IS×GUNDAM~シン・アスカ覚醒伝~   作:パクロス

3 / 22
HEYHEY! 昨日は言ってなかったけど三連休! 三連休! 皆何して遊ぶんだ! 私はNE! ......もうすぐ試験があるんで勉強中......こうして書いてるのもためてあるの投稿しているだけだし......。皆さん、勉強はご計画的に。留年だけはするなよ!


PROLOGUE-02:生まれ変わりし運命の剣

 千冬からこの世界のことを聞いてから一週間後、シンは千冬とあの後紹介された教師の山田真耶に連れられ、IS学園内の廊下を歩いていた。

ちなみに、完治に一か月かかると言われた全身の怪我だが、コーディネイターの回復力の高さからか、僅か一週間で治り、周囲を驚かせることとなった。

 それはともかくしばらく歩いていると、目の前に重厚そうな扉が現れた。

 

「着いたぞ。ここだ」

 

 千冬がそう言い側にあったパネルを操作する。圧縮空気の抜ける音と共に扉は開く。

 そこは、六方を金属板で覆われた広い部屋で、何かを固定するためのハンガーや天井からぶら下がるアーム、大型の工作機械やその他諸々の作業道具がある部屋である。なんとなくMSの格納庫に雰囲気が似ているとシンは思った。

 

「ここは?」

「ここはISの整備室だ。ここでISの整備や出力調整などを行う」

 

 千冬はシンの疑問に簡潔に答え、ついて来いと言うとそのまま整備室の奥に足を進める。遅れてシンもついて行き、その後ろを麻耶がパタパタと音がしそうな感じでついて行く。しばらく歩いていく内にシンはある疑問を口にする。

 

「なあ? 俺のデスティニーは何処なんだ?」

 

 MSは18mものサイズの巨大な兵器だ。対するこのIS整備室は相当広いが、MSの格納庫と比べると少々狭い。ここにあのデスティニーが入るとは思えないし、よしんば入ってもあの巨体だ。ここまで歩いてその影も見当たらないとは…………

 

「もう少ししたら分かる。それまで待て。それから前から言おう思っていたが…………」

 

そこで千冬は振り返りシンと向き合うと…………

 

バァァァン!!

 

「いぃっ!?」

 

凄まじい音と共にシンの頭に千冬が持っていた出席簿が直撃する。

 

「~~~~~~!!」

「ア、アスカ君!? 織斑先生!?」

「目上の者には敬語を使え。愚か者」

 

 余りの痛みにシンは思わずその場でうずくまり、真耶は何が何やらと言った感じでオロオロする。一方そんな事態を引き起こした張本人はしれっと言う始末だ。

 

「だからっていきなりこれかよ!」

 

思わずシンは反論するが

 

バァァァン!!

 

「敬語はどうした? 敬語は?」

「…………はい。申し訳御座いませんでした」

 

 余りの痛みにシンは素直に従う他無かった。正直アカデミーの教官の鉄拳よりずっと痛い。そんなこんなで再び歩くと目的地にたどり着いた。

 

「ついたぞ。ここだ。」

 

千冬が言ったそこにあったのは一機のISであった

 

「これって…………IS?」

 

デスティニーを見せる筈であったのに見せられたのはISであったことにシンは訝しげな表情になる。

 

「そうだ」

「なんで俺をここに…………!」

 

 千冬に対して文句を言おうとしたがそこでシンはあることに気づき、思わず続く言葉を止めてしまう。

 似ているのだ。彼が共に戦ってきた愛機に。

 

鉄灰色のボディー。

 

篭手の様なパーツに覆われたマニピュレーター。

 

そして余りに特徴的な、鋭く伸びた一対の巨大な翼。

 

多少のディテールの違いはあれどそのISは…………

 

「デス、ティニー…………?」

 

そう、シンの専用MSデスティニーに酷似していたのだ。

 

「どういうことだよ! なんでこいつは…………!」

 

予想の遥か上を行く事態にシンは思わず千冬に食ってかかるがそこに千冬の出席簿アタック、あえなく鎮圧される。

 

「~~~~~~~!!」

「落ち着け馬鹿者。まあ、そんな反応をしても仕方ないか……」

「……どうしてこのISは俺のデスティニーに似てるんですか?」

 

