戦真館×川神学園 【本編完結】   作:おおがみしょーい

4 / 65
3話にして題名を考えるのがおっくうになってきてるという現実…


第三話  ~接触~

 川神学園についた大和たちが感じたのは、いつもとは違った空気だった。

 ザワついているというか、浮き足立っているというか……

 もちろん、今日から鎌倉の千信館の面々が来るということで熱が上がっているのはおかしい事ではないが、その手のイベントで言うなら6月に『源氏のクローン』という一大イベントを既に消化している、それに比べれば、交流学生などそこまで騒ぐほどのことでもないはずだ。

 

 

 だが、学園内の雰囲気は千信館の学生に対する興味で溢れているようにみえる、もちろん6月のクローン騒ぎの時ほどではないにしろ、それに近い形の興味を学園生達は感じているようだ。

 

 何かインパクトのある情報でも出回ったのだろうか。

 

 情報を重要視している大和としては少し出遅れた歯がゆさを感じながら、携帯のネットで噂をしらべようとした、ちょうどその時……

 

「あ、いた!大和ぉーー、大変、大変よー!!」

「遅いぞみんな、早くこっちに来い」

 

 先着していた一子とクリスが校門のところで手招きをしている。

 

「なんかあったのかな」

「わかんねぇけど、面白そうだから行ってみようぜ」

 

 一子とクリスに連れられてきたところは、

「テストの掲示板?」

「げぇ、なんで朝一でこんなの見なきゃなんねぇんだよ」

ガクトは露骨に嫌な顔をしている、が、ワン子はとにかく掲示板を見ろと急かす。

「なんだよワン子、もしかして順位が初めてふた桁にとどいたか?」

「そんなこと、天地がひっくり返ってもありえないわよ!そんなことより、上、上!」

 全く自慢にならないことを口走りながら掲示板の上の方を見ろと促す。

 ワン子の言うとおり掲示板の上の方を見てみると……

 

1位 葵冬馬 (2-S)

1位 柊四四八 (千信館)

 

「葵冬馬がならばれてる?」

 1年の時からただの1度も学年1位の座を明け渡すことなく守り続けてきた葵冬馬に肩を並べた千信館の柊四四八。確かにこのインパクトは相当なものだ。

 特に同じ学年である大和達2年の人間からしたらそれこそ驚愕と言っていいかもしれない、源氏のクローンより『凄さが現実的に分かる』分、『どんな奴だろう』という興味が膨れ上がっている。

 

「ひいらぎ……なんて読むんだ?よんぱち??」

「ガクト、それだと四がひとつ抜けちゃってるよ」

「よしや、じゃないかな?ひいらぎよしや」

「あ~、でもこの分じゃガリ勉っぽい奴等かなぁ。もうちょい面白そうなやついいんだけどなぁ」

「あ、でも、千信館の方々の名前結構バラついてますよ」

 

1位   柊四四八 (千信館)

5位   世良水希 (千信館)

9位   我堂鈴子 (千信館)

85位  鳴滝淳士 (千信館)

101位 真奈瀬晶 (千信館)

135位 龍辺歩美 (千信館)

201位 大杉栄光 (千信館)

 

 由紀江の言うとおり、上位の3人を除くとそれなりにバラけた感じに見える。噂の我道鈴子の名前もある、全体9位で薙刀の実力者。文武両道な千信館の生徒らしいと言えるかもしれない。

 

「ほう、これはこれは……」

「いや~、うちの若と勉強で肩を並べる奴がいるとはねぇ」

「ね~、トーマ、マシュマロあげるから、泣いちゃダメだよ」

「ありがとうございます。ユキは優しいですね」

「ふははははははははッ!我が友トーマと肩を並べる奴がいるとはな!なかなか面白そうではないか!!」

「そんなイレギュラーがいて、さらにあの忙しさの中3位をキープ、流石です英雄様♡!」

「お~、英雄と同率3位か……ん、まてよ、この場合川神水の契約はどうなるんだ……3位になってるんだから大丈夫だよな……」

「うぅ……義経は順位が下がってしまった、情けない」

「泣くんじゃねぇよ、うっとおしいな。学校の成績なんざ世に出れば塵芥なんだからよ……」

「与一……おまえは自分の順位が下がったことをもっとなげくべきなんじゃぁないのかぁ」

「や、姉御、ちょっ、ストップ!ストップ!!」

「ああ、弁慶やめてくれ。与一は義経を慰めてくれたのだ。義経は負けない、次は元に戻るように頑張る。……だから弁慶こんど勉強見てくれるか?」

「あ~、もちろんだとも。ウチの主はなんて可愛いんだ」

「……自分だって3位キープやばかったくせに」

「あっ!何か言ったか、与一……ッ!!」

「な、なんでもねぇよ」

「ふむ、葵冬馬と同率ですか……ですが、指揮官としては勉強が出来るだけではダメ。もっと総合的な知力、洞察力、判断力が必要。評価をするのはもう少し本人をみてから判断しましょう」

