五月雨晴也の野望   作:漆原 涼介

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大変だった……。
この一週間の間に、妹に執筆中の小説を消されたり、風邪引いたり、ログインが不可になってたりと、色々大変でした。


第十二話 天才軍師調略

『差別と区別の違い』

差別と区別の違いは非常に難しい。どちらも悪感しか湧かないからだ。しかし、私たちの周りでは多くの差別や区別がされている。だが、それを差別と区別のどちらに取るかは、その人次第となるだろう。この問題には『合理性』が大きく関係している。要するに、合理的か非合理的かで判断する。例えば『障害者用の施設に対象となる人物を送る』これは合理的があるので区別となる。だが『なんとなくムカつく』『見ててイライラする』などで暴力事件を起こしたのなら、これは合理性がなく、非合理的な問題となる。これは差別だ。以下のように、全ての出来事は合理性で処理される。だが、合理的だからなにをやってもいい。なんていう訳にはいかないのだ。人の心は、合理性で計れるものではないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清洲城の大広間、尾張当主・織田信奈。同じく三河当主・松代元康。

そして、織田家の家臣たちがズラリと勢揃いしていた。今だに強敵である今川義元を降伏させた勢いはあるらしく、どこか家臣たちの表情は自信あり気だった。対して元康の家臣たち……と言っても二人しかいないのだが、片方の男は晴也と同年代であろう青年で、静かに座っていた。対して片方の女は、勝家といい勝負となるであろうスタイルだった。女はそわそわとして落ち着かない様子だった。

 

「姫さま。やはり同盟交渉の場でそのような格好は…」

 

長秀が心配するのも無理は無い。相変わらず信奈の服装は、いつもの『うつけ姿』だ。

ちなみに元康の格好は、目が悪いらしく南蛮渡来の眼鏡を着用。そして自覚しているのかなんなのか、たぬき耳とたぬき尻尾を付けていた。だか、服装はきっちりとした正装であるため、信奈よりは数倍マシである。信奈の姿を見た、元康の家臣の一人である女がムッと頬を膨らませた。まあ、当たり前だ。自分の主が下に見られている、なんて思ったのだろう。

 

織田と松平が戦になれば、おそらく僅差で織田が勝つだろうが、上洛に関係ない戦で兵を無駄にするとなると上洛自体が難しくなるだろう。だから、信奈としてもこの同盟は成功させたかった。

 

だが、それでも元康はその姿を見てブルブルと震えていた。犬千代から聞いた話によると、元康は織田家に囚われていた頃、ほぼ毎日信奈にいじめられていたらしい。かわいそうだなと思ったが、どうやら犬千代曰く、それこそが信奈の愛情表現らしい。過激過ぎて笑えないが……

 

「この度は会見のお誘い、ありがとうございます~」

 

元康は小さな体を折って、深々と信奈に頭を下げた。

 

「なにいってるのよ。尾張も三河も、同盟を結ばないとやっていけないでしょ」

 

その通りである。三河は相変わらずの小国。更に直ぐ東には『甲斐の虎』武田信玄。

戦国最強と歌われる武田騎馬隊を率いる武田信玄は『越後の龍』と言われる宿敵・上杉謙信との勝負に忙しく、そして三河を強敵と考えていないため、今はまだ放っておかれている状態だ。

 

「えへへ~。そうですね~」

 

とぼけているようだが、腹黒そうな笑いには裏があるように考えられる。そういうところは、正に『たぬき』と言えるだろう。

 

広間に静かな足音が鳴った。

 

「お茶をお持ちしましたです~」

 

光秀だった。

 

ういろうと一緒にお茶を持ってきたようだ。光秀は桶狭間では道三と一緒に留守番だったものの、最近は織田家に仕官しようと考えているらしい。周りに気が利くし、剣術も鉄砲も十二分に使いこなせるため、信奈からも一目置かれ始めているようだ。光秀は最初に元康の家臣たちにお茶を出そうとした。信奈は「気が利くわね」と労いの言葉をかけようとした、その時。

 

「いたっ」

 

あり得ないことに光秀が裾につまづいて転けた。しかし、手にはお茶。前には元康の家臣。

これから起こる結末は一つ。晴也は余りにも予想外の出来事に、ぽかんと口を開けた。

 