 また叩かれては堪らないので、今度は言葉を改めるシン。

しかし返ってきた答えはとんでもないものだった。

 

「……結論から言えば、このISはお前のMSに似ているんじゃない。

 

 

このISはお前のMSそのものだ」

 

 

「……は?」

 

 余りに突拍子の無い答えにシンは思わず間の抜けた声を出してしまう。

暫く間を空け、千冬が語り出す。

 

「あれはお前が此処に着いた時のことだ……」

 

 

 

 

「……これは一体……」

 

 目の前の光景に真耶は言葉を失う。一方の千冬は黙って目の前のにある巨大ロボット――MSデスティニーを見つめていた。

 職員室でデスティニーの機影を確認した後、千冬は直ちにIS教師部隊を編成。急いでデスティニーが墜落した現場――IS学園グラウンドに駆けつけた。

 

「一体あのロボットは……? 誰が作ったんでしょう?」

「さあな。しかしこのIS学園にわざわざ落ちてきたんだ。禄なことでは無いだろう」

 

 そのまま全く次から次へと、と溜め息をつきながら千冬はブツブツと呟いた。そんな千冬を見て真耶は何も言えなかった。

 

「とりあえず、これからどうしましょうか?」

「そうだな……。今は現状のまま警戒態勢に。まずは相手の反応を見てみる」

 

 千冬は教師達に指示を出し、通信機に手を伸ばす。周波数をオープンチャンネルに合わせ、向こうにも聞こえるようにする。

 

「聞こえるか! こちらはIS学園教師部隊だ! 直ちに応答せよ!」

 

そこで一旦通信を切り、相手からの応答を待つが、返事が来る様子はない。

 

「応答がありませんね」

「そもそもあれには人が乗ってるんでしょうか?」

「分からんな。熱源反応で人は乗ってる様だが……」

 

 何せ今まで見たことが無いモノである。千冬達がこの後の対応に窮する。しかし そうしている時間はそう長くは無かった。

 

「……! お、織斑先生!! あれを!!」

「ん? ……!?」

 

 デスティニーに一番近いところで待機していた教師が驚きの声を上げ、遅れて千冬や他の教師も同様の反応を示す。

 彼女の目の前にあるMSデスティニー。その機体の腹部の装甲が展開し、空洞が出来る。そこから一人の人間が這い出てきた。ライダースーツとヘルメットで包まれたその体は体格から判断するに、おそらく男だろう。その男はヨロヨロと頭を此方に向け、震える手を此方に伸ばそうとする。しかし体に限界が来たのだろう。力尽きたよう様にその空洞――おそらくロボットのコックピットだろう――から転げ落ちていく。

 

「っ! お、おい!! しっかりしろ!」

「お、織斑先生!!」

 

 倒れた姿を見た千冬は周りの声を無視し、クレーターを滑り降り男の側へ寄っていった。

 男の元に辿り着いた千冬は男の容体を確かめようとパイザーがひび割れたヘルメットを取る。外れにくい様になっていた様だが、衝撃でどこか壊れたのだろう、直ぐに外れた。

 ヘルメットの中の人物は思った通り男だった。白い肌、黒い髪の持ち主で年はおそらく十代半ばだろう。バイザーが割れた為か、額から血が流れていた。この様子では体中がボロボロだろう。

 そこまで思考が及んだところでラファール・リヴァイブに乗った真耶が到着した。

 

「お、織斑先生ー! 大丈夫ですか!?」

「山田先生。私は大丈夫だがこいつはな……」

「え? ……って大変!! 直ぐに医療班を呼び……!」

 

 真耶がそこまで言ったところで、デスティニーに新たな異変が起き始めていた。

突然エンジンの駆動音が鳴り響き、それと同時にデスティニーが動き出す。

 

「なっ!?」

「う、動いてる!?」

 

 千冬と真耶が驚きの声を上げる。このロボットのパイロットである少年は今ここにいる。では自律機能でも備わっているのか。もしくは他に何者かが。千冬が思わず幾つもの可能性を頭に浮かばせているのを余所にデスティニーは動き出そうとする。その四肢はすでに失われ、動くといっても身をよじらす程度であるが、デスティニーはそれでも動く。そして頭部のフェイスパーツが此方を向くと同時にその顔の双眼が緑色に光りだす。

