戦真館×川神学園 【本編完結】   作:おおがみしょーい

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第三十話 ~予選~

 秋晴れの七浜スタジアム。

 3万人を収容可能なスタジアムは予選にもかかわらず立ち見も含めて超満員になっていた。

「うわー、シーズン終了間際の大阪戦でもここまでは入んないよ……」

 超満員のスタジアムをぐるりと眺めて伊予が呟く。

 超満員の観客がざわつく中、大型スクリーンと放送で本日の予選の詳細が説明されている。

『さー、若獅子タッグトーナメント予選がついに始まりました。実況は私、川神TVアナウンサー稲田堤(いなだつづみ)が務めさせていただきます』

 ローカル局おなじみの女性アナウンサーがマイクを持ってニッコリと笑っている。

『解説は九鬼従者部隊、序列3位のクラウディオさんそれから西の天神館の館長、鍋島正さんにお越しいただいております』

『クラウディオと申します。僭越ながら解説を承らせていただきました、なにとぞよろしくお願いします』

『天神館の鍋島だ。若者の熱い戦いに期待している』

『リングの四方にはマスタークラスの達人を配置しております。観客の皆様に被害がおよびそうな場合、彼らが完璧に守ってくれますのでご安心ください』

 その言葉通り、リングの四方には川神鉄心、ヒューム・ヘルシング、釈迦堂刑部、ルー・イーと見るものが見れば目を見張るほどの実力者が立っていた。

 

『予選のルールも本選と同じ。どちらかが戦闘不能になれば負けです!また場外10カウントでも負けとなります!また試合時間は最大で15分、これまでに決着がつかなかった場合両チームとも敗退となりますので気をつけて下さい。さらに万が一ダブルKOとなった場合も両チームとも敗退です。両チームが敗退だった場合、次に当たる予定のチームは不戦勝となります。 本選の16枠を決めるこの予選、3回勝ってようやく通過となる厳しい条件。果たしてどのチームが残るのか。試合開始はまもなくです!』

 

 

―――――七浜スタジアム 控え室―――――

 

 

 七浜スタジアムの控え室、そこは外の秋の涼しさとは反対に選手たちの熱気であふれている。

「流石にこの人数になりますと窮屈ですね……控室は2つ用意させていただいています、チームで振り分けられていますのでお間違えの無いようお気を付け下さい。また敗退したチームは速やかにお帰り下さい。怪我をされた方は医務室がありますのでそちらまで。申し遅れました、私、九鬼従者部隊序列42位 桐山鯉と申します。選手控室全般の担当となっておりますので何かわからない事がありましたらお聞きください。円滑な大会運営にご協力よろしくお願い致します」

 そう言って桐山鯉は選手たちに慇懃に礼をする。

 

「へぇ、控室でもモニターで会場の試合がみれるんだね」

「これは、迂闊なことは出来ないよー。全部筒抜けだからね」

 水希と燕が控室に設置されているモニターをしげしげと眺めている。

「あ、あっちゃん映ったよ!あっちゃん!!あ、真与ちゃんも!!」

「ん?隣にいるのは榊原と葵か、2年はあの辺にかたまっているみたいだな」

「んはっ!後ろに京極もいたぞ。俺の雄姿をたっぷりと見せてやろう!」

 四四八や歩美は別のモニターで晶を見つけている。

「てかさー、結構知ってる顔多いんだけど」

「こちらは川神……というか日本の参加者が多いみたいね。向こうの控室は外国人がいっぱいいたわよ」

 栄光と鈴子があたりを見回しながら話している。

「そういや、鳴滝は?」

「淳士なら姿が見えないから向こうの控室かもね源くんもいないし」

 

 忠勝がトイレに行くと言って出て行ったあと、一人椅子に座り出番を待っていた。

「よお、久しぶりじゃねぇか」

 そんな鳴滝に近寄り話しかける男――竜兵だ。

「あぁ?……ああ、街でからんできた奴か、何の用だよ?まさかここでやるってのか?」

 顔だけ上げた状態で鳴滝は竜兵を見上げて言う。

「はっ!見くびんな、喧嘩で遺恨残すほど野暮じゃねぇ。だが、全部忘れるほど御目出度くもねぇ。まぁ、挨拶だよ。お前はリングでぶっつぶす!!」

 そういって竜兵はギリリと歯を食いしばり、鳴滝を睨みつける。

「……いいじゃねぇか、やれるもんならやってみろ」

 そんな視線を軽く受け流す鳴滝。

「それまで負けんじゃねぇぞ、デカブツ」

「ああ、わかってるよチンピラ」

 そういって鳴滝と竜兵は別れる。

 

