はいいか……?」

「おお! いきなり千信館のお宝か!!!」

「俺、真奈瀬晶のモノならなんでもいい!!」

「水希……水希……水希……ッ!!!」

「落ち着け同志ノブ、おまえ落とせなかったら腹でも切る勢いだな」

「おれ……鈴子さんの奴隷になりたいッス」

「歩美ちゃんハァハァ」

 

 魍魎たちが騒ぎ出す。

 

「まずは、真奈瀬晶の部屋着姿。あの巨乳と脚線美をタンクトップとホットパンツで包んだ日常系の一枚……俺はこれで……3杯はイケる!!!」

「5000!」

「8500!」

「10000!!!」 「決まりだ……」

 

「さあ、次はグッズ。この櫛だ。この美しい櫛は我堂鈴子が髪をとかしていたもの。もちろん証拠写真もある。セットで提供する。」

「7000!!」

「9500!!!」

「い、15000!!!」  「決まりだ……」

 

「次は龍辺歩美と甘粕真夜のツーショット……しかも、龍辺歩美は縞パンのパンチラがうt……」

 

「さん!! じゅううううううううううまああああああああああああああああん!!!」

 

 童帝の商品説明が終わらぬうちに、魍魎の宴史上最高額を絶叫する魍魎。

「ふっ……さすがだな……ほら」

「悪いな……遊ぶことすらできなかったぜ……。あ~~~、これはもう聖骸布として信仰すべきだな~~~」

 

「さぁ、それではニューフェイス最後の逸品だ……世良水希の……パンツだ!!!」

 

「なっ! まさか現物だと!!!」

「ど、童帝、まさかそこまで」

「み、水希のパンツ!水希のパンツ!!!」

「落ち着け! 同志ノブ!」

「お、おいおい。同志815(エイコー)あれは流石にヤバくねぇか?」

「い、いや、オレだって驚いてんだよ!オレは前日童帝の言われた時間に寮の鍵をあけただけなんだ。まさか童帝のヤツ、洗濯後の衣服が食堂前のBOXに入っているのを知って……お、おそろしい」

 

「さぁ、洗濯後のものだが、確実に使用済みだ……はじめるぞ……いくらだ!!」

「さ、30000」

「50000だ!」

「お、オレは100000!!」

 

「500000ッ!!!」

 

 一気に静寂に包まれる会場。これはもちろん魍魎の宴最高額だ。

 

「同志ノブおまえ……」

 競り落とした人間の友人と思われる隣の男が自らがノブと呼んだ魍魎の顔を見る。

 彼は泣いていた……

 とても清々しい顔で……

 しかし、その涙はまるで美しくなかった……

 

「ふはははは、素晴らしい魍魎の宴SPにふさわしい幕開けではないか!さぁ、今宵の宴はまだまだ続くぞ!!」

 

 うあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!

 童帝!!! 童帝!!! 童帝!!! 童帝!!! 童帝!!! 童帝!!!

 

 熱狂の坩堝の中、NO815は一人呟く。

「悪いな、晶、歩美、水希、我堂。お前たちの犠牲はオレの風火輪の血肉になってくれるぜ……」

 

 魍魎たちの宴は終わらない。狂気を孕みさらに狂乱は続いていく……

 

 

――――同日同時 川神市ゲームセンター――――

 

 

『さぁ、今宵のスーパー神座大戦EX大会決勝は、なんとニューフェイスの登場だ!鎌倉から来た‘腹筋マニア’使用キャラはなんとランダム! 対するは前回優勝者の‘天ちゃん’使用キャラは掟破りの第六天波旬だぁ! 決勝前に二人の意気込みを聞いてみましょう』

 

 決勝ということもあり、実況の店員も‘舌’好調といったところか。

 ここは川神市でも一番大きなゲームセンター、大会などもかなりの頻度で行われており、全国大会の予選なんかも行われていたりする。だから設備もなかなかのものだ。

 大会専用の筐体は舞台の上で向かい合うようになっている、その後方には大型スクリーンが有り、筐体の画面がそのまま映るようになっていてギャラリーはそれを観戦するといった具合だ。