 

 

――機体コンディション確認、機体ダメージデッドゾーン――

 

 

デスティニーのコックピットのモニターに電子音と共に文字の羅列が走る。

 

 

――機体保護プログラム発動、付近の機体との一体化(シンクロ)を開始――

 

 

コックピット内で文字の羅列が流れ、終了する。と同時にデスティニーから先ほどとは違う甲高い音が流れる。

 

「こ、これは……!?」

「一体何が始まるんだ!?」

 

 千冬と真耶は驚きの声を上げる。そして新たなる動きが起きた。

突如デスティニーの胸部装甲がパージされ、そこにはクリスタル状の不思議な光を放つナニカがあった。

 

 

――ハイパーデュートリオン出力不足を確認、周辺のクオリファイア因子を収束、エネルギー補填に使用――

 

 

 周囲の地面から幾何学的なラインがデスティニーへと走っていく。そこにまるでエネルギーが送られていく様に緑色の光がラインを通ってデスティニーに流れていく。

 

 

――クオリファイア因子の一定値突破を確認...........――

 

 

――クオリファイア因子増幅炉、始動――

 

 

 それを最後にクリスタルパーツが直視できない程の光を放ち、デスティニーを包む。その影響は真耶のラファール・リヴァイブにも及んでいた。

「え!? 何!? 機体が……!?」

「! 山田先生!!」

「機体が引き寄せられて……きゃあああ!!」

 

必死でラファール・リヴァイブをコントロールするもそれは無駄なあがきでしかなく、あえなく真耶はラファール・リヴァイブごと光の中の吸い込まれてしまう。

 

「山田先生!!」

 

 

一体化(シンクロ)開始――

 

 

そして光が視界を完全に塞ぐ。

 

 

どれだけ時間が経ったのだろうか、ようやく光がその輝きを失い始めた。

 

「………きゃあああ!」

「っ! 山田先生!!」

 

その時、突如光の中から真耶が弾き出され、千冬の側に尻餅をついて倒れる。

 

「山田先生!! 大丈夫か!!」

「アイタタタ……織斑先生……な、なんとか」

 

真耶に異常が無いと分かり、ほっとする千冬。しかし千冬はあることに気づく。

 

「! 山田先生。リヴァイブはどうした?」

「え? あ、ホントだ! 一体どこに……」

 

そこまでしたところで完全に光が収まる。そこにあったのは……

 

「え…………これって…………」

「IS…………なのか…………?」

 

 そこにはラファール・リヴァイブとは似ても似つかわないISらしきものがデスティニーが倒れていた場所に鎮座していたのであった。

 

 

 

 

「……と言うわけだ。あの状況から推測するにお前のMSはISを取り込むことでISになったと言っておこう」

「……マジかよ……デスティニーがISになったって……」

 

 正直もう悪い冗談は勘弁して欲しいといったところである。しかし目の前にあるISとなったデスティニーがその事実を証明している。シンは頭を抱えてしまう。

その中唐突に千冬から予想外のことを言われた。

 

「さて、ではアスカ。こいつに乗れ」

「……は?」

「聞こえていないのか? 乗れと言っているんだ。早くしろ」

「いや、聞こえてはいますけど……」

 

 シンはそこでISとなったデスティニーに顔を向ける。デスティニーは相も変わらずその場に鎮座し続けている。

 

「これって男は使えないんじゃ……」

 

 シンがまず思った疑問がそれだ。

ISは女性にしか使えない

この大前提があるにも関わらず、何故千冬はシンに乗れと言うのだろうか。

 

「そうだがモノには例外があると言うものだ」

 

 そう言い、千冬はシンに丸めた紙を渡した。広げてみるとそれは新聞だった。その一面の見出しには

 

――世界で唯一ISを使える男、織斑一夏――

 

と書かれていた。

 

「世界で唯一ISを使える……それにこの織斑一夏って……」

「ああそうだ。私の弟だ。何の因果か知らんがISを動かしてしまってな。……お陰でこっちはあいつの入学手続きでてんやわんやだ」

「でもだからって俺も使えるって訳じゃ……」

 

 確かにその織斑一夏はISを動かした様だが、それは織斑一夏に何か特別な要因があったからであって、シンにそれがあるとは到底思えない。なのに何故?

