戦真館×川神学園 【本編完結】   作:おおがみしょーい

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第三十六話~仁王~

    ―――――青龍組 決勝―――――

川神アンダーグラウンド vs デス・ミッショネルズ

 

 試合開始直前、鳴滝と忠勝は武舞台へと続く通路を歩いていた。

「なぁ」

 忠勝が声をかける。

「あぁ?」

 鳴滝が短く答える。

「デス・ミッショネルズのダブル・ラリアット、なんか対策は考えてんのか?」

 忠勝が鳴滝に問いかける。

「……まぁ、あるっちゃあ、あるな……オメェは?」

 その問に歯切れ悪く答えながら、鳴滝もまた忠勝に聞く。

「あ? まぁ、おれもあるっちゃあ、ある……けど、保証はねぇ」

 と、忠勝も歯切れの悪い答えを返す。

「つまり、お互い出たとこ勝負ってとこか」

「そうだな……」

 そんな言葉に鳴滝が笑う。

「へっ、悪くねぇ。それにたとえ分が悪くても賭けなきゃ勝てねぇからな」

「ま、そりゃ、そうだ……」

 鳴滝の軽口に忠勝が肩をすくめて同意する。

「行くか」

「おお」

 鳴滝の言葉に忠勝は頷き二人は会場へと足を踏み入れる。

 浴びせられる歓声の中、二人はゴンっと拳を合わせた。

 

『さぁ、次は青龍組の決勝戦。川神アンダーグラウンドとデス・ミッショネルズの対戦です』

『デス・ミッショネルズのダブル・ラリアットまずはこれを何とかしねえと川神アンダーグラウンドは厳しいな』

『まずは出させないことが重要なのですが……さてどうなるでしょうか』

『先程勝った、川神シスターズに続くのはどちらのチームになるのでしょうか、今、ゴングですっ!!』

 

 試合開始と同時に、弁慶と辰子が鳴滝と忠勝に襲い掛かる。

「そおい」

「とーーりゃーー」

 あまり気合の入っているようには聞こえない声とともに弁慶は手に持った錫杖を下から振り上げ攻撃し、辰子は肩を前に出した状態で忠勝にぶつかっていく。しかし、その威力は声と反比例して強烈なものだ。

「ぐっ!!」

「うおっ!!」

 鳴滝は手をクロスして弁慶の錫杖を防御したが、忠勝は辰子の突進をうけて場外まで吹っ飛ばされた。

「ん?」

 忠勝を吹き飛ばした辰子は不思議そうな顔をしていた。

 手応えがあまりなかったのだ。

 忠勝は辰子が当たる瞬間、後ろに跳んでいたのだ、だから手応えがなかったし忠勝自身も場外という予想より大きな距離を吹き飛ばされていたのである。したがってダメージもほとんどない。

 

 だが、弁慶と辰子の目的は達成されていた。

 この先制はダメージを与えるものでも、ましてや仕留めるためのものではない。

 相手を孤立させるための攻撃。

 故に、今、武舞台にいる鳴滝に二人の照準は定められた。

 

「デカブツの方だ! 挟むよ! 辰子っ!」

「りょーかーい」

 弁慶の合図で辰子は移動をし、鳴滝を挟み込む。

 鳴滝は目を動かしながら二人の位置を把握している。

「いくよ! ダブルっ!!」

「ラリアットォッ!!」

 弁慶の声に、辰子が答えて鳴滝めがけて突進する。

「この状態で避けたり、躱したりは無理だよ。おとなしく寝てなって!」

 弁慶の声が鳴滝に届く。

「あぁ? 避けるだ、躱すだぁ? なめんなッ!!」

 そう言うと鳴滝は両脚に力をいれ、その場で仁王立ちする。

 そこに、弁慶と辰子が挟み込む。

 がんっ と、弁慶と辰子の腕に衝撃が走る。

 しかし、それは鳴滝を挟み込んだ衝撃ではなかった。

 

 鳴滝の右手が弁慶の腕を止めていた。

 鳴滝の左手が辰子の腕を止めていた。

 

