【黒子のバスケ】に転生しただけの簡単な二次創作です   作:騎士貴紫綺子規

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 続きー。

 10時までに投稿するはずが爆睡……久しぶりだ、こんなの。


番外編 父なる彼の有我な日常 後篇

 ――仮に今の俺の気持ちを、記号や文字を用いて表すとこうなるだろう。1.2.3。

 

『ヤwwベwwエww。高尾メッチャ驚いとるwwww。ワロスwwww』

 

 ……そんな感情をおくびにも出さず、「自分が出来うる限りの最高の愛想笑い」をしながら自己紹介してみる。

 

「鷹岡壱です。秀徳高校監督 中谷仁亮とは学生時代からの……友人? チームメイト? 悪友? みたいなもので、今日はその伝手でこの学校に見学、指導させてもらいに来ました。経験者ではありますが、選手というよりもむしろマネに近かったので、お手柔らかにお願いします」

『…………』

 

 全員、口をポカーンとあほみたいに開けて固まっている。うん、こうなるって思ってたし分かってた! 俺も多分同じ反応するし、君たちの立場だと。

 

「……オイ。ニヤニヤするな」

 

 内心で悶えていたらマー坊に窘められた。すごいね、よく気づくね、俺のニヤケ顔。

 

「失礼な奴だな。この類稀なる美しさを誇る顔に」

「このナルシストが。相変わらず自分の顔が大好きな奴だ」

「『絶世の美形』(って設定)らしいし? それに俺、忘れてねえぞ? 初対面で俺の顔見て顔真っ赤に染めた後大声で叫んで気絶した奴だーれだ?」

「……悪かった。オレが悪かったから!」

 

 ガラにもなく焦っているのを見て驚いているバスケ部員たち。プークスクス。まあ、大声で「愛を」叫んでって言わなかった俺マジ紳士。テープに録ってたりもするけど、それはまた数十年後の思い出にでもしまっておいてやろう。せいぜい悶え後悔しやがれ。

 

 

 ――そして一方で。生まれた時から見慣れているせいで立ち直りが一番早かったバカ息子が、今にも泣きそうなほど目を潤ませて顔を羞恥の所為か真っ赤に染めて、詰め寄ってきた。

 

「~~ッ! 何でいるんだよ!」

「お前、話聞いてた? オレ監督とオトモダチ、だから久しぶりに会いに来た、マー坊にコーチするよう言われた、イマココ。OK?」

「そこまでカントク言ってねえし!」

「聞いてんじゃん」

「~~~~~~ッ! こンの――――バカ親父!!」

 

 普段の姿からは見ることのない高尾の姿に驚いているのかはたまた俺の美貌に固まっているのかは知らないが、未だに回復から立ち直らないメンバーが、高尾のこの言葉で石化した。

 

「違うだろう? 心の底から御父様と敬いなさい。なんなら、メイド服プラス猫耳・尻尾プラス上目づかい・涙目のオプション付きでもいいぞ? ん?」

 

 いつかの超チートインフレキャラと転生させたチャラ男神を足して二乗したレベルでからかうと目に見えて怒りが増す。ああ、楽しい。今俺、史上稀に見るゲス顔しているんじゃねえ? もしくは変態親父顔。後者は否定しないけど。だって高尾可愛い……あ、俺も今は「高尾」か。

 

『親父!?』

「はい。改めまして。鷹岡壱こと高尾一哉です。いつもバカ息子がお世話になっています」

 

 若干眉を下げて「申し訳ありません」という顔をすると、途端に焦った顔になる部員たち。それでも、共学に目をかっ開いていることに変わりはない。マー坊も苗字からもしやとは思ってはいたが、さすがにそうと確信に至りはしなかったのか、目を見開いている。……フッ、さすが俺(の顔)。憂い顔は武器の一つだ。まあ、どんな顔でも凶器なのだけれども。顔面凶器とはまさにこのことである。良い意味かつ悪い意味で。

 

「もう帰りたい……」

 

 はっはっはっ。それは無理というものだよ、和成(ワトソン)君。

 

 