 竜兵は鳴滝と別れた後、スタジアムの通路を歩いていた。

「……あのデカブツ、あの時より凄味がましてやがる」

 鳴滝から離れた竜兵の手は汗でじっとりと湿っていた。

 

 

―――――PIKU UP 予選一回戦第7試合―――――

    川神シスターズ vs 地獄兄弟

 

 

『さぁ、注目の第7試合、武神・川神百代の登場です!』

『最近、砂がついたといわれてるが、果たしてどうなったのか……そこんとこどうなんだい?クラウディオ』

『まぁ、その辺は試合を見て判断していきましょう』

『解説のお二人も注目の一戦、さあ、試合開始です!!』

 

 百代と一子の姉妹は、核戦争後の世紀末に出てきそうなモヒカン頭の男二人を前に話している。緑が兄で、赤が弟……らしい。

「おい、ワン子わかってるな。予選の目標は?」

「一撃も攻撃を喰らわない!」

「よくできました。一撃喰らうごとにうさぎ跳び30回だからな。30秒たったら私も動く。よし、行って来い!!」

「了解、お姉さま!!」

 そう言って一子が薙刀を手に突撃していく。

 

「兄ちゃん!武神が動かないよ!」

「オレ達、兄弟に恐れをなしたな……かまわねぇ、弟よあのチビを二人でやるぞ!!」

「わかったよ、兄ちゃん!」

 モヒカンの二人はお互いに言葉を交わしながらメリケンサックをはめた手で一子に襲いかかる。

縦横無尽に4個の拳が降ってくる。

 一子はそれらを足を使って躱し、薙刀をふるって捌く。

「おらおらおらおら、我ら地獄兄弟の連携に手も足も出ないか!」

「ヒャッハーーーーーっ!兄ちゃん、オレ達最強だね!!」

 

『ああっと、川神一子選手防戦一方だ!川神百代選手は何を考えているのか動きません!』

 

「よおし!この押し切るぞ、弟よ!!」

「うん、わかったよ兄ちゃん!!」

 調子に乗ったのか二人の拳激は激しさを増していく、一子はそれをひたすら避けて、捌く。

――そして30秒。

「よおし、ワン子よく耐えた」

 モヒカン頭の二人の背後から死神の声が聞こえた。

 その声に振り返ろうとした瞬間――二人の顔面に百代の拳が突き刺さる。

「ひでぶっ!!」

「あべしっ!!」

 地獄兄弟は人間が通常では発しないであろう言語を叫びながら場外へと吹っ飛ぶ。

――ゴングが鳴る。

 

『試合終了おぉぉ!決まり手は武神の一撃!やはり強い!!』

『パートナーを戦いに慣れさせての一撃、まだまだ余裕ですね』

『というか、精神的にも余裕があるみてぇだな。なるほど負けて一回り大きくなったようだ』

 

 そんな実況と解説の言葉を聞きながら、百代は一子に近づく。

「ワン子、この調子で少しでも眼を鍛えるぞ。私達の本領は本選でだ」

「はい!お姉さま!」

 そう言って二人は控え室へと戻っていく。

 そんな姉妹の様子をリングの端から見守っていた鉄心は満足そうに頷いた。

 

川神シスターズ ○ ― × 地獄兄弟

試合時間 35秒

 

 

―――――PICK UP 予選一回戦第28試合―――――

Hijo del sol(太陽の子) vs 魔弾の射手―ザミエル―

 

 

『さぁ、ここで優勝候補の一角、太陽の子・メッシ選手の試合です。対するはこちらも注目の偉人のクローン、那須与一選手!!』

『与一の組は双方とも遠距離攻撃の選手。近づかれたら厳しいかもな』

『それは本人達もわかっているでしょう。その辺をどうするか、注目ですね』

『さぁ、早くも注目選手同士の一戦です、試合開始っ!!』

 

 試合開始の合図とともに与一と歩美は後ろに飛ぶ。

 しかしメッシ達もそれは想定内なのだろう、一気に距離を詰めようとしてくる。

そこに――

 