「なっ!」

「えー」

 鳴滝は腕をいっぱいに広げ、片手だけでそれぞれの突進を止めていた。

「何が対策だよ、ただの力尽くじゃねぇか……」

 場外から這い上がってきた忠勝が鳴滝の姿を見て呆れたように呟く。

 

「おおおおりゃ!!」

「くおっ!」

 鳴滝は右手にもった弁慶の腕を強引に振り回し放り投げる。

「弁慶っ!」

 辰子は放り投げられたパートナーの名前を呼び、それを起こした張本人――鳴滝の顔を睨みつける。

 辰子の顔に怒りの色が浮かぶ。 

「よくもおおっ! あああああああああああっ!!!」

 右腕を掴まれている辰子が自由な左手で鳴滝の顔面を狙う。

「くっ!」

 鳴滝はその左拳を弁慶を投げ飛ばし自由になった右の手のひらで受け止める。

「ああああああああああああっ!!!!」

 同じタイミングで辰子は掴まれていた右腕を振りほどきこんどは右拳を鳴滝に繰り出す。

 鳴滝はその拳も離れた左手で受け止める。

 辰子は掴まれた拳を強引に開いて鳴滝の両手を掴む。

 

 手四つ。

 図らずも純粋な力比べのための型にはまる。

 お互い両手をつかみ合っての力比べ。

 

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

「あああああああああああああああああああっ!!!!」

 鳴滝の腕が盛り上がる。

 辰子の絶叫がほとばしる。

 動かない。

 二人の力に耐え切れず、足ものと武舞台のタイルが割れて二人の足が沈む。

 

「がああああああああああああああああああっ!!!!」

「わああああああああああああああああああっ!!!!」

 二人が同時に咆哮と共に身体をそらせて、頭を前に振る。

 がんっ、という音と同時に鳴滝と辰子の額がぶつかり合う。

「がああああああああああああああああああっ!!!!」

「わああああああああああああああああああっ!!!!」

 再びの咆哮と共に二度目の額の激突。

 

 そこに、

「辰子ぉおおおッ!!」

投げから復帰した弁慶が両手で錫杖を振り上げて鳴滝に襲い掛かる。

「ちいいっ!」

 右手を離し鳴滝はその錫杖を受け止める。

「ああああああああああああっ!!!!」

 離れた左手を拳に握り辰子が鳴滝の顔面を狙う。

「――っ!」

 めきっ、という音と共に辰子の拳が鳴滝の顔面に突き刺さる。

「ああああああああああああっ!!!!」

 再び拳が振るわれる。

「――っ!!」

 拳が再び鳴滝の顔面に突き刺さる。

「ああああああああああああっ!!!!」

「――っ!!!」

 3度目、鳴滝の巨体がグラリと揺れる。

「ああああああああああああっ!!!!」

 止めを刺すために4度目の拳が振るわれる。

「――らあっ!! なめんなあああっ!!!」

 顔面めがけて繰り出された4度目の拳にタイミングを合わせて鳴滝は自らの額をぶち当てた。

 3度まで顔面への攻撃を耐えたのはタイミングを測り放つこの一撃のため。

「いっ!!」

 思いがけずに硬いものを叩き怯む辰子。

「こっち、忘れてもらっちゃ困るよ!」

 錫杖に力を入れて鳴滝の動きを封じていた弁慶が畳み掛けて鳴滝を倒すべく錫杖を片手持ちに切り替え鳴滝の無防備な顔面に拳を繰り出そうとした。

「そりゃ、こっちのセリフだっての」

 下の方から聞こえてきた言葉に目を向けると、全力で走ってきた忠勝のスライディングが弁慶の足を払っていた。

「のわっ!」

 弁慶の身体が浮く。

「おらあっ!」

その弁慶の身体を錫杖から手を離した鳴滝は捕まえ辰子と共に再び放り投げ用とする。

「くうっ! そう何度も、ただで投げられるかってっ!!」

 弁慶はそう言うと、離された錫杖を強引に振るい投げられる直前、鳴滝の頭に錫杖を叩き込む。

 

