そんな結末認めない。   作:にいるあらと

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一話で収まるかと思ったのですが、少々長くなりそうだったので二つに分けました。


「持たざる者の苦肉の策だ」

「すまん、待たせたか?」

 

『自分から教えて欲しいと言い出しておいて一番遅くに現れるとは、誠意を感じませんね』

 

「大丈夫ですよ、兄さん」

 

「レイジングハート言いすぎだよ? 魔法の復習やイメージトレーニングしてたから退屈はしてないの」

 

 聖祥小学校からほど近い場所にある公園。

 

海鳴市には莫大な敷地を有する自然公園があるので、ここのような一般的な大きさ程度の公園は人気(ひとけ)もないし人気(にんき)もない。

 

 三人には学校に行く前に念話で、放課後に教練をしてもらえるよう頼んでいたのだ。

 

俺の主力である近接戦を伸ばすのも重要だが、その根本は魔法なのだからこちらも勉強しなくてはならない。

 

 土日に近接格闘の稽古を鮫島さんにみっちりとやってもらったおかげで身体は疲労困憊だったが、学校でなるべく動かないようにして回復に専念した甲斐もあり、調子はだいぶ戻っている。

 

日をあけてゆっくりしたいところではあるが状況は待ってくれないし、ジュエルシードを集める勢力の中で一番弱いのは俺だ。

 

怠惰に過ごしていてはいつまでたっても彼女らには追いつけない、少しくらいの無茶は許容範囲内だ。

 

「はいはい、今日はどうぞよろしくお願いしますー。それでだ、人の姿は見えないとは言え、どこに目があるかわからない。だからユーノ、まず結界張ってくれないか?」

 

「了解です」

 

『私の扱いがぞんざいです、抗議します』

 

 なのはの肩に乗るユーノが、短い手を精一杯に天へと伸ばして結界を発動する。

 

薄緑色の魔力光が俺たちを包み、次第に広がり公園全体へ覆った。

 

「これで気兼ねせず普通に喋れるな。それじゃあご指導よろしく」

 

「教えるのはレイジングハートの方がわかりやすいと思います。知識量には自信があるんですが」

 

 ユーノは苦笑しながらレイジングハートへ目を向ける。

 

結構教えるのも上手いと思うんだけどな、どちらも理路整然と順序良く教えてくれるのは同じだがユーノは優しく、レイハは厳しくと明確に分かれているので俺としてはユーノに教えてもらいたい。

 

「レイジングハートすごいんだよっ、今日も空戦の理論とか教えてもらったの!」

 

「今日って……授業中じゃないだろうな」

 

 なのはは、あっ……まずい、という顔をして俺からすっと目を逸らした。

 

こいつ……授業中にやってたのか、また勉強についていけなくなったらどうする気だ。

 

理数には強いが文系が壊滅的なのだ、前にもそれで非常に辛い思いをしたくせに学習しないのか、二つの意味で。

 

「授業ちゃんと受けてなかったらまた苦労するだろうが。テストで泣きを見るぞ」

 

 なのはへ近づいて跡が残らない程度の力でほっぺたを横に引っ張る。

 

おぉ……すべすべでなおかつとても柔らかい、ずっといじっていたくなる感触だ。

 

「にゃあっ! ら、らい丈夫らよっ、ひゃんとノートは取っへるひ。ほれに、テふト前ひまた徹ひゃんい教へてもらうからっ」

 

「俺から教えてもらうことを前提に行動するな。はぁ、やってしまったことはもう仕方ない。また今度勉強会に強制連行だ」

 

 触ってたらやめられそうにないので雑念を払うように、なのはの頬から手を離して解放する。

 

病みつきになりそうな触り心地だった、手があのやわっこい感触を求めて震えている。

 

「あぅ。勉強会かぁ……やだなぁ、にゃはは」

 

 なのはは俺につねられた頬をおさえながら、にやにやと笑みをこぼしている。

 

……どうしよう、これが原因でMの道に走ったりしないかな……いやないか。

 

どっちかっていうとS気味だし。

 

『いちゃついてる所申し訳ありませんが、話を進めてもよろしいでしょうか。もう際ずっといちゃついていても構いませんが』

 

