真祖の眷族   作:賢者神

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企む

 

 

 

 

 

来たれ氷精(ウェニアント・スピーリトゥス)闇の精(グラキアーレス・オブスクーランテース)

  闇を従え(クム・オブスクラティオーニ)吹雪け(フレット・テンペスタース)常夜の氷雪(ニウァーリス)!」

 

 

 噛み噛みになる詠唱を一息で言い切るエヴァンジェリンに尊敬の意を抱きながら頭の中のイメージを引き起こし、燃え盛る炎の魔法を描く。

 エヴァンジェリンの得意技である『闇の吹雪』であるのは詠唱からすぐにわかる。無詠唱魔法は相手にギリギリの駆け引きで使用する魔法を隠せるからこそ普段はエヴァンジェリンも無詠唱で行使する。

 

 

「闇の――」

 

 

 詠唱を完成させられる前に右手を揃え、手刀の形にして空間を斬るように薙ぎ払う。これがエヴァンジェリンといった普通の魔法使いとは違う自分だけのオリジナルの魔法の撃鉄。

 何も無いはずの空間から灼熱の燃え盛る炎がイメージ通りに噴き出して視界をあっという間に赤に染め上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらずのチートめ」

 

 

 戦闘を終えれば褒めてるのか貶しているのかわからぬ魔法の師匠の言葉。エヴァンジェリンと戦っているように見えたが、相手にしたのは賞金首狩りで飯を食っているフリーランスだといいなー的な魔法使いだ。

 一人で来たからそれなりに吸血鬼を狩るだけの力がある実力者かと思えばランク的にはファイラの炎の一撃で炭になってしまった。様子見か相殺するつもりだったのに親子かめはめ波で消えたアナゴさんみたいに消し飛ぶとは。

 

 

「燃える天空でも使ったのか?」

 

「寧ろ紅き焔みたいに弱い部類なんだけど。あれ弱くね?」

 

 

 演じ分けのキャラを崩すほどの呆気なさ。百年の眠りから覚めた初実戦は不完全燃焼の結果になった。

 

 

「お前が強くなり過ぎなんだ。火の適性がずば抜けていれば下位でも下手すれば上位の呪文になると前に教えただろうが」

 

「マジですか」

 

「氷と火、今はこの二つの適性が他よりも高いんだ。今のように不完全燃焼になりたくなければ苦手な方を敢えて使え」

 

 

 ぶっちゃけ適正とか関係ないと思われるのだが。イメージで発動するらしい魔法はイメージがしっかりとしていればできる。威力は本物と比べなければわからずだがそれは一生叶わないだろう。

 マギア・エレベアの文様に闇の魔法、エヴァンジェリンの眷属兼闇の眷族というアドバンテージがなければここまでは無理だ。イメージ通りといってもエヴァンジェリンの知る魔法と近い魔法でなければできないっぽいから見方によっては便利とも言い難い。

 ギガブレイク等、武器に雷を纏わせるのは論外だ。雷を剣のように形状を変化させて使うのは大丈夫らしいがそこら辺の基準はまだまだ要研究である。

 

 

「あー、殺してしまったから新しく手配書がばら蒔かれるかね? もう演技するのも疲れたからやめていい?」

 

「まだひと月も経っていないだろうが!」

 

 

 自分達が知らない間に発信機でも仕込まれているのではないかと今、思う。以前はエヴァンジェリンが寝ている間に撃退をしてくれていたので襲撃回数は正確な数は把握しきれていない。

 エヴァンジェリンにエヴァンジェリン以上の賞金首を持つボク。六百万と七百万の高賞金首コンビは宝の山に見えるだろうよ。自分の実力に過信して襲う者も結構いると教えてもらったような気もする。

 

 目覚めてエヴァンジェリンの言うようにひと月が過ぎている。以前なら髭が生えているだろうに、髪の長さも髭も変化はない。吸血鬼化の影響らしい。

 なりそこないの吸血鬼、エヴァンジェリン曰くクォーターのヴァンパイア、何を基準にか四分の一だけ吸血鬼(ヴァンパイア)と呼んでいるので実際には変化がないというよりは変化が緩やかなのだと思う。どこかのヴァンパイアさんもそんな感じだった。

 吸血鬼になれば頼りきりだった他人の魔力を使わずに自分で使える。マギア・エレベアも凡人の自分を強くしているので早く慣れれば戦術の幅は広まる。魔法を取り込む点は並の魔法使いにはチートそのものらしいし。

