真祖の眷族   作:賢者神

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 評価が五人を越え(ry


 いちいち報告したがるのは何故だろう。







悶える

 

 

 

 

 

「ふむ。わかりやすくできてる。私も参考にさせてもらおう」

 

「徹夜した甲斐があったよ。その言葉だけで」

 

 

 大学生でもないのにレポート提出とか変に感じるがレポートは小学生の宿題の自発バージョンみたいなものなので似たようなものかもしれない。

 エヴァンジェリンが羊皮紙の内容を読んで満足そうにしていれば眠たくとも頑張った甲斐があったというもの。取り敢えず評価はA+くらい下さい。

 

 

「面白い発想もある。時間を制御するのは何も世界だけではないのか」

 

「自分だけなら負担も世界の理を歪めるよりも遥かに軽減できるからね。自分の速さだけを強化するのが時間を操る事じゃないと思うんだ」

 

 

 これを固有時制御と名付ける。魔術師殺しさんありがとう。

 こう名前を付ければワルサーとかキャリコが欲しくなる。魔法が使えるから開発されたらすぐに盗みますか。バレなきゃ犯罪じゃないんですよ、多分。横流しの品限定にしよう。

 拳銃を使った魔法もいくつか思い付いているのでシングルアクションの拳銃が手に入れば改造してみよう。今の時代だと自分で考えて思い出して作れるほど器用ではないもの。

 

 

「これと雷の術式兵装を併用すれば神速の戦闘に思考が追い付くと思うんだ。速すぎて頭が追い付かないって贅沢な悩みを解決できると思うんだよね」

 

「考え方は素晴らしい。だがこんなのを思い付くのはお前だけで使いこなせるのもお前だけだ。私はこういった適性はないに等しいからな」

 

 

 一番の問題点は特別な思考能力必須なこと。言うなればなのはさんの魔導士御用達のマルチタスクっぽいものがなければ脳に甚大なダメージを受ける。鼻血が止まらなくなるのも地味に嫌な副作用である。

 吸血鬼特有の不死身体質がなければ即死だった。涎だけを出す人形になっていただろう。

 タキオン粒子でもあれば変身ツールでアレが使えるのだがそもそもタキオン粒子の仕組みなんぞ知らん。

 

 

「練習する為にもコツコツと小さな事から始めようと思う。思考が無理なら軽減するように分割すればいいじゃないって事で」

 

「柔軟な発想だな。普通なら思い浮かべた時点で対策ができん事が多いんだぞ?」

 

 

 まあ、こっちは元ネタを知っていますから。その差だろう。

 

 

「他にもあるんだけどまとめてるから読んで」

 

「暇が潰せるからな。重宝している。内容もそそられるものが多いから私としてもインスピレーションが得られる」

 

「だけどねぇ。アリアドネーの教師をやっている人に見せたら意味がわからんって怒られたんだけど」

 

「凡人はその程度だ」

 

 

 ありがとう。それはボクが凡人ではないと言ってくれるんだね。オカンとかオトンに彼女以外にストレートに褒められたのは初めてな気がするよ。

 オタク趣味って何で引かれるんだろう。趣味は人それぞれなのに教師にも笑い者にされるって何でなん?

 

 愚痴はここまでにしておいて。

 

 吸血鬼の不死身体質なら外道錬金術師のように実験台を用意して実験する事はしなくても済む。自分が実験台になればいいのだから。

 死ぬ事でも不死身体質なら復活はできる。エヴァンジェリンほどの超速再生には届かなくても手足を失っても再生は可能だ。違いといえばそのスピードのみ。

 代償のある固有時制御も最初は躊躇いもなくできた。死ぬ事に対する恐怖心も麻痺しているのか、死ぬ危険性も何それ美味しいの? 状態だ。ぶっちゃけ眠る原因にもなった時に死を覚悟した影響なんだろうなぁ。帰れても異常者として見られそうだ。

 

 

「おかわり」

 

「わかった」

 

 

 一拍置いたのか、エヴァンジェリンが紅茶の無くなったカップを差し出してきた。皿の上に置いて指で催促してくる辺り、おかわりを要求してるのだとわかる。

 ボク、下手糞なんだけど。紅茶の入れ方も素人だし味もイマイチだし。

 

 

