真祖の眷族   作:賢者神

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 スパロボのIFルートやってました(テヘペロ☆

 久し振りなんで内容はクソです。






逃げ逢う

 

 

 

 

 

「やっちまった」

 

 

 おい兄ちゃんどうしたんだと周りから声が聞こえる。

 頭を抱えて俯く人間を見れば大体半々の反応をすると思う。半分は心配そうにして気遣う。もう半分は関わるのはゴメンだと無視する。どうやらここの人間は前者が多いようで何人も声をかけてくる。

 まあ、居酒屋だしね。酒に酔ってるのが多いし、その場のテンションに身を任せるのがほとんどだろう。

 

 

「ボクちゃんねぇ。大事な女の子を浮気者とか言ってしまったんだよぉ」

 

「何をやってんだアンちゃん。女には優しくするのが男ってモンだろうがよ」

 

「俺もなぁ。母ちゃんを怒らせたりはするけど浮気者とか言わんし言えんぞ? 後で母ちゃんに怒られると怖いしな」

 

 

 何が面白いのか、豪快に笑うオッサン一同。これだから酔っ払いはと嘆く人間がいる事が自然と理解できた。この場所では笑い上戸が多いようである。

 

 

「うぅ……ごめんよ。一方的に言うだけで言って逃げてごめんよぉ」

 

 

 どうやらボクは泣き上戸のようだ。泣いているのに中身は冷静なのはどうも気持ち悪く思える。エヴァンジェリン。ああ、エヴァンジェリン。ごめんよぉ。

 

 

「こりゃ重症だな。慰めるよりも酒を浴びるように飲ませた方がええ。明日は頭が痛くなろうけど酒は忘れたいのを忘れさせてくれるし」

 

「おいマスター。このアンちゃんに酒を。オラの奢りだべ」

 

「ごめんよぉ……ごめんよぉ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「超頭痛い」

 

 

 ガンガンガンガンと頭の奥から鈍痛が響く。ついでに何か生臭い。

 

 

「――って、ここゴミ捨て場じゃねーか。何でテンプレ二次酔いみたいな展開になってんだボク」

 

 

 吐き気はないようだ。よし。服も大丈夫。ゲロを吐くという事態にはならないと思う。

 よーしよしよし。だんだん思い出してきたぞ。昨日はしこたま飲んだんだったな。ウォッカやらかなりキツい酒をそれこそ浴びるように。

 今までは洒落た感じで飲んでいたがアルコール中毒のように飲んだのは初めてだな。何かに酔うのはエヴァンジェリンだけ……はっ。

 

 

「ごめんよぉエヴァンジェリンんんん……」

 

 

 自己嫌悪に陥る。生半可に冷静だったせいで落ち込んだ時の感情がハッキリと覚えているから気分が沈む。ここまで落ち込むのも初めてだ。

 あの時、エヴァンジェリンが一人で勝手に性欲発散をしている上におにゃのことにゃんにゃんしているのを見ていたら正気を失ってしまった。浮気者とかも叫んでしまった事をちゃんとしっかりと覚えている。

 クソ。クソめが。ボクはエヴァンジェリンに浮気を許されている立場にいるのに浮気者と罵るのはお門違いもいいところではないか。

 

 ……いや、少し待て。策略家のエヴァンジェリンの事だ。

 

 

「まさかとは思うがあれはボクを騙すために……!?」

 

 

 浮気者と言った罪悪感を利用して結婚しろとか普通に言いそうだ。

 ふむ。それなら別にいいか。後でひょっこりと顔を出せばいいでしょ。

 

 今までずっとエヴァンジェリンと一緒にいたから偶には連絡も取らずに別れてどこかへ行くのもいいかもしれない。計画はもう佳境に入っているし、後は出てくるのを待って待ち続けるだけだ。

 あー、冗談だけどもしここではなく元の世界を選ぶのならエヴァンジェリンとは間違いなく永遠のお別れになる。

 悪いんだがエヴァンジェリンが寂しがり屋だとしても今は彼女を選ぶ確率は高いと思うんだ。永遠の別れになったらエヴァンジェリンは悲しんで……。

 

 

「……」

 

 

 無理だ。悲しむよりももう一度会うために何でもしそうなエヴァンジェリンしか浮かばない。

 吸血鬼の真祖だから永遠の命と時間を利用して時間とか世界を飛び越える魔法とか生み出しそうで……ボクの知恵を渡した事を激しく後悔しているよ、今は。

 いや。まあ。知恵を渡さなかったら今の自分はいないんだけどね。

 

 機嫌を損ねたら何をしでかすかわからないのがエヴァンジェリンだって事をあれを見て正気を失って罵倒したのは早まったかもしれん。

 か、帰れん。帰った途端に監禁エンドとかにならんよね。帰るための道具とか全部エヴァンジェリンのトコにあるんだぞ!?