「Triggerァ happyィィッ!!!!」

 歩美が掛け声とともに手にしたマスケット銃から銃弾を連射――そう通常ではありえない連射をする。

 だが、メッシ達も伊達に優勝候補と言われているわけではない、銃口の先を見極めてサッと横に飛ぶ。

 その時、メッシは信じられないものを見た。

 銃口から発射されまっすぐ飛んでいくであろう弾丸がいきなり四方八方に飛び散りだしたのだ。

「なっ!」

「くっ!」

 予想外の攻撃に思わず足が止まる二人。

「ヒャッッッハーーーーっ!!ドンドンいくよっ!!」

 そこに立て続けに歩美の銃から弾丸が振りそそぐ。

 そんな縦横無尽に降り注ぐ弾丸の雨にさらされ、止まる太陽の子。それはすなわち的になることを意味していた。

 

 与一の口から言葉が漏れる。

「我放つ雷神の一撃に慈悲は無く、汝を貫く光とならん」

呪文の詠唱のようだ、

「ふん、遠距離だから近づけばいい?ならば近づけなければいいだけのこと!! お前たちのそのふざけた思い上がりをぶち壊す!!」

与一が敬愛する超有名ラノベ主人公の決めゼリフとともに放たれた矢は狙いたがわずメッシの顎を打ち据えていた。

 ドサリとリングに沈む太陽の子。

――ゴングが鳴る。

 

『試合終了!注目選手同士の一戦は那須与一選手のチームに軍配が上がりました』

『那須与一のクローンもそうだが、あの千信館の小さいのは随分と面白い事をやるな』

『弾丸を自在に操る力のようですね、あの連射もそのためでしょう。いやいや、近づいたら不利ならば近づけなければいい……確かに真理ではあります、しかし言うは易し行うは難しなのですが……お見事です』

 

「ふん、雑魚が……」

「イエーイ」

 リング上二人はパンっとハイタッチをして控え室へと戻っていく。

 

Hijo del sol(太陽の子) × vs ○ 魔弾の射手―ザミエル―

試合時間 1分10秒

 

 

―――――PICK UP 予選一回戦第49試合―――――

    神の闘士達 vs タイガー&ドラゴン

 

 

「ふん、神に選ばれしキルギスの闘士、イスマイルに勝てる者などいないさ……」

精悍な顔つきの男は鍛えた筋肉を誇示しながら対戦相手でメイド姿の二人を見下したように見ている。

「二人ともよく見るとなかなか美人じゃないか、今すぐ棄権すればオレが今晩、夜のタッグマッチの相手をしてやるぞ?」

 イスマイルは両腕を前にだし何かを抱きしめるようなポーズをとる。

「彼は何を言っているのですか?」

「あ?私らの靴舐めるから許してくださいって言ってんじゃねぇの?」

「……申し訳ありませんが、私にはそういう趣味はないので……」

 そんなイスマイルに申し訳なさそうに眉をひそめる李と呆れ顔のステイシー。

「くっ、馬鹿にして。すぐにその綺麗な顔をヒーヒー言わせてやるぞビッチ共っ!!」

 

 イスマイルとそのパートナーは開始と同時に二人に突撃していく。

「はん!てめぇの粗末なモンで私ら満足させられると思ってんのかよ!!」

 そう言ってステイシーは懐から二丁のマシンガンを取り出し、

「ロックン・ロォォーーールッ!!!」

突撃する二人めがけて連射した。

「くっ、飛び道具とは! しかし実弾ではないのだ、これしき!」

 そう気合を入れて腕をクロスして顔を守りながら再びステイシーへと向かっていこうとしたその時、耳下で女の声が聞こえた。

「後ろが疎かですよ」

 何事かと振り向こうとしたその刹那、首筋にチクリとする痛みが走ったかと思うと……

「――あっ」

 次の瞬間、イスマイルの意識は深い闇の中へと落ちていた。

 

『試合終了ぉ!流石に強い九鬼の従者部隊。優勝候補ともくされていたイスマイル選手を一蹴だぁ』

『彼女たちは九鬼の従者部隊の若手でも伸び盛りの二人です、身内びいきになってしまいますが頑張っていただきたいものです』

 

神の闘士達 × vs ○ タイガー&ドラゴン

試合時間 1分5秒

 

 