 

「無論それだけではない。お前があのMSのパイロットだからこそ言っているんだ」

「どういうことですか?」

 

 千冬の言葉にまた疑問を覚えたシンだが、それ言い切る前に新しい声が加わった。

 

「織斑先生。少しいいですか?」

「む。何だ?」

 

 先程からデスティニーの側のコントロールパネルで何かを操作していた教師の一人が千冬に声をかけた。

 

「このISのことですが、やはりプロテクトが固く解析が出来ない状態です。」

 

 その教師は現状を説明しながら、手に持っていた端末を千冬と真耶に見せる。

 

「解析も終わってないってことは搭乗者制限もですか?」

「はい。そうです」

「むう……」

 

 千冬と真耶はそれぞれ難しい顔をしだす。話についてこれなくなってきたシンはとりあえず何の話か聞こうとした。

 

「えと、何の話ですか?」

「む、いや。お前に今話そうとしたことだ」

「このISにはあるプロテクトがかかっていて、機体の解析ができないのです」

「またそのプロテクトには搭乗者制限もあって、特定の人間にしか乗れない様になってるんです」

 

千冬、その教師、真耶が順番にシンに説明していく。

 

「……じゃあ俺がこいつを使えると思ったのは……」

「ああ。私の予測だがこいつの元となったMSのパイロットのお前がこの機体を動かせる可能性が高い」

「…………」

 

 推測ばかりなので保証はできんがな、と自嘲する千冬を視界から外しシンは再度ISデスティニーへ顔を向ける。その表情には様々な感情が混ざっていた。

 アスランによって砕かれた自分の力。本来死んでいる筈の自分がこうして生きていて、一度砕かれた力が姿を変えて目の前にある。それは何を意味するのか。シンには漠然とだが、目の前の愛機が自分に戦うことを望んでいるように思えた。

 

「……俺に、戦えと言うのか? デスティニー……」

 

 口からそんな言葉が言葉が漏れる。千冬達は怪訝な顔をするが、シンが気にすることなく、デスティニーへ一歩、一歩と足を進める。

 

 

「何の為に戦うのか、今の俺には分からない」

 

 

デスティニーの一歩手前でシンは足を止め、右手を伸ばす。

 

 

「けど、戦う為の理由が、俺が守りたいと思えるものがここにあるのなら……」

 

 

伸ばした右手がデスティニーの装甲に触れる。

 

 

「俺は……俺は戦う!!」

 

 

刹那、デスティニーとシンを緑色の光が覆い始める。

 

「こ、これは!?」

「ISが……男に反応してる……」

「嘘!?」

 

周囲から教師たちの驚きの声が上がるが、今のシンの耳には入ってこない。

 

 

――皮膜装甲(スキンバリアー)展開――

 

 

――推進機(スラスター)正常作動――

 

 

――ハイパーセンサー最適化――

 

 

 次々とシンの頭に情報が流れ込む。今まで触れたことも無い知識、しかしまるでずっと昔からその知識を知っていた様な感覚がする。それがどれだけの時間流れてきたか、最後にシンにとって馴染み深いーデスティニーのOSの一部が流れてきた。

 

 

Gunnery

 

United

 

Nuclear -

 

Dueterion

 

Advanced

 

Maneuver SYSTEM

 

 

そしてシンとデスティニーが光に包まれ、次にその姿が見えたとき

 

その四肢を鉄灰色の装甲で覆い

 

頭に四角いブロック状のパーツとV字アンテナ

 

非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)の鋭い形状の巨大な翼

 

そして胸部装甲中央にクリスタルパーツ、装甲の各部にクリアパーツがはめ込まれたIS

――デスティニーを身にまとったシン・アスカがいた。

 

「……これが……IS……」

 

 腕部装甲のマニピュレーターを確かめるように開いたり閉じたりするシン。その表情は幾らかの驚きと困惑が見える反面、力を得たという昂揚もあった。一方側にいた教師たちは二人目のISを動かせる男の登場に呆然とするばかりであった。

