魔法科高校の転生者   作:南津

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オリジナルの方はなんだかスランプ。

なんか人生に疲れたので、二次創作にかまける。


1.3 カフェテリアにて

「ここだよー」

 そう言って彩花が振り向いた。彼女の後ろには営業中のカフェテリア。外観からフレンチのようだが、てっきりケーキ屋に行くと思っていた伊月の予想は外れていた。

「ケーキ屋じゃなかったのか?」

「ケーキ屋だと伊月ちゃんがお昼食べられないでしょ?」

「そうだな」

「ここはデザートが美味しいカフェテリアで人気らしいんだ。昼食も取れるしちょうどいいかなって思ったの」

 そう言いながら伊月の腕を引いてカフェテリアに入っていく。店内には真新しい第一高校の制服を着た人間も居て、彩花の言っていた話を証明していた。女生徒が多いところを見ると彩花のようにデザート目的の生徒も大勢いるのだろう。

 店内に入った瞬間一度視線が集まるが、直ぐに戻る。いくつかの視線は残っているが二人は慣れたもので気にしない。

 身長一八〇を超える美形と言える男性と、落ち着いた雰囲気を持つ美人の女性。街を歩けば自然と視線にさらされる。ちなみに、伊月は彩花に視線が集まっていると思っており、彩花は伊月に視線が集まっていると思っていたりする。

「席も空いてるし、料理が先でいいよね」

「そうだな。昼の時間とも少しずらしたし、これ以上混むこともないだろう」

 二人でカウンターに向かい料理を選ぶ。彩花は、デザートは後からもう一度選ぶということで、とりあえず昼食を摂ることになった。

 一旦精算を終えて窓際の空いている四人席へ向かう。四角いテーブルを囲うような配置の席に隣り合って座り、早速食事を始める。彩花がデザートに到達するまでかなりの時間を有するので、伊月の食事のスピードは遅い。

「料理も美味しいね。滅多にないだろうけど学校帰りに食事を摂るのには良さそうだね。デザートが美味しかったらそっちはよく食べるだろうけど」

「そうだな。位置も悪くないし、足を運びやすい」

 それから伊月が食べ終わる頃にようやく彩花も食事を終えた。これからデザートに取り掛かるわけだが、ここからがさらに長い。

「まだ時間かかるから自由にしてていいよ。ついでに飲み物とってきてあげる」

「頼む」

 デザートを取りに行った彩花を横目に、メガネ型(サングラスタイプ)の情報端末を取り出す。HEI製の透過型スクリーンで、薄い色をつけて外からの情報の視認を防ぎながら、使用者の視界を塞がないように作られている。本来は片眼タイプのものだが、伊月が改造して両目にディスプレイを取り付けている。

 視線ポインタや脳波アシストも搭載されているが、外付けで外部入力機器も使用でき、伊月は想子操作型の入力機器を持ち歩いている。端末の特定の配置に微量のサイオンを流すことで、感応石がサイオンを電気信号に変換し入力機器として働く。

 HEIからは指でボタン操作ができない魔法師用のシステムとして売り出したが、伊月は之をキーボードとして扱えるように改造し、使用している。手を専有しないので、慣れれば複数の作業を同時に行うのに適している。自宅では数台の情報機器を同時操作するという行為を日常的に行っているので慣れたものだ。

「おまたせ」

「おかえり。ありがとう」

 彩花から飲み物を受け取り、早速口に含む。彩花はデザートを大量に仕入れていた。男からすれば胸焼けがしそうな光景だったが、伊月は慣れたもので特に気にしてはいない。

 周囲の女生徒などは、彩花のトレーに乗ったデザートと彩花を見て、複雑な表情を浮かべている者もいた。

「今は何してるの?」

「情報収集と株取引だな。魔法技術関連の情報を色々と見ているんだが、特に目立ったものはないな。外国の論文なんかも全て読めればいいんだが、ネットに転がっているのは断片の情報だけだな」

