戦真館×川神学園 【本編完結】   作:おおがみしょーい

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真剣恋A-3をやって思ったこと
1、李さんマジサイコー
2、ステイシー、マジウルトラロック
3、甘かs……じゃなくて直江パパ、マジいいパパ
4、帝と鳴滝の中の人一緒!!帝と鳴滝の中の人一緒!!(驚愕の事実だったんで2回言いました)

※エロ描写がありますご注意ください


第二十五話~恋敵~

「あー、燕先輩と清楚先輩、両方から付き合ってと迫られたら。俺はどっちを選べばいいんだあ」

「おい、ガクト。1学期から数えてその妄想……何度目だ?」

 もはや暇なときのガクトの持ちネタになっている感すらある台詞を百代が切って捨てる。

「へっへーん、妄想するだけならタダだもんねー、柊が戦ってくれてたおかげでまた清楚先輩も出てきてくれるようになったしな」

 四四八との一戦後、項羽と清楚は交代で学園生活をおくっている。

 一日おきなこともあれば、午前と午後で交代するときもある。

 ただ両方共今までとは雰囲気が少し違うように感じる。清楚はかつてより積極的になっているようだし、項羽は随分と落ち着いた印象だ――もちろん項羽はまだまだ問題もありヒュームなどによく怒られているが……今までに比べれば可愛いものだ。

「でもさぁ、清楚先輩はともかく、覇王先輩はガクトじゃ制御しきれないんじゃないの?」

 モロがからかいながら言う。

「そこはそう、俺様の愛の力なんとでもなるだろ」

 筋肉を誇示しながら得意げに言うガクト。

「あ、そう……」

 最初の妄想と同じく何の根拠もない受け答えに、モロは呆れてそう言うしかなかった。

 

「でもさぁ……」

 そんな中で大和が口を開く。

「ガクトのセリフ、今言えるの柊だけだよねぇ」

「「「「 へっ? 」」」」

 疑問の声が各所で上がる、もちろん違う反応もある。

 京は、知っていた――というふうにニヤリと笑い、

キャップと一子、クリスは?マーク頭の上に浮かべている。

 

「どーいうー事だ大和!何を根拠にそんなこと言うんだ!!」

 ガクト慟哭と皆の疑問の声に、逆に驚いたように大和が言う。

「いや、清楚先輩見てればわかるでしょ?反応明らかに違うよ?」

「まずもってどこで会えるかわからん!大和答えろ、どこに行けば会える!!」

 ガクトが詰め寄る。

「図書室だよ図書室。俺も最近また本読みだしたからさ、行けば会えるよ」

「……大和、俺様、本に囲まれた空間に行くと意識を失うという病にかかってるんだ……」

「本屋行けないじゃん!」

 ガクトの返答に思わずというふうにモロが突っ込む。

 

「ガクトの事はどうでもいいが、それ本当か?大和?」

 興味深そうに百代が聞く。

「まぁ、清楚先輩の一連の流れの大本が姉さんと柊の一戦だしね。あの辺から意識はしてたんじゃない?そこに来て相談にのってもらって、正体わかったあとも世話してもらって、んで最後は先輩の問題を解決してくれた。まぁ、これだけ色々あれば全然不思議じゃないでしょ。まぁ、俺も直接本人に聞いたわけじゃないけど、十中八九そうだと思う」

「なるほどな、もともと柊は人に影響を与えやすい奴だし……な」

 覚えがあるのか、百代は納得したように頷いた。そして、

「なぁ、柊の奴は気付いているのか?」

と、再び大和に聞く。

「さぁ、どうかなぁ。柊って頭いいし大人な感じだけど、肝心なとこ鈍そうだし……って言うか鈍いからなぁ。気付いてないんじゃない?というか気付いてたら柊の性格的に既に付き合てるか、振るかはっきりさせてると思う」

「ああ、なるほど、それは確かに……クックックッ、それにしてもねぇ……」

 楽しいおもちゃを見つけたという様に、百代が意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「あーー、って事はもう燕先輩一択じゃないかーーー」

