さてさて、約三ヶ月ぶりの更新になります……(苦笑)
デート・ア・ライブ編を楽しみにしていた皆様、お待たせして申し訳ありません……。
これからは三作品を満遍なく更新していこうと思っています!!
それでは、久しぶりの本編をどうぞ!!
~ハジマル日常~
「ヨヅル!クッキィというものを作ったぞ!」
腰ほどまであろうかという夜色の髪をなびかせ。
水晶の如き瞳に純粋な光を輝かせながら。
美しい少女が、興奮気味にそう言って、手にしていた容器を夜鶴の目の前に突き出してくる。
夜鶴はそんな少女に微笑みを向けながら口を開く。
「十香……今日も元気だね」
「うむっ!!
私はいつでも元気一杯だ!」
背景に色とりどりの花が咲き乱れるかのような屈託の無い笑みを浮かべながら少女―――――夜刀神十香がそう言う。
その笑みはとても眩しく輝かしい。その笑みは自分に向けられているのかと思うと夜鶴はついつい頬が緩んでしまう。
「そんなことよりも、ヨヅル。
これを見てくれ!」
そこには形が歪だったり、ところどころ焦げていたりはするものの、何処か心の暖かくなるような、そんなクッキーが入っていた。
夜鶴と十香は同じクラスではある。
しかし、調理実習というものは班に分かれて、もしくは男女別れて行うのだ。
つまり、今日は女子のみが調理実習の日だったらしい。
「皆に教えてもらいながら私がこねたのだ!
食べてみてくれ!」
「ふふふっ……。そうなのかい?」
「うむ!難しかったが……一生懸命頑張ったのだ!」
夜鶴と十香は互いに微笑みを向けながら会話をする。
基本的に女子からの手作りクッキーを貰う男子は他の男子にとって嫉妬の的だ。
―――――しかし、夜鶴は扱いが違った。
「あの二人見てると癒されるよなぁ~……」
「クッキーかぁ……俺もあの二人の手作り貰ってみたいわ……」
「それわかる!俺は十香ちゃん派かな~」
「俺は断然夜鶴派だわ」
「私は二人から貰いたいっ!!
それで、『私のを食べてくれ!』『いや、俺のだ!』って言って欲しいっ!!」
「「「「「それだッッ!!!」」」」」
……つまりはもう男性として見られていないのだ。
夜鶴はクラスメイトの会話を巧みに受け流し、十香と会話を続ける。
「これ、本当に貰ってもいいのかい?」
「勿論だ!これは夜鶴のために作ったのだからな!」
どうだ!と言わんばかりに胸を張ってクッキーの入った容器を掲げる十香。
「じゃぁ、有り難く頂戴するよ」
夜鶴はそういうと容器の中からクッキーを1枚手に取ると口に運―――――
「おっと……」
―――――ぼうとしたところで、目の前を銀色の弾丸のようなものが、一直線に通り過ぎていく。
廊下から放たれたであろうそれは、夜鶴が手に取ったクッキーを粉砕し、そのままコンクリートの壁に突き刺さった。
「……OH……
銀色の軌跡の先に目をやると、先程の飛来物がフォークであることがわかる。
夜鶴はコンクリートの壁に突き刺さったフォークを見てそう言葉を漏らしたのだ。
物理法則は一体どうなっているのだろうか……。
「ぬ、誰だ!危ないではないか!」
十香が叫び、廊下に顔を向ける。夜鶴もそれに倣うように、そちらに視線を向けた。
「…………」
そこには、つい今し方何かを投擲したように、右手を真っ直ぐ伸ばした少女が無言で立っていた。
肩口をくすぐるほどの穢れなき白を思い浮かばせるほどの純白の髪に、色素の薄い肌。顔立ちは非常に端正であるものの、そこには喜怒哀楽と言った表情が抜け落ちてしまっており、何処か人形のような印象がある少女だった。
「鳶一さん……」
「ぬ……」
夜鶴は苦笑いを浮かべ、十香は不機嫌そうに眉根を寄せる。
少女―――――鳶一折紙は、そんな二人を見つめながら、ゆっくりと歩み寄ってきた。
そして夜鶴の前まで辿り着くと、左手に持っていた容器の蓋を開け、先程の十香と同じように夜鶴に差し出してくる。
「夜刀神十香のそれを口にする必要はない。食べるならこれを」
そこには、まるで機械で作ったかのような、完璧に規格の統一されたクッキーが綺麗に並んでいた。
「こ、これは凄いね……」
「夜鶴の為に作った。食べて」
鳶一は無表情にそう言うとクッキーの入った容器を更に夜鶴の方へと突き出す。
「じゃ、邪魔をするな!