「そっか。ん、これは美味しいよ。食べる?」

「ん」

「あーん」

 伊月が頷くと、彩花はフォークでデザートを切ると、そのまま伊月へと差し伸べた。

 伊月は口を開けていつものように差し出された物を食べる。周囲から見れば恥ずかしいが、伊月も慣れたもので、自然に感想をこぼす。

「ん。丁度いい甘さだな」

「だよね。男の人でも大丈夫かなって」

 伊月も頭を使うため、甘いものは比較的よく取るようにしている。唯、甘すぎるものやしつこい味がするものは苦手だった。

 彼が食べる甘いものは殆どが彩花に勧められたものか、妹に勧められたものだ。特に彩花は出かけるときはいつもと言っていいほどお菓子をチェックする。その中で伊月が食べられそうなもの、好きそうなものを発掘するのが彼女のもうひとつの趣味のようなものだった。

「ん?」

「? どうしたの?」

「いや、なんでもない」

 不意に今までの好奇な視線とは違う、観察するような視線を感じた。視線の先には原作組の司波兄妹と二人の女生徒が座っていた。

 目を向けると既に視線は無かったが、全方位を視る解析眼の影響で自身に向けられる視線やサイオンに敏感な伊月が見逃すことは無い。害意などはなかったので警戒はしないが、原作組に観察されるようなことはないつもりの伊月だった。

 伊月の解析眼は眼球で見るのではなく、第三の目が感覚的に別にあり、無意識下で全方位を捉えている感覚だった。意識的に集中して視ることもできる。

 今回は無意識下の警戒に引っかかった形だった。

「ん、司波さんだね。周りは二科生か。もうお友達ができたのかな?」

「元からの知り合いとは考えないのか?」

「そうだね。そうかも」

「まぁ、半々というところだな」

 原作の知識を少しだが持つ伊月は、彼女らが誰か知っている。元から記憶力がいい伊月は、意識すれば原作知識を記憶のそこから引き出せる。逆に言うと、意識しなければ印象に残っている部分しか思い出すこともない。

 伊月は彼女らが司波達也・深雪の兄妹と百家の千葉(ちば)エリカ、柴田(しばた)美月(みづき)であることを知っている。なので、半々とは司波兄弟が元からの知り合い、ほか二人が新しい知人という意味だ。

 彩花は原作メンバーを知らないので、元からの知り合いか新しいお友達、どちらかの可能性が半々という意味合いで納得した。

「彩花も知り合いが出来ただろ」

「雫さんとほのかさんね。まだ同じ組か分からないけど、同じ組だといいな」

「そうだな」

 ここも伊月は既に知っている。知識通りなら司波妹と今名前の上がった二人は同じクラスになるはずだ。少なくとも第一高校入学者が二人、多ければ四人入れ替わっているわけだが、人数自体が変わったわけではないのでおそらく原作通りになると思っている。

 伊月も、おそらくもう一人の女性転生者も才能という面では司波妹に劣ってはいない。むしろ、膨大なサイオンを十全に扱う魔法力、今の基準では『処理速度』『演算規模』『干渉強度』だが、並列演算など他に魔法力として考えられる物の殆どを才能に上乗せされている。さらに、無意識内の演算領域も性能が拡張され、才能だけでも超一流なのだ。

 男の転生者は知らないが、少なくとも女性の方が本気になれば実技だけでも容易に主席になれるだろう。二歳の頃から意識して魔法式を直接組んだり、効率の良い魔法の発動方法を研究してきた伊月が体験してきたので間違いない。

 二科から最大四名の入学漏れが発生しているが、原作組が外れることはないだろうし、入試の成績で組みを分けている訳でもなさそうだ。

「ぅまし~」

 彩花はようやく折り返し地点を迎えたようだった。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇

 