「れ、レイジングハートっ! わたしは別に、いちゃついて……そういうわけじゃ……」

 

「すまんなレイハ。始めてくれ」

 

 なのははごにょごにょと口ごもっていたが、意に介さずレイハは一つ咳払いして指導を開始した。

 

 咳払いする必要あんのか? とも思ったが口に出すとまた話が逸れるので、ぐっと飲み込んだ。

 

『分かりやすくするためにまずは一般的な分類にはめましょう。マスターは砲撃魔導師と呼ばれるものにあたります』

 

「砲撃魔導師は広い範囲を攻撃・援護するのが役割だね。飛行魔法を使って空中から地上の敵を制圧したり遠距離からの射撃などを担う人。普通は近接戦用の人を前に置いて後方から砲撃……という形だけど、なのはの場合は一人で大体やれちゃってるね」

 

 まずはなのはから説明が始まった。

 

なのはの両手の上でレイハが講義をして、なのはに近づいた時に俺の頭の上に飛び乗ったユーノが補助するように説明を加える。

 

レイハが先生、ユーノが助手みたいな構図だ。

 

 俺もなのはも頷きながら話の続きを催促する。

 

なのはは今日の授業中に魔法のトレーニングをしていたらしいので、特に質問とかはないんだろう。

 

『徹は飛行魔法が使えないへっぽこなので、陸戦魔導師という枠に入ります』

 

「おい、へっぽこを付ける必要あったのか。不必要に俺を貶すな」

 

「そんな言い方してたら大多数の陸戦魔導師から恨みを買うよ? 陸戦魔導師は地上で戦ったり支援するのが主な役割です。えっと……言い難いんですが……飛行技能を持たない人の総称が陸戦魔導師というものですので、その仕事内容は多岐にわたります。なので今回は割愛しますね」

 

 なのはがレイハを、めってしながら説教している。

 

こいつの悪口はもはやクセの様なものだし、今さら急に殊勝な態度のレイハなんて薄気味悪いのでこのままでもまったく構わない。

 

俺がMというわけではない、悪しからず。

 

「気にしなくていいぞ、なのはもユーノもな。俺がいつまでも同じ位置で甘んじていると思っているのなら、それは大間違いだ。あとで存分に驚かしてやるよ……レイハ」

 

『ほう、自信があるようですね。それなら後ほどゆっくり見させてもらいます、模擬戦闘という形で……ね。まだもう少し現状の説明をします、少々お待ちを』

 

 俺とレイハの間で火花が散った。

 

頭の上に乗るユーノと、たおやかな両手にレイハを乗せるなのはが、あまりの空気の変わりようにわたわたしている。

 

『マスターにはもうお伝えしましたがもう一度ご説明します。砲撃魔導師は空を主戦場とし、射撃魔法を主力とするので空中での機動制御と、射撃魔法の熟練が肝になります』

 

「陸戦魔導師の場合は、各々の素養によってどれを伸ばすか考えていくのが一般的です。兄さんの場合は適性の高かった魔力付与から手を付けましたよね」

 

 なかなか息合ってるな、いい先生っぷりだ。

 

『ロジックで成長させるポイントを決めるのも悪くはないでしょうけれど、やはり実戦を経験して自分の足りない点を見つけるのが一番です』

 

「なるほど、それで模擬戦闘ってことか。理に適っているし、効果的だな。やっぱり自分を磨くには実戦を重ねて経験を積むのが近道だよな」

 

『はい。単に射撃魔法や飛行魔法の練習の回数をこなすより、進歩が圧倒的に早いですし成長が目に見えますので。曰く、習うより慣れよです』

 

 こういう所は俺とレイハの考え方は似通っている。

 

いつも悪口と軽口を交わす俺達だが意外と共通し共感し合うところもあるのだ。

 

 会話が弾む俺とレイハを見て、なのはが半眼をこちらに向けてきた。

 

なのははジト目でもかわいいな、いやジト目だからこそ違う魅力が出てくると言うべきか。

 

「やっぱり徹さんとレイジングハートは仲良いよね……なんか怪しいの」

 

 怪しいって何だ、勘繰るような事はなんもねぇよ。

 

頭の上でユーノがわたわたと動く感覚がする。

 