 そのガクトの言葉に百代がさらに反応する。

「まぁ、燕は燕で別の意味で柊のことでいっぱいだろうけどな」

 そう言って、今度はニヤリと笑う。

「それは、打倒柊先輩ということですか?」

 由紀江がおずおずといった感じに聞いてくる。

「ああ、そうだ……なぁ、まゆまゆの見立てではどうだ?燕は柊に勝てそうか?」

「え?え?私は松永先輩戦いをほとんど見たことがないので……」

「1学期、私との試合だけでもいいさ、まゆまゆの感じたままいってみてくれ」

「……そうですか、そうですね……」

 そういって由紀江は1学期、燕が転校してきた初日の百代との試合を思い出す。

「個人的な印象ですけど……松永先輩は柊先輩とは相性がよろしくないのではないでしょうか」

「ほう……その理由は?」

「モモ先輩との試合、松永先輩はいろいろと武器を変更しながら戦っていました、たぶんモモ先輩がどういう反応をするか見ていたんだと思うのですが……そうなるとおそらく松永先輩はそういう相手の反応に対してレスポンスを返すスタイル……つまり隙を突くのを得意とされている……と思うので……」

「故に、現状目立った隙のない柊とは相性が悪い……と」

「はい……」

「まぁ、私もまゆまゆと同じ意見だ。もちろん燕自身もわかっているだろうさ。でも私に打倒柊を宣言したからな、何か考えてはいるんだろう」

 そう言って百代はフッと笑うと、

「最初に千信館の奴らが来た時もこんなことを話していたが……いや、面白い。本当に面白い。柊達のおかげで学園が変わってきている」

「姉さんを筆頭に?」

 百代の言葉に大和が悪戯っぽい言葉をかける。

「……ああ、私を筆頭に……だ」

 そんな大和の言葉に、同じく悪戯っぽく答えて百代は笑う。

 

「なぁなぁ、なんか難しい話はどうでもいいから!今からファミリー内で神座大戦トーナメントやろうぜ!」

 キャップの宣言でゲーム大会の流れとなる。

「お、イイね、今度ゲーセンで全国大会の予選あるんだよね。龍辺さんもでるかなぁ」

「お、なんだモロ。お前はあのちみっこ狙いかぁ?」

「い、いや、違うよ。龍辺さんこの前も出てたし、すっごく強いから」

 ガクトの言葉にモロが顔を赤くする。

「見てくれ!自分は宗次郎で必殺技を出せるようになったんだぞ!」

「クリス……まず、コマンド全部覚えような」

「えっと……○がパンチで、×が……蹴り?」

「×は回避だワン子、蹴りは□」

「……コマンド以前の人がいた」

「んじゃ、皆ポップコーン出すね、つまみながらやりなよ」

「えー、ポップコーンはゲーム機汚れるからなぁ」

 そんなキャップの声に、

「なんだよなんだよ!人が親切に言ってやってるのにさ!」

クッキーがキレて、機械音と共に変形する。

「如何にマスターといえど私のポップコーンを侮辱することは許されない」

「わー、このロボ本気だーー」

 

 ワイワイと騒ぎ出すファミリーの面々を見ながら、

――自分も変われたのだろうか?

そんなことを、大和は思う。

 しかし直ぐに。

――変われた、じゃないな、変わらなきゃいけないんだ。

 そう思い直して心の中で気合を入れる。

 そして――

「姉さん、司狼対策したいんでしょ、付き合うよ」

百代に声をかける。

「おう!今度こそ燕をボッコボコにしてやる!」

 百代が笑って答える、その笑顔を少し前のような怖さは……ない。

「燕さん、俺よりつよいんじゃないかなぁ」

 そんな百代の笑顔を嬉しく思いながら、大和はファミリーの喧騒の中に入っていった……

 

 

―――――

 

 

 川神学園……と、思われる屋上。

 時間は……よくわからない。日中だということはわかるが、午前の休み時間なのか、昼休みなのか、もしかしたら授業中なのかもしれない……

 いるのはひと組の男女だけ、ほかに人影はない。

 しかしそのひと組の男女の様子は普通ではなかった。

 

