カードに恋した決闘者   作:島夢

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まったく…社長はいつも急すぎるぜ…

「あぁ~やっちまったな~」

 

 

別に遅刻したことに関して落ち込んでいるわけではない

というか、正直もう諦めている

それよりも…

 

 

「はぁ…またキレちまった…もう少し大人になるか純粋になったらなんとか我慢できるかなぁ…」

 

『そうだよ、ヒータとアウスから聞いたよ?また怒ったんでしょ?』

 

 

いきなり後ろから声がする

起きたのか…

 

 

「おはよう、エリア」

 

『うん、おはよう、遊夢』

 

 

青く長い髪

水を思わせる綺麗な色の髪だ

エリアと会話しながら歩を進める

 

 

『あんなにすぐ怒っちゃダメだよ?遊夢も悪いんだからね?』

 

「ああ、わかってる」

 

 

俺も悪い

お前らのことを満足に扱いきれなかったから…

だから馬鹿にされる

今も昔もそうだ

決闘(デュエル)したこともない奴らからも馬鹿にされる…それが腹立たしくてならねぇ…こいつらの本当の強さを知らないくせに…

こいつらのことを知ろうともしないくせに…!

とか考えて怒ってるが、それもただの自己主張押し付けてるだけなんだよなぁ…

 

 

「今も昔も…俺はお前らを…好きな人の力をちゃんと活かしきれてない…そこんとこ俺のほうが悪いんだよなぁ」

 

『落ち込んでどうするの?私たちはそういうことを言いたいんじゃないんだよ?昔言ってたじゃない、というかいつも言ってるじゃない』

 

「俺は過去も現在も未来も見てない、俺が見てるのは俺の嫁たちだけだ、だろ?その言葉に偽りはねぇよ」

 

 

俺は…お前らだけを見る

それだけだ、過去も現在も未来も…こいつらがいればそれでいい

だから過去を見て落ち込むな、だから今を見て怒るな、未来を見て諦めるな

 

そういう意味を込めて言った言葉だ

 

 

『だったらその言葉、ちゃんと守ってよね?』

 

 

エリアはにこっとして言う

あぁ…もう、俺の嫁はかわいいなぁ

 

 

「当たり前だ、ずっと守ってやるさ」

 

 

俺はエリアに向かって言う

そして足を止めて

見上げる…

 

 

「さ~てと、社長…怒ってるかなぁ…」

 

 

いつ見てもでかい建物だ…

この海馬コーポレーション本社は…

 

 

『え?社長に呼ばれてたの?』

 

「うん」

 

『で、遅刻なの?』

 

「うん」

 

『そろそろクビが飛ぶんじゃない?』

 

「うん…」

 

 

マジで飛ぶかもしんない…

無心で聞いてたけど最後のクビがとぶかもしんないのは反応せざる終えない…

ほんとだなぁ…そろそろとぶな…クビ飛ぶかもなぁ

飛んだら…近くのコンビニでバイトでもしようか

働くのやだなぁ…

そんなことを考えながら会社の中へ入っていく

エリアは隣に浮いて、ついてきているが、精霊が見える人じゃないと見えないし大丈夫

前から走ってくる小さい人影…

 

 

「遊夢~!にいさまが怒ってたぞ?遅刻だ、急いでいかないとクビが飛ぶぞ」

 

「お前もそれを言うのな、モクバ…」

 

 

モクバだった

社長の弟、子供とは思えない頭のよさだがな

さすが社長の弟だといえるくらいには頭良い

取締役副社長だから俺の上司ではある

というか、俺が自分でこの会社のどのあたりの位にいるのかまったくわからん

 

 

「社長怒ってるのか~行きたくないなぁ~いやだなぁ~」

 

『はやく行かないと…これ以上先延ばしにしても意味ないでしょ?はやく済ませちゃったほうがいいと思うよ』

 

 

まあ、確かにエリアの言うとおりだ…

 

 

「そうだな…んじゃ、行くか!」

 

「誰と話しているんだ?」

 

