炎の使い魔   作:ポポンタン

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え~と、そのリーザを出そうとしたら自分でもいつの間にか思わぬ展開になってしまいました(汗
その、なんていうかすいません。


第14話

トリステイン城下街 チェルノボーグ監獄

 

ルイズ達によって捕らえられたフーケは、魔法学院から魔法衛士隊に引き渡されるなりここに入れられた。

フーケは自嘲するように笑った。

「しかし、私も焼きが回ったもんだねぇ」

 

失敗するような仕事ではないと踏んでいた。だが今回は予定より下調べに時間が掛かり仕事を焦ってしまった。始めはは慎重だった。随分前に魔法学院に入り込んで念入りに下調べをした上で取り組んだ。 警備の穴、教鞭をとる教師たちの質、経過がなまじ順調だったため油断もあったかもしれない。だが、それでも盗みには失敗しても捕まるようなヘマはしないと思っていた。失敗の要因は、なんと言ってもあの炎の先住魔法を使う謎の男の存在だろう。

 

「あの男とあのガーゴイル、何か関係があったみたいだけど……今となってはねぇ」

 

フーケはそう自嘲するとこれからの処遇を考えた。上から下まであらゆる貴族に盗みを働いてきたのだから、どう考えても極刑は免れないだろう。

 

(私もここで終わりか……)

 

ゴンッ!!

 

自分の死を連想し、壁に頭を打ち付けた。フーケの頭に残された大切な家族の笑顔が浮かぶ。

 

(何を考えているんだ、私は! ここで死んだら誰があの子達を守るってんだい! 何とか、何とか生き延びなければ……!?)

 

「ククク、無様だな。土くれよ」

「!?」

 

そうフーケが苦悩しているといつの間にか黒いマントの男が鉄格子越しからこちらを見ていた。

いつの間に現れたのだろうか。フーケはなんとか平静を保ち、黒マントの男に声をかけた。目的は分からないがここから出る糸口になるかもしれない。

 

「おやおや、こんな夜更けにお客さんなんて珍しいね」

黒いマントの人物が、鉄格子の向こうに立ったまま、今度はフーケを値踏みするかのように黙り込んでいる。

「あいにく、ここに客人をお迎えするようなものはありませんが。」

フーケは身構える。おそらく、貴重な品々を盗まれて恨み骨髄の貴族が送りつけた刺客か何かだろう。だが杖のない今の状況では反撃のしようがない。

「茶飲み話をしにきた、というわけでもないのでしょう? 要件があるなら伺うけど?」

鉄格子越しに魔法を使われたら手のうちようがない。

何とか油断させて、中に引き込もうとフーケは考えた。

マントの男が口を開く。若く、力強い声だった。

 

「土くれ…だな?話をしにきた」

「話?」

男は両手を広げて、敵意のないことを示した。

「…何なら、弁護でもしてやろうか?マチルダ・オブ・サウスゴータ」

フーケの顔色が変わる。それはかつて捨てた、いや、捨てさせられた貴族の名だった。

その名を知る者は、もうこの世にいないはずなのだが。

「あんた、何者?」

男はその問いには答えず、語り始める。

「我々と組み、無能なアルビオン王家に鉄槌を下してみないか? マチルダ」

「……どうしてそんな話を? 目的は?」

「革命さ。無能な王家は潰れ、我々有能な貴族が政治を行うのだ。」

「でも、あんたはトリステインの貴族じゃないの。アルビオンと何の関係があるの?」

「我々は国境などに縛られない、ハルケギニア全ての将来を憂う貴族の連盟さ。」

 

男は間を置き、自らの本気を証明するかのように重々しく呟いた。

「ハルケギニアを統一し、『聖地』をエルフどもの手から取り返す」

 

フーケは手を振った。なんという夢想家だ。

 

「本気で実現できるとでも思っているのかい? そんな夢物語」

「なんとしても実現させるさ。そのために我々は危険を承知で異端の力を引き込んだのだ……」

 

黒マントの男が忌々しげに語った。

異端の力? いよいよ胡散臭くなってきた。本当なら断りたいところだがここで死ぬわけにも行かない。いざとなったらさっさと抜け出せばいい。

 

「まあいいわ、協力させてもらおうじゃないか。その馬鹿げた妄想に」

「くくっ、良い返事だな。念の為に行っておくが裏切ろうなどと考えないことだ。妹と子供たちが不幸な目に合わせたくなければな」

 

その言葉にフーケは強ばった。

 

「……どういうことだい!」

「なに、ウエストウッドの森のある家から子供たちを我々が保護してな、山賊共がうろつく森より安全なところに移してあげたのだよ。安心するといい、今はここよりも丈夫な部屋でボディーガードが常に見張っているからな。今も君の帰りを待っているだろう」

「!!?」

(コイツ等、どこからそのことを!? くそっ、畜生!)