少しばかり時間が経ち、その場を動かしたのは千冬であった。

 

「動かしたのか……アスカ!!」

「は、はい!」

 

初めてISを動かしたことで緊張しているのか、シンはややうわずった声で答えた。

 

「これよりそのISの起動テストを行う! まずは歩いてみろ!」

「え!? 織斑先生!?」

「いきなりですか!?」

 

 彼女達の驚きも最もである。相手はISを動かせたといってもISの知識もないズブの素人だ。いくらかの知識を教えてからでもいいのでは、と思ってるのだろう。しかし千冬はそうは思っていないようだ。

 

「問題ない。こいつに知識は必要ない。感覚だけでも十分なぐらいだ。そうだろう? アスカ?」

「は、はい。なんとなくですけど……」

「ということだ。山田先生は私と共に管制室へ。他の教師の方々はデータ収集と解析を」

 

 千冬は次々と教師たちに指示を出し、一部まだ不安に感じる様だが各々の役割を果たすべく持ち場に着いた。

 

『ではアスカ。まずはカタパルトへ歩いてみろ』

「りょ、了解」

 

 シンはわずかに緊張しながらもゆっくりと歩き始める。初めはヨロヨロと頼りないものだったが、数歩歩く内にもう慣れたかしっかりした歩き方になっていた。それを見た教師達は「本当に動かしてる……」と言葉を漏らす。

 カタパルトに到着したシンはデスティニーの両脚部をカタパルトにセットする。

 

「こちらシン・アスカ。カタパルトに到着しました」

『分かりました。これよりアリーナ内でデスティニーの起動テストを行います』

 

 シンが管制室に通信を送ると真耶から返事が届く。気のせいかいつもよりしっかりした声になっている。

 

『カタパルトから射出後、ホログラムのターゲットドローンを十五機出しますので、全て撃墜して下さい。なお、ターゲットドローンはランダムに回避運動と反撃行動をします。反撃の実体ダメージはありませんけど気をつけて下さい』

「了解!」

 

 真耶からの通信を聞いてからシンは射出時のGに備えて体を僅かに屈める。そして深く呼吸を繰り返し緊張で固くなっていた体から余計な力を抜く。全ての準備が整った時、いつも言うあの言葉を放つ。

 

 

「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」

 

 

 瞬間、カタパルトがシンの体を押し出し、デスティニーを纏ったシンはISアリーナへ躍り出た。

初めてのISでの空中飛行だが、少しふらつきながらもMSの経験が活かせているのか、それ程ひどいものでは無かった。

 しばらくアリーナの中を回って飛行感覚をつかみ始めたシンに麻耶から再び通信が入る。

 

『アスカ君。これよりドローンを出します。準備はいいですか?』

「あ、はい。大丈夫です」

『ではドローンを出します』

 

 アリーナの所々にターゲットドローンが投影される。それを確認したシンはデスティニーの武装項目を表示させるが、あることに気づき、驚いてしまう。

 

(武器にソードとビーム砲がない!? どういうことだよ!?)

 

 ハイパーセンサーを使ってデスティニーの背面を見てみると本来あるはずのビームソード『アロンダイト』と高エネルギー長射程ビーム砲、そしてそれらを保持するための武装ラックと懸架アームがなく、金属のブロックの様なパーツがついてるだけであった。見れば表示されている武装も格納領域(パスロット)内のビームライフル、両肩のビームブーメラン『フラッシュエッジ』、それと非固定浮遊部位の基部に内蔵されている近接防御機関砲『CIWS』だけであった。

 デスティニーはZGMF X-56S『インパルス』のコンセプトの『シルエット換装による全領域対応MS』を発展させた『換装無しで全領域に対応した高機動MS』である。当然ISになってもそこは変わらないと思ったのだがどうもそう上手くはいかない様である。

 

――警告! ターゲットにロックオンされています。――

 

「っ!」

 

 デスティニーからの警告にシンは慌てて回避運動をとる。次の瞬間先程までシンがいた場所をドローンが放った砲弾が通り過ぎる。

 

「くそ! やってやるさ!」

 

シンは威勢良く言い放ち、右手にビームライフルを展開、さらに左手に右肩のビームブーメラン『フラッシュエッジ』をビームソード形態で持たせ、ドローンの中に突っ込んでいった。