「あっ」

 

誰が声を漏らしたか分からないが、その言葉と同時にバシャ!という音を立ててお勢いよくお茶が二人にかかってしまった。

 

「あ、あつぃ!?」

「も、申し訳ないですっ!?」

 

自信満々の表情から余裕が消え、光秀の顔が真っ青になった。女の方は飛び跳ねたが、もう片方の男は「あ、いえ、大丈夫ですよ」と苦笑い。

 

「うぅ…生涯の恥じです……」

 

光秀はぺたりと座り込んで土下座を始めた。こんな間違いを光秀がすることは、もう二度とないだろう。

 

(これはフォローしないと……)

 

「申し訳ありません。着替えをお持ちします」

 

晴也も頭を下げ、フォローに入った。

 

「いえ、そちらもワザとではないでしょうし、大丈夫ですよ」

 

そう言うと男は笑った。おそらく元康を一人にさせないため、ここに残りたいのだろう。

 

「心配しなくても大丈夫です~。二人とも、着替えて来てください~」

 

しかし元康は意外なことに、二人に退場するように薦めた。

 

「し、しかしっ!」

 

女は声を荒げた。元康はまだ震えが収まらないようだが、それでもなんとか笑顔を作ると、続いて男のほうを見た。男は少し考えた様子だったが、やがてうなづいた。

 

「……わかりました。それでは、お言葉に甘えて」

「そ、颯馬(そうま)!?」

「数正(かずまさ)。ここは元康さまの言う通りにしよう。すみません、案内して貰えますか?」

 

晴也は深々と頭を下げると、二人と共に広間を出て行った。元康の考えは、五月雨晴也の調査である。実際に『服部半蔵』から、桶狭間の件を聞き、純粋に興味を持った。運良ければ織田家を出奔して、松平家に来てもらいたい。なんて考えているのが、元康らしかった。

 

「あ、え、わ、わたしもです~!」

 

光秀も慌てて晴也たちを追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「本当に、申し訳ありませんでした」」

 

光秀と俺はもう一度、深々と頭を下げた。二人には高そうな着物を用意し、部屋を貸して着替えをしてもらった。

 

「いえ、もう大丈夫ですよー」と男は逆に申し訳なさそうに、女は若干の怒りが篭ったようにため息を吐いた。

 

「わたしは、天城颯馬(あまぎそうま)と申します。こちらの相方は石川数正(いしかわかずまさ)です。以後、お見知りおきを」

 

石川数正……晴也はその名を聞いたことがあった。

酒井忠次と共に徳川家康の片腕として活躍したが、小牧・長久手の戦いの後に徳川家を出奔して豊臣秀吉に臣従した……と歴史ではそうなっているが、現在でもなぜ徳川家から出奔したかわかっておらず、謎多き人物として有名である。

 

しかし、もう一人の天城颯馬と言う名は聞いたことがなかった。目立った才が無い武将だったのか……?一応気になったため、それとなく聞いてみることにした。

 

「お二人は昔から……?」

「はい。わたしたち二人は、元康さまが人質となっていた頃からお仕えしております」

 

と言うことは、おそらく二人とも俺と余り年は離れていなそうだな。

 

「おい、わたしのほうが元康さまと長い付き合いだぞ!?」

「あー、はいはい。確かに、三日程おまえのほうが仕えるの早かったよな」

「そうだ、わたしが元康さまのことを一番にわかっているんだ!」

「……すみません。こいつ元康さま大好きなんで」

 

頭を掻きながら数正を宥める颯馬に、なんだか共感を持てた。しかし、この数正と言う人、どことなく勝家に似ているかもしれない……

 

「別にわたしたちに敬語を使わなくても良いですよ」

 

不意に颯馬はそんなことを言い出した。晴也や光秀、数正までもが驚いていた。

 

「いや、しかし……」

「これからは同盟国の同志となるのです。敬語は止めたほうが連携を取りやすいし、歳もさほど離れていないでしょう」

 

ただ人が良い青年とは違うようだ。大分頭の回転が早いらしい。正に知将、と言った感じだった。

 

「……っと、そろそろ戻りましょう」

 

