いろいろ書いてたら戦闘まで行きませんでした……
断じて苦手な戦闘描写から逃げたわけではありません……たぶん
「~~~~♪~~~~~♪」
休み明けだというのに、百代は上機嫌だった。
もちろん柊四四八との対戦が決まったからだが、あまり騒がれたくないという四四八の意向を汲んで対戦自体は直前まで――今日の昼過ぎまで伏せることになっている。
「お姉さま、珍しく上機嫌だけど何かいい事でもあった?」
「あー、あったぞ、だが秘密だ。そういう約束だからな」
「なんだよーケチ!俺たちにだけ教えてくれてもいいだろー」
一週間ぶりに川神に帰還したキャップがブーたれる。
「なー、大和はなんか知らないのか?どっかから情報周ってきてねーの?」
「ん、あぁ、知らないな。昨日は休みだったから学校関連の情報は動いてないぜ」
――嘘だ、
大和は知っている、何故なら四四八から昨日直接連絡を受けたからだ。
――昨日
『川神先輩と対戦することになった』
「え!姉さんと?」
『明日の午後、場所はグラウンドだ。騒がれたくはないんで川神先輩には口止めをお願いしたんだが。一応直江には言っておこうと思ってな』
「え、いや、でも……」
いきなりの事で、何を言っていいかわからない。
もっというなら、四四八が何故自分に教えたのかわからない、勝負というものは、基本的に当人同士の問題のはずだ。百代の弟分ではあってもその間には入らないのが礼儀……というか、常識だと思っている。
「直江。結果はどうあれ、俺は全力を尽くす。だから直江は川神先輩のことを見ててほしい。それが多分、川神先輩を立たせることになる……と、思うから」
「どういう意味だよ、それ」
「今はわからない、俺もどういう結果になるかわからないから。ただ、もし、俺の考えてる通りになったなら川神先輩を立たせるのは、直江の仕事だ、そう、思ってる……だから、頼む」
「何かそれ、勝利宣言に聞こえるんだけど。姉さんは強いよ?」
「知ってるよ」
「ん~、まぁ、わかった。正直何が何だかわからないけど、柊が言ってくるってことは、なんか意味があると思うから。まかせとけ、姉のお守は弟の仕事だって古今東西で決まってんだからさ」
「ふふ、そうか……悪いな、変なこと言って。じゃあな」
「ああ、じゃあな」
切った後、不安が持ち上がってきた。だが、今の自分にできることはない。
自分にできる事は、四四八と百代の勝負の行く末を見守ることだけ……ならば、見届けよう。そう心に誓った。
それが昨日だ。
だから、大和は話題を振ってそこから話をそらす。
「まぁ、姉さんがすぐわかるって言ってんだから待ってればいいんだよ。それよりモロ、ゲーセンの大会、龍辺さんが優勝したそうじゃない」
「そうそう、彼女ほんとにすごいんだよ、特に最後の超必避けとかmytubeでupされてスゴイ再生数になってるよ!」
「なんだなんだ、そんなに強かったのか。よーし今度は俺が挑戦するぞ!!」
「てか、キャップ。千信館の人達が来てからほとんど学校いないよね……」
うまいこと話題がうつりファミリーの面々は学園へと向かっていく。
決戦まであと半日……
―――――川神学園 学園長室―――――
朝の学園長室、そこには学園長である鉄心以外に四四八とルー師範大の姿がある。
「ふむ……それで、お主はモモと戦うというのじゃな」
「はい」
「私は反対でス、学園長。下手をしたら百代ハ……」
「……うぅむ」
難しい顔で鉄心は考え込む。
四四八は返事をした姿勢で相手の返答を待っている。
「いいではないか鉄心」
その時、扉が開きヒュームとクラウディオが入ってくる。
「この赤子はお前やルーが出来なかった事をやってくれると言っているんだ。任せてみればいいじゃないか」
「でも、こういう事は慎重ニ……」
「おい、ルー。これはお前たちの責任でもあるんだぞ?お前達がちゃんと川神百代を躾ていればこんなことにはなっていない。違うか?鉄心」
沈黙が学園長室を支配する。
……ふぅ。
何かを決心したように、鉄心が息を吐いた。