「マズイ。もう少し練習をするんだな」

 

「苦手な事を強要するのはいい加減にやめてくんない? 上達するのもあればしない事もあるんだからさ。飯はあれだけど紅茶までは本当に無理なんだって」

 

「努力をしろ努力を」

 

 

 己はボクを過労死させる気か。どれだけ仕事をさせる気なんだホントに。

 ただでさえ魔法応用調査やらに熱を入れてるのに更に労働させる気なのか。まだ執事だから扱き使おうというのか。ブラック企業エヴァンジェルの爆誕なのか。

 

 

「これ、いつまでやるの? エヴァンジェリンの抱き枕やら腹枕をされて寝不足なんだけど。貧血もあるんだけど?」

 

「私の血のコレクションをやろう」

 

 

 いらねーお。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―― 固有時制御 二倍(ダブル)

 

 

 

 ―― ものみな焼き尽くす浄化の焔――

 

 ―― 闇夜切り裂く一条の光――

 

 

 あ。駄目だこりゃ。

 

 ちゅどーん。爆発が起きて吹き飛んだ。肌が焼けている感覚に脳が痛いと叫んでいる。

 

 

「うわちゃちゃちゃちゃ!」

 

 

 頭がファイアーになっているのもわかる。頭が超熱い。

 言わずもがな実験は失敗である。固有時制御を発案したのはいいが実戦に使うにはまだ無理がありそうだ。というよりも方向性が違う。

 マルチタスクを目指しても魔術師殺しの能力を真似た技法は思考を加速させるだけで分割思考はまた別で無理のようだ。こうなればなのはさん御用達のデバイスを作るしかないのだろうか。レイジングハートはどこだ。

 

 ―― クーラ

 

 治癒魔法を発動して吸血鬼の治癒能力と併合して傷を癒す。頭は燃えるし肌は焼けるし災難だ。実験も楽ではない。

 

 

「何をしてるんだお前は」

 

「失敗した。固有時制御を考えたのはいいがこれは方向性が違う」

 

 

 物事を分けて考えると思われる分割思考があるのとないのでは戦闘も随分と変わるはずだ。

 何かを分ける事ができれば魔法を発動する、魔法を充填する二つの事を同時にこなせるだろうと思われる。術式兵装を発動、指にすぐさまストックができると思うんだ。戦い方を見抜かれてもこれで騙せるだろうし。

 

 エヴァンジェリンにも治癒魔法を使ってもらい、傷を一気に癒してもらう。火傷まで治せるから魔法は便利だ。吸血鬼化が一番ニキビが消えるのに貢献しているが細かいのは治癒魔法で治せてるからな。

 

 

「分割思考……分割思考……誰かいたっけ?」

 

 

 なのはさんは違う。デバイスがあってこその面がいくらかあるからデバイスが無ければ無理というオチに至るかもしれない。素で分割思考が可能な先駆者様はおらぬのか。

 肝心なところで覚えていないパターンが最近多い。また記憶を覗き見る魔法を使わなければならないのか。欝になりそうだ。

 

 

「あまり他の者に頼るのも良くないぞ。少しは頼らずに自分の力で力を探してみたらどうだ?」

 

「無理」

 

「諦めるなよそこで」

 

 

 いつからエヴァンジェリンは熱血系になった。ラケットを持たせたらべ様になるからやめようぜ。

 

 

「うーん。あんま覚えていないけどマルチタスクの練習っぽい事してみるわ」

 

 

 そもそもの分割思考とマルチタスクは同意義じゃないかもしれんけど。専門じゃないし大学生でもないので無駄知識があるとは言えないのだ。残念。

 昔に読んだアニメの世界に主人公よりも主人公しているオリジナルキャラのように何でも知っているわけじゃないのだ。何でも知ってるわけじゃないよ、覚えている事と知っている事だけしか知らないの。

 魔法を使えば過去に見た光景をそのまま思い出しながら見る事はできるが逆に見ていないものはわからない。知らないアニメや漫画にゲームの知識は記憶されていないので覚えていないのは当たり前だ。

 もしかするとその中に分割思考かそれに似た能力を持っているキャラがいたかもしれない。これならもう少しオタク趣味に没頭すればよかった。

 