 

 

 

 

『ウォォォォォォォォ!!!!』

 

 シンの掛け声と共に振り下ろされたフラッシュエッジがドローンの一機を切り裂く。そこから間髪入れず別のドローンに向けビームライフルを撃つ。他のドローンもシンのデスティニーに向け攻撃するが、それらは左腕に装備されたシールドで防がれるか、回避されるかで逆にその隙をつかれ、瞬く間に堕とされる。

 

「すごいですね……アスカ君。初めてISを動かすのにあんなに……」

 

 シンのIS戦闘を管制室から見ていた真耶はシンの初めてには思えない動きに感嘆の声を上げた。

 

「ISの動かし方にはまだムラがあるが、元の世界で軍人だったのとMSでの戦闘経験が活かされてるのだろう。次の狙いを定めるまでの動きに無駄が無いな。反応速度も申し分ない」

 

 管制室にいるもう一人の女性、千冬はシンの動きを冷静に見ていた。

そうしている内に残りのドローンは残り数機となる。

 

「さて……山田先生。ここは私が引き受ける。整備済みのが一機あったはずだ。それを使うといい」

「分かりました。すぐに準備します」

 

 真耶は千冬に応じて何かの準備に管制室を出る。残った千冬は黙って映像に映るシンのデスティ二ーを見ていた。

 

「さて……」

 

戦闘は次の局面に進もうとしていた。

 

 

 

 

「これでぇ……ラストォ!!」

 

 後ろのドローンを振り返り際の射撃で落としたシンはスラスターの出力を最大にし、一気に肉薄する。その勢いのままシンはフラッシュエッジを横一文字に叩き切る。

 

「ハッ……ハッ……ハッ……」

 

 やはり初めてISを動かしたことによる緊張の為か、息が粗くなる。息を整えようと深呼吸を繰り返していると、今度は千冬から通信が入った。

 

『どうだ? アスカ。そいつの調子は?』

「……少し機体の反応が鈍い。俺の動きにデスティニーがついてこれてない」

『問題ない。直にそのISが最適化をしてくれるでは次に模擬戦を開始する。いいな?』

「はい!」

 

 しばらくしてからシンが出てきたピットからカタパルトに押し出されてきたIS――量産機のラファール・リヴァイヴが発進した。そのリヴァイヴに乗っているのは……

 

「や、山田さん?」

 

 リヴァイブに乗っていたのは真耶だった。いつものほんわかした彼女を見てたシンにとって模擬戦の相手が真耶だったことに驚いてしまった。

 

「あ、アスカ君。模擬戦の相手は私が行います」

『山田先生は元代表候補生だ。舐めてかかると痛い目に会うぞ』

 

 軽く真耶は挨拶をし、千冬の言葉にシンは気を引き締める。

 

『ではこれより模擬戦を開始する。始め!』

 

 千冬の言葉を皮切りに、シンと真耶が動き始める。まず先手を打ったのは真耶だった。ラファール・リヴァイヴに持たせたマシンガンでシンに狙いを定め、引き金を引く。放たれた弾丸をシンに向かって跳んでいく。シンはそれを最低限の動きでかわそうとするが……

 

「うわっ!?」

 

 襲い掛かる衝撃。やはりデスティニーの反応が遅れているのか、数発被弾してしまう。

 

「くそ!」

「どうしました? アスカ君? まだまだですよ」

 

 思わず悪態をつくシンに真耶は挑発の言葉をかける。それで一瞬頭に血が上ったのか

 

「なめるな!」

 

その言葉と同時にフラッシュエッジを抜き放ち、ソード形態で真耶に襲いかかる。

 

「っ! くぅぅぅぅ!」

「パワーならこっちが上だ!」

 

 真耶は近接ブレードを展開して応戦するが、パワーが上のデスティニーによって強引に押し切られ弾き飛ばされる。

 

「うわっ!?」

「こいつを食らえ!!」

 

 弾き飛ばされた真耶は姿勢を整えようと一瞬動きが止まり、シンはその隙を逃さなかった。

 手に持ったフラッシュエッジを今度は投擲形態にすると、真耶に向けて、思い切り投げ飛ばす。

 