 ど、どどどど、どうすんだよ!? 殺してでも、愛する。とか新しい名言を生む原因になりそうであがががががが。

 

 

 ―― 愛してる。

 

 ―― 大好き。

 

 

 イチャイチャしてる時のエヴァンジェリンの言葉が今では別の意味を含んでいるように思える。子供の時も大人の時も甘える時は甘えてくるから毎度、このセリフを言う。

 依存しすぎじゃねーか?

 

 

 ―― どこにいる? 会いたい。

 

 

 ……ゾッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新入りぃ! 13番!」

 

「わかりましたぁ!」

 

 

 元気がいいなぁ。若いってやっぱりいいわ。見た目こそ若くても中身がジジイのボクはあんな元気に返事はできそうにない。

 

 

「くおらぁ! 新入りその2! サボってないで運べ!」

 

「あいさー」

 

 

 新入りその2ことボク。姿を隠すために変装してアルバイトをしている。フッフッフッフッフ。これでも面接一発合格だぜ。就職は難しいぞとオトンに脅されていたのが嘘のようだ。

 だが経歴詐称という前歴者。残念ながらボクは手配中の大犯罪者、世界最悪の化け物なので経歴は詐称しなければ面接なんてやってられない。どこぞのヅラさんのように手配書を見せて会員カードを作るなんて度胸はありはせぬ。

 

 両手の掌の上に二枚。その更に上、肘を折った場所でも二枚。器用に支えながらウェイターをしつつも料理を運ぶ。

 ガヤガヤと騒がしい店内を人とぶつからないように避けながら。クルリと回りながらも落とさないように運んだ。飯が美味いとの評判でアルバイトしているので人は多いため、ぶつかる回数が一番少ないのはボクだったりする。

 軽業師とも誰かに言われたからねぇ。体はエヴァンジェリンに殴られて肉が柔らかくなるように、度重なる戦闘と吸血鬼の特性でキモイほどグニャリと膝やらを曲げる事はできる。でなければマギア・エレベアには耐えられん。

 

 

「おまたせしましたー」

 

 

 営業スマイルと一緒に料理を置いた。営業スマイルとはいえ、笑顔をあんまり他人には見せたくないと思うのは昔に写真に撮られるのが嫌いだったからだろうかとどうでもいい事を内心思う。

 心のこもっていない笑顔でも騙される異性はいる。そんな異性に対応するのがめんどくさいから見せるのに抵抗があるんだが。

 所謂、メルヘンな、騙されやすい女がそれに当て嵌る。結婚詐欺で騙されるとかテレビの特集があったなーと昔を思い出して溜め息を吐いた。

 

 

「新入りその2! 終わったなら早く次を運べ!」

 

 

 五月蝿い店主である。この口調がなければもっとこの店は繁盛すると思うんだがね。愛想の悪い店主と美味いラーメン屋みたいだ。作るのは外国の定食屋の定番みたいにナンとかカレーがセットのメニューだけど。

 ラーメンかー。食べたくなった。今の時代だとラーメンやら炒飯に餃子はないからな。そういった食べ物こそ恋しくなる。今は第二次世界大戦が終わって少しくらいだと思うから三十年も待てば食えるのか。

 ぶっちゃけ元の世界に帰れるか食べられるか競う事になりそうだ。くだらない目標だが意外と前向きになれるので立てておこう。オーウ、じゃぱにーずフジヤーマテンプーラ。天ぷらは食えるけどね。

 

 ふむ。一人だと中々会話が長続きしないな。誰か知り合いでも見つけられないだろうか。

 

 