 ガンっ という音と共に鳴滝の額が割れて血が吹き出る。

 ドンっ という音と共に弁慶と辰子が地面に落ちる。

 

「がっ!」

「ぐっ!」

「わぁっ!」

 鳴滝、弁慶、辰子それぞれ武舞台に倒れこむ。

 

「あー、いってぇ……」

 鳴滝が頭を振りながらのそりと巨体を起こす。鳴滝の顔は辰子の拳と錫杖の一撃で血まみれになっていた。

「おい、おめぇ、スゲェ顔になってんぞ」

 忠勝が声をかける。

「あぁ? いつも言ってんだろ……かすり傷だ」

 その言葉に鳴滝はいつもの調子で答える。

「あー、そーかよ」

 忠勝が呆れたように返す。

 

 向こう側に倒れていた弁慶と辰子も起き上がってきている。

「なぁ、源」

 鳴滝は起き上がってきている二人に視線を合わせたまま、忠勝に問いかける。

「なんだよ」

 忠勝も二人に視線を送ったまま答える。

「試合前に言ってた、ダブル・ラリアットの対策。どんなもんだ?」

「ああ、口で言ってもな……まぁ、お前の馬鹿力よりは現実的だと思ってるぜ」

「そうかよ……」

「そうだよ……」

 二人が体勢を整えこちらへと身構えている。

 そして、二人が鳴滝と忠勝めがけて動く。

 

「取りあえずオメェは避け続けろ! 後はおれが決めてやるっ!!」

「言われなくたってそうするよっ!」

 二人の突進を前に、鳴滝と忠勝が最後の言葉を交わす。

 再び弁慶が鳴滝へ、辰子が忠勝へと向かってくる。

 

「そおい、そおいっ!」

 錫杖を振り回して弁慶が鳴滝を攻撃する。いままでのパワーに頼った攻撃じゃない、キレのある攻撃だ。

「てめぇ、猫かぶってやがったな……」

 その錫杖の攻撃を両手で捌きながら鳴滝が弁慶を睨む。

「まー、疲れるからやなんだけど。あんた相手に手抜きってのも無理だってわかったし、主の手前、本気でやらせてもらうよ」

「はっ、来いよ。武蔵坊弁慶、相手にとって不足はねぇ」

 錫杖が縦横無尽に振われる。

 その長物の間合いのために、鳴滝はなかなか踏み込めず防戦一方となっている。

 重い錫杖が鳴滝の腕を容赦なく叩く。

「ずっと、防御しててくれて構わないよ、いつか手が使い物にならなくなるからね!」

「ペラペラペラペラ……面倒臭がり屋がよく喋る」

 しかし、鳴滝自身これではジリ貧だということも理解していた。

 チラリと忠勝の様子を伺うと、辰子の攻撃をなんとか避けているのが見える。

 あちら側での決着は残念ながら難しい……

 

 故に覚悟を決める。

 この錫杖の一撃を喰らう覚悟。

 

「そうれっ!」

 声とは対照的に力と速さの込められた重い横なぎの一撃、それを鳴滝はわざと腕の防御をはずして脇腹で受け止める。

 ごりっ、っと、嫌な音が自分の脇腹でするのを鳴滝は聞いた。

 肋の1、2本位はイったかもしれない。

 が、

「……捕まえたぜぇ」

今だ、血が止まっていない顔で鳴滝がそろりと言う。

 弁慶の錫杖を鳴滝がしっかりと抱えていた。

「くっ!!」

「おせぇ!!」

 鳴滝は錫杖を力任せに引っ張ると、一歩踏み込む。

 弁慶は錫杖をすぐさま離し、両手で顔を防御する。

 

 どんっ!