「んっ……やっ……ちょっと……」

 女――真奈瀬晶は羞恥で顔を真っ赤にしながら苦しそうに身をよじる。

 しかし身体は思った以上には動いてくれない。

 目の前の男が、晶の両手首を両手でそれぞれ掴みながら壁に押し当てているからだ。

 手首の位置は晶の頭よりも上。

 図らずもバンザイをするような体勢になり晶の豊かな胸が前に突き出され、強調されたような形になっている。

 しかもいつの間にかワイシャツのボタンが上から3つも外れており、ワイシャツの隙間から花柄の可愛らしいデザインの下着に包まれた豊かな双丘の谷間が艶かしくチラついている。

「ちょっと……なぁ……落ち着けって」

 もう一度、晶は自分を拘束している人間に向かって言葉をかける。

 抵抗はしているが、実力行使というより言葉によるこの状況の脱出をはかっているようだ。

 本来の晶なら能力(ユメ)を使えばそこらの男どもなんぞ相手にならない、

なのに何故力による脱出を試みないのか……

 

 その答えが男の方から発せられる――

 

「晶……おまえが誘ってきたんだろう?何を今更怖気付いているんだ……ここまで来てやめろとか、おまえ、俺を馬鹿にしてるのか?」

 聞きなれた――聞きなれすぎた幼馴染の声が男の口から漏れる。

 そう、自分を拘束しているのは四四八なのだ。

 

 実は晶自身、何故このようなことになっているかよくわかっていない。

 現在の状況に頭がパニックになっているからか、記憶が曖昧なのだ。

 四四八は晶が四四八誘ったと言っているが、果たして本当にそうなのだろうか。いや、しかしあの真面目な幼馴染がいうのだから、やっぱりそうだったのかもしれない。いや、でも修学旅行の一件もあるしこういう悪ふざけをする場合もあるからやっぱり……

 などと堂々巡りのような思考を繰り返していると、再び男――四四八から声がかかる。

 

「おい――晶、おまえ聞いているのか?」

 四四八は眼鏡の奥から晶の瞳を見つめている、目は一瞬たりとも逸らされてない。

 

「ふん……まぁ、いい。ならば最後のチャンスをやろう。今から俺を拒否するなら俺の舌でも唇でもいい、噛め。しかし何もしないのであれば受け入れたと判断する」

「へ?……ちょっと、なにそ……んむっ!!」

 晶の口は最後まで言葉を紡げなかった。四四八の口が晶の唇を塞いだからだ。

 

「んっ……んんっ……」

 四四八の唾液と自分の唾液交じり合うのがわかる。

――あたし、四四八のファーストキス奪われちゃったな……

 等という、何とも乙女チックなことを考えていると……

「ん……んぅ……んんっ!!」

 晶は自らの口の中に四四八の舌が入ってきた事に驚き目を見開く。

「んん!……んむっ!……んぅんっ!」

 驚いて晶も舌を動かすがその舌を四四八の舌が絡め取りいいように弄ばれる。

 

 何秒そうしていたのだろうか、少なくても晶にとってこの数秒は悠久にも思える程の時間だった。

 不意に四四八が晶から離れる。

「はぁ……はぁ……」

 晶の口から荒い息が漏れる。

 離れた時、四四八の舌と晶の舌には今のキスの証のように細い唾液のブリッチがかかっていた。

「……噛まなかったな。では了承と捉える」

 そう言って四四八はキスで半分意識が朦朧としている晶の両手をぐいっと更に持ち上げる。

「――きゃっ!」

 その拍子に半分朦朧としている晶が覚醒する。

 四四八は晶の両手を完全に頭の上まで持ち上げて束ねて、左手一つで晶の両手首を拘束する。

男らしく力強い手の感触に、晶がドキリとする。

 先ほどより更に身体を伸ばすような体勢になりボタンが開いていることもあり晶の双丘はワイシャツからこぼれ落ちそうになっている。

 その双丘を四四八は空いた右手で荒々しく鷲掴む。

 