こんなことで慌てんなよ、なんか隠し事でもあるみたいじゃないか。

 

「あほなこと言ってんな。時々意見が合うっていう、ただそれだけの話だ」

 

『マスター、いくら私でも侮辱されれば怒ることくらいありますよ?』

 

「なんで仲良いって言われただけで侮辱になるんだ。その発言こそ俺に対しての侮辱だろ」

 

「やっぱり仲良い……息ぴったりだし」

 

「そ、それよりなのは! 模擬戦の準備をしようよ! なのはの特訓の成果を、兄さんに見せる絶好の機会だよ?」

 

 話が脱線し始めた時に修正してくれるのがユーノだ、俺が喋ると基本的に内容が逸れていくのでこういう存在は実に助かる。

 

ユーノにたしなめられて不承不承といった様子を隠そうともしていないが、一応なのはは引いてくれた。

 

 両手で握られている、いや、両手で固く握り締められているレイハがなにやら救難信号を発していたが、散々っぱら俺を罵倒してくれていた報いということで無視する。

 

悪口や軽口を言い合う仲とは言ったが、それとこれとは話が別なのだ。

 

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

 

 なのはからおよそ十メートルほど距離を取ってユーノの合図を待つ。

 

俺の正面前方にいるなのはは既にバリアジャケット姿に変身済み。

 

 白を基調にした清楚なデザイン、聖祥小学校の制服をモチーフにしているのか所々似ている部分が見受けられる。

 

杖の状態のレイハが今にも俺を叩き潰そうと光り輝き、手首の辺りには、青色に金色のラインが入った籠手を装着。

 

スカートは膝下以上あり、全体的に重装備なバリアジャケットとなっている。

 

 それに対して俺の格好は簡単なものである。

 

これ以上制服をダメにするわけにはいかないので、いつもトレーニングの時に着ているジャージに着替えただけだ。

 

実を言うと、着替えるために一回家に帰ったせいで少し遅れてしまった。

 

学校に持って行っていればそんな手間はいらなかったんだがな。

 

 バリアジャケット便利そうだなぁ、とも思うんだが、俺にはデバイスがないのでどうしようもない、諦めよう。

 

俺の戦法から考えてもなるべく軽装の方が都合がいいので、今のところジャージであっても何ら問題はない。

 

「徹さんっ! ケガしないように気をつけてね、わたしっ、全力で行くからっ!」

 

『と、徹っ、直撃しないよう細心の注意を払ってください。マスターから流れ込んでくる魔力がとても大きく濃密ですっ』

 

「な、なのはっ! これは模擬戦闘だからな! お互いの弱点の克服や、伸ばすべきポイントを見つけるためのものだからな!」

 

 勘弁してくれ、なのはの全力で撃たれたら非殺傷設定(スタンモード)の魔法でも消失する自信があるぞ!

 

何か言ってやってくれ、という念を込めてユーノへ視線を送ると、俺となのはのちょうど中間の位置にいたユーノがたたたっと走ってベンチの裏へ隠れて、自分の身を覆う程度の障壁を展開して口を開いた。

 

「は、始めっ!」

 

「ユーノっ! てめ、この野郎!」

 

 保身に走りやがったな! 信じていたのに!

 

「わたしも強くなったんだからっ! ……るさんを、守れるくらいに強くなるんだからっ! レイジングハートっ!」

 

『は、はいっ! Divine Buster』

 

「ちょっ、いきなりかよっ!」

 

 音叉のような形状をしたレイハに四つの環状魔法陣をまとわせ、極太の桜色の閃光を俺に向かって吐き出した。

 

なのはがバリアジャケットを装着していたのと同様に、俺も魔力付与の魔法を自分の身体に施している。

 

そのおかげで初動が遅れたものの回避できた、さすがに背筋がぞくっとしたが。

 

 ディバインバスターは俺程度の障壁では防げない程に威力が高い魔法だが、その分チャージに時間がかかる、速度の速い魔法が放たれていたら躱せなかったかもしれない。

 

 地を蹴り迂回しながら接近する。

 

なのははまだ地に足を着けている、地上は俺の戦場だ。

 