 

 という、音とともに鳴滝の拳が弁慶の胴に叩きこまれる。

 弁慶の身体が一瞬、浮く。

「なにっ!」

 しかし、その直後、声を上げたのは鳴滝だった。

 鳴滝の腕は弁慶によってしっかりと抱えられていた。

 拳を喰らいながら、弁慶は鳴滝の腕を抱えにいっていた。

「ふふ、捕まえたよ……」

 弁慶が先ほどの鳴滝と同じセリフを口にする。その口からは血が一筋流れていた。

「私はあの立ち往生の弁慶。頭以外の一撃なら耐える自信はあったさ。まぁ、正直、身体に穴開くかと思ったけどね」

 そういって、弁慶は捕まえた鳴滝の腕をギリリと締め上げる。

「くう――だがよ、手ってのは二本あんだぜっ!!」

 鳴滝がもう一つの拳を振り上げた時、

「別に手を抱えるのが目的じゃないのさ、動きを封じられればね……辰子っ!!」

 その言葉と共に、横から砲弾のような何かが鳴滝の身体にぶつかってきた。

 辰子だ。

 忠勝へと攻撃を加えていた辰子が弁慶の合図で鳴滝に全力のタックルをぶちかましていた。

「ごはっ!!」

 その一撃で、肺から強制的に空気をもらしながら吹き飛ぶ鳴滝。

 

「ナイスだ、辰子!」

「うん、私、がんばってる」

 それと同時に弁慶は左右に視線を走らせる。

 鳴滝は今の一撃を喰らっても、すでに片膝で立ち上がり始めていた。

 忠勝は鳴滝を気にしながらも、こちらの様子をうかがっている。

――膝をついているとは言え、鳴滝は一回ダブル・ラリアットを力づくで止めたことを考えると、決着をつけるべきは……

 そう思考を巡らせると、

「辰子! 小さいほうだ!!」

そう、パートナーに指示を出す。

「ああー、りょーかーい」

 間延びした声ながらも辰子は弁慶の指示に従って素早く忠勝を挟むような位置を取る。

 

「ダブルっ!」

 弁慶が合図をする。

「ラリアットォッ!!」

 辰子が答える。

 

 二人は忠勝めがけて突進してきた。

 はじめの一撃よりも速い、砲弾の様な突撃。

 

「源ォッ!!」

 それを見た鳴滝が叫び立ち上がろうとするのを、

「鳴滝っ!!」

忠勝が叫び、睨んで止める。

――そこで見てろ。

 パートナーの意思表示に、

「くううっ」

むき出しの犬歯をギリギリと噛み締めながら鳴滝は耐える。

 そして、苦手である活の循法を使い少しでも回復をして待つ。

 パートナーを信じて待つ。

 このあとに忠勝が決定的な勝機を生んでくれると信じて。

 

――悪ぃな、鳴滝。

 鳴滝の事を目で止めたあと、忠勝は辰子に向かって走り出す。

――コイツは博打だ……だから失敗したら俺がケツを持つ。

 心の中でパートナーに詫びを入れながら、忠勝は辰子のもとにたどり着く。

 そして、突進してくる辰子を全身で受けながら、同時に後方へ跳んでいた。

 辰子の身体がぶち当たる寸前に、辰子の両肩に手を置きながら後方に跳んだためダメージはない。ないが、忠勝の身体が宙に浮きながら運ばれていく。

 後方からは弁慶がグングンと近づいてきている。

 このままでは弁慶と辰子のダブル・ラリアットをまともに受け忠勝が決定的なダメージを負うのは明白。

 

 しかし、だからこその、賭け。

 だからこその、博打。

 

 忠勝は宙で辰子の身体を両手で押し、自分の身体と辰子の身体との間にわずかな隙間を作る。

 弁慶との距離が1メートルをきったところで、宙を運ばれていた忠勝の左足がようやく地に触れた。

 

 ――忠勝が打った博打に勝った瞬間であった。

 

 左足がついた着いた瞬間、まだ、忠勝の身体に辰子の身体の重量が本格的に加わる前に忠勝はその左足で思いっきり地面をける。

 右へ。辰子が腕を伸ばしていない方へ。

 ほんの半身逃げることに成功した。

 辰子の身体の正中線から身体半分、横にずれた。

 しかし、まだ半分残っている。

 その半分を忠勝は辰子の肩に乗せた手を使い、くるりと身体を回転させて避けたのである。

 半回転。

 そして、辰子の身体を進行方向へ押す。

 ターゲットをインパクトの瞬間に見失い、更に一方が身体を押されたことで歯止めが利かなくなった二つの砲弾は、

 「ぐっ!!」

 「わっ!!」

どんっ、という衝撃音と共に激突する。

 

