・八命陣の歩美√最終決戦後からのスタートになるため、多大なネタバレを含んでおります。
・また、話の都合上原作とは違う独自解釈も含まれております。
・作者は投稿どころか、創作小説を書くのが初めてですのでお見苦しい点が多々あると思われます。
上記の点をご了承の上、お付き合いいただければと思っております.
――『夢』
普通の人は『夢』と言われれば何を思いうかべるのだろうか。
将来実現させたいと思ってる願望?――確かにそれは夢。
睡眠中に脳の覚醒が見せる幻覚?――確かにそれも夢。
どちらも正解だし、むしろ正解がある、ないの問いかけではないのだけれども、
それでも、聞かずにはいられない。
「あなたにとって『夢』っなに?」
なぜなら、わたし達――千信館の7人にとっては『夢』とは『もう一つの現実』であり『思い出したくもない悪夢』でもあり『思い出すだけで胸が熱くなるような挑戦』でもあるのだ。
夢の中に入って、その中で幼馴染の母親がバラバラに殺されて、それでも朝に帰るために友人達と手を取り合い、文字どおり命懸けの戦いに身を投じていく……
わたしの大好きな漫画やアニメ、ゲームの中には、それこそ探せば山のようにあるような設定だが、そんな漫画やアニメの様な只中にわたし達7人はいたのだ。
でも、そんな『夢』を見なくなって、そろそろ1ヶ月がたつ。
最初はとまどった「一般的な睡眠」だけど、流石に人間、1ヶ月もすると慣れてくる、人生初めての「一般的な睡眠」を経験している、四四八くんでさえそんなことを言っていたのだ、ついこの前まで「一般的な睡眠」を経験していたわたし達はもっと順応が早かった。
ただ、身体が慣れるのと、心が慣れるのは全く違う。
現に「一般的な睡眠」に戻ったわたしは、最近よく「一般的な夢」をみる、
そしてその場面は大体いつも決まっている。
おそらくそれが今のわたしの頭の――そして心の大部分を占めている場面だからそういう形で夢を見るのだと個人的に解析している。
その場面とは、わたし達戦真館の仲間たちの『夢』を終わらせた最終決戦―高徳院大仏の掌で行われた仲間たちを駒にした鎌倉大将棋、檀狩摩との戦いの最終局面。
今晩もその夢をわたし、龍辺歩美は見ているのだ。
―――――邯鄲六層 高徳院大仏殿―――――
「我、ここにあり。倶に天を戴かざる智の銃丸を受けてみよ」
「急段・顕象――」
まったく、自分は博徒だなんてよく言ったよ。この人、ハナから将棋なんてやっちゃいない。
「犬坂毛野――胤智」
瞬間、過去から飛来した弾丸が彼――檀狩摩の眉間を撃ち抜いていた。
「かッ――」
跳ね上がる顎。飛散る血飛沫。それを盤上にまき散らしながら、だけどまだ彼は笑っている。
よくやったと、意地の悪い教師が生徒を褒めるように。
「……こりゃあ、あんときの一発か?」
「そうだね。わたし自身驚いてるけど」
この一発は、かつてわたしが苦し紛れで撃った一発。
空間跳躍という能力(ユメ)をのせた一発だが、その時は彼に事もなく防がれてしまった一発。
でも今度は違う。
空間の跳躍のさらに上、時間を跳躍した銃弾はさすがの盲打ちでも防げなかった。
「でも、これが、あなたの急段なんでしょ?」
「くくっ、ええわ……よう弁えたのォ、その通りじゃ」
「のォ、ちんまいの、おまえのことじゃ、この邯鄲の夢のことも薄々察しはついとるんじゃろうが」
「――うん」
「だから、この結末もあなたにとって全然負けじゃないんだね?」
「当たり前よォ」
「その意味は」
返ってくる答えは予想できていたが、あえて聞いてみた。
「自分で考えェ…」
予想通りの答えが返ってくる。
だけど――そう答えた声は掠れてきている、いよいよかもしれない。
だからわたしは今考えていることをぶつけてみた。
「これで終わりじゃない。そうだよね?」