「やっぱり普通に撃っても当らないよね、なら当てれる状況に持って行くの」

 

『了解、Divine Shooter』

 

 左手に持つ杖を掲げ桜色の魔力球を作り出し、杖を振ってその球を撃ち出す。

 

その数は四つ、初めて見たなのはの新技に少し驚いたが……速度は遅い、回避は容易い。

 

 なのはへ真っ直ぐ近寄ろうとした足を止め、飛来する魔力弾をやり過ごすため直角に移動する。

 

すると途中で魔力弾は方向を変え、緩やかに曲がりながら輝線を描きつつ俺へと追尾してくる……なるほど、誘導弾か。

 

速度がそれほどない分、追尾性能は優れているようだ。

 

「飛行に砲撃に射撃。本当に溢れんばかりの才能だな……」

 

「わたしだって努力してるもんっ!」

 

 どれほどの威力があるか確かめるために一度足を止め、角度変更型障壁を展開する。

 

フェイトやアルフのものとは比べるまでもなく、見ただけで直径が大きいと分かる桜色の魔力弾をいなすように障壁を配置する。

 

照準を合わせた魔力弾は、俺へと一直線に向かってきて障壁に多大な衝撃を与えて俺の後方、木々の暗がりへと消えていった。

 

一つは障壁の外から来たので回避して、三つを障壁で防いだのだが……魔力弾をたかだか三つ弾いただけで障壁に薄らと亀裂が走っている、なんて破壊力だ。

 

「っ! 徹さんくらいの防御適性が相手なら障壁を貫けるって想定だったのに……!」

 

『すいませんマスター、見込みが外れました。徹の力量を計り損ねたか、もしくは何かしら小細工をしたのか』

 

「兄さんの近くの空間にヒビが入っているような……たぶん障壁を斜めに配置して勢いを流したんだ、注意して!」

 

「こらユーノ! お前は審判だろうがっ! 中立を保てよ、助言すんな!」

 

 所詮はいずれバレるちゃちな仕掛けだ、気にする必要はないんだけどな。

 

 あの誘導弾の威力を確かめることができて、一応の方向性は定まった。

 

ディバインバスターは迷うことなく回避の一択だ、直撃を食らえば墜ちるし障壁を張ったところで食い破る、あれはそういうものだ。

 

ディバインシューターの方は回避するにこしたことはないが、障壁により防御可能、直撃しても歯を食いしばったら耐えられそう……とまぁ、こんなところか。

 

 データは手に入れた、そろそろ打って出てやる……度肝を抜いてやるっ!

 

砲撃魔法や射撃魔法を躱しているうちに距離が開いてしまったが、そんなもん気にも留めない。

 

「なのは……忠告しといてやる、障壁張っとけよ」

 

 バニングス家の中庭にて、鮫島さんから二日間にわたり稽古をつけてもらった結果、実戦で使える水準に至った唯一の技。

 

「い、いきなりなに?」

 

 十メートルを超える距離を容易く埋める……その名は、神無(かんな)流『襲歩(しゅうほ)』。

 

『っ! Protection』

 

 鈍い音と衝撃が周囲に飛び散る。

 

桜色の障壁がなのはの正面に出現し、俺の拳を妨げたのだ。

 

なのはが魔法を使った様子はなかったので、レイハが機転を利かせて発動させたのだろう。

 

 さすがに自分で優秀なデバイスとうそぶくだけのことはある。

 

「はっ、早すぎるのっ!」

 

『マスター、一度距離を……』

 

「取らせるかよっ!」

 

 牽制で放たれた魔力弾をサイドステップで躱し、再度接近する際の勢いを利用して突き破れとばかりに右膝を叩き込む。

 

障壁を迂回するように横に回ったんだが、驚くべき反射速度で接触する寸前、ギリギリのところで阻まれた。

 

なのはの体重が軽いのでバリア越しでも衝撃を緩和しきれず、後方へと身体が流れた。

 

『卑怯かもしれないと思ったので使っていませんでしたが……もうそんな余裕はありません、マスター』

 

「うん、地上では敵わない……仕方ないよね」

 

「おいおい、手ぇ抜いてんじゃねぇぞ。本気でやってこそ訓練になるし、見えないものも見えてくるってもんだ」

 