「あぁっ!……四四八……いたっ……いっ!」

 しかし、そんな幼馴染の言葉を完全に無視して四四八が喋る。

「晶、本当に悪かった……こんないやらしい体を持て余してたのか……抱いてくれといってくれれば喜んで抱いたものを……」

 そう晶の耳元で囁きながら右手で晶の胸を掴んだ時と同じく荒々しく揉みしだく。

 そして同時に晶の口を再び塞ぐ。前よりも優しく官能的な口づけだ。

「んっ……れろ……ちゃぷ……あっ……あぁ……んんっ」

 晶も先ほどとよりも積極的に舌を絡ませている。卑猥な水音が静かな屋上に響く。

 

 ここで止めてほしい、冗談だったと身体を離して欲しい……と、思っている反面、

逆にこのまま四四八に抱かれてしまいたい、とも晶は思っていた。

 

 このまま抱かれたら、自分は四四八のものに、四四八は自分のものになるのだろうか……

 そう思うと確かにこの状況は自分が誘ったのかもしれない。

 この手の話には結構……というか、かなり奥手な自覚があるが、もしかしたら新たに現れた強敵――葉桜清楚に触発されたのかもしれない。

 そう考えると、素直に自分で自分を褒めてやりたい気持ちにすらなってくる、よくぞ決意、実行した……と。

 そんなことをピンク色に染まりつつある頭で考えていると……

 

「んんっ!ちょっ!四四八、そこ、だめっ!……だって……」

 今まで晶の胸を弄んでいた右手がツツツと晶の脇腹をつたい、太ももまでやって来る。

 そしてなんの躊躇もなくスカートに中――足の付け根に触られる。

「ん?なんだ、おまえ……」

 四四八の言葉に晶は今まで以上に顔を真っ赤にする。

 自らの下着がどういう状態になっているか、知りすぎているほどに知っていたからだ。

 

「まぁ、準備がいいならそれでいい……柔らかい布団の上じゃないが、お前が望んだことだ、其の辺は目を潰れ」

 そう言って晶の両手を拘束していた左手を離すと、左手を肩に、右手を腰に添えて晶をそっと床に横たえる。

 

「まぁ、痛いのは最初だけ……だそうだ、俺は女じゃないからわからんが。お前はじめてだよな?」

そんな四四八の不躾な質問にも、コクコクと頷くことしかできない。

「そうか……出来る限り優しくする努力はしよう」

 そういってグッと身体を近づける。

 

――あぁ、あたし抱かれちゃうんだなぁ。ごめんな皆、こんな不意打ちにたいなことしちゃって。

 

 級友達の顔が思い浮かぶが、それも一瞬――下着を脱がされた感触に驚き頭が真っ白になる。

「――いくぞ」

 四四八の言葉にキュっと唇を噛み、空を見る。

 そして自らの大事なものを四四八が散らそうとする。

 

 その時――空から何かが落ちてきた。

 そして、それは晶の額を直撃して――

 

「フギャ!」

 晶、頭上に降ってきた何かに驚き身体を揺らす。そしてその拍子に。

「え?わっ、わっ、わっ」

 ドサリ……とかけていた布団ごとベットから滑り落ちる。

ピピピ、ピピピ、

 自らの頭の上に落ちてきたモノの正体――目覚まし時計が耳障りな音を床で鳴らし続けている。

 

「っつぅー……はぁー、なんだよ、夢かよ……」

 落ちて覚醒した晶は今の自分の状況を把握する。

 ここは川神学園が用意してくれた寮の一室。晶の部屋。

 学園の屋上ではないし、もちろん四四八もいない。

「ったく、あたし欲求不満なのかなぁ。リアルすぎだろ……」

 そう一人でぼやき今の夢の内容を思い出してボッと顔を赤くする。

 葉桜清楚が四四八の頬にキスをする場面を見てから、なんとも胸のモヤモヤが取れない。

 もちろん自分自身はそのモヤモヤの正体を知っている。

 だからと言って……

「ストレートすぎんだろ……あーーー、もーーーっ!!」

 そうやって髪をくしゃくしゃとかき混ぜると、未だ鳴り続けている目覚ましを乱暴に止めて布団に投げつける。

 