―――――PICK UP 予選二回戦第10試合―――――

    GET THE GLORY vs 川神坊主`s

 

 

『さぁ、試合は早くも予選2回戦に突入、海外の有力候補が次々と倒れる波乱の中、どのチームが勝ち上がるのでしょう。試合開始です!』

 

「はあああああああああ」

「ほおおおおおおおおお」

 川神院の若手の修行僧である二人は気を練り、それを気弾として打ち出し栄光と由紀江を攻撃している。川神院の修行僧だけあり、お互いがお互いのフォローをしながら気弾を放つためなかなか飛び込む隙が見当たらない。

「おおっと、流石川神の坊さんたち一回戦の相手とはレベルが違うね」

 気弾をギリギリで躱しながら栄光が言う。

「そうですね、とても息があってます。なかなか飛び込まめません」

 同じく気弾を躱しながら由紀江が唸る。

「かといって、このままって訳にもいかないし……腹括りますか!」

「はい!」

「オレが突っ込むから。トドメは任せたよ、由紀江ちゃん!!」

「了解です!」

「かっこいいぜ、エイコー」

「当たり前のこと言うなって、松風!」

 そう言って栄光は解法を全面に押し出して修行僧に突撃していく。もちろん二人の僧は栄光めがけてありったけの気弾を叩き込むが……

「残念!効かねぇんだよ!!」

「なっ!」

「ばかなっ!」

 気弾は全て栄光に触れる直前に何かに阻まれるようにして掻き消える。

 そして栄光に隠れるように併走していた由紀江が、

「たああああああああああああああっ!!!」

 間合いに入って瞬間に飛び出して、修行僧二人を一太刀で切り捨てる。

――ゴングが鳴る。

 

『決まったぁ!パートナーとの見事な連携でGET THE GLORYが最終予選に進出です!』

『あの小僧、気を使った攻撃は全部シャットアウトできるのか?』

『達人であればあるほど気を使っての攻撃が主になってくる傾向がありますからな、気は大杉様、物理攻撃に関しては黛様がフォローをしているようですね。いいチームです』

 

「ヘーイ、お疲れ、由紀江ちゃん」

「お疲れ様です、大杉先輩」

 由紀江は栄光の労いの言葉に腰を追ってお礼をする。

「あー、一回戦の時も言ったけど、こういう時はそうじゃないだろ?」

「あ、すみませんそうでした」

 そう言って由紀江は恐る恐るといった感じで手をあげる、そこに、パンッ!と勢いよく栄光の手がぶつかる。少々ぎこちないがとても初々しいハイタッチ。

「改めてお疲れ、由紀江ちゃん」

「はい!大杉先輩!」

「エイコー、オラ夢見てんのかな?試合に勝ってハイタッチとかそんな青春、漫画の中だけだと思ってたぜ……」

 

GET THE GLORY ○ vs × 川神坊主`s

試合時間 2分38秒

 

 

―――――PICK UP 予選二回戦第30試合―――――

    飛燕飛翔 vs マッスルリベンジャーズ

 

 

『一回戦を全チーム最速の10秒で決めた、飛燕飛翔チーム。二回戦の相手はパワーが自慢のマッスルリベンジャーズだ!』

 

「ふん、小娘どもが、俺たちの筋肉はすべての攻撃を跳ね返す!」

「貴様らの細腕など恐るるに足りんのよ!」

 ボディービルダーの様に筋肉を誇示した二人の大男を前に、燕と水希は、

「攻守交代、今回は水希ちゃんね」

「えー、決まりだからしょうがないけど。あの人たちなんかテカテカしてるんですけど……じゃあ……右で」

「OKー」

という形で、試合直前の打ち合わせを終えていた。

 

「何をブツブツ言っている!いくぞ!」

 二人の大男は燕と水希にそれぞれタックルをかけに突撃を開始する。それを燕は右側の男にターゲットに決めて敢えて走って近づくとそのタックルが入る直前に、男の鼻にデコピンを放つ。

「うおっ!」

 燕の間合いの詰かたの速さと予想だにしなかった攻撃に男の足が一瞬止まる。そこに、

「せいっ!」

いつの間にか横に回りこんだ水希の回し蹴りが男の顎に綺麗に決まる。

 意識を飛ばされドサリと倒れる大男。

――ゴングが鳴る。

 