 

 

「というかひと月も過ぎてるのに研究すらしていないのは何故だ。闇の魔法(マギア・エレベア)の講義だけで時空間に干渉する魔法は探さないのか?」

 

「――偉大なる先人は言いました。時間を越えたければ空間を殴って突破せよと」

 

「できるかぁ!」

 

「冗談だよ冗談。ほら、魔法の英知を全て知れば自ずとそんな魔法も生み出せるっぽいじゃない。偉い賢者が言ってた」

 

「どこにそんな賢者がいるんだ! お前の世界観を私に押し付けるんじゃない!」

 

 

 でもなぁ。実際に理不尽な理由で最強の座にいるボスとかいるから何でもできそうな気もするんだよ。特定の戦法とか武器が無ければ問答無用で殺されるボスも。

 そんな化け物に共通するのが世界を滅ぼそうとして主人公に倒されるか封印されるか改心されるかなんだよね。あの終わり方はご都合主義乙とも言ってしまうが最低のラインがタイムトラベルができるっぽいんだよ。

 人類の敵に相応しい力を手に入れれば閃いた! とかでタイムトラベルできそうで困る。

 

 

「魔法と魔法の組み合わせで新しい魔法が生まれる事も考えられるじゃん?」

 

 

 メドローアとか。相反する力をぶつけて消滅魔法を生み出す例があるから探せばあると思うんだがなぁ。

 

 

「エヴァンジェリンのマギア・エレベアも起爆剤になると思う。光速で動けばできない事もないはず。多分」

 

「世界の理を変えるほどのスピードを出す気かお前は」

 

 

 気合でなんとかなるでしょ。デロリアンも仕組みはわからないのにタイムトラベルはできるいかにも摩訶不思議設定が通じると思えば不可能はないと思うんだ。

 

 

「そうと決まれば1.21ジゴワットの電力を引き起こすんだ」

 

「1.21ジゴワットは稲妻の電力だろうが! 千の雷でも本物の稲妻と同じ電力を起こせる保証はないんだぞ!?」

 

「大丈夫大丈夫。ギガデインさんならやってくれる。駄目なら時計塔に電線を引っ張って物干し竿で――」

 

「死ぬ気か貴様!」

 

 

 冗談だよ冗談。物干し竿なんてどこに差せばいいんだよってなるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一息置いて腹の底に力を入れる。名付けて、『炎帝(Honootei)』。マギア・エレベアの術式兵装で最も得意、回数も多い形態。

 轟々と炎が猛り、自分の体が人ならざるものに変わった。押さえ付けても尚、漏れ出す灼熱の炎が自分の立つ場所と周りの空間を歪める。

 

 

「ふんぬっ」

 

 

 パッパッパッと炎の化身から氷の化身、雷の化身と形態が変わる。姿見で変わるのがハッキリとわかり、状態も安定しているようである。

 

 

「どう?」

 

 

 術式兵装を解いて首を鳴らす。目覚めてからはよく骨がコキリと鳴る事が多くなっている。魔法の少なからずの後遺症だと思えばこれくらいは平気だが、一番の理由は魔法を解除してコキコキと首を鳴らすのが格好良いと思うところ。

 エヴァンジェリンに首を向ければ難しそうな顔をして考え込んでいるようだった。

 

 ――きっかけはエヴァンジェリンの好奇心から。

 

 マギア・エレベアの瞬時換装、ボク流のマギア・エレベア戦術最大の利点である術式兵装の換装スピードの秘密を探ろうと正義の魔法使いを名乗る魔法使いから逃れながら研究をしている。

 こっちが時空間に関する研究だとすれば、エヴァンジェリンは自分が開発したマギア・エレベアの更なる改良の研究。

 何かを調べる時によく使われる解析魔法陣を至る場所に。休憩に使われている“別荘”の中にある塔の一室で休む度に調べられている。

 

 

「よくわからん。私でさえ呪文詠唱がまだ必要なのにどうやって呪文詠唱のプロセスを省いて発動しているんだお前は」

 

 

 変なものを見る目で見られる事も毎度のこと。羽ペンで大きな本に文字を書き続ける彼女は研究が難航しているようだ。

 エヴァンジェリンの反応はともかくとして使い切った分を補填する為に精神を集中させて指に魔法を補充する。指の指紋の渦の中心に吸い込まれるのを見届けながら親指、中指、薬指へと。

 

 