元康の家臣って、こういう腹黒そうな人が多いのだろうか……少し警戒が必要かもなと晴也は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが戻ると同時に、会見は終了した。どうやら尾張の商人には八丁みそを安値で売るようにと、そして尾張との境にある関所で八丁みそに関銭をかけるのを禁止にしたらしい。

 

……どんだけ尾張人は八丁みそ大好きなんだよ。

 

しかし、これで東は元康が待ち受け、西は信奈が受け持つということで、尾張と三河の同盟締結が成った。そして織田には近江の浅井とも同盟が成り立っている。これは大幅に織田軍が動きやすくなったことを意味するのだ。

 

 

 

同盟会見終了後、元康たちは急いで三河に帰って行った。しっかりと内国をまとめるつもりなのだろう。

 

それから間もなくのことだった。

 

「本格的に美濃攻略を始めるわよ!」

 

信奈がそう宣言した。足軽たちの戦意が上がっている今がチャンスと見たのだろう。確かに斎藤義龍は道三に比べれば容易い倒せるはず……だが、晴也は不吉な予感しかして来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

残念ながら、晴也の想像は当たってしまった。美濃侵攻の際、見事に敵の術中に嵌り身動きが取れなくなり、あえなく撤退。見事に調子に乗った鼻っ柱をへし折られ、戦意もガクンと落ちてしまった。

 

連戦連敗が続く中、決死の覚悟で挑んだ……が。

 

「敵の工作により、この先侵攻不能です!」

 

小姓が信奈にそう告げると、信奈は悔しそうに歯噛みをした。

 

「くっ!ここ以外通れる道は無いわ……!全軍、撤退!」

 

またしても戦闘が無いまま撤退となった。伏兵など忍ばせて置けば、おそらく織田軍はめちゃくちゃとなるだろう。だが、義龍軍の足軽一人も確認出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

織田軍は尾張、清洲城へと帰還した。

 

「悔しい!なんで勝てないのよ!」

 

信奈は悔しそうに地団駄を踏み始めた。

 

「道三……やっぱり、あいつか……?」

「あいつとな?」

「惚けるなよ。竹中半兵衛だ」

「な、なぜ知っておる!?美濃が隠して来た天才軍師の名を!」

「あんたより有名人だもん。当たり前じゃん」

 

わ、わしより……と道三は柄にもなく落ち込んでいた。それを見た光秀にきつく睨まれてしまった。

 

「誰よそいつ。聞いたこと無いわ」

「竹中半兵衛……わしを遥かに上回る天才軍師じゃ」

 

家臣たちに緊張が走った。一代で美濃をまるごと奪ってしまうような狒々ジジイ以上の知力を備えているのだ。そうなれば、美濃を落とすのは困難。

 

「だが、あやつは無駄な血を好まん。信奈ちゃんともわかりあえると思うがのぉ……」

 

確かに、今だに織田軍は戦闘を行っておらず、戦死者はいなかった。幾らでも奇襲出来るタイミングは合ったはずなのに。

 

「……義龍には勿体無いやつね」

 

実際、義龍は半兵衛の力を十二分に理解しているのだろう。だからこそ、自分で扱うのが怖い、手に持つ強火は自らにも燃え移るのだ。ましてや、ろくに顔を見せないなら尚更だ。どうしたものか……と皆固まった。今いるこの中で、一番であろう軍師の道三を超えるのだ。力押しでは、今まで通り軽く受け流されるのがおちだろう。だからと言ってこのまま手をこまねいていても、織田の天下などいつになるのやら。

 

「んじゃ、仲間にしちゃおう」

 

晴也はそんなことを言い出した。

 

「そんなやつが仲間になったら最高だろ。今の織田軍には、間違いなく必要な存在だと思うがなあ」

「なるほど……じゃが、いくらお主でもあやつが『落とせる』かの?」

「?変な言い方するなって。大丈夫だ、任せろ」

 

信奈はすこし考えると、やがて口を開いた。

 

「そうね……じゃあ、半兵衛の調略はあんたに任せるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほ~ら、犬千代~。鮎だぞ鮎~」

 

晴也と犬千代は長屋で井ノ口名物の鮎料理を食べていた。犬千代は、なにも言っていないのについてきた。まあ流石に一人じゃ不安だったので、ありがたい。

 