「もし君がいなくなったら子供たちは死より辛い運命をたどることになる。肝に銘じておけ」

 

フーケは怒りを飲み込み尋ねた。

 

「……あんたらの組織の名前は?」

「レコン・キスタ。それが我々の名前だ」

 

 

 

 

アルビオン大陸 とある施設

 

ここではある組織のために極秘の研究が行われていた。その中のとある一室、少女と不安そうに怯える子供たちがその少女にすがっていた。どうやら監禁されているようだ。

少女の名はティファニア……複雑な生い立ちを持ち孤児達と共に森の奥で隠れて暮らしていたハーフエルフの少女。

彼女たちは長らく留守にしている姉を待っていたが、ある日突如と現れた黒服の男たちに囚われた。ティファニアは唯一使える魔法で追い返そうとしたが、相手は山賊と違いあまりに強力で為すすべもなく囚われてしまった。

連れてこられた施設では今度は白い服を着た男たちが自分たちを色々調べ上げた。その目は無機質で人間味をまるで感じられなかった。

 

「テファお姉ちゃん……」

「大丈夫……姉さんの代わりに私が絶対守るから……」

(でも、でも私の力じゃ何もできない……姉さんが助けてきてくれるのを待つ?)

 

テファは首を振った。代わりに守ると宣言したそばから何を言っているのか。このままいればその姉も危険な目にあうのかもしれない。自分達をさらった組織がいつまでも何もしないという保証はない。今、自分が何とかしなければ……

そしてティファニアは思い出した。かつて自分の母が教えてくれた使い魔召喚の儀式を。ティファニアは記憶を探り自分を支えてくれる使い魔を今召喚することを決意した。

使い魔一匹を喚び出したところで状況が好転するとは限らない。だが彼女は拠り所となる存在が欲しかった。

そして辛うじて隠し通せた杖を振り、子供たちの期待の視線の中、使い魔召喚の呪文を唱える。

 

「この世の何処かに居る私の使い魔さん。お願いしますどうか私の声に応えて下さい!」

 

そして青白く光った召喚ゲートが開かれる。

 

「何をしている!!」

 

異変に気がついた黒服の見張りが扉を解放し部屋に入ってくる。だが次の瞬間ゲートから何かがくぐってきた。

まず現れたのは雪のように白い体に青いたてがみを生やした大きな犬のような生き物だった。

(ああ、来てくれた! 私の使い魔さん!)

 

「な、なんだこいつは!?」

「『キラードッグ』!? 何故こんなところに!?」

 

見張りの男達も驚いていた。珍しい生き物なのだろうか。ティファニアがそのキラードッグに近づこうとすると未だ消えていなかったゲートから女性の声が聞こえてきた。

 

「待って、パンディット! どこにいるの?」

 

再びゲートを見ると今度は長い茶髪の女性が出てきた。

歳はティファニアより少し上だろうか、濃い茶色の瞳、温かみのある目鼻立ち、白い肌の美しい女性だった。

 

「あら? ここはどこかしら?」

 

女性は周囲を見渡してつぶやいたが誰も答えなかった。この状況に部屋にいる誰もが戸惑っていた。

 

(え、え? この人はだれ? ゲートから出てきたということは使い魔さん? でも私の使い魔さんはこの大きな犬じゃないの?)

 

ティファニアが混乱していると見張りが集まってきた。

 

「何があった!」

「わ、わからん! 突然サンプルが何か魔法を使って……」

(サンプル!?)

 

茶髪の女性はその言葉に反応し、周囲の人間を見渡した。

暗い部屋の中で怯えている少女と縋る子供たち。そして殺気立った黒服の男たち。彼女はその黒服たちに見覚えがあった。かつて自分の人生を狂わせ大切な人々を苦しめてきた者たちに。

 

「まさか、あなた達は……」

「た、助けてください!!」

 

一人の子供が搾り出すようにそう叫んだ。その叫びに女性は状況を察した。やはり彼らは……

 

「パンディット!」

 

茶髪の女性がそう呼ぶと召喚された大きな犬は、彼女の命令を瞬時に察し、黒服の男たちに襲いかかった。

 

「な、き、貴様ら!? ぐわっ!?」

 

パンディットと呼ばれた犬は瞬く間に黒服の男たちを引き裂いた。

 

「く、くそ! 応戦しろ!」

「させないわ!」

 

黒服の男の一人が銃で反撃しようとしたが女性は持っていた鞭で銃を手から弾き飛ばし、パンディットが止めを刺す。

 

「元の世界へお帰り…」

「す、すごい……」

「さあ、逃げるわよ!」

 

女性が先導し、ティファニア達はその後を追った。

 

 

 

 

「す、すいません……いきなり喚び出して見ず知らずの方に助けてもらって……あの実は…」

「待って、詳しいことは後で聞くわ。とにかくここから逃げましょう」

「あ、ありがとうございます。その、私はティファニアと申します。テファと呼んでください。あなたは?」

「テファね。私はリーザ。さあ、追っ手が来る前にとにかく急ぎましょう」

 

リーザと名乗った女性は笑顔で言った。その笑顔からは見るものを安心させるものがあった。いつの間にか子供たちも元気を取り戻している。

こうして、リーザとパンディット、ティファニアと子供たちの脱出劇が始まった。




なんだろこの展開。
収集付くのか?
無理して出すべきではなかったでしょうか(汗

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