炎の使い魔   作:ポポンタン

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2話同時投稿だったのですが
ちょっと感想にリクエストのような意見を頂きましたので、ちょっと盛り込んでみましたw

……ちょっと調子こきすぎたかな;


第5話

ヴェストリの広場

 

決闘の噂を聞きつけ既に大勢のギャラリーが集まっている。

ギーシュの元に赤いバンダナを風になびかせ、エルクが到着する。ルイズやシエスタが心配そうに見つめている。そんなルイズに声をかける者がいた。

 

「ルイズ、そんなに心配なら止めてあげたら?」

 

「余計なお世話よキュルケ、これはあいつの力を見る機会なの……」

 

確かにあの使い魔の男には不思議な点が見受けられた。だからといってメイジに勝てるものであろうか。

 

「自分の使い魔に期待したいという気持ちはわかるけどね~。ねぇタバサ?」

 

タバサと呼ばれたメガネをかけた青髪のルイズよりも小柄な少女は本を読みつつも決闘の様子を伺っていた。

自分の使い魔がルイズの使い魔に興味を示していた。

彼女の使い魔はシルフィールドと名付けられており、隠しているが風韻竜の雌である。その竜がしきりに気になると話しかけてくる。

彼女が言うにはあの男からは本来人間からは感じられないはずの精霊の力が感じられるというのである。

 

『キュイ!あのオス、人間なのに精霊様の力を感じるのね。本来、我の強すぎる人間は精霊様と契約はできないはずなのね。でもあのオスは直接体に精霊様の力が宿ってる感じがするのね』

 

タバサはそのことを聞くと決闘を見る価値があると判断した。

精霊の力、それはハルケギニアでは先住魔法と呼ばれ最も恐れられている力である。

そろそろ決闘が始まるようだ。

 

「逃げずに来たようだね。その覚悟だけは褒めてやろう」

 

さっと2度薔薇の花を振るとギーシュのそばから人と同じ大きさの青銅のゴーレム、エルクのそばには青銅の剣が現れた。

(あれが奴の魔法か……大したものではなさそうだが油断は禁物だな)

 

「僕はメイジだ。当然魔法で戦う!君にはその剣を使わせてやろう。平民がせめてメイジに一矢報いようと作られたものだ」

 

エルクは剣を握ると不思議な感覚を覚えた。

(武器の情報が頭に入ってくる……それに体が…熱い!)

 

「どうした? 今更怖気づいたのかね」

 

ギーシュがエルクの様子を見て笑う。だが、エルクは憮然として言った。

 

「いや何、大した出来の剣じゃねぇなって。術者の程度が知れるぜ」

 

「…っ! その減らず口を黙らせてやる。行けっ、ワルキューレッ!」

 

ギーシュの命にワルキューレがエルクめがけて突進した。その場にいた誰もがエルクが吹っ飛ばされるのを予想したが

 

「なろぉっ!!」

 

気合の入った掛け声とともに迫り来るワルキューレをエルクは一刀両断にした。

 

「触ると火傷するぜ」

 

「な、なに!? す、少しはやるようだな。ならこちらも本気で行くぞ!」

 

ギーシュは二体のワルキューレを錬金し、それぞれに槍と斧を持たせた。

 

「一体だけだと思ったかね。やれ、ワルキューレ!槍と斧の連携だ!」

 

武器を手にしたワルキューレが、凄まじい勢いをつけて突進する。

だが、いつもより調子がいいエルクにはかすりもせず、槍のワルキューレの突進を躱しすれ違いざまに一撃。それだけで無残に砕け散った。そして回り込もうとしていた斧のワルキューレの距離を詰め連続の袈裟斬り……

 

ギィンッ

 

ワルキューレに止めを刺せたが同時に、青銅の剣も折れてしまった。瞬間、体に感じた熱い力が抜けていく感じがした。

 

「はっはは、剣が折れてはもうお終いだな! 覚悟しろ平民!」

 

ギーシュは残る力を振り絞って新たに四体の武装ワルキューレを錬金しエルク包囲した。

 

「テメェの作った剣だろうが! この鈍野郎!」

 