「おや。精が出ますね。ウェイターの真似事でしょうか」

 

 

 い た 。

 

 

「素晴らしい変装術です。初め、見た時から惚れ惚れするような変装で私、胸がときめきそうです」

 

「野郎、お客様。注文をどうぞ」

 

「では貴方のおすすめを」

 

 

 店員に、それもアルバイトの店員に注文を決めさせる。罰ゲームか何かかよと突っ込みたいが青筋が立つ営業スマイルを浮かべながら注文を取る。

 腹が立つ胡散臭い笑顔を浮かべる優男。一郎君ではなく、まほら武道大会で会ったアルビレオ・イマが全てを見抜いているかのように話す。ニコニコしている面をぶん殴りたいと思ったのはこいつくらいじゃないかな?

 ……今まで突っ込まなかったけどアルビレオの隣にいる一郎君みたいな子供は誰かな? 隠し子?

 

 

「そういえばまだ紹介していませんでしたね」

 

「隠し子?」

 

「フフフ。冗談もお上手で」

 

「この性悪の子供に勝手に認定されると腹が立つのぉ」

 

 

 ……えっ。耳が腐ったのかな?

 

 

「ねえねえ。子供は背伸びをしたがるけどこれは年の行き過ぎじゃないかな?」

 

 

 ロリババアならぬショタジジイだな、これは。ロリババアならエヴァンジェリンがいるけど男バージョンは初めてだ。

 

 

「失礼な奴じゃ。悪い魔法使いというのは性格も悪いものなのかの?」

 

「初めて会えば誰でもそんな反応はすると思いますよ?」

 

「待て待て。何でわかるんだ」

 

 

 エヴァンジェリンのお墨付きの変装術を一発で見抜かれたのは初めてだ。アルビレオはバケモンだと印象があるけど噂通りの変態かつ変態なのか。

 アルビレオというよりもこの爺口調のチビ一郎君が先に看破している。アルビレオは前から正体を知ってそうだ。素晴らしい変装術ですね、と笑顔で言っていたし。

 

 

「完璧過ぎて逆に粗が出とるんじゃ。完璧なるが故の欠点という事じゃな」

 

「私の場合は人伝ですね。キティという可愛い子からです……子供の姿では」

 

 

 え、え、え、エヴァンジェリンんんんんんんん!?

 

 声を出さなかったのは年の功というやつか。絶対に教えたのはエヴァンジェリンだろ。ボクの事を知るのは彼女だけだ。名前にもキティってあるからアルビレオに教えてのは間違いなさそうだ。

 アルビレオとは面識はあるらしいし、連絡手段も確保していると見ても確実だと思われる。

 

 

「お、おおおお、お待ちくださいませ」

 

 

 駄目だった。吃って動揺がすぐにバレそうなほど声が震えてしまった。どんだけエヴァンジェリンに恐怖を抱いているんだ。

 

 

「お、お、お、オヤジさん。お、オヌヌメ定食をふ、ふふ二つ」

 

「お、おう。何でそんなに動揺してるんだ?」

 

 

 だ、大丈夫だ(震え声) 問題ない(虚勢)

 

 どうやら案外ボクの精神は豆腐だったようだ。誰だ。ボクの精神は鋼の精神だとか言ったのは。自画自賛したボクだな。

 カタカタカタと水の入れたコップも震える。チビ一郎君とアルビレオに持っていく用に入れたんだが他の誰かに任せたい。だけど気難しい店主の影響で最小限のアルバイトと店員しかいないので手が空いているのはボクだけ。畜生。

 クソ。死神アルビレオが笑顔で手招きしてやがる。はよ来いってか。

 

 

「水でででです」

 

「おや。声が震えてますよ」

 

 

 誰のせいだ誰の。

 

 

「ところでお時間はありますか? 仕事の後にあるのなら私達の話を聞いて欲しいんですが。無論、貴方にも悪い話ではないと思われますよ」

 

「ワシ等のが寧ろメリットはあるがの。主を釣るためにもう少し良い条件を出そう。ワシが知る魔法の真髄を明かすつもりじゃ」

 

「このゼクトは貴方と同類です。長い時を生きた大魔法使いと思っても構いません」

 

 