 距離の修正が効かない、タイミングでかわしたことによる相打ち。

 少しでもタイミングが早ければダブル・ラリアットを止められてしまうし、遅ければダブル・ラリアットを喰らい忠勝自身が沈んでいただろう。

 だからこその賭け、博打だった。

 忠勝の身体が宙を運ばれていたのは1秒にもみたなかったと思われる、しかし、忠勝にとっては無限にも似た時間であったかもしれない。

 もしかしたら、足が着く前に弁慶がたどり着いてしまうかもしれない。

 そんな恐怖が背後から向かってくることに耐えてただ、足がつくのを忠勝は待ったのだ。

 

 そして、忠勝はその博打に勝った。

 その博打の勝ち分を忠勝はパートナーに託す。

 

「鳴滝ィッ!!」

 忠勝の声が上がる。

「わかってるっ!!」

 鳴滝が答える。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 鳴滝が相打ちで一瞬怯んだ弁慶と辰子に向かって走る。

「おおらぁぁああああああああああああっ!!!!」

「くううっ!!」

「わああっ!!」

 その走ってきたスピードを緩めずに掌で二人の頭をそれぞれ捕まえるとそのまま鳴滝は走り抜ける。

 

「離せぇッ!!!」

「わあああああっ!!!」

 頭を捕まれ運ばれていく弁慶と辰子が暴れ、二人の拳や足が鳴滝に突き刺さる。

 腕にはみるみる痣が増え、先ほど活の循法で塞いだ額の傷からは再び血が吹き出した。

 だが、鳴滝は止まらない。

 鳴滝が吼える。

「源の奴が博打打ってまで作った勝機っ!! 逃すわきゃねぇだろおおおおっ!!!!」

 吼えながら、そして二人の攻撃を受けながら、鳴滝は少しもスピードを落とすことなくそのまま場外へと出ていく。

 そして――

 ゴンっ! という音と共に弁慶と辰子の後頭部を場外の壁にぶち当てる。

 

 鳴滝が手を離すと、壁に寄りかかるようにして弁慶と辰子がズルリと地面へと崩れ落ちる。

 

『そこまでっ! 勝者っ! 川神アンダーグラウンドっ!!』

 

 わあああああああああああああああああああっ!!!!!

 歓声と拍手が巻き起こる。

 

 二人から手を離した鳴滝は武舞台に座りこんでいる忠勝のもとへと向かう。

「なにが、俺より現実的だ。半丁博打じゃねぇか」

「あ? お前だって最初の止めれるかわからなかったんだろ? 同じようなもんじゃねぇか」

「ふんっ」

「はんっ」

 二人はそう言ってそっぽを向く。

 一瞬の沈黙の後に、忠勝が口を開く。

「傷、どうなんだ」

「……なんでもねぇ、かすり傷だ」

 二人はそっぽを向いたままだ、目を合わせない。

「そうか、でも一応、医務室は行っておけよ」

「……ああ」

 忠勝の言葉に鳴滝が素直にうなずく。

 二人はまだ、そっぽを向いている、目を合わさない。

「まぁ、次もある、戻るか」

 そういって、忠勝が立ち上がり歩き始める。

「……だな」

 鳴滝がそれに並ぶように歩く。

 そして――

 ゴンッ、と、舞台を降りるとき小さく拳を合わせた。

 

 最後まで二人は目を合わさなかった。

 

 しかし、二人の口には同じような小さな笑みが浮かんでいた……

 

      ―――――青龍組 決勝―――――

川神アンダーグラウンド ○ vs × デス・ミッショネルズ

 

 




如何でしたでしょうか。
鳴滝・忠勝ペアの第2戦です
なんか久しぶりにランキングに乗ったりしてちょっとドキドキしながら書いてましたw
ご新規様にも楽しんでいただけたら幸いです。

お付き合い頂きまして、ありがとうございます。

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