四方から迫るワルキューレに対し、エルクは前方のワルキューレを飛び越え包囲を脱出した。

 

「っく、往生際が悪いな。他に何か手があるというのかね? あるなら見せてみろ!」

 

「ああ、お前にはもったいないが面倒だから、これで終わらせてやる」

 

エルクは精神を集中させた。

 

 

「炎の嵐よ、全てを飲み込め!」

 

ファイヤーストーム

 

その瞬間、凄まじい炎がワルキューレを飲み込んだ。芸術的だったその姿は見る影もなくアメのように熔けてしまった。

 

「ぎゃああああっ!?」

 

ギーシュもその炎に巻き込まれ薔薇の花の杖は燃え尽き、両腕に大火傷を負った。

辺りも騒然となった。

 

「な、なんだあれは!?」

 

「炎の……先住魔法?」

 

「ギーシュがやられた!」

 

生徒たちが慌てふためき、キュルケも呆然とした表情でルイズに尋ねた。

 

「ちょっとルイズ、なんなのよ、あの炎?どう見てもスクウェア以上じゃない。あの使い魔……エルクの魔法なの?一体何者なのよ、エルフではなさそうだけど」

 

「そんなの……私が聞きたいわよ」

 

ルイズはその炎を恍惚と眺めていた。自分の中で様々な気持ちが渦巻いていた。

(私のが呼び出した平民の使い魔、生意気なのか優しいのかわからなくて、何か不思議な力を感じてはいたけど……こんな先住魔法!)

 

その横でタバサも目が釘づけになっていた。

 

「あれが先住魔法……」

 

『やっぱり、おかしいのね! キュイッ!あれだけの強力な精霊魔法を使うにはその土地の精霊と契約を交わさなければ使えないはずなのね。でもここいらの精霊様とは無関係みたいなのね』

 

どういうことなのだろうか。ルイズの使い魔としての力なのか。タバサがそう思案してる最中にもエルクはのたうち回るギーシュに近づいた。

 

「どうした? もう終わりか?」

 

「あぐぐ、あ、み、見ればわかるだろう。……ぼ、僕の負けだ。き、君は一体何者なんだ」

 

「相手にならねぇな」

 

エルクはやり過ぎたと後悔した。どうやらこの力は思った以上に周囲を恐れさせてしまったようだ。心配そうにしていたシエスタさえも自分を恐ろしいものを見るような目で見ている。その中でただ一人誰かが近づいてきた。

 

「え、えと……え、エルク?」

 

「ルイズか、一応勝ったみたいだぜ」

 

「そうじゃなくて、あ、いやそうだけど……エルク、あんたのことを教えて。お願い」

 

「……そうだな、もうここまで来たらしょうがないか。とりあえず場所を移そう」

 

そして勝者に賞賛の言葉もなく、決闘騒ぎは新たな問題を抱えたまま幕を閉じた。

 

 

 

場所は変わって学園長室

 

「うむむ、なんと凄まじい炎じゃ…」

 

「オールド・オスマンあれはやはり先住魔法なのでしょうか?」

 

戦いが始まりエルクがワルキューレを圧倒していた時はやはりガンダールヴだと興奮していたコルベールだったが、エルクの炎を見たときに新たな脅威に支配されていた。

 

「威力はスクウェアクラス以上、しかしメイジがあれに近い威力を放つには長い詠唱を重ね炎を練りこむ必要があります。その威力を瞬時に放つとは……」

 

「コルベール君。もはや言うまでもないと思うが彼のことはルーンを含め、王宮に報告してはならぬ。学院の者にも騒がぬよう配慮するのじゃ」

 

「はい、あれだけの力に先住魔法とは、これは教会も介入しかねません。可能な限り内密にするべきです。幸いなことに見たところ、あの使い魔の青年は話を聞く余地はありそうです。あとでミス・ヴァリエールともに話を聞いてみましょう」

 

オールド・オスマンはその言葉に頷くと考え込んだ。

 

(ガンダールヴのルーンに先住魔法、これは何かの予兆か?最近の新種の魔獣に怪人騒ぎもこのことに関連しておるのか……? まったく頭が痛いの)




素人なので行き当たりばったり感があってすいません。

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