「え!? 投擲武器!?」

 

今までフラッシュエッジを非実体剣とばかり思っていた真耶は諸にフラッシュエッジの攻撃を受けてしまう。

 

「きゃあああああ!!!!」

 

 フラッシュエッジが直撃した際に生じた爆煙と衝撃に真耶は悲鳴をあげる。

 

「これで終わりだ!」

 

 一気に畳みかけようとシンはリヴァイヴに肉薄しようとする。しかしそう上手くはいかないようだ。

 

「ま、まだです!」

 

 真耶はそう言い放ち、マシンガンの代わりに今度はミサイルポッドを展開、デスティニーへ向け撃つ。

 

「その程度!」

 

 シンは非固定浮遊部位のCIWSを展開し、ミサイルに向け弾幕を張る。

 

ドカァァァァァァン!!!!

 

 激しい爆発と共にシンの視界は爆煙で塞がれる。ハイパーセンサーを使えば爆煙の目隠し等意味をなさないものだが、それでも一瞬反応が遅れる。そしてそれが真耶の狙いだった。

 

「そこ!!」

「っ!? いつの間に!?」

 

 気がつけば真耶のラファール・リヴァイヴはシンの後ろから接近し、射撃を加える。

 

「うわっ!!」

 

 反応の遅れたシンのデスティニーに次々と真耶が放つ銃弾が直撃する。シンは悲鳴をあげ、その隙をつき真耶がデスティニーを掴み取る。

 

「これはさっきのお返しです!」

 

 そのまま真耶はシンを投げ飛ばし、デスティニーに向け右手のマシンガン、左手のミサイルポッドを一斉に撃ちまくった。それらはデスティニーに吸い込まれる様に直撃する。直撃音がアリーナに響き渡りデスティニーの機影は爆煙に包まれる。

 

「や、やった!?」

 

思わず真耶は声を上げるが…………

 

『油断するなよ、山田先生。』

 

そこに千冬の通信が割り込む。

 

『まだアスカのデスティニーは......』

 

煙が晴れ、そこにいたのは…………

 

一次移行(ファーストシフト)を済ませていないからな。』

 

装いを新たにしたシン・アスカのデスティニーであった。

 

 

 

 

――一次移行(ファーストシフト)の終了を確認、ZGMF X-42S『デスティニー』再起動。

 

 デスティニーから送られる情報を確認したシンは一次移行を済ませたデスティニーの全身を見る。

 鉄灰色の装甲は白灰色、青、赤の三色に染まり、より洗練された姿となる。背面部のブロックパーツは姿を変え、デスティニーの非固定浮遊部位のウィングスラスターを一回り縮んだスラスターとなっている。同時に胸部のクリスタルパーツと全身に埋まったクリアパーツには緑色の光が灯されていた。そしてシンの目の下には見る者によっては血涙を連想してしまいそうな赤いラインが引かれていた。

 

「これは……」

 

 呆然とした表情でデスティニーを見るシンだが、そこであることに気づく。

(違和感が消えてる?)

 先程まであったシンとデスティニーの間にあった反応のズレが消えている。まるでシンとデスティニーが一つになったような感覚だ。

 

「そんな……初期設定だけであそこまで戦えたの?」

『そのようだな。全く次から次へと驚かせてくれる』

 

 真耶の驚きの声と千冬の通信越しの声を聞き流し、シンはデスティニーの武装項目を再度表示させる。一次移行したことにより武装には新たにビームソード『アロンダイト』、高エネルギー長射程ビーム砲、パルマ・フィオキーナ、ソリドゥス・フルゴールビームシールドが追加される。

 

「武装が……これなら!!」

 

 シンはデスティニーにアロンダイトを展開させ、両手でその得物を構えると同時に非固定浮遊部位のウィングスラスターからヴォワチュール・リュミエールを稼動させ、そこから光の翼を放出する。

 

「えぇ!?」

 

 光の翼を見た真耶は驚きの声を上げる。シンはそのまま凄まじい速度で一気に麻耶に接近する。

 

「こ、この!」

 

 真耶はシンを止めようとマシンガンとミサイルをデスティニーに向けて撃つが、ヴォワチュール・リュミエールによる高機動に加え、ミラージュ・コロイドを応用した残像によって真耶の攻撃はシンにかすりもしない。