「前提としてはイメージで無理矢理魔法を使うからこそこれができるのか? 系統も私オリジナルだからまだまだ研究が必要だな……」

 

「良い暇潰しにはなるんじゃない?」

 

「ふんっ。退屈はせんだろうな」

 

 

 嬉しそうで何よりです。

 魔法を補充した指がポキポキと鳴りながら動くのを見ながらしっかりと魔法が指の中にある事を確認する。

 エヴァンジェリンに言わせれば暴発する危険があるのによくコントロールできるな、だそうだ。極大呪文を留められるのは腕一本なのにクソ野郎らしい。流石に言い過ぎか。

 

 

「これからの予定はどうする」

 

「今の時代じゃ見たいモンは無いなぁ。エヴァンジェリンが吸血鬼になった百年戦争辺りだったらジャンヌ・ダルクに会いたかったんだけど」

 

「ほう」

 

「聖処女って聞かれるとエロく感じるじゃない」

 

「この変態め!」

 

 

 言っておくが処女厨ではない。同人誌のネタにはそんなのがありそうだから好みのジャンルのオカズなだけだ。

 

 畜生。ジャンヌ・ダルクみたいな女騎士に【息子】になんか負けない! 【息子】には勝てなかったよ……をやらせてみたかった。

 どこかにクールなお姉さんタイプの騎士はいないのだろうか。従者としても欲しいし夜のお供にも欲しいのだが。

 

 

「……ふむ。そんなに騎士が見たいなら見に行くか?」

 

「え。今の時代にいんの?」

 

 

 ぶっちゃけたら維新志士ぐらいなんじゃないの? とエヴァンジェリンに問う。騎士道よりも侍道に近いものだと思うんだけど。

 

 

「アリアドネーなら魔法騎士団があったはずだ。華のある隊もあるそうだぞ。美人も多いと聞いているぞ」

 

「気の強い子を誘拐して調教……おっと」

 

「寧ろ処女がいいな。血をワインに混ぜると絶品なんだ」

 

 

 エヴァンジェリンが処女厨だった(驚愕)

 

 まあ、どちらにしてもボク等ゲスだよなぁ……闇の福音と悪い魔法使いなだけはあるよ。会話がもう外道そのものだもの。

 女の味を知らない童貞ではないんだが非童貞だからこそオカズにしてたシチュエーションに憧れるのだろうか? どちらにせよ一度だけでもいいから言わせてみたい。

 今の自分、どうせ賞金首で悪の魔法使いだから倫理とかどうでもいいんだよねー。これも吸血鬼化の影響なのか。元々の欲望が表に出ただけかもしれんが。

 

 

「アリアドネーって……魔法世界にあるんだっけ? 犯罪者のボク等、通行許可出ないんじゃないの?」

 

「偽造できるぞ」

 

「エヴァにゃん愛してるー!」

 

 

 大体こんなノリである。自分より背の低いエヴァンジェリンの体に抱き着いて頬と頬を擦り合わせる。プニプニなほっぺが癒しである。

 嫌そうな顔をするかと思えば意外と満更でもない顔をしてやれやれと背中を叩いてきた。まるで自分の方が年上なのだから好きにやらせるべきなのだと暗に言っているようで少し情けなく感じた。

 謝罪も含めて魔法で体温を上げてほっぺを暖かくしてあげた。もがき始めるけど逃がす事はしない、させない。

 

 

「熱いんだお前はー!」

 

「冷え性だから気遣ってあげてるんだよ」

 

「人肌で十分だろうが! 火の魔法を使って熱くするんじゃない!」

 

 

 えーと非難がましい声を出せば割と本気で足を踏み潰そうと何度も踏んできた。それを避けられる自分も自分だが。まさか足だけで龍玉戦闘のようにできるとは。

 暫くエヴァンジェリンと戯れ、目的を忘れる寸前まで遊び続けた。

 

 

 

 

 

 

 







 オープンなゲス野郎。ちなみに作者はロリコンです。エヴァにゃんぺろぺろ。

 ぶっちゃけなぁ。エロゲーとかで抜いてる経験でもあれば転生後は自分の欲望に従うと思うんだ。性欲のないオリヌーシはぼっちがオフ会に出るほどありえない(確信)

 エロをオープンに欲望を抑えないオリ主、いいと思います。ヒロイン=犠牲者になるけど多分エヴァだけがヒロイン。モブさんは色々犠牲者が多くなると思うよ。

 レイプ魔っぽいけど許せる人だけ進んでくれい。





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