 

 筐体の前に二人の少女が立っている。

 1P側はパンクな格好をしたツインテールの少女 板垣天使。

 2P側は龍辺愛実。

 

『さぁ、前回優勝の‘天ちゃん’どうですか、勝てそうですか?』

「あ゛、おめぇ誰に言ってんだ、ウチの第六天が負けるわけねぇし。賞品はウチのもの」

『いつも通りの反応ありがとうございました、では初参加の‘腹筋マニア’どうですか?』

「強キャラ使って勝ってもツマンナイじゃないですか。《愛》が足りないんじゃないですか?《愛》が」

『おおっと! これはいい煽り、さぁ、あったまって来たところで二人共位置についてください』

 

「おい、ちみっこいの、ウチを怒らしたらタダじゃ済まねぇからな」

「え~、始める前から脅し? ゲーセンでの脅しには屈しちゃダメだってプロゲーマーのタケハラさんもいってたもんね~」

「……ぶっ殺す!!」

 

 射殺せそうな程鋭い天使の視線をを涼しい顔で受け止めて歩美は2P側へ向かう。

 

「ねぇ、スグル。龍辺さんどうだろ?」

「まぁ、相手が波旬だからな、何が来たって一緒っちゃあ一緒だ。あれ確かダイヤで全キャラに6以上ついてんだろ」

 第六天波旬とは神座万象シリーズにおけるラスボスの一人で、原作でも憎たらしいほど強いキャラなのである。

 それの関連作品であるスーパー神座大戦EXで初登場したのだが、原作に忠実に作りすぎたのか、キャラが強すぎて公式大会では使用が禁止されている程なのだ。

 調整をかけようにも原作ファンからは「この憎らしいほどの強さがむしろ波旬」、「弱い波旬とかもう存在そのものが無駄」等の声が多く手が付けられず、現状据え置き。そのためゲーセン内では暗黙の了解として使用が禁止になっている、そんなキャラなのだ。

 

 舞台ではキャラ選択画面。天使はもちろん第六天波旬、歩美はランダム画面にカーソルをあわせる。

 

『さぁ、決勝が始まります、‘腹筋マニア’のキャラは……御門龍明!これはこれは原作的には非常に熱い対戦となりました、では第一ラウンドの開始です!!』

 

《 死闘  開戦!! 》

 画面に試合開始の合図が流れる。

 

「龍明かぁ~、どうだろ」

「まぁ、なんのキャラでも6:4以下だから形成さんとかじゃなきゃ何でもワンチャンあるっちゃああるが……」

「だよねぇ、普通にやったら厳しいもんね」

「というか、製作者は何を意図して超必を8個も持ったキャラ作っているのだ、理解ができん」

 

 モロとスグルが話してる間にも試合は進み……

 

《 勝者 第六天波旬!! 》

 

「へへ~、ウチの波旬にかてるわけねぇんだよ。ちみっこが」

「も~、チビチビチビチビ、あんたにだけは言われてたくないですよ~」

「悔しかったら勝ってみな、やれればだけどな~」

「OK~、もう動きは覚えたからね。Kick your ass!!」

 

《 死闘 開戦!! 》

 

『あとがない‘腹筋マニア’。波旬の攻撃をしのげるか!』

 

「超必一回避ければ、隙ができるんだけどね」

「ファーブラ回避した時が一番のチャンスだが、あれをかわせというのはどうなんだろうな」

「あ、でも、ファーブラくるっぽいよ」

 

『波旬のファーブラ! これで決まった……かと思ったら大焼炙の無敵で回避! そのまま波旬からダウンを奪って、起き攻めはスカして下段……画面端! 追い詰めて!! 陽の拾からの0フレコンボ、ミスらない!! 補正を切ってもう一回!!! これはいけるか? いけるか? いったぁぁぁぁぁぁッ!!!!』

 