 

「であああああああああ!!!!」

 

 シンはその勢いのままアロンダイトを横凪に払う。

 

「きゃっ!」

 

 真耶は悲鳴を上げ大きく体制を崩すが、シンの攻撃は止まらない。勢いを止めずに真耶の後ろに回り込むとデスティニーを反転させ、そのまま後ろから真耶のラファール・リヴァイブを再び横凪に切りつける。

 そしてそれが模擬戦の終幕でもあった。真耶のリヴァイブは切りつけられたままアリーナの地面に叩きつけられた。

 

『山田先生。大丈夫か?』

「は、はい。なんとか……」

 

 千冬が真耶に声をかけるとラファール・リヴァイヴの衝突によってアリーナの地面にできたクレーターからボロボロになった麻耶が這い出てきた。

 

「えぇと、大丈夫ですか? 山田さん?」

 

 そこでシンが空から降りてくる。思い切り真耶を地面に叩きつけてしまったことを気にしてか、若干心配げな顔になっている。

 

「ああ、大丈夫ですよ。アスカ君。心配しないでください」

「そう、ですか」

「はい。それより、リヴァイヴをビットまで牽引してもらえますか? さっきの背面からの攻撃で推進系統の調子が悪いんですけど……」

「……ホントにすいません……」

 

 ……こうしてなんとも最後のシメの悪い感じで起動テストは終了したのであった。

 

 

 

 

「では、今日はここに泊まっていただきます」

 

 そう言って真耶が連れていったのは今までの医務室とは違うIS学園教員寮の教員室であった。学生寮でもいいのでは、という声もあったが、まだ発表されていない世界で二人目の男性IS操縦者を生徒に見せるわけにもいかないのでこういう処置になったのである。

 

「明日は戸籍の作成や入学の手続きの書類などやることが沢山あるので今日はゆっくり休んで下さい。何かありましたら先程渡した携帯で私か織斑先生に言って下さい」

「分かりました。ありがとうございます。山田さん」

「違いますよ、アスカ君」

「え? ……ああ。すいません。山田先生(.......)

 

 模擬戦の後シンの処遇に関する話し合いが行われ、シン・アスカが希少な男性IS操縦者であること、そして異世界人であることを考慮した結果、シンは男性IS操縦者として身柄の保護と国際IS委員会で開発が進められている試作ISのデータ収集という名目でIS学園に入学することが決まったのである。

 それではおやすみなさい、と真耶の言葉を最後に部屋のドアが閉まる。シンは真っ直ぐベッドに足を進めると、そのまま倒れ込む様に寝転ぶ。この1日で色々なことが起きたためか、すぐに眠気がシンに襲いかかる。

 

「IS……か……」

 

 シンは自分が新たに得た力の名前をつぶやいた。それと同時にこれからの自分のことを考えた。

 道は示された。自分は少なくとも3年間はこのIS学園で生徒として過ごす。そこから先のことはまだ分からない。だから、探そう。自分が戦う理由となるものを、守りたいと思えるものを。

 シンは懐に手を入れ、そこからマユの携帯を取り出す。これはメサイアで出撃した時パイロットスーツに入れていたもので、治療の際にパイロットスーツを脱がした時に見つけたそうである。

 シンはマユの携帯を眺めながら、ポツリと呟く。この世界に来てから何度も繰り返してきた疑問を。

 

「俺に……見つけられるかな……守りたいものが……」

 

 それを最後にシンは深い眠りについた。

 

 

 

 

 

そして時は流れ

 

 

IS学園入学式

 

 

序章は終わりを迎え

 

 

全ての物語が始まる。

 




どうも。パクロスです。寮の同部屋の奴がどうしようもなく変態なパクロスです。

今回はやっと登場ISデスティニー。見た目は白式の装甲がデスティニー風になっている感じですかね。武装はCIWSとフラッシュエッジ、それとパルマ以外は全部拡張領域に収納されている感じで、必要に応じて取り出す感じです。あとそんな感じなので後付武装も付けられます。折角ISになったんだから色々な武装を取り付けようかと思います。

では後書きはすっきりスマートにまた次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。