「……シャワー、浴びてくるかな」

 そういって晶はモヤモヤを抱えたまま浴室へと足を運ぶ。

 モヤモヤの正体はもちろんわかっている。しかし、わかっているだけに、晶にはそのモヤモヤを解消するすべを持っていないのだ……

 

 

―――――

 

 

「あーあ……どうすっかなぁ」

 晶は校門を出たところで、ため息をつく。

 例の一件以来なんとも調子が出なく、今日も千花達からお茶の誘いを受けたが断ってしまった。

かといってこんなに早く寮に帰ってもやる事がないし……

――今日は自分が食事当番だ、取りあえず買出しにだけ言っとくか。

 そんなことを考えながら歩いていると……

 

「真奈瀬さん」

「ん?」

 晶を呼ぶ声に振り向く、そこには――

「せ、清楚先輩?」

 思わぬ人物の登場に裏返った声を出してしまった。

「ふふふ、驚かせてごめんね」

 そう言って歩いて晶の傍までやってくる。スイスイ号は見当たらない。

「今日スイスイ号はメンテナンスでお休みなの、だから久しぶりに何処か寄って行こうかなーと思って、真奈瀬さんご一緒しない?」

「え?や?はぁ?」

 いきなりの提案になんて答えていいのかしどろもどろになる晶、

「ねぇ、ダメ?かなぁ?」

そう言って少し困ったような顔で晶の瞳を覗き込む清楚。

 同性でもドキリとするくらい可憐な佇まいの少女の問いかけに、

「あ、あぁ……少し……なら……」

「わぁ!ありがとう!」

 晶の言葉に、ぱぁと花が咲くように笑うと口の前で手を合わせて喜ぶ清楚。

「気になってたお店があったんだけど一人じゃ行きにくかったの。ほんと、ありがとう」

 そういうと晶の手をとってズンズンと歩いていく。

 そんな現状を改めて考えて、

……はぁ、あたしなにやってんだろう……

そう、清楚に聞こえないように小さく小さく晶は息を吐いた。

 

 

―――――

 

 

「わぁ、凄い!」

「お……おおぅ……これは……」

 広めのお皿にドンと盛られた甘味の山、『くず餅パフェ』を前に清楚と晶は対照的な反応を示す。

 

「紋ちゃんに言われて気になってたんだよね!いただきます!」

「……いただきます」

 勢いよくパフェスプーン動かす清楚となかなかスプーンの進まない晶。

「どうしたの?真奈瀬さん、甘いの嫌い?」

 それに気づいた清楚が晶に聞いてくる。

「あ!いや!そうじゃなくて……えっと、あたし、太りやすくてこんなの食べたらマズいなぁ……って」

 もっか自分の悩みの種である清楚先輩といるのが気まずくてスイーツどころじゃない、とは口が裂けても言えない。もちろん予想より『くず餅パフェ』が大きかったというのももちろんあるが……

「えぇ、真奈瀬さんスタイル抜群じゃない、腰細いし、胸だって……」

「いや、それ清楚先輩に言われても……」

「ふふふ、真奈瀬さんにそう言われるとちょっと嬉しいかも」

 そう言って清楚が笑う。とても可憐な笑顔だ。

 

 その笑顔を見て、晶のモヤモヤが大きくなる。

 そこで晶は意を決する。

 もともと考えたり、駆け引きをしたりするのが得意なタイプじゃない、隠し事も苦手だ。だから清楚に単刀直入に聞いてみる。

 

「ねぇ、清楚先輩。なんで今日あたしに声かけたの?」

「ん?」

 スプーンを口にくわえたまま清楚は小首をかしげる。そんな仕草も様になっている。

「だって、パフェ食べに行くなら誰だっているじゃん、なんであたしなのさ」

「んー」

 清楚は晶の言葉の意図を察して少し考える素振りを見せる。そしてくわえていたスプーンをさらに置くと晶の目を見て、

「お話……したかったんだ、真奈瀬さん達と。ライバル宣言しちゃったし。そう言う意味じゃ言い方は悪いんだけど、一番最初に見つけたのが真奈瀬さんだったって事」

と、清楚は答える。

 