 そして始まった練習。さすがというかやっぱりと言うべきか、始まる前はあんなに「gdgd」だったのにいざ始まるとキッチリするね。これも秀徳高校ゆえか。とりあえずいつも通りの基礎練(からの)試合(ゲーム)の流れをいつもより短めにして見せてもらった、が。

 

「……キセキの世代ってマジキチートなんだな」

「お前も似たようなモンだったろうが。この『魔王』が」

「……人の黒歴史、蒸し返さないでくれる?」

 

 

 試合でラフプレーをしたり試合前後に奇襲をかけて棄権させたりという手段を用いる、いわゆる「卑怯な手段を用いる輩」。そういう奴らの超恥ずかしいプライベートな情報を偶然(・・)大声で口を滑らせてしまったりたまたま(・・・・)こけて写真をばらまいてしまったりうっかり(・・・・)彼らの学校や親に連絡してしまっただけなのに。そしてついたあだ名が「魔王」。はい、間違いなく黒歴史新聞のトップニュースを飾りました。別にいいじゃないか、俺はまだ健全なほうだったよ。大学で出会った(しょー)ちゃんとか(まこ)ちゃんとかの方がよっぽどゲスいと思うよ。俺はまだ健全に常識はあると自負している。

 

 しかし、こう見ると――

 

「やっぱりミドリンがネックになってくるよねえ」

「その考えには同意する。ところでなぜいきなりウチのエースをあだ名呼びしたんだ」

「公式ネームだよ?」

「は?」

 

 ただし、桃井の、という枕詞がつくが。紫原の「ミドチン」じゃないだけまだマシと思うけど。あれ、イントネーション変えるだけで外では絶対に言えなくなるからね。

 

「やっぱりワンマンプレーが目立つよね……スキルが特出しているから仕方ないっちゃあ、仕方ないのだけど」

 

 他のレギュラーのスキルも決して低くはない。低くはないが、それどまりだ。やはり「キセキの世代」という本物の天才には敵わない。一方で緑間は、お得意のシュート力は置いておくとして、ドリブルのキレやパス回しのスムーズさにやはりムラがある……まあそれは本人が原因でもあるが。

 

 強豪校の帝光中出身とはいえ、彼はまだ数か月前までは中学生だった。例え中学生にいては異常な身長を見せていたり、コートのハーフコート以上からの驚異的シュート力を見せていたとしても、まだ入学して間もない一年生なのだ。一方でレギュラーメンバーは全員高校三年生。スキルの高さの違いを経験値で補いつつある彼らとは、緑間は圧倒的に練習量と試合数が違う。それがお互いに足を引っ張っているから、このような状況が生まれているのだ。一言でいうと「中途半端」だ。

 

「惜しいね。緑間に足りないのは協調性かな」

「それは分かっている。そのために相棒はいるんだ」

「相棒、ね」

 

 相棒――高尾和成。俺の愛すべき息子。父親としては溺愛していると言ってもいい、が、コーチとしては厳しい目で見させてもらおう。一応全日本のマネージャー()だったわけだし。

 

「個人としてのスキルは決して低くはない。鷹の目なんてある種のチートスキル持ちだし、それぞれのポテンシャルも高い。だが、それでもメンバー内で最弱なのには変わりないな」

 

 鷹の目を持っているというアドバンテージはあるというものの、それどまりだと言ってもいい。身体能力を始めとした能力値は先輩に一歩及ばず、P(ポイント)G(ガード)としてもまだまだ未熟だと言えるだろう。

 

 P(ポイント)G(ガード)に要求されるのは広い視野とゲームメイク能力である。広い視野は目でクリアしている。しかし。

 バスケ歴はキセキと同等の十数年ではあるが、その個体能力値と経験の差から、まだ試合をうまく運ぶことができないのだ。まだ一年ということもあるが、それはプロの世界では言い訳にならない。勝者に求められるのは、年上でも捻じ伏せられる力なのだ。高尾にはそれがない――まあ、これからもそんなものは持てないだろうが。

 

「アイツは俺とは違う――秀才なんだよ、せいぜいがな」

 

 神様チートの俺とは違い、高尾は生まれ持った能力が違う。アイツの力はアイツが自分で手に入れたものだ。例え俺と1 on 1するたびに「ぜってー親父超えてやる!」なんて言われたとしても無理なのだ。秀才は天才に勝てない。その天才でも化け物には敵わない。

 

 秀才(バカ息子)化け物()に立ち向かう方が馬鹿らしいのだ。

 

「……なんだかんだで、お前も父親なんだな」

「どこをどう捉えてそんな結論に至ったのかさっぱり分からないのだが」

 

 今そんな話してたっけ? 高尾がまだ未熟だって話じゃなかった?