 うろ覚えだが左手と右手で違う文字を書くのもそういった練習になりそうだ。左手で丸を書いて右手でバツを書くとかどっかにあったような。

 うむ。新しい暇潰しと課題ができた。

 

 

「これ以上鍛えてどうするんだ」

 

「最終的には世界の敵になろうっかなーと」

 

「馬鹿かお前は。馬鹿か」

 

「何で二回言ったの?」

 

 

 最低でも人類の敵に。絶望の淵に陥れば絶望に身を任せて何かを思い付けそうだ。物語のラスボスもそんな境遇が多かった気もする。

 ドラゴンにでも目指してみるか? 吸血鬼だから吸血鬼の王と書いてヴァンパイアロードにでもなってやろうか。一枚のカードを墓地に送ってやろう。

 

 

「よし。ヴァンパイアを探そう。屈服させて王になってやるんだ。やったね! 部下が増えるよエヴァンジェリン!」

 

「おいやめろ」

 

 

 ネタに走った感が否めない。今の時代だと洒落にならないのでこの台詞だけはやめておこう。

 

 

「まあ冗談は置いておいて。前に話してた吸血鬼は実在するの? エヴァンジェリンは突然変異だとするなら純血の吸血鬼もいるって事を聞いたけど」

 

 

 エヴァンジェリンは十歳の誕生日に吸血鬼にされたそうだが。術による影響なので純粋な吸血鬼とは言えんらしい。ピュアヴァンパイアなる者が存在しているそうだ。

 吸血鬼、ヴァンパイアのイメージを挙げれば偉そうとか誇り高いとかチートとか。今の時代ならスタンド使いそうな奴がいそうだ。生で会えるならあの叫びの発音はどうなるのだろうと期待してたりする。

 

 

「ん。いるにはいるらしいな。まだ会った事はないが存在はしている。吸血鬼殺しを生み出せるのは私だけの対策じゃないだろう?」

 

「言われればそうだ」

 

「私より前に存在する吸血鬼が吸血鬼の弱点を持っている。聖水やらニンニクやらな」

 

「銀の弾丸で吸血鬼を殺すのもあったっけ?」

 

「弱点ではあるが殺せん。寧ろ銀の弾丸は狼男を殺める」

 

 

 詳しいなエヴァンジェリン。吸血鬼になってから自分の弱点はキチンと把握しているようで頼もしい。クォーターヴァンパイアのボクはマギア・エレベアがあるといってもマギア・エレベアがなければ雑魚かもしれない。

 あー、頭もあまりよくないし身体能力もエヴァンジェリンよりも低いと思う。身のこなしもエヴァンジェリンには敵わない。純粋な身体能力での戦闘力はエヴァンジェリンのが上でマギア・エレベアによるデタラメ戦法だからこそ勝てている印象がある。

 頭を鍛えるのと一緒に体も鍛えた方がいいのだろうか。尊敬するバーン様も体を別けて力を温存していたしラスボスを目指すのであればあのようにする必要がある、のか?

 

 

「吸血鬼には最強の一族がいる。人間階級で言うなら貴族と呼ばれる傲慢で誇り高いヴァンパイア、おそらく私達と同じレベルだ」

 

「……ほう?」

 

 

 それは是非とも喧嘩を売らねば。

 

 

「隠れてるから多分見つからんぞ。旅をしていても会った事がない」

 

 

 奴等はツチノコか何かか。

 残念だ。もしいれば文字通り血肉にして吸血鬼化を進めようと思ったのに。力を得て人類の敵に本気でなろうと思ったのに。

 

 

「私達は永遠だ。生きていればどこかで会えるだろ」

 

「……というかエヴァンジェリンって真祖だから会ったら祭り上げられるんじゃないの? 真祖姫とか言われそう」

 

 

 空想具現化するなよ? するんじゃないぞ!?