「ということはやっぱり先輩、四四八のこと……」

「うん、好きだよ。自分でもビックリなんだけど、こんなに短期間で好きな人ってできちゃうもんなんだね。でも私の場合凄くイロイロ彼には迷惑かけちゃってるから其の辺は負い目もあるんだけど……」

「四四八のどんなとこが好きですか?」

「んー、強くて、優しくて、頼りになって……でも一番はこんな面倒くさい私と――私達と最後まで向き合ってくれたところ……かな」

「四四八と私達の能力(ユメ)のことって……」

「うん、聞いてる。でも詳しいことは教えてくれなかった。でも触りだけ聞いても尋常なことじゃないし、柊くんと真奈瀬さん達の間の絆の強さは半端なことじゃないんだなって思ってる」

「四四八のいいところ、10個言えます?」

「強いところ、優しいところ、頼りになるところ、守ってくれるところ、面倒見がいいところ、謙虚なところ、礼儀正しいところ、自分の意志をしっかり持ってるところ、友達を大切にしてるところ、本が好きなところ」

「逆にダメなところ、10個言えます?」

「う~ん、それは難しいなぁ。ちょっと子供っぽいところがある?私にはまだ見せてくれないけど……あ、あと朴念仁なところ!どうせ私の一世一代のキスも意趣返しくらいにしかとってくれてないんじゃないかなぁ。あの様子だと……」

 清楚の言うとおり、四四八は清楚のキスは項羽を大衆の前で完膚無きまでに負かせた事への意趣返しだと思っていた。それにはその後、晶や水希を含めた女性陣に延々とイヤミを言われ続けたということが原因としてあるわけなのだが……

 

 晶は自分の矢継ぎ早な質問にスラスラと答える清楚を見て、自らの――いや、自分たち戦真館の女性陣の甘さを認識した。

 晶自身、四四八と自分が結ばれないかもしれないという可能性をもっている、もってはいるが、その場合は戦真館の他の誰かだろうと思っていた。恐らく他の3人もそう思っているはずだ。四四八は自分たち4人の誰かと結ばれるはずだ……と。

 

 まったくもって甘すぎる。

 そんな保証がどこにあるというのだ。

 確かに自分たちの中には他の者が介入できないくらいに強く、固い絆がある。

 しかし、それとこれとは話が別だ。

 この件に関して自分たちは戦真館の絆に甘えていると言ってもいいのかもしれない、それは培ってきた絆に対してとても、とても失礼なことの様に晶は思えた。

 

だから――

 

「いただきます!」

 晶は手をパシンと目の前で合わせてそう言うと、

「はむっ、はむっ、はむっ!」

おもむろにスプーンを手に取り、ほとんど手を付けなかったパフェを猛然と口の中に放り込み始めた。

「え?え?どうしたの?」

 いきなりの晶の行動に驚き声をかける、

「ありがとうございます、清楚先輩。清楚先輩と話して気合入りました。あたしも――あたしたちも負けませんよ、まあ、実際覇王先輩には勝ってますしね」

そう言って晶はスプーンをくわえたままニヤリと笑う。

「あー、いったなぁ。2回も負けないもんね。それに真奈せ……」

「あ!その真奈瀬さんって言うのやめてもらえません?なんか他人行儀であたしはちょっと……」

「じゃあ……晶ちゃん!あ、なら私も先輩って言うのちょっと苦手なのよね」

「じゃあ……清楚さん」

「なに?晶ちゃん」

 そう言って二人で顔を見合わせて笑う。

 

「ねぇ、清楚さん。四四八の子供の頃の話とか聞きたい?」

「聞きたい!聞きたい、聞きたい!!」

 ググっと前に乗り出して清楚が言う。

「じゃあ、その代わり清楚さんの子供の頃の話聞かせてよ」

「え?いいけど、あんまり面白いことないよ?」

「いいからいいから、じゃあ、順番。まずはあたしから――あたしらがまだ全然小さかった頃なんだけど……」

 そう晶が話し始める。

 二人はパフェが空になってもその喫茶店を動こうとはしなかった。

 