 

「違うのか? 未だに『遊んでくれー』と言って寄ってくる息子を大人げなくボロカスにした話だったろ」

「違うからな!?」

 

 人聞き悪いことを言うな!

 

 

   ★   ★   ★

 

 

 なんか超の付く有名人が現れたかと思うとそれが監督の知り合いで、おまけにチャリアを引く方のゲラの父親だったと判明して驚いて。今日一日で何回叫んだかってくらいに喉が痛い。くそ、朝は気分が良かったのによ。

 

 まあでも、そんな有名人に練習を見てもらえたのはよかったとは思う。

 

「カズくんはドリブルの切り替えが遅いね。両手・両足にパワーアンクルつけながら往復二十回練習。両手と交互とランダムね。それから――」

「カズくん言うな! つかお前、そんな呼び方したこと、今までに一度もねーだろ!」

 

「緑間くんはシュートの貯めが長い。せっかくいい武器持ってんだから、それは有効に使わなきゃね。君も両手に重りつけながらのシュート錬。それに加えて、五回に一回は目をつむってやってみようか。空間把握が勝敗を分けるだろうし」

「……承知したのだよ」

 

「大坪くんは、全体的に見て実力が万遍なく伸びているね。その調子で頑張ってくれて大丈夫だ。ただ、もう少しその体格を理解しようか。筋肉の付き方も問題ないんだから、リバウンドやダンクの正確さ、もっと上げられるはずだよ。プレイの豪快さもいい。あと、周りと自分の違いをよく知っておくこと」

「分かりました」

 

「宮地くんもまあオッケー。ドリブルが得意そうだし力強いから、腕の筋力もっと上げた方がいいね。今よりずっと少ない力でプレーできるはずだ……参考にしている選手がいるみたいだけど、その人と自分が決定的に違う点を見つけられたら、爆発的に伸びると思う」

「……はい」

 

「木村くんは――ダンクが苦手っぽいね。踏み込みが甘いせいだけど、無理して伸ばせとは言わないよ。ただ、シャトルランを続けるといい。踏み込みが変わるだけで、切り替えも早くなるから。下半身を重点的に伸ばすと、今までよりはスムーズに動けるはずだ」

「うっ、……すみません」

 

 

 たった数分見ただけでオレの目標としている人がばれてしまった。「今度会わせてあげるね」と、こっそり言われたが、できればみゆみゆに会わせてほしい。握手したい。サイン欲しい。

 そう思っているのがばれたのかは知らないが、苦笑交じりに「事務所が違うからね」と言われてしまった。何だよあの人、エスパー?

 

 

「――そこまで!」

『――ハッ!』

 

 いつもとは違う環境でやっていたせいか緊張もあったのだろう、オレを含めて皆疲れ果てているようだ。特に高尾。アイツ、扱かれまくってた。

 

「とりあえず俺のアドバイスはさっき言ったとおりだけど、それで練習してみてどうだった? まあ、短時間で何かを得るってことはほとんどないだろうし、ポッと出の俺なんかに指導されたところで、むしろ『余計なお世話だ』『いい迷惑だ』と感じる奴もいるかもしれない。ただ、これだけは覚えてもらいたい」

 

 そこで一回区切ると、全員を見回してから言った。

 

「俺はバスケが好きだ。そして、秀徳が好きだ――まあこれは、元チームメイトと息子がいるからなんだが――そして、俺はお前らも好きだ」

 

 だから安心しろ。そう言って――おそらく全力で――笑った鷹岡さん。そして、その笑顔を直視していた俺たち全員、一人残らず赤面した。

 

 高尾が「だからその笑顔やめろって言ってんだろ!」と詰め寄っているし、監督も「お前、相変わらずのタラシだな……」と呆れつつも顔が赤い。反則だろう! あの顔で笑うとか!