ヨヅルは私のクッキィを食べるのだ!」
十香はぷんすか!といった調子で声を上げる。
しかし、鳶一は微塵も怯まずそれどころか表情をピクリとも動かさず喉を震わせる。
「邪魔なのはあなた。すぐに立ち去るべき」
「何を言うか!後から来ておいて偉そうに!!」
「順番は関係ない。あなたのクッキーを彼に摂取させる訳にはいかない」
「な、なんだとっ!?」
「あなたは手洗いが不十分だった。加えて調理中、舞い上がった小麦粉に咽せ、くしゃみを3度もしている。これは非常に不衛生」
「な……っ」
鳶一の言葉に虚を突かれたように、十香が目を丸くする。
しかし、十香はそこで終わるつもりはないようで、ぐぬぬ……と拳を握り口を開いた。
「よ、ヨヅルは強いからそれくらい大丈夫なのだ!」
「因果関係が不明瞭。
―――――それに、あなたは材料の分量を間違えていた。レシピ通りの仕上がりになっているとは思えない」
「………っ!?」
鳶一が言うと、十香は眉をひそめ、自分のクッキーと鳶一のクッキーを交互に見た。
「な……っ、何故その場で言わんのだ!」
「指摘する義務はない。
―――――ともあれ私の方が、彼を満足させる可能性が高いことは明白」
「う、うるさいっ!!
貴様のクッキィなぞ、美味いはずがあるかっ!」
十香はそう叫び、目にも止まらぬスピードで、鳶一の容器からクッキーを1枚かすめ取ると、自分の口に放り込んだ。
そしてサクサクと咀嚼し―――――
「ふぁ……っ」
頬を桜色に染め、恍惚とした表情を作った。その表情から見るに、鳶一のクッキーはかなりの美味しさらしい。
しかし、十香はすぐにハッとした様子で首をブンブンと振った。
「ふ、ふん、大したことはないな!
これなら私の方が美味いぞ!」
「そんなことはあり得ない。潔く負けを認めるべき」
「なんだと!?」
「なに」
「ほらほら2人とも、仲良くしないと駄目だよ?」
放っておいたら殴り合いになり兼ねないその空気に夜鶴はいち早く反応すると2人の間に割って入ると、なだめるように距離を取らせた。
「ぬ……ではヨヅルは、どちらのクッキィを食べたいのだ?」
その言葉の後、十香と鳶一が左右から同時に、クッキーの入った容器を差し出してくる。
「さぁヨヅル」
「…………」
十香と鳶一の刺すような眼光。
夜鶴は苦笑いを浮かべながら口を開いた。
「そうだね……俺は―――――」
2人の容器から1枚づつクッキーを取り出すと、まずは十香のクッキーを口にする。
「うん。甘さもちょうど良くてなんだか暖かい味だね。
とっても美味しいよ十香」
「そ、そうか?
そう言って貰えると嬉しいぞ!」
嬉しそうに頬を綻ばせる十香。
それに対してしょんぼりと肩を落とす―――表情は無表情のままだが―――鳶一。夜鶴はもう片方の鳶一のクッキーも口に入れた。
「こっちは甘さ控えめだね。
甘過ぎないっていうのは俺の好みなんだ。
こっちも凄く美味しいよ鳶一さん」
先程までしょんぼりと肩を落としていた鳶一は夜鶴からその言葉を聞くと同時に姿勢をぴんと正す。
「美味しかったのなら……良かった」
やはり無表情ながらも鳶一が嬉しそうな雰囲気を纏っているのが分かった。
「うむ、やはり私のクッキィの方が夜鶴を満足させれたな!」
「私のクッキーは夜鶴の好みを突いていた。ので、彼を満足させられた」
全く同時に、2人はそう言った。
「…………」
「…………」
そして、静かに互の顔を見合わせる。
無言の圧力が無差別に拡散した。
「……やっぱりこうなるのか……」
この空気は、今日が初めてではない。
夜鶴は既に諦めにも似た気分で、再び2人の間に身を躍らせた。
そしてその瞬間、予想通り双方から凄まじいスピードでお互いの急所を狙った拳が放たれた。
鳶一による頭部への拳を右手で受け止め、十香による腹部への拳を左手で包み込み勢いを殺す。
「……2人とも」
夜鶴の声にびくりと身体を震わせる2人。
そんな2人に夜鶴は声を低くして、
「―――――取り敢えず正座 」
その言葉に2人は逆らう事無く即座に応じた。
そこから説教が始まったのは言うまでもないだろう。
本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪
さてさて、いきなり雑談ですが……。
最近繰繰れコックリさんというアニメに嵌った夜叉猫です(笑)
更にソードアートオンライン、弱虫ペダルにも惹かれ昼夜逆転してしまいそうです(笑)
皆さんはなんのアニメが好きですか??
友人ともたまに話すアニメの話が楽しみになっています(笑)
さてさて、それではまた次回お会いしましょう♪