「そうじゃな、ヒューム。お主の言う通りじゃ。ここまで来て顔見知りがどうこうやっても難しいじゃろう……なぁ、柊。やってくるか?」
「はい」
四四八は先ほどと同じ姿勢で返事をした後、鉄心を見据えて口にした。
「武神・川神百代の息の根、必ずや止めてみせます」
「ご安心ください、学校側の防備は我ら九鬼の従者部隊、その中でも選りすぐりを配置しておきます。思う存分ふるって下さいませ」
クラウディオの言葉に礼をいって四四八は退出した。
「よろしかったのですカ?学園長」
「いつかはせねばならぬ事じゃ。むしろ、今、柊四四八という男が来た事を幸運だと思わねばならんのかもしれん」
「学園長……」
「さて、準備を始めるぞ。まずはグラウンドの手配じゃな、ルー頼んだ」
「ハイ、わかりましタ」
「グラウンドの整備はこちらで受け持とう。まぁ、首を突っ込ん身だ最後まで付き合ってやる」
「悪いな、ヒューム」
「ふん、らしくないじゃないか、歳か?」
「馬鹿を言え、まだまだ現役じゃわい!」
「まぁ、いい。あとは全校生徒への告知だ、それはお前の仕事だろう鉄心」
「わかっておるわい」
それを最後に解散となった――
決戦まであと数時間……
―――――5限終了間際 川神学園教室―――――
ピンポンパンポーン
『あー、あー、マイクテス、マイクテス……これはいってる?あ、そう――ゴホン』
授業終了間際、いきなり学園長の放送が始まった。
『あー、本日5時限目終了後よりグラウンドの使用は禁止となる。体育、部活動で使用予定の生徒は他の場所を使うように』
「おいおい、なんか始めるのか?」
「ねぇ、九鬼の従者部隊がいっぱいグラウンドにいるわよ」
一気に教室がザワつく。
『同時に勝負の開催の告知を行う。5時限終了後、グラウンドにて川神百代 対 柊四四八の勝負を開催する、両名は5時限終了後、速やかにグラウンドに来るように』
学園のザワつきが一気に加速した。
「おいおいおいおい、マジかよ、マジかよ。モモ先輩に挑戦とか松永燕以来じゃないか」
「てか、柊ってあの、鎌倉から来た柊だよな?あいつガリ勉ッぽくね」
「いや、柊君体育とか見ると運動神経ものすごくいいよ」
「いや、運動ちょっと出来たからってモモ先輩の相手にはならないだろう」
ザワザワと、勝手な品評が飛び交う、既に授業どころではない。
―――――川神学園 2-F―――――
「お姉さまが言ってたのはこの事だったのね!」
「なぁ、大和はなんも聞いてなかったんだよな?」
「ん、あぁ……」
「そうかぁ、んじゃ、誰も知らなかったんだなぁ」
「なぁ、大杉。柊ってそんなに強いのか?」
ガクトがクラスメイトである栄光に声をかける。
だが、栄光――千信館の面々は今の放送に驚いて聞こえていないようだ。
その時、ガラッ!とドアが開かれ水希と鈴子が飛び込んできた。
「ね、ねぇ!晶、今の……」
それに我に返ったのか、水希の問いかけに晶が答える。
「い、いや知らねぇよ、てか、四四八はおまえ等のクラスだろ」
「柊の奴、昼休み終わってからずっといないのよ。朝はそんなそぶり何にも見せないで……アイツ!」
「おい……落ち着け鈴子。柊の事だ何か考えがあんだろうよ」
「で、でもよぉ、モモ先輩とやるってことは能力(ユメ)使うってことだよな……それって大丈……」
「シャラーーーープ!!」
歩美の大声に一斉に視線が集まる。
「これは、四四八くんが決めた事。わたし達に話さなかったのは話す必要がなかったから。じゃあ、わたし達に出来る事は……四四八くんの戦いを見守る事、信じてね」
そういってからガクトの方に向いて歩美はさっきの質問に答える。
「四四八くんはね、強いよ。ものすっごく。わたし達の中でも一番強い。わたしは四四八くんの負ける姿は正直想像できない」
それを聞いた大和が息をのむ。
「龍辺の言う通りだ、俺等の大将の一戦見届けてやろうじゃねぇか」
「まったくあの馬鹿、負けたら奴隷にしてやるんだから」
「なんでお前は関係ないのに、奴隷の契約できてんだよ」