 

 周りの幾人かが、前かがみになっていたりポケットに手を入れてゴソゴソとしていたのには見なかったふりをしておいた。気持ちは分かる。下手な女よりも色気あるし。

 

 

 

 部活を終えて家に帰ると、ふと懐かしい匂いがして大急ぎで鍵を開ける。そこに見慣れたサイズの靴が置いてあって、大急ぎで居間に上がった。

 

「あら、お帰り清志」

「ただいま。なあ、姉貴は!?」

 

 そう言いつつも探すのはやめずに視線を行き来させる。くそっ、どこ行った!

 

「直美ならお風呂に――」

 

 そう聞くや否や洗面所に走る。姉貴が風呂!? くうっ! なんておいしいときに帰ってきたんだ、俺!

 

 洗面所に入ると、風呂場からいまだにシャワーを出しっぱなしにしている音がする。いよっしゃあ! 姉貴の裸! 数年ぶりに拝ませてもらうぜ!

 

「姉さん! おかえり――」

「入ってくんな! バカ兄キ!」

 

 ――なんで裕也が入ってんだよ!

 

 

「信じられねえ! 弟の裸除きにくる兄とか!」

「誰がお前の裸なんか見てえかよ! 姉さんのに決まってんだろ」

「そっちの方が信じられないわよ! いくら健全な男子高校生だからって、姉の裸まで覗きにくる? 普通」

 

 あ、姉に欲情する時点で健全じゃなかったか……、とため息をつきながらも晩飯を食べている姉貴。ああ、可愛い。抱きしめたい髪弄りたい匂い嗅ぎたい嘗め回したい×××したい――」

 

「死にさらせ!」

 

 ――フゴブッ!

 

 目に飛んできた箸をもろに食らい、目をおさえて地面に転がる。目が! 目がぁぁ! ……あ、でもこれ姉さんの箸だ。姉さんの唾液つきの箸が俺に……イイ。

 

「あらあら、仲がいいわねえ」

「母さん、よく見てよ。どう考えても近親相姦予告だったよ? 私、清志に犯されるかもしれないんだよ? そこんところ、分かってる?」

「ふふふ」

「いや笑い事じゃなくて」

 

 ああ、あんな姉さんも大好きだ。――おっと、そうだ。

 

「はい、姉さん」

「何よこれ――!? これって!」

 

 そう、今日現れたあの人の――

 

「これ! 鷹岡壱の直筆サイン入りCD!? なんでこんなもの、清志が持ってんのよ!」

「何ですって!?」

 

 普段滅多に顔を崩さないお袋までもが顔を驚愕に変えている。珍しいもん見たな。

 

「後輩の父親がソイツだった」

「後輩って――あ、高尾和成くん?」

「……そうだけど。何で知ってんの、姉キ?」

 

 急に反応を変えた姉さんに不思議がる愚弟。確かにそうだよな。

 

「いや、別に何でもないけどね……」

 

 目を逸らして言葉を濁しつつもしっかりとCDを確保しているマイエンジェル。……チッ。高尾の奴、明日大坪に頼んで練習三倍にしてもらおう。

 

「代わりにさ、姉さん。今日、一緒に寝てくれ」

「…………………………いいわよ」

「凄い葛藤したな」

「ただし! 何もしないこと。いいわね?」

「ああ、もちろん」

 

 偶然を装えばいいんだしな。よし。これで、抱き付き放題頬擦りし放題舐め放題……グフフ。

 

 

 そう思っていたオレが、翌朝廊下で、布団でグルグル巻きになって目が覚め、もうその頃には姉さんは京都に帰ってしまったことに気づくまであと――

 

 




 別に高尾が嫌いなわけじゃないんですけどね。親バカだけど息子には厳しい描写が書きたかったからこうなった。でも、そこまでバスケに詳しいわけでもないから書くのは大変。

 あと一話ストックはあるんですけどねえ……逆にいうと、あと一話しかストックがない。

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