夏休みも中盤になり、5教科の宿題はほとんど終わらせたのだが、ただ1つ大きな問題が。
龍悟「あー、自由研究のテーマ何も思い付かねーなー。どうしようかなー。」
俺は自由研究のテーマについて朝から考えていた。
こんなことを言っては悪いが、こんな田舎じゃ調べたいことが見つからない。どうしたものか。
プルルルルル、プルルルルル。
家の電話が鳴る。越谷家の番号だ。
龍悟「はい、神童です。」
夏海「龍ごーん、今暇?」
夏海か、暑い中元気だな。
龍悟「まあ暇だけど。」
夏海「これからみんなでほたるんの家に行かない?」
龍悟「俺も行って大丈夫なのか?」
夏海「いいっていいって。じゃあ2時にいつものバス停に集合ね。」
龍悟「わかった。」
みんなで蛍の家に向かった。
その頃蛍は…
side蛍
蛍「できたー!小鞠先輩のぬいぐるみ、名付けて『こまぐるみ』!」
蛍は部屋でいくつものこまぐるみを作っていた。
蛍「は~いいな~。こまぐるみいいな~。ちょっと作りすぎたけど。」
ピンポーン
蛍「誰か来たみたい。」
玄関に行くと、クラスのみんながお母さんと話していた。
side龍悟
蛍の母「蛍ちゃんのお友達?」
夏海「はい、初めまして。」
小鞠「こんにちはー。」
れんげ「にゃんぱすー。」
龍悟「初めまして。れんげ、挨拶はきちんとしろよ。」
れんげ「うちはいつもこれなのん。」
今はいいかもしれないが、正しい挨拶は覚えとけよ。
蛍母「さ、あがって。」
夏海「お邪魔しまーす。ようほたるん。」
蛍「せせせ、先輩!来たんですか!」
蛍が慌てている。こりゃおそらく事前に連絡してなかったな。
夏海「ほたるんの家きれーだなー。部屋もきれいにしてそうだし。」
二階にあがり始める。
蛍「あっあのっ!今部屋片付けますからっ!」
すげえ必死だな。まあプライバシーは守らなきゃな。
少しの間待つことに。
蛍「お待たせしました、どうぞ。(とりあえずこまぐるみはクローゼットに隠したから大丈夫かな。」
部屋に入れてもらう。女の子の一人部屋に入るのは初めてだな。普段しっかりしてるだけあって中はきれいに片付いていた。
夏海「なんだ、普通にきれいじゃん。」
小鞠「夏海の部屋よりはるかに快適だしね。」
龍悟「蛍は俺同様一人っ子だからな。」
れんげ「うちの家と世界がちがうのん。」
部屋の中をみわたす。すると、
小鞠「ねえ、アルバム見てもいい?」
蛍「どうぞ。」
アルバムをめくると、過去の蛍とその家族の写真がいっぱいだった。その中には、
龍悟「あれ、この写真の景色どっかで見たような。」
蛍「実は私、ここにいる親戚の家に遊びに行ったことがあるんです。」
小鞠「この時のほたるんちっちゃいけど、これいつの写真?
蛍「それは去年ですね。」
夏海「去年?」
みんなが不思議がる。まあ無理ないな。にしてもたった1年でよくそこまで背が伸びたもんだ。
れんげ「ん~、おもちゃないのん。」
暇そうに歩き回り、クローゼットの前で立ち止まり、
れんげ「ここにあるのん。」
そう行って勝手に開けようとする。おい、勝手になにやってんだ。注意しようとしたが、手遅れだった。
カパッ、ゴロゴロゴロゴロ。
蛍「あっ!」
龍悟「おい!」
クローゼットの中からは、ぬいぐるみらしきものが大量に出てきた。えっ、これって。
夏海「何で姉ちゃんのぬいぐるみが?」
小鞠「何で、こんないっぱい?
蛍「いや、これはその、練習したやつで。
れんげ「なるほど、すべてわかったのん。」
蛍「れっ、れんちゃん、何を?」
れんげ「ズバリこれは、ほたるんの自由研究なのん!」
ああ、そういうことか。
蛍「・・・・・?」
夏海「思い出した!ほたるんに自由研究写させてもらうんだった。」
小鞠「あたしもまだなの。」
れんげ「うちもです。」
龍悟「そういや俺も。」
小鞠「せっかくだし、みんなでぬいぐるみ作って自由研究にしない?」
夏海・れんげ「さんせー!」
蛍「ど、どうぞ。(何一人で慌ててたんだろ。)」
この際俺もやらせてもらうことにした。実は縫い物は少しできる方だ。 蛍に作り方を教わりながら、俺達はぬいぐるみを縫っていく。
夏海「れんちょんかんせーい!」
夏海はれんげを作ったらしい。その出来映えは本人を参考にしたとはとても思えない。
れんげ「うちは『具』なのん!」
れんげは飼ってる狸を作ったみたいだ。まあ百歩譲って色や特徴はとらえているみたいだが。
蛍「小鞠先輩の猫可愛い!」
小鞠「顔だけね。」
小鞠は猫の頭だ。さっきの二人と違い、なかなか上手い。
れんげ「龍ごん、それは何なのん?」
夏海「馬の頭?」
龍悟「ああ、これはチェスのナイトの駒だ。」
小鞠「すごい!芸術的!」
蛍「先輩裁縫もできるんですね。」
夏海「くっそー、うらやましい。」
れんげ「お馬さんいいのん。」
その後もみんなでぬいぐるみで盛り上がった。
夏海「自由研究ができりゃ、宿題は終わったも同然!
小鞠「あんたまだドリル全然進んでないでしょ!
れんげ「うちはもう少し。
みんな大変だな。
龍悟「ちなみに俺はこれで宿題終わっちまったけどな。」
蛍「私もです。」
そう言った瞬間、
小鞠「二人とも手伝って!」
夏海「ほたるんはともかく、龍ごんは頼りになるからお願い!」
おいおい、そんな調子で大丈夫かよ。
龍悟「わかった、じゃあ今度みんな俺の家に来いよ。」
夏海「マジで!?やったー!」
今度うちにみんなを招待する約束をし、帰宅した。
蛍の部屋なかなかいいですよね。ぬいぐるみが自由研究なのがまたいい!