 おおおおぉぉぉぉぉぉ……

 

 歓声ではなくどよめきが巻き起こる。それほどまでに第六天は圧倒的なのだ。

 

「おい! 今のハメだろ!! ウチのシマじゃノーカンだぞ!!!」

「うっさい、黙って。一瞬の油断が命取りだよ」

 

《 死闘  開戦!! 》

 

『なんと最終ラウンド突入。この一戦で優勝が決まります。天魔・夜刀はどちらの手に渡るのか!!』

 

「ねね、さっきの凄かったね!」

「ああ、ファーブラ回避もそうだが、コンボのあと一回補正を切って再度フルダメのコンボを叩き込みやがった」

「次も行けるかな」

「さぁな、もうファーブラは来ないだろうからどうするか……」

 

『おおっと、今回は‘腹筋’龍明が攻める攻める。起き攻め二択は……中段! 入ってそのままコンボ、止まらない! 止まらない!! いつの間にか、画面端!! 波旬の超必は――読んでいた!!! 緊急回避からの1コンボ!! 最後は大焼炙で締めたああああああああッ!!!!!!!』

 

 わあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!

 

「なっ!! ふっざけるなよ!!! あーーーーーー、もう、ウチ帰る!!!!」

 天使は筐体の1発殴ってそのまま、ずんずんと舞台袖へと引っ込んでしまった。

 

 舞台では歩美の表彰式と商品の授与が行われている。

 

「へへ~、夜刀様ゲットだゼ~」

「おめでとう龍辺さん、凄かったねぇ。とくに最後の超必避けとか普通無理でしょ、あれ」

「ああ、ありゃ相当シビアだな。というかネットで一回話題になったが、できないってことで廃れたと思ってたわ」

「へへへ、《愛》ですよ《愛》」

 歩美の優勝を二人が讃えている。

 

「んじゃ、俺はアニメの時間だからこれで帰るわ、じゃあな」

「うん、じゃあねスグル」

「ばいばい~、よ~し、優勝もしたし。このままあっちゃん達のカラオケに合流するぞ~~」

 

 そんな風に歩美喜びを全身で表してると……

 

「いっただきっ!」

 

 歩美のもっていた賞品のフォギュアの入った袋をひったくってものすごい勢いで掛けていく人影、天使だ。

 

「あーーーーー、ドロボーーーー!!」

「はっ!悔しかったら取り戻してみな!!」

 

 歩美は辺りを見回して、射的があるのを見つけ飛びついた。

「おじさん!借りるよ!!」

 返事も待たずに射的の銃を手に取ると、天使に向かって照準をあわせる。

 

 スッ――と、目を細め、集中する。

 

 カッ――!と、目を見開いたと同時に引き金を引く、その瞳は赤く光っていた。

 

 放たれた弾は射的の弾とは思えないほどの早さで天使にせまる、そしてその後頭部にあたった――かに思えた弾をまるで後ろに目が付いるかのように頭を振って天使は避けていた。

 

「フン!そんなもんに当たるかよ!!」

 後ろを向いて歩美を一瞥し言い放ったあと、再び前を向くと……

 

「フギャ!!」

 

 避けたはずの弾が軌道を変えて天使の眉間にぶち当たってきた。

「いったでしょ、一瞬の油断が命取りだよって」

 そうやって、天使を一撃で撃退した歩美は隣にいたモロの方に向き直って言った。

「みんなが心配するといけないから、今のこと四四八くん達には黙ってて欲しいんだけど。いいかな?」

 目を覗き込むようにして言う歩美はいつもよりひどく大人びて見える。

 モロはドギマギとした胸の内を隠しながら「うん」と一言こたえるのが精一杯だった。

 

「えへへ、ありがと。じゃ、またね」

 そう言って歩美は取り返した袋を手にゲーセンを出て行った。

 

モロはしばらくその場を動けなかった……

 

 

 




注:劇中のノブと信明さんとは一切関係ありません


お付き合い頂きまして、ありがとうございました


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