今回は単なるリハーサル。いずれやってくる本番のための手順を踏んでいるに過ぎない。なにせ目の前にいる檀狩摩が、己はまだ負けてないと言っているのだから。
「くくッ、まァ、あまり囚われんこっちゃ。なんせおまえら、一度は俺に手順を狂わされとるわけじゃけえのォ」
「それってどういう――」
「言ったろうが、自分で考えェ……今回のところはこれで終わる。まずはそれでよしとせえや」
そう、清々と嘯きながら。
「のォ、ちんまいの。おまえはなかなか、悪ゥないで。背だけじゃのォて、乳も尻も貧相じゃがのォ……芯はええもん持っちょりやがる。もしもあの坊主に振られたら、俺んとこ来いや。貰っちゃるけぇ」
「誰が――」
最期の最期にそんなセクハラ発言。あまりにムカついたから、わたしは舌を出してやった。
「お呼びじゃないのよ、もういい、バイバイ」
「くはッ、ははは――そりゃ、残念じゃのォ、はははははははははは」
そして、まさにその体も消えようとする寸前――
「そォじゃ、最期に一つええこと教えちゃる」
いつもの調子で盤面不敗の盲打ちは最大の爆弾を落としていった。
「おまえらの現実とやらにもどっても、能力(ユメ)はつかるけェのォ……試してみィ……」
「えっ……ちょっと、それおかしいじゃない、どういうことよ!」
それを聞いた盲打ちは、
「くはッ、ははは、だから何度も言うたろ」
いつもの調子でニヤリと笑うと、
「自分で……考えェ……」
その一言を最後に、結局、何一つまともに答えていないまま、そして最大の謎をのこして、神祇省の首領は彼の駒ごと朝の中に消えたのだった。
―――――鎌倉 龍辺家 歩美部屋内―――――
――ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ
「……ん、うぅん」
寝起き特有の気怠さを感じながら、頭の上から耳障りな機械音を絶え間なく発している目覚まし時計に手を伸ばす。
あの半年以上続いた戦真館での寮生活の賜物か、わたしは目覚まし時計で起きられるようになっている。
こんな事で自慢したら四四八くんには、
――なにを甘えたことを……この軟弱すぎる
とか言われそうだけど、あれは毎朝5時に起きて10キロのマラソンを今でも毎朝――それこそ雨が降っても、続けている四四八くんが鉄人なのであって、こちらは生粋の現代っ子なのだ一緒にしないでもらいたい。
それにしても……
「よりにもよって夢にでてくる男が、壇狩摩(アイツ)というのは……」
今まで見ていた夢の内容を思い出しながらつぶやく。
「……四四八くんならよかったのに」
そして、そのあと思わず出てきた自分の独白に自分で気恥ずかしくなり、恥ずかしさ紛れに手元にあった空のペットボトル――昨晩ゲームしながら飲んでいたミネラルウォーターをゴミ箱に向けてほうり投げた、
が、
寝起きだからだろうか、投げたペットボトルは明らかにゴミ箱には入らない軌道で明後日の方向にとんでいく。
「――ッ!」
そのペットボトルをわたしは意思を込めて睨みつけた。
――すると
明後日の方に飛んでいったペットボトルが何かにはじかれたように軌道を変え、見事ゴミ箱の中に収まった。
そう――わたし達の能力(ユメ)はまだ終わってはいないのだ。
如何でしたでしょうか、上にも書きましたがなにぶん初めてのことで、お見苦しい点なんかも多々あると思いますが。
自分なりに戦真館の面々と川神学園の面々を交流させられたらと思ってます。
また、大筋のキャラクターの交流は描いているのですが
このキャラとこのキャラのからみが見たい!というかたはご要望いただければ、参考にさせていただきます。
最後にまえがきで歩美√の最終決戦後となっていますが、四四八と歩美はくっついてません両方共フリーです
四四八とヒロイン達の関係は、基本、友達以上恋人未満という感じです。