 二人の姿が店内から無くなった時、ひとりの少女が小さく息をついた。

「は~。気づかれたよね……」

「どうしたの? エリカちゃん」

 少女の隣に座る美月が、そんなエリカの様子を伺う。

「いや、あそこに座ってた一科生のカップルいたでしょ?」

「あ、うん。あの女の人すごかったね。デザートあんなに食べて太らないのかな?」

 美月は女生徒、彩花のデザートの量に驚いていた。普段からあれだけの量を食べていたら間違いなく自分なら太ると確信していた。

「そうよ! あんなに……って、それもだけど、途中からサングラスかけていた男の方」

 エリカも気になっていたようで、理不尽を感じていたが、今重要なのはそこではない。

「背、高かったよね。一八〇以上はあるんじゃないかな。その人がどうしたの?」

「なんか甘ったるい雰囲気だったから、ちょっと観察してみようと思ったんだけど、そういう視線を向けた途端にこっちを見てね。咄嗟に目線を外したんだけど、多分気づかれたかなって」

「偶然じゃないの?」

 美月は分からないようだった。美月自身一般人に近い感覚の魔法師なので、百家で、それも剣術に優れた千葉の人間であるエリカの感覚とは違っている。

「多分気づかれただろうな。ちょうどそのあと男子生徒の視線に気づいた女生徒の方も、こちらを見て会話していたし」

 二人の会話に、昼からこちら聞き専門に回っていた達也が口をはさんだ。

「お兄様も観察されていたのですか?」

「いや、店に入ってきたときにちらっと見ただけだが、体の線もブレていなかったし、何か武道でもやっているんじゃないかな」

 達也は入口が視界に入るよう座席に座っていた。店の出入りに関しては無意識に確認をしている。

「やっぱり?」

「ああ。それにあのメガネはサングラスじゃなくて情報端末だな。確かHEI社製の透過型スクリーンタイプの物だろう。視線ポインタや脳波アシスト、別途に入力機器を用意することで用途が広がるし、透過型だから視界を塞がない。前からは表示された情報も分からないから情報を晒すこともない」

「へぇ。情報端末だったんだ。でも特に操作してなかったよね?」

「脳波アシストや視線ポインタも搭載されているし、HEIからは想子操作型の入力機器も発売されているから、もしかしたらそれを使っていたのかもね」

 達也は自身の推測を語った。魔法関連の技術については一応一通りの知識を集めてはいる。主に技術関連の論文などが多いのだが、情報は常に仕入れるようにしていた。

「え、あのCADにも一部採用されているあれ? 今のところHEIしか採用してないみたいだけど」

「操作が難しいからね。最低限、細かいサイオン操作が必要だし、普通は指で操作したほうが早いからな。慣れると手が空いて便利みたいだけど。HEIでもごく一部にしか搭載されていないし、玄人向けのシステムだな」

「確か指で操作できない魔法師のための入力機器、って広告していた気がします」

 美月は過去を思い出すようにつぶやいた。昔どこかで宣伝を見たことがあったのだろう。

「そういう面もあるだろうな。CADのように少ないパネルなら出来る人も結構いるだろうし」

「起動式のサイオンなんかで干渉したりしないの?」

 起動式は電気信号が感応石でサイオンに変換されて無意識領域に取り込まれる。起動式が展開される際のサイオン情報体の干渉を心配していた。

「対策はされているみたいだよ。起動式展開時の誤動作は一%未満。ただ、慣れないと想子操作時に誤操作があるけど、扱いが上達すれば誤操作もなくなるし、補助として他の型のスイッチも搭載されているから、そちらでも操作できるようになっている」

「HEIって玄人向けの汎用CADが多いよね。想子操作型スイッチ然り、並列起動式処理然り」

「一部だけどね。他は普通のCADも作っているし、全体的に衝撃にも強い仕様になっている。クロノスシリーズなんかは対衝撃にはケタ違いの対策をとっているみたいだし」

 男子生徒の話題はいつの間にかCADについての話題に刷り変わり、更にほかの話題へと移り、四人が帰宅する夕方近くの時間になると、一科生の伊月たちの話題は完全に記憶の隅に追いやられていた。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇




端末の技術とか勝手な妄想&捏造です。

最後の会話部分は載せない方が良かったかな?


13/2/3 ルビふり修正

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