「にょほほほほほほ、ザマぁないの葵。いつも調子に乗ってるからじゃ」

「不二川心、あなたはS組でも下から数えたほうが早くなってきている自分の現状を鑑みなさい」

「む~~、うるさいうるさ~い。高貴な此方の実力はこんなもではないのじゃ~、今に見ておれ~~」

 

 S組の面々もやはり興味があるようだ、特に葵冬馬はなんとなく嬉しそうにも見える。

 

「どうしたんだよ。妙に嬉しそうじゃないか」

「おや?大和くんが話しかけてくれるとは珍しい、傷心の私を慰めてくれるというのですか?でしたら是非、放課後にここのホテルで……」

「いや、違うし。てか、全然傷心に見えないんだけど。さっきも言ったけど妙に嬉しそうじゃん」

「そう見えますか?そうですね、未知のライバルの出現に心が踊ってる……といったところでしょうか。勉強に関しては英雄が常に2位ですが、英雄は忙しい人ですからね。純粋に競争相手としては難しい。その点この柊四四八くんは相手にとって不足なし、です。」

「はー、そういうもんかねぇ」

「私は大和くんにも期待してるんですよ、ライバルになってくれる相手として。そろそろ本気になってくれませんかね?」

「なんだそれ、買いかぶりすぎだよ」

「そうですか、それは残念」

 

 そんな、話をしているうちに全体朝礼の時間がやってきた。

 千信館、そして葵に肩を並べた柊四四八のお披露目だ、全校生徒が興味津々といった面持ちでグランドに集まっていった。

 

 

―――――川神学園 グラウンド―――――

 

 

「皆も既に聞いていると思うが、本日より学生交流の一環として鎌倉の千信館の学生を受け入れることとなった。短い間だが共に競い合い、高め合い、切磋琢磨するように」

 学園長の話が続いている。

「編入クラスは2-Fと2-S。2-Fには真奈瀬晶、鳴滝淳士、龍辺歩美、大杉栄光の4名。2-Sには世良水希、我堂鈴子それから柊四四八の3名が入ることになる、皆仲良くな、では一人づつ壇上に上がって挨拶するように、まずはF組に編入の4人からじゃ」

 

 促されてまず金髪のスタイル抜群な少女が壇上に上がる。

「なんだよ、トップバッターかよ~。え~と、名前は真奈瀬晶。特に言う事とか考えてなかったんだけど、楽しくやれたらいいなと思ってます。よろしく!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!なんだあの胸、反則だろう!!」

「……あっ……やばい、俺、イッたかも」

 ガクトやヨンパチの様な一部の男子が騒ぎ出す。

 

 次に一番大柄な、まるで岩の様な男がのそりの壇上に上がる。

「鳴滝淳士だ。短い間だが、まぁ、よろしく頼むわ」

「ヤッベ、何あいつアタイ史上に相当高レベルなイケメンだわ……マジ喰っちまいた系だわ」

「羽黒はああいうタイプ好きだよね~。でも、ちょっと源に雰囲気にてるかも」

 

 今度は逆に一番小柄な少女がピョンピョンと飛び跳ねるように上ってくる。

「龍辺歩美、趣味はゲーム。トランプ、ボードゲーム、人狼、格ゲー、RPGにFPSなんでもゴザレ。みんなと遊べるの楽しみにしてるま~す」

「ふおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!ロリ、きたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 あ、井上って朝礼だとあの辺いるのね。

 

 F組最後はお調子者を絵にかいたような少年だ。

「大杉栄光(はるみつ)。『えいこう』と書いて『はるみつ』だ、気軽にエイコーって呼んでくれよな」

「元気いっぱいですねー。ああいう子を見るとお姉さん母性本能をくすぐられちゃいますぅ。委員長としてしっかり面倒見てあげないと」

 

「続いてはS組編入の3人じゃ」

 

 そういわれてまず髪の長い少女が壇上に登ってきた。

「我堂鈴子です。名門と誉れ高い川神学園の皆さんとこうやって競い合えることを誇りに思います。短いあいだですがよろしくお願いします」

「来たわね我堂鈴子。腕がなるわ」

「ほぉ、鎌倉の我堂と言えば、あの我堂家の人間か。にょほほ、高貴な此方の対戦相手として申し分ないの」

 

