今日の俺はいつもとは違うテンションで登校する。それもそのはず、今日は終業式なのだ。
豊かな自然に囲まれたこの 旭丘分校での学校生活も、ついに1学期を終え、夏休みに入る。
今日は終業式の恒例で、学校の畑で育てられたスイカを近くの河原で冷やしてべるらしい。実はここ数年俺はスイカを食べていなかったので、ちょっと楽しみである。
学校に着き教室に入るが、何人かは先に行っており、教室にいた蛍と小鞠で一緒に河原へ向かった。
河原に着くと、何やられんげが元気に何かを掴み取りしている。水中に飼いたい生き物でもいるんだろうか。
れんげ「のんっ! サワガニつかまえたー!」
夏海「捕まえてどうすんの?」
れんげ「飼うん!」
サワガニがいるんだから、ここの川相当きれいだな。
先生「はーい、それじゃースイカ食べるよー。でも先に通知表配ろうか。」
夏海「あーやだなー、成績見んの。」
そういえば田植えから数日後にテストがあったな。
先生「低学年から順に返すね~。」
通知表が全員に行き渡る。
夏海「れんちょんオール5とかすげー!」
れんげ「それほどでもなのん。」
れんげは好奇心旺盛だから、内容が頭に入りやすいのかもな。集中力も割とあるし。
龍悟「やっぱみんな成績は気になるよな。」
小鞠「夏海の場合母さんに怒られるのが心配だからね。」
あー、何かわかる気がする。
夏海「嘘!?やったー!あたし今回5と4多い!」
そりゃよかったな。
先生「あー、言い忘れてたけど、小学生は5段階評価で、中学生以上は10段階評価だから。」
ホッとしたのも束の間。それを聞いて夏海は一気に落胆する。まあしょうがない。それにしても10段階評価とか聞いたことねえぞ。
ちなみに俺は英語が10で、それ以外は6、7だった。他の教科ももう少し頑張ろう。
成績通知が終わり、みんなでスイカを食べる。畑で育っただけあって、みずみずしさと甘さに満ち溢れていた。
夏海「人生もこれくらい甘けりゃいいのに。」
そうじゃないのが世の常だ、頑張れ夏海。
夏海「この後どうする?」
れんげ「駄菓子屋行くのん。」
小鞠「まあそこくらいしか行くことないよね。」
蛍「龍悟先輩もどうですか?」
龍悟「そうだな、帰ってもやることねえし、行くか。」
スイカを食べ終え、俺達は駄菓子屋に行くことに。
駄菓子屋は学校からだと徒歩30分、俺の家からは50分かかる。この田舎唯一の駄菓子屋だから、出発地点によりどうしても距離に差がある。
れんげ「駄菓子屋ー、来たのん!」
挨拶から察するに、駄菓子屋の人はれんげの知り合いらしい。
「へいへい、今出るから。あとれんげ、あたしを駄菓子屋って呼ぶな。」
奥から駄菓子屋の店長らしき女性が出てきた。背は蛍より若干高く、髪は金色だ。
「あれ、今日は珍しい客がいるな。」
龍悟「はじめまして、北海道札幌市から来ました、神童 龍悟です。」
「はじめまして、 あたしは加賀山 楓 。この駄菓子屋あたし一人でやってるから、よろしくな。」
マジか?そりゃ大変だな。なかなか男勝りな感じだが、人当たりがよさそうで安心した。
楓「にしても北海道からか、また遠方からはるばる来たな。歳は?」
龍悟「17です。」
楓「高2か、でっかいわけだ。まあゆっくり見てってくれ。」
自己紹介した後、店内をまわってみた。知ってるものから知らないものまでどれも格安だ。
板チョコやガムなんかコンビニの半額だ。せっかくだからいくつか買っていこう。
龍悟「せっかくだし、買っていこうか。それと今日はみんなに奢るぜ。」
夏海「マジで!?やったー!」
小鞠「いいの、龍ごん?」
蛍「でも悪いですよ。」
龍悟「日頃世話になってるからな、その礼も兼ねて奢らせてくれ。
れんげ「龍ごん太っ腹なのん。」
蛍「じゃあお言葉に甘えます。」
こうして俺はみんなにそれぞれ500円ずつ奢った。
楓「まいど、2500円ね~。」
龍悟「じゃあ5000円で。」
レジに5000円札を出すと、蛍以外の三人が食いついてきた。
小鞠「5000円札持ってるんだ。」
夏海「なかなか見ないなーこれ。」
れんげ「うち、500円玉までしか見たことないのん。」
龍悟「じゃあこれも初めてか。」
財布から10000円札を出す。
夏海「これが10000円札かー!」
小鞠「これなら駄菓子の大人買いできるじゃん!」
れんげ「龍ごんリッチなのん!」
蛍「先輩結構持ってますね。」
龍悟「前の学校バイトOKだったからな。」
夏海「龍ごんバイトしてたんだー。」
小鞠「いいなあ。」
れんげ「うちも早く高校生になりたいのん。」
まあ焦るなって。
楓「龍悟、だったな。大変だろうがれんげたちのこと頼むな。頼りにしてるぞ。あたしのことは楓でいいから。」
龍悟「あっ、はい。今後もよろしくです楓さん。」
楓さんに挨拶し、俺達はたくさんの駄菓子と共に帰宅した。
今どきの駄菓子屋ってどんな感じなんですかねー。