戦真館×川神学園 【本編完結】   作:おおがみしょーい

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今回は川神サイドです

川神はキャラが多くてかき分けが・・・


第二話  ~川神~

 青く澄み渡り、まさに秋晴れといった清々しい朝、川神学園へ登校する生徒たちの中に、いつものように一緒に登校する風間ファミリーの面々の姿がある。

 

「ね、大和、今回の中間試験の点数が大和より上だったら、ご褒美として結婚して!」

「朝かどうかはもう今更だけど、ほかの生徒がいる中でセクハラはどうなんだろう、てか、そういうのってテスト始まる前に言うもんだよね?」

「じゃあ、抱いて!!」

「京さんストレートすぎやしませんかね、お友達で」

 通常運転すぎる京のセクハラ発言を軽くいなして大和は周りに目を向ける。

 

「自分も今回はマルさんに見てもらって頑張ったからな、もしかしたら大和より上かもしれないぞ!」

「いや~、流石にそれはないだろ」

 クリスの発言に思わずキャップがツッコミを入れている。

 

「や~、中間試験が終わっただけで、こんなに朝が清々しくなるとはな~、プロテインの味が変わって感じるぜ」

「そうよね、アタシもテスト前と後じゃ景色が違って見えるもん!」

「ガクトもワン子も試験中はなんかゾンビみたいだったしね」

 ガクトやワン子はテストが終わって実に楽しそうだし、モロはモロでそんな二人を見るのが嬉しい様子だ。

 

「松風、私も今回は頑張りました、1年の皆さんは友達になってくれるでしょうか」

「な~、まゆっち。オイラ、テストの直後に自分より点数がいい奴とは友達になりたくないと思うんだ……」

「なっ!ではテストで頑張っても友達は増えないんですか?!」

 一人漫才で一人でショックを受けている由紀江、ツッコミどころが満載過ぎていっそ清々しい。

 

 そんな平常運転の会話をしながら多摩大橋の近くまでやってきた。

「あれ?ワン子、そういえば姉さんは?」

「お姉様ならテスト中に決闘を禁止されてたから、義経達への挑戦者がたまってるんで先に行くって言ってたわよ、だからそろそろ……」

 

 そういってワン子が多摩大橋、通称「変態の橋」の麓に目をやると……

 

「ぐぎゃ!!」

「ぶへっ……」

「ひでぶ」

 多摩大橋の下から、人が通常では出さないようなうめき声を上げた男たちがうず高く積まれていた。

 

「おい、なんだ、もう終わりか?あーーーもーーー、あーばーれーたーりーなーいーー」

 

 このうずたかく積まれた男達に、うめき声をあげさせた張本人――川神百代は、その死屍累々の山を前に駄々っ子の様な声を上げている。

 

「いくら世間で名の知れた強者は夏までに川神にきたんで、最近は雑魚が多いといっても流石にこれはないぞ、テスト期間中暴れられなかった分の半分も発散できてない」

「もー、もっと歯ごたえのある奴はいないのか、つまらん!」

 自分の手の中でブランと力なく垂れ下がっている最後の男を、屍の山の最上段に放り投げながら、ひとり声を上げている。

 

 そんな百代の独白を横で聞いていた執事姿の初老の男が声をかける。

 

「流石でございます、百代様。あとは私共、九鬼の従者部隊が片付けますので、このまま登校されるのがよろしいかと」

 

 声をかけられた百代は、そちらの方を一瞥して、

「……あーあ、九鬼の従者部隊が私の相手になってくれれば、欲求不満も少しは解消できるのにな~」

などと言ってみるのだが……

 

「申し訳ございませんが、それは少々、無理なご相談です。もちろん主がやれと仰れば、別ですが」

 取り合ってもくれない。

「わかってるよ、いってみただけ。あー、それにしてもつまらん、大和に癒してもらおう」

 

 そういうが早いか愛する弟分を認識した百代は、一般人が見たら瞬間移動にしか見えない速度で、風間ファミリーのもとへ文字通り飛んでいった。

「いってらっしゃいませ……それでは李、ステイシーあとは任せましたよ、私は義経様たちにつきますので」

 

「了解しました」

「ファック、派手にやりやがったな、武神のやろう」

 若手従者の愚痴を聞きながら初老の執事は少し考えるような素振りを見せる。

 

「ふむ……少々、自制が効きにくくなってるのかもしれませんね、ヒュームに相談してみますか……九鬼に被害が及んでは事ですし」

 老執事クラウディオはうずたかく積まれた死屍累々を眺めてつぶやいた。

 

 一方、そんな執事のつぶやきは知る由もなく、百代は愛すべき弟分達とじゃれあってストレスを発散しようとしていた。もちろん、それだけで自分のこの欲求不満が完全に解消されないことはわかっていたが、現状、自分の胸を熱くするような強者が現れないのも事実。