 次に上がってきた少女はどこか大人びた雰囲気をまとっている。

「世良水希と言います。この中では事情があってちょっとお姉さんなんだけど、そういうことはあんまり気にせず話しかけてくれると嬉しいです」

 そう言ってニッコリと笑う笑顔に、

「おぉぉぉ……あれが鎌倉産美人か……燕どうしよう、自分はもう我慢できないかもしれない」

「学園長がちかくにいるし、やめたほうがいいと思うよー」

と、反応する者多数。

 

 そして最後に眼鏡をかけている少年――少年というにはあまりに落ち着いた振る舞いで、とても年相応には見えないのだが――が登壇した。

 2-S、葵冬馬の牙城を崩す可能性のある男、柊四四八。今まで以上に全校の視線が集まっている。

 大人でも怯みそうな大人数の不躾な視線にさらされながら、当の本人はそんな視線を真っ向から受け止めて挨拶をはじめた。

 

「当代千信館筆頭の柊四四八です。我らが千信館と同じく文武両道を標榜している川神学院の方々と、短いあいだですが競い合い、高め合えること光栄に思っています。そしてこの川神学院に千信館の人間が来たという確かな足跡が残せるように努力を惜しまぬつもりです。最後に千信館を代表してこの機会を下さった川神学園の皆様に感謝を申し上げます。ありがとうございます」

 

 全校生徒が注目する中、流れるように紡ぎだされる挨拶は一切の淀みがなく、かつ、練習を重ねてきたような嘘臭さが感じられない。優等生という概念が服を着ている……そんな第一印象さえ相手に抱かせる完璧な挨拶を柊四四八は行った。

 

「では、今日の全体朝礼はこれにて終了じゃ、千信館の皆も直接指定の教室に向かってくれ、あとは各担任の指示に従うのじゃ」

「それジャ、これにて解さ――」

 

「ちょっと、まったぁぁぁぁ!待ってくださいルー師範!!」

「ん?なんだイ一子」

「川神一子は同じ薙刀使いとして、我堂鈴子に勝負を申し込むわ!」

「え?え?!私??」

 

 いきなり名指しで指名された鈴子は目を白黒させておどろいている。向こうの方ではクリスがその光景を悔しそうに眺めている――駆けっこ勝負は一子に軍配があがったらしい。

 

「ちょ、ちょっと!学園長!!これどういうことですか?」

「事前に説明したが、この川神学園には決闘という制度がある。合法的に生徒同士が競い合い試し合う制度じゃ。もちろん双方の合意が上で行うもんじゃから断るのも自由じゃ」

「そんな……いきなりいわれても」

「なに?我堂さん、あなた逃げるつもり?」

「逃げっ!なんですって!!」

「だってアタシは正々堂々、勝負の申し込みをしたのよ。それを断るのはそれは逃げてるって事じゃない」

「逃げてないわよ!というか、断ってもいないし!!ええいいわ、やってやろうじゃないの!!!私もねあなたとは一回手合わせしてみたいと思ってたのよ、川神一子さん」

「学園長よろしいんですカ?」

「もちろんじゃ、テストで千信館の『文』のお披露目が終わったのじゃ、次は『武』のお披露目というわけじゃ」

 

 オオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォっ!!!!!

 全校生徒のボルテージが一気に跳ね上がる。

 

 そんな生徒たちを横目に千信館の面々はあまりの展開に流れに乗り損ねてしまっていた。

「おい、柊。いいのかよ」

「良いも悪いも本人が乗ってしまったんだから、どうしようもないだろう」

「りんちゃん、相変わらず煽り耐性が低すぎーーー」

「まぁ、そこは鈴子だしねぇ」

「ったく、初日から元気だねぇあたしにゃ無理だわ」

「つーかさ、我堂のやつ勝てのか?なんか周りの反応みるに結構強そうだぜ?」

「さあな、我堂は相手のことを知ってるみたいだが――だが、こうなったら仕方ない」

 

 そう言って、四四八はよく通る声で向こうで準備をしている鈴子に声をかける。

 

「我堂!成り行きだが、やるからには勝てよ!お前の背中には千信館の名前がかかってるんだからな!!」

「任せなさいよ!勝ったらあんたを奴隷にしてあげるんだから!」

「……なんでそうなるんだよ」

「いやー、りんちゃんは今日も絶好調だねー」

 

 二人の準備が整い相対す、ここに千信館と川神の初めての交わりが切って落とされる……

 

 




ああ、やっとここまで来た
やっぱり川神の先方は一子が一番ですね~

お付き合い頂きましてありがとうございます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。