「……美味しい。もぐ、もぐ」

「しっかり食って、織田家のやつらみたいにデカくならないとな~」

「……犬千代だって、小さくない」

 

そう言うと、犬千代は晴也の頬をぎゅーとつねった。

 

「いだだだだだ。な、なに勘違いしてるんだよ。俺は身長の話をしただけだぞ?」

「なら、いい」

 

犬千代はなにを勘違いしたかわからないが、顔が赤かった。ふぅーとため息を吐いた後、晴也は鮎を口にくわえた。

 

「さて……そろそろ行くか」

「道、わかる?」

「ああ、ここら辺の地形は大体把握した」

 

そう言うと晴也はツンツンと自分の頭を突ついた。事前に十兵衛に聞いた道のりと近くの店、稲葉山城が見える角度、など詳しく教わった。十兵衛に晴也、どちらも頭の回転が早いため、一分経たずに話が終わった。

 

「んじゃ、行こうぜ」

 

 

 

 

 

俺たちは半兵衛の屋敷に足を運んだ。思った通り人気が無く、霧も濃いため視界を良好とは言えない。そしてすっかり晴れていたと言うのに、周りの大きな木々により、太陽光が遮られてしまっていた。

 

「なんか……お化け出そう」

 

犬千代が晴也の袖を掴んだ。意外に怖がりなのかな?と思ったが、相変わらず無表情なのでよくわからなかった。

 

門を開けようと手を伸ばす。だが、逆にあちらから開いた。

 

「「うおっ!?」」

 

晴也が声を出すと同時に、あちらからも驚きの声が聞こえた。

 

「お主ら、何者じゃ!」

 

開かれた門から、身分が高そうな侍が出てきた。流石に警戒されるよな、と思い晴也は懐からとある秘密道具を取り出した。

 

「道三どのからの命で参りました」

 

俺は秘密道具・『道三に書いてもらった書状』を手渡し、頭を下げた。その書状をぺらぺらと見た侍は、いかにも年寄り臭くため息を吐いた。

 

「全く、道三さまにも困ったものだ……入るがいい」

 

男は警戒を解いたようで、すんなりと中に入れてくれた。

 

「あんた、何者だ?」

「わっちの名は安藤伊賀守守就(あんどういがのかみもりなり)。美濃三人衆の筆頭であり、道三さまの右腕だった男よ。今は楽な隠居の身じゃがな」

「なるほど……道三の右腕だった、ってことで義龍に信用されねえんだな」

 

ほぉ…と安藤は感心した表情を浮かべた。

 

「半兵衛は幼き頃から両親を失っておる。わっちは半兵衛の育ての父なのじゃ」

 

なるほど……半兵衛を寝返らせるには、この安藤とか言うおっさんも必要となってきそうだな。しかし、まだ半兵衛と会ったことも無い以上、そんなことを考えていても仕方が無い。

 

「さて、それでは半兵衛の部屋へ案内しよう。命が惜しくば、無礼を働かぬことだ」

 

そう言うと安藤は薄気味悪い笑みを浮かべた。この人も腹に一物持ってそうなおっさんだな……と晴也は思った。一瞬、罠の可能性を疑ったが『虎穴に入らずんば虎子を得ず』だ。罠だとしても、あえて乗ってやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

晴也と犬千代は、奥座敷にある半兵衛の部屋へと案内された。

 

「お初にお目にかかる。俺が竹中半兵衛重虎だ」

 

なんと大胆にも座敷の真ん中に、長身の青年が一人、ごろりと寝そべっていた。

 

「お、おお…」

 

余りにも堂々としているので、こっちが呆気に取られてしまった。しかし、ついに姿を見せた天才軍師・竹中半兵衛。歳は三十歳ぐらいだろう。狐のような細い顔に釣り上がった長い目は、独特の雰囲気を醸し出し、まさに正体不明の陰陽師だ。肌は白く、木綿筒服を羽織っていた。

 

「俺の名は五月雨晴也だ。こっちは犬千代」

「そうか……なるほど……」

 

半兵衛は長い目を更に細くし、まるで品定めをするような目で舐めまわした。

 

「ふむ……よくここまでお越しなされた。みたらしだんごと粗茶をどうぞ」

 