「エリアだよ、俺の嫁の一人」

 

「そっか、オレは仕事あるから!じゃあな!」

 

 

そういってモクバが走っていく

モクバは精霊が見えないが信じてはいるので俺のことを可哀想なものを見る目で見ることは無い

というか、モクバとか精霊のこと知ってる人以外にこのこと言うと酷いことになるのは分かりきっている

そう考えると小さいころのオレはまだまだ純粋だったんだなぁと思う

そこに精霊がいるよ、とか普通に周りに知らせてた…そりゃいじめられもするわ…

しかも決闘(デュエル)弱いしデッキ構築も酷かったし…

 

 

『遊夢、はやく行かないと』

 

 

現実逃避はやめようかな…

行きたくねぇな

絶対嫌だな

 

 

『私も一緒に行くから』「よし、行こうか!」

 

『すごい切り替えの速度だね…』

 

 

エリアが一緒に来てくれるなら怖いものはない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思ってた時期が私にもありました

いやぁ、あのころは若かったんだね、うん

 

 

「ふぅん、遊夢、貴様の家から本社まで、そこまで遠くないはずだが…一時間以上かかっているな?」

 

「はい…」

 

 

真っ直ぐこちらを射るように見つめる社長の目

怖いぜ…

昔の俺はよくこの人相手に決闘(デュエル)しようと思ったな

遅刻って言うけど今はまだ6時前くらいなんだよ?うん、はやいと思う

かなりはやい出勤だと思うよ?

今思ったけどモクバもはやい出勤だなおい!

 

 

「まるでどこかで決闘(デュエル)でもしてきたかのようなタイムロスだ」

 

 

なぜわかる…!

これが天才か…!

いや社長はどっちかっていうと秀才?

いや、天才だな

 

 

「さて…普通ならクビが飛んでもおかしくないが…」

 

「はい…」

 

『どこで働くか決めないとね、あっ他のみんなにも伝えとかなくちゃね、私たちも働くべきかな?』

 

 

エリアはもうクビが飛んだ後のこと考えてる…

そしてエリア、大丈夫だ、俺はヒモになるつもりはないからお前らを働かせるなんてことしないから、うん絶対にそれだけはさせないからな

 

 

「遊夢、仕事だ」

 

 

仕事…?久しぶりに言い渡されたな

今回はなんだろうか?

社長の補佐は今はモクバがいるし…

 

 

「今度、わが社にとって重要な他社の重鎮どもが数多く出席するパーティーがあるのだが、それともう一つ、俺には海外に用がある、くだらんパーティーなどキャンセルしても構わんのだが、そうもいかん理由がある」

 

 

はぁ…?それを俺に知らせてどうしたいんだろうか…

いや、気づいているんだけどさ…

 

 

「もうここまでいえばわかっていると思うが…貴様の仕事、この俺の代理だ!そのパーティーに出席してこい」

 

 

はぁ…だよね…気づいてた…

おかしいよね?普通磯野さんとかが行くべきだよね?

 

 

「磯野は今現在海外で取引中だ」

 

 

なんで俺が思っただけで返答されなきゃならんのだ…

じゃあ、モクバは?

 

 

「モクバは今回、俺に着いて来る」

 

 

だからなぜわかる…!

あなたは人の心を読めるのか!?

 

 

「俺の代理だ、好きやってくれて構わんが面倒なことにはするな、できれば他社の爺どもに好印象を与えてこい」

 

「はい、わかりました」

 

 

好きにやってくれて構わん…かぁ…

まだここで働き出して2~3年なんですけどね、俺

社長と会ったのも2~3年なんだけど

なんでこんなに信頼されてるんだか…

まあ、俺の仕事って実際これか社長の補佐くらいしかないしなぁ

ああ、日時はいつなのか教えてもらわないとな

 

 

「日時はいつですか?」

 

「明後日だ」

 

「は?」

 

「なんども言わせるな、二度は言わん」

 

 

明後日?ちょいと呼ぶの遅すぎませんかね?


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