『試合終了ぉ!今回も瞬殺!!目にも止まらぬ早業でした!!これで飛燕飛翔チームも最終予選に進出決定”』

『顎に綺麗に一撃、あれじゃあいくら鍛えてたって無駄だわなぁ』

『1回戦とは攻守がというか、牽制役を逆にしてきてましたな。どちらがやっても同じクオリティの戦法が取れるというのはとても有効ですね』

 

飛燕飛翔 ○ vs × マッスルリベンジャーズ

試合時間 8秒

 

 

―――――PICK UP 最終予選第5試合―――――

     雅  vs  ザ・プレミアムズ

 

 

「お二人共名家のご出身。プッレーミアムな私の対戦相手としてふさわしい!」

「おい、此方たちとお前と一緒にするな、格が違うわ格が」

「家の格はどうでもいいから、さっさと終わらせましょう。さすがに疲れたわ」

「ふふふ、流石にオバ様たちは体力があまりないようで、プッレーミアムな私はまだピンピンしてますよ!」

「ちょ!オバさんってあんたと一つしか違わないでしょう!」

 そんなふうに言い合っていると、試合開始のゴングがなった。

 ゴングと同時に武蔵小杉と相方のS組の男子はリングの四方めがけて逃げ始めた。

「にょほー、逃げるなー、正々堂々勝負するのじゃー」

 心が腕を振り回しながら抗議をする。

 

「ふっふっふ。先ほどのやりとりで確信したわ。あの人たちはもう体力がない、このまま逃げ続けて最後の最後でクタクタになったところを狙えば勝利!なんてプッレーミアム作戦なんでしょう!」

 そんなふうに独り言をつぶやきながら全速力で逃げている武蔵小杉の耳元に聞きなれた声が届く。

「もう……さっきも言ったけど疲れてんだからあんまり走らせないでよね」

「ちょおおっ!」

 さきほどリングの中央にいたはずの鈴子が全速力でかけている自らのもとに届いてることに驚愕する武蔵小杉。そんな武蔵小杉の反応を無視して一気に鈴子は前へと回り込み、手に持った薙刀を一閃。

「ぐふっ!プッレーミアムな私の野望が……」

 崩れ落ちる武蔵小杉。

――ゴングが鳴る。

 

『試合終了ぉ!チーム雅の本選出場が決まりました!!』

 

 雅 ○ vs × ザ・プレミアムズ

試合時間 55秒

 

 

―――――PICK UP 最終予選第16試合―――――

四次元殺法コンビ vs 柊桜爛漫(しょうおうらんまん)

 

 

『さぁ、本日最後の試合、本選への最後の椅子をかけた戦いがリング上では行われております。最後の椅子はどちらのチームが手にするのでしょうか』

『ふむ、あれが武神を倒したと噂の柊四四八か、それに西楚の覇王と呼ばれた項羽のクローン……』

『ですがこの柊桜爛漫チーム、一回戦、二回戦とそれほど目立った戦いをしているわけではないんですよね。試合時間も特に早く終わってるということもありません』

実況のアナウンサーが資料を見ながら話す。

『少々失礼します……ふむ、やはりそうですか……恐らくですがこの試合、あと10秒で終わると思われます』

 クラウディオがアナウンサーのもつ資料と同じものに目を通しながら言う。

『え?クラウディオさんそれは何故……』

 と、アナウンサーがクラウディオにその理由を聞こうとしたとき。

「ごふっ!」

 四四八が投げた相手に項羽が空中で方天画戟の一撃を喰らわせ吹き飛ばした――クラウディオの言うとおり、先ほどの言葉からきっかり10秒後の出来事だった。

――ゴングが鳴る。

 

『試合終了ぉ!本選出場の最終組は柊桜爛漫チームだ! それにしてもクラウディオさんなぜ決着のタイミングがわかったんですか?』

『簡単なことにございます。この柊桜爛漫チームですが一回戦、二回戦ともきっちり二分で試合を終わらせています。これは他のチームにも言えますが、今回のタッグトーナメント、急造のチームが多いようでございます。その為、連携や意思疎通に難があるチームもありました、おそらく柊桜爛漫は実戦でお互いがどこまで連携などができるのか確認しながら戦っていたのだと思われます』