「でもよー、モモ先輩ってどれくらい強いんかな、なんか今まで圧倒的すぎて正直全然見えないんだけど」
「そうだよねー、たぶん本気でやったトコなんか、私達みてないしなぁ」
「というか、みっちゃんとりんちゃんは教室戻らなくていいの?」
「いいわよ、どうせ宇佐美先生だったし、私たちもここで観戦させてもらうわ」
「うわぁ、鈴子直球ね……」
千信館の面々は四四八の戦いを見届ける覚悟をしたようだ。
自分も彼らのように最後まで見届けよう、大和は一人そう心に誓った。
―――――川神学園 グラウンド―――――
百代は既に位置につき、四四八の登場を待っていた。
顔には笑みが浮かび、手にはいつもより力が入っているのか何かオ―ラの様なものまで見える。
「さぁ、来い、柊四四八……私は待ちきれないぞッ!」
そんな時、待ち人・柊四四八が校門から登場した。
皆一斉に彼の変化に気付いた、いつも着ている白ランの制服やジャージではないものを身につけている、そして手にはいつもは見慣れぬ武器……
「ほう――これまた懐かしいものを引っ張り出してきたな……」
それをみたヒュームが呟く。
第一印象は――軍服。
千信館の白を基調とした制服とは真逆の黒を基調とした学ランにインバネスのコートを羽織り、今時珍しい学帽をかぶった姿は往年の帝国軍人を思い起こさせる。
手に持つは一対の旋棍。
見事なくらいに様になっている。
軍服は身体に服を合わせるのではなく、服に身体を合わせるのだとよく言うがその制服はあつらえたように四四八に合っている。
戦闘服に身を包んだ四四八はゆっくりと百代のもとへ向かっていく。
「なぁ、あれって……」
「うん、戦真館(トゥルース)の制服だね」
「つまり、四四八は能力(ユメ)を使う事を覚悟したってことか……」
「うん、そういうこと、だと思う」
「なぁ龍辺、あれってどういう事なんだ」
耐えきれずに大和が歩美に聞く、歩美はグラウンドの四四八に目を向けたまま答える。
「あれは――戦真館(トゥルース)の制服はね、わたし達にとって戦いの象徴なの」
「……つまり?」
初めて歩美は大和の方を向き静かに答えた。
「四四八くんは本気――って事」
その言葉に大和は思わずつばを飲み込んだ……
―――――再び 川神学園 グラウンド―――――
対峙する川神百代と柊四四八。
「戦闘服でやる気満々って事でいいのか」
「お好きなように取っていただいて結構です」
「旋棍か……なかなか珍しい獲物を使うな」
「しょうにあってますので……」
交わす言葉は短い、必要もない。
「二人とも準備はいいか?」
「なんだ、今日はジジイ直々に審判か、珍しいな」
「そうじゃ、責任者としては見届けなければならんのでな……」
「ん?まぁ、どうでもいいがいいところで止めるなよ?」
「止めはせん……止めはせんよ……思いっきりやるがいい」
「くっくっくっ、そうか……そうか!!今日はずいぶんと物分かりがいいじゃないか!なぁ柊、聞いただろう!!ジジイの許しも出た、全力で楽しもうじゃなか!!!」
そう言って百代が構える、両手を開き、鉤爪に前へ出す。獣のような構えだ。
「自分はいつでも構いません。あなたの全力、受け止めさせていただきます」
そう言って四四八も旋棍を構える
そして、意志を持って口にする。『邯鄲の夢』から戻ってきて、初めて使う戦闘状態の能力(ユメ)
「詠段、顕象――」
力ある言葉と同時に、四四八の瞳が緑色に燦然と輝きだす。
「双方、準備がいいようじゃな――では」
学園中が固唾を飲む。
「川神百代 対 柊四四八……開始(はじめ)ぇッ!!!!」
「はああああああああああああああああッ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
二つの力がぶつかり合う。
ここに、戦真館と川神学園の頂上対決の火蓋が切って落とされた――
次は書き始めてますので、あまりお待たせしないで投稿できると思います
あと歩美マジヒロイン
お付き合い頂きましてありがとうございます