 

―――――

 

 

 外もだいぶ暗くなってきた頃、二人はようやく喫茶店から出てきた。

「あー、結構長くなっちゃったなぁ」

「ふふ、だって晶ちゃんの昔の話面白いんだもん」

「清楚さんと源氏のやつらの話も相当ですよ」

 そう言って、二人して笑う。そんな時不意に声がかけられる。

 

「ああ、晶じゃないか、こんな所でなにして……って葉桜先輩?二人でいたのか?」

「おう、四四八、ちょっとなそこでお茶してたんだ」

「こんばんは、柊くん。柊くんはどうしたの?」

「ええ、京極先輩に借りていた本を返しにいったら将棋を指さないかと言われて遊んでいたらこんな時間になってしまって」

 彦一と四四八が畳の上で将棋を指す姿を思い浮かべ、晶と清楚は吹き出してしまう。

「プッ、なんだよ四四八、それ狙いすぎだろ!」

「はは、そうそう、学園の女の子にしれたら大変だよ?」

「なんでそうなるんですか……というか、なんか仲良いですね、いつの間に……」

「四四八、親しい人が出るのに時間は関係ない――んですよね、清楚さん」

「ふふふ、そうだね」

 何か通じ合うものを二人のあいだに感じて、首をかしげる四四八。

 

 そんな不思議そうにしている四四八に晶がよってきて手を取る。そして晶はチラリと清楚を見ると。

「なぁ、四四八。今日あたしが食事当番じゃん?買い出し、付き合ってくれよ」

「ん?ああ、構わないぞ」

「サンキュー、お礼に今日は四四八の食べたいもん作ってやるよ、何食べたい?」

「え?いきなり言われてもなぁ……うーん……あ、時期もそろそろ終わりだし秋刀魚……かな」

 少し考えた四四八が思いついたというふうに答える。

「うへぇ。渋っいチョイスだなぁ。でもOK、今日は秋刀魚の塩焼きだな」

 そう言うと晶はクルリと清楚の方をみて、

「じゃあ、清楚さん今日はありがとう、また、付き合ってよね」

と、挨拶をする。

「うん、またね。柊くんも」

 清楚は小さく手を振り答える。

「じゃあ、葉桜先輩また――って、おい、晶引っ張るな」

 四四八の挨拶が終わる前に晶はグイグイと手を引っ張って進んでく。

 四四八の手を引きながら晶は首だけ振り向き、清楚にウィンクをする。

 清楚はそれに、口をとんがらかせてちょっと拗ねたように上を向いて答える。

 そして、最後に互いに小さく手を振りあって別れた。

 

――なんか今の会話、新婚さんみたいだったなぁ。

一人残された清楚が二人の会話を回想する、

 

そして――

 

「よーし、私も頑張ろう!ね、私!」

 自らの胸に向かって語りかける。

――フンッ!

 という声が聞こえる。

 そんな拗ねたもう一人の自分の声がおかしくて、一人でクスクス笑ってしまう。

 そんな様子を周りの人々が不審げな目で見る。

 

「あ、いや、なんでもないんです!」

 そう言って、顔を赤くしてその場を走り去る清楚。

 

――明日、図書室で柊くんにあえるかなぁ。

――あ、花壇に来てくれないかなぁ。

――会えなかったら会いに行っちゃえばいいのか、柊くん鈍感だもんなぁ。

 そんなことを考えながら清楚は九鬼の本社ビルへと走る。

 

 思わずこぼれる清楚の笑みは九鬼についても止まることはなかった……

 

 




個人的に一番ヒロイン力(りょく)の高いと思っている晶にスポットをあててみました。

エロ描写かいて読み直して……全然エロくなくね?と凹んだのは内緒。
まぁ、晶はそばもんの眷属だもんねエロいことされてもしょうがないよね。

次からは新章に入ります。
宜しくお願いします。

お付き合い頂きましてありがとうございます。

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