『なるほど、それで時間を最大限使ってそれでいて疲れを貯めないであろうギリギリの2分という時間で試合をコントロールしてたってことか』

『ということは、彼等にとってこの予選は練習だったと?』

『だと思われます……おそらく本気の『ほ』の字も出していないのではないでしょうか。末恐ろしいですねぇ』

 

 そして本選出場を決めた二人は、

「お疲れ様です、覇王先輩」

「んはっ!俺と柊が組めばこんなものだな!まぁ、もっと早く終わらせたかったが、柊が言うならしょうがない」

「別に、どう勝っても決勝に行けさえすればいいんですから、せっかくの実戦です有効に使わないと」

「わかった、わかった。それにしても腹が減ったな。よし、柊、中華街で中華まんを食って帰ろう!」

「ああ、いいですね、いきましょうか」

と、今しがた試合が終わったとは思えない軽さで話している。

 

四次元殺法コンビ × vs ○ 柊桜爛漫

試合時間 2分

 

こうして決勝トーナメントに残る16チームが出揃った。

 

 

―――――

 

 

試合が全て終了したリング上、一人のガッチリを体格のいい男が明日のトーナメントの組み合わせを発表していた。

 

『私、七浜で執事をしております田尻耕と申します、皆からは大佐の愛称で呼ばれております。この度ゲストとして明日の決勝、リング上での審判と実況をさせて頂くことに、あいなりました。皆様どうぞよろしくお願いいたします』

そう言うと大佐は大型のスクリーンを指差して。

「さぁ、これから明日のトーナメントの組み合わせを発表したいと思います。トーナメントは4ブロック。朱雀、青龍、白虎、玄武の組でそれぞれ2回戦を戦っていただきます。その後、朱雀の勝者と青龍の勝者、白虎の勝者と玄武の勝者が戦い、最後に勝ち残った2組が東方の優勝者の栄冠をかけて戦います!」

 そう言って大佐はリング中央で両手を大きく広げると一際大きな声で叫ぶ。

「それでは、16チーム32人若獅子たちの運命を分ける組み合わせは……これだっ!!!!」

 

スクリーンにトーナメントの組み合わせが発表される。

 

朱雀組(Aブロック)

第一試合

板垣インパルス(板垣亜巳・板垣竜兵)vs川神シスターズ(川神百代・川神一子)

第二試合

タイガー&ドラゴン(ステイシー・李静初)vs雅(不死川心・我堂鈴子)

 

青龍組(Bブロック)

第三試合

川神アンダーグラウンド(源忠勝・鳴滝淳士)vs400万パワーズ(島津岳人・長宗我部宗男)

第四試合

地獄殺法コンビ(羽黒黒子・板垣天使)vsデスミッショネルズ(武蔵坊弁慶・板垣辰子)

 

白虎組(Cブロック)

第五試合

大江戸シスターズ(クリスティアーネ・マルギッテ)vs柊桜爛漫(柊四四八・葉桜清楚)

第六試合

フラッシュエンペラーズ(九鬼英雄・井上準)vs源氏紅蓮隊(源義経・椎名京)

 

玄武組(Dブロック)

第七試合

飛燕飛翔(松永燕・世良水希)vsダイナミック・ウィンド(風間翔一・クッキー)

第八試合

魔弾の射手―ザミエル―(那須与一・龍辺歩美)vs GET THE GLORY(大杉栄光・黛由紀江)

 

第九試合

第一試合勝者 vs 第二試合勝者

 

第十試合

第三試合勝者 vs 第四試合勝者

 

第十一試合

第五試合勝者 vs 第六試合勝者

 

第一二試合

第七試合勝者 vs 第八試合勝者

 

準決勝第一試合

第九試合勝者 vs 第十試合勝者

 

準決勝第二試合

第十一試合勝者 vs 第一二試合勝者

 

決勝

準決勝勝者 vs 準決勝勝者

 

 決戦は明日、32人の戦いが始まる――

 

 

 




歩美の感じはベイの中の人と同じ人がやってる、
某燃えゲーの敵役兄弟の弟の方です(わかる人いるかなぁw)。

チーム紹介は今回やると流石に長くなりそうだったので、次に回しました。
逆に組み合わせはあるとイロイロ妄想が楽しいかなと思いまして先につけました。
本戦は短い長いはあるかもしれませんが全部の試合を書いていこうと思ってます。

お付き合い頂きまして、ありがとうございます。

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