 ……!? 吸血鬼なのか!? エヴァンジェリンの言う貴族の類かも知れないのか!? 仲間だ仲間。ナカーマ。

 魔法の真髄に触れればその真髄に触れ続けるために体の時間が止まると記述があったはずだ。伝説の魔法使いとして名が残るほどの魔法使いなら誰もがそんな風になるとも与太話のように記されているのを覚えている。

 体の時間が止まる点で時を越えられるか否かを研究したのでハッキリと覚えている。全くわからなかったのですぐにこの情報は放置したけど。

 

 

「どうでしょうか」

 

 

 デメリットと言えるのはないかな。もう正体がバレているんだから他にデメリットがあってもデメリットとは言えないデメリットだろうし、逃げるだけなら全部の力を使えば逃げ切れる。

 何の話かは知らないがエヴァンジェリンと接触したアルビレオにはエヴァンジェリンの様子を聞いておきたい。病んでるなら逃げる。全力で逃げる。次元を超えて逃げてやる。

 クソ亭主かこの思考。

 

 

「いいよ。場所は?」

 

「私が迎えに上がります。できればょぅι゙ょの姿をリクエストさせて――」

 

「料理ができるまでお待ちくださいクソ野郎」

 

 

 やっぱり会うのやめよかな。変態の相手をするだけデメリットだ。

 ネクロロリコンとかでも通じるんじゃないかな。ペドフィリアって名詞は過去にないと仮定してネクロペドフィリアは何かの隠語かと思ったけどコイツが語源だろ絶対。

 

 アルビレオとチビ一郎君ことゼクト君? だけ構っていられないので仕事を再開する。顔だけは良くして変装しているので女には声をかけられる。それで更に忙しくなる。

 自分は貴族なのですわよ的にオーホホホと勧誘する頭の痛いアバズ……コホン。オバサンがいたが店主の気難しい性格に助けられた。なんだかんだでツンデレだもんな、このオヤジさん。好きだぜ。

 懐かしいなぁ。英語とか教えてもらったのもこんな感じのオッサンだったからもういない恩人を思い出すよ。天国で会えるなら閻魔様を蹴り飛ばしてまで美味い酒を渡しに行こう。

 

 

「おう。今日はもう上がっていいぞ」

 

 

 お疲れ様ですと言う者もいれば滑舌の悪いのはオツカレッシターと言うのも。一日の多い客を捌ききった疲れを癒すためにアルバイト君や前から働いている先輩は疲れたーと言いながら退散する。

 体を鍛え、体力も魔力もあるボクは余力は残っているのでアルビレオが迎えに来るまで片付けと明日の仕込みをする店主のオヤジの手伝いをする。

 前に人気を妬んで襲撃されたとも聞いているので用心棒としても雇われた身だ。美味いメシ、残飯というか余り物がバイト代になるから兼用してる。昼間はウェイター、夜間は用心棒。忙しい忙しい。

 

 

「おやっさん。ちょいとソルトの効き過ぎ。少し減らしてもいいと思うよ」

 

「おう」

 

「こっちは少し茹でる時間を長くした方がいいかも」

 

「おう」

 

「……というかいいの? こんな若造の助言なんか鵜呑みにしても」

 

「構わねえ。お前さんは確かな舌を持っているしな。儂としても何が悪いかを知りたい。それだとお前さんは的確なアドバイスをしてくれとるわい。他のボンクラとは違う」

 

 

 ボンクラは言い過ぎだろ。

 

 思わず苦笑する。味に文句はないけどエヴァンジェリンに鍛えられたブルジョワベロだとどうも満足せんらしい。しかも的確に味を更に美味にさせるアドバイスはできているらしい。

 何だか漢字の画数の多い幼稚園児のようだ。いやぁ、また漫画が読みたくなるな。

 そうだ。今の時期ならそろそろ連載開始じゃないか? ジャンプとかまた読めるかと思えば胸が熱くなる。連載開始時の週刊誌ってマニアには高く売れるんじゃないか? 宝の山だぜウハハハ!

 

 

「おやっさんおかわり」

 

「よく食うなお前さん」

 

 

 働き詰めで昼も食ってないからね。腹が減るのは生き物である証だよ。化け物になっても腹は減るんだねぇ。性欲もあるし睡眠欲もある。

 空にした皿