 かといって、なのはの本気のディバインバスターはこちらとしても本気でご遠慮願いたいが、俺はこの中では一番年上、不遜なまでに強がって格好つけて知った風なこと言わせてもらおう。

 

「……ここからは一方的になるかもしれないんだから……後悔しても知らないんだからっ!」

 

『参りましょうマスター、あの思い上がった男に目に物見せて差し上げましょう』

 

 当然飛ばれてしまっては向こうが有利になる、飛び立つ前に攻める。

 

もう一度襲歩で近付き接近戦に持ち込もうと踏み込んだが、急いでブレーキをかけてスピードを落としながら屈む。

 

 すぐに飛ぶかと思いきや、まず誘導弾撃って来やがった。

 

無理な体勢で躱したせいで次の行動が遅れる。

 

その間になのはは優雅に空へ、白の多い衣装も相まって――

 

「まるで天使」

 

――のように大空へと舞い上がる。

 

スカートが風になびき、太陽を背にしているのでまるで後光の如き光が降り注ぐ、なのはの背に純白の翼を幻視するほどに神々しい。

 

 くそっ、なんで俺の目にはスクリーンショット機能が搭載されていないんだっ! この光景を目に焼き付けることしかできないなんて!

 

「にゃあっ! い、いきなりなに言いだすのっ!」

 

『マスター、落ち着いてください。あれは徹の十八番、口説き文句です。女性を動揺させる技です、冷静になってください』

 

 しまった、思ったことを声に出してしまった。

 

「おい、レイハ。俺が常に女性を口説いているような言い方をするんじゃない、悪評を流そうとするな」

 

『それほど事実と相違ないと思いますが。それよりも、そんなに余裕を見せていていいのですか?』

 

「これで私たちが有利に、徹さんは不利になったよ。ここからはワンサイドゲームだね」

 

 空へ戦場を移したことで、なのはもレイハも勝利を確信していることだろう、おそらくベンチの陰で観戦しているユーノも俺が敗北すると思っていることだろう。

 

 それでいい、そう盲信してくれている方がいい。

 

期待してるぞ……いい表情を見せてくれよ?

 

「これで終わりにしてあげる!」

 

『Divine shooter!』

 

 誘導弾を下方に向けて放ち、地を這うように俺へと向かわせてくる。

 

 その策に乗ってやる。

 

足元に飛んできた魔力弾を跳躍して躱し、上空へ。

 

「作戦通りっ、レイジングハートっ!」

 

『これで幕切れです、Divine Buster!』

 

 なのはと同じくらいの高さに到達した俺へ、音叉の形を成す杖を向け、誘導弾を放った時からチャージしていたのだろう砲撃を撃ち放つ。

 

溜めに溜められ凝縮された魔力が一方向、俺がいる方向へと解放される。

 

 俺の障壁では防ぎようもない、しかしこの大威力の砲撃を相殺できる魔法を持っていない、だからといって空中で回避する術もない、そう思っているんだろうなぁ……己が勝利を確信した、そんな目をしている。

 

だが、その目が驚愕に変わる。

 

俺が空中で跳躍し、砲撃を回避したからだ。

 

 俺の三メートルほど下の空間を、桜色の魔力の奔流が焼き払う。

 

足元に展開した障壁を足場にして、なのはから距離を取るようにもう一度跳躍。

 

なのはと同高度の位置まで自由落下し、空中で静止する。

 

「な、なんで……飛行魔法は、使えないんじゃ……」

 

「兄さん! なにをどうしてるんですか!」

 

『とうとう人間やめましたか、徹。見上げた根性です』

 

「やめてねぇよ、まだ人間だ。これが俺の、持たざる者の苦肉の策だ。障壁を足元に配置してそれを蹴って空中を移動する。言っただろ、俺は同じ位置で甘んじるような人間じゃない」

 

 これだ、この驚きの一色に染まる表情が見たかったんだ。

 

あぁ……見返してやったぜ、演出にこだわってよかった。

 

「もう空はお前達だけの戦場じゃない、俺も参加させてもらうぞ」




中途半端なところで終わらせてすんません。

なるべく早く続きを書きますんでご容赦を。

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