 ……あ。そういえば元ネタでいえば分割思考、シオンだかシエルだかがいたじゃん。アレはやった事があるはずだから記憶を覗き見るか。憂鬱になるわぁ。

 

 

「エヴァー今日は抱き枕になってー」

 

「何を言ってるんだお前は。まだ奴隷のままだろ」

 

 

 オカンにオトンを思い出せば欝になるから人肌が恋しくなる。エヴァ、エヴァンジェリンは冷たい印象に反して抱き枕にすれば肌のスベスベ感と暖かさで安らぐ。もうエヴァンジェリンに依存してるなぁ。

 真祖の眷族。エヴァンジェリンの眷族である事には永遠の不変。エヴァンジェリンに依存するようになっているかもしれんが自覚があるようでないのでどうかわからない。

 

 以前にも記憶を覗いてホームシックになってエヴァンジェリンに慰められた時からエヴァンジェリンの方も欝になる兆候を感じ取れば何も言わずに慰めてくれる。

 今は罰ゲーム奴隷の時間なので呆れた目で見てくる。もう少し後の奴隷期間が終わった後に頼んでみよう。

 

 

「……ふむ。今日はお前を子供にして寝よう」

 

「ショタコンですか?」

 

「母としてお前を癒してやろう! 素のままでも身長は伸びてきたからな。この喜びを今からでも実感したいわけだ!」

 

「やめるんだ。今のエヴァンジェリンは優越感に惑わされているだけなんだ! 小さな少年と今のエヴァンジェリンだとおねショタになるだろうが! 薄い本を厚くしてどうするんだ!」

 

 

 もうおねショタという思考に行き着く時点で頭が病んでいる。どんだけ性欲に塗れているんだボクの思考と頭は。

 

 

「? 流石に子供に手は出さんぞ」

 

「え、エヴァンジェリンがマトモだと!?」

 

「お前が普段の私をどう見ているのかよくわかる一言だよ。ほらさっさと食え」

 

 

 エヴァンジェリンの細い指が丸い球体と共に口の中に侵入してきた。飴玉のような食感がその正体を告げているようだった。

 

 

「ちくしょう」

 

「ふははははっ! 似合うぞ。その服はいただけんが」

 

「おめえ、なめんなよ。このふくはみらいだとぼくみたいなねんれいのこどもはみんなつかうんだぞ。ばかにすんなー」

 

「うむっ。可愛い可愛い。今までとは逆の立場だな。ん?」

 

 

 うるせえ。てやんでい。自分よりも高い位置にあるエヴァンジェリンの頭が見える。彼女の手が優しく僕の頭を撫でてくる。本当に前と逆の立場じゃないか。

 ポンと煙も出ない変化からエヴァンジェリンは小さくなる薬をさらに改良したようだ。今まで実験台になっているからその効果はしっかりと確認できる。不思議の国のアリスか何かのオマージュなのか? この薬。

 

 

「ふむふむ。効果は上々。変化を見極められる事もないように改良も成功している。名付けて年齢詐称薬改だ」

 

「そのまんまじゃん」

 

「ふっ。まだまだ改良の余地はあるからな。ほれ、試作薬」

 

 

 年齢詐称薬と名付けられた薬は見た目の年齢と中身をそのまま幼くしたり老けさせたりする事ができる夢の薬。効果はそのまま見た物通り。幼稚園児になったボクが良い具体例だ。

 前よりも小型化してるじゃまいか。なのにその効果は前よりも上がっているようにも感じる。副作用らしい副作用の煙が出る現象が無くなって目をちょっと目を離した隙に小さくなっている? と錯覚を起こさせる事もできるっぽい。

 

 デザインはともかく。まんま正○丸だなこれ。バファ○ンにも見える瓶を投げ渡された。

 おいやめろ。幼稚園児になって筋力が弱くなってんだぞ。魔力は封印されているし素の身体能力は雑魚なんだぞ。骨が折れてしまうではないか。

 

 

「あれ。でっかくなるほうは?」

 

「もう少しそのままだ。契約期間を終えるまでそのままな」

 

「ちね! ちんじゃえ!」

 

 

 や。流石にこの言い方はわざとだけど。

 もう罰ゲームを通り越して羞恥プレイだよこれ。ボクの幼稚園児姿って誰得だよ。

 

 

 

 

 

 

 







 ここで解説を一つ。魔術師殺しこと衛宮切嗣さんの固有時制御とは名前が同じだけで中身は違います。思考を加速、体感速度を加速、反射神経を加速させる名目でオリ主が考案した対超高速戦闘に対応するための手段です。

 マルチタスクとはまた別。そこら辺は適当に考えているので解説してと言われてもできんでござる。





 エヴァンジェリンはショタコン(年齢的な意味で)





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