半兵衛の手から、どこからともなく出てきた粗茶とだんごを積み上げていた。

 

「……、」

「ささ、遠慮なさらず」

 

と半兵衛は二人の前に差し出してきた。おいしそう……と犬千代はだみそんごに手を伸ばそうとした。だが、それを晴也は手で制した。

 

「……晴也?」

「……おい、竹中半兵衛。まずはあんたが口にしてみろよ」

「ほう、なぜだ?」

「……この臭いは……みそじゃねえよ。みそはこんな香ばしそうな臭い出さねえ。それになんでこんなにホクホクしてるんだ?……これじゃ、まるで糞だぜ」

 

晴也の指摘に、半兵衛は顔を沈め……そして、

 

「くっくっくっ、あーははははははっ!」

 

人が違ったように笑い始めた。整った顔が崩れ、口が化け物のように大開きになっていた。それを見た晴也は、腰の木刀に手をかけた。

 

「てめえ、簡単に化かせると思うなよ」

「おもしろい……!」

 

半兵衛の妙にとがっている口元からヒゲが生え、尻からは尻尾が。更に大きく開かれた口元からは、牙が見え隠れしていた。美形だった半兵衛の顔は、すっかり狐となってしまった。

 

(くそっ、これじゃあ妖怪じゃねえか。木刀なんて効くのか……?)

 

しかし、晴也の疑問は一瞬で解決した。

 

「……えいっ」

 

ぐさっ!という妙に生々しい音とともに、半兵衛はこーんと鳴いて、倒れてしまった。晴也は急いで半兵衛のもとへ駆け寄ったが、既にピクリとも動かなくなっていた。

 

「お、おい犬千代!殺してどうするんだよ!?」

「相手は妖怪。説得は無理」

「そ、それはそうだけど、このことがバレたら信奈の評判はガタ落ちだ!」

「……しまった」

 

どこをどう見てもこの状況はヤバイ。信奈はうつけどころか、他国の軍師を暗殺した卑怯者と呼ばれてしまう。諸国の大名が信奈を危険視するのは必須。

 

「い、犬千代。蘇らせろ」

 

犬千代は槍でつんつんと突つき始めた。

……。

………。

…………。

 

「返事が無い。ただの屍のよう」

「仕方ねえ。だったら教会で生き返らせてもらおう……じゃなくて!本気でヤバくないか!?」

 

晴也と犬千代はぺたりと畳の上に座り込んだ。これはもうお手上げだ……と晴也が口にしようとしたした時。改めて死体を見ると、

 

「あれ? 死体が……ない?」

 

先ほどの半兵衛の死体は、綺麗さっぱりなくなっていた。晴也が呆気に取られていると、犬千代は全体を見回した。

 

「……そこっ!」

 

犬千代は長い槍を柱に突いた。

 

するとどうだろう、柱の影からくるくると小さな女の子が回ってきた。

 

「……きゃっ……い、い、いぢめないで……ください……」

 

女の子はか細い声を出し、泣き始めた。

 

「え、ちょ、ちょっと君」

 

晴也が声を出した次の瞬間、眉間めがけて短刀が飛んできた。

 

「え、」

 

晴也は木刀を抜刀してギリギリのところで撃ち落とした。まさかこんな小さな女の子が刀を投げつけるだなんて、思いもしなかった。並の者ならなにも出来ずに人生を終えているだろう。

 

「あ、あっぶねぇぇぇぇ!?」

「……あうぅ……や、やっぱりいぢめるんですねえよ……」

「いやいや!いじめないよ、そもそも君は何者!?半兵衛の小姓かなにかかな?」

 

女の子は泣き止まず、まだぐすんぐすんと泣いていた。やがて、小さな口をおそるおそる開いた。

 

「……べえです」

「……え?」

「……竹中…半兵衛です」

 

 

 

 

 

 




さて、オリキャラですね。

石川数正(いしかわかずまさ)
とりあえず、勝家並のスタイルと覚えておいてください。


天城颯馬(あまぎ そうま)
戦極姫ーPSP版の主人公。
とりあえず、真面目な青年。


なんとなく、不意に思ったので出してみました。
あんまり気にしなくても大丈夫です。
ただ原作より、松平軍が強力になったと考えて下されば結構です。

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