 

 燕や由紀江は本気にならないし、クローンの連中は九鬼ががっちりガードしている、従者部隊はクラウディオが言ったようにはなからやる気がない。ヒュームあたりならのってくれるかもしれないが、それでも、所詮顔見知りの戦いだ。

 

 あぁ~、誰か見ず知らずの強者が自分の前に立ちふさがってくれないだろうか……

 

 そんな年頃の乙女としては少々どころか、だいぶずれた思考をしながら武神・川神百代は愛すべき弟分達と学園へむかっていく。モンモンとする、胸の内を顔には出さずに……

 

「あ、そういえば交換学生が来るのって今日からじゃなかったっけ」

 

 そんな百代の胸の内とは別に、ファミリーの会話は続いている。

 

「お~、そうだそうだ、確か鎌倉の千信館だったよな。鎌倉最近行ってねえなぁ~、おっし、いっちょ、これから行ってみるか」

「いやいやキャップ、流石にテストも返されるし、せめて放課後にしなよ」

「え~、でも確かにどんなやつらが来るか見たいしな、それからでも遅くないか。面白そうな奴らだといいな」

 キャップは待ちきれないといった様子だ。

 

「自分は鎌倉好きだぞ、この前、マルさんと二人で行ってきた。お寺や神社がいっぱいあって日本文化を堪能できる」

「意外と近いんですよね、電車で1時間かかりましたっけ?」

「流石まゆっち、友達と行く可能性のある場所のリサーチは完璧だな……いく予定はないけど」

「なんて見事なブーメラン、自虐ネタを覚えたか……」

 川神と鎌倉は同じ県内なので、行こうと思えばそれほど苦もなく行ける、電車で40分といったところか。

 

「そんなことより、女子は来るんだろうな、鎌倉だから清楚な大和撫子だったり――んでもって、『ガクトさんって頼もしくて素敵』みたいな!うおおぉぉぉ、吼えろ俺の上腕二頭筋!!!」

「ガクトはまた無駄な妄想を……でも、鎌倉産のカワイコちゃんか、こう、古風な感じで、いかん……ムラムラしてきた」

 確かに他校の女子生徒というのはなんとも妄想を掻き立てられる存在だろう。

 

「姉さん、いきなりセクハラは勘弁だよ」

「大和ぉ、私のセクハラは挨拶みたいなもんだ。大和は私にせっかく鎌倉から来るカワイコちゃんに挨拶をするなと言うのか?」

「いや、普通に挨拶すればいいじゃん」

「まゆまゆ~、弟が冷たい~、慰めてくれ」

「ひゃぁぁぁ、モモ先輩、あの、あの」

「テスト終わったから、モモ先輩絶好調だね」

 

 と、そんな話題で盛り上がってる中、会話に入らず、う~ん、う~んと唸ってるワン子を怪訝に思い、大和が声をかける。

 

「どうした、ワン子、なんか変なモノでも食べたか」

「失礼ね!違うわよ。千信館って名前に見覚えがあって……う~ん」

「千信館って文武両道で名高いよね、倍率も高いって言うし。ワン子が知ってるってことは大会とかかもね」

「大会……あ、そうよ、大会!薙刀の大会によく出てくる、我堂鈴子がいる学校だわ」

 閃いた!という感じでワン子が声を上げる。

 

「ワン子が見るってことは県下の大きめの大会だよな、じゃあ、結構強いのか?」

「ん~、実際勝負したことはないのよね、半年前位に試合を見たときは、私と同じくらいだったと思うけど…」

「ほぉ、犬と同じくらいか。自分も是非、勝負してみたいな!」

「ダメ!ダメよクリ。同じ薙刀使いとして、アタシが先に勝負するってきめてるんだから」

「なにぃ、犬の分際で!よし、じゃあここから川神学園までどっちが早く着くか勝負だ、早く着いたほうが先に勝負する!」

「望むところよ!」

 言うが早いか、クリスとワン子は通学する生徒をかき分けて物凄いスピードで学園へと向かっていった。

 

「いや、その、我堂って人が来るかまだ決まってないじゃん……」

「ふぅ……バカばっか」

 

 冷静に突っ込んではみたものの大和自身、新たな刺激の到来に胸を躍らせていた。

 

「ホント、どんな奴らが来るんだろう」

 

 そんな期待を胸にクリスとワン子の後を追うようにファミリーの面々も学園へと向かっていった。

 

 

 




如何でしたでしょうか
まえがきにも書きましたが、まじこいはキャラが多くてかき分けが大変ですね

次はついに戦真館と川神がクロスします


お付き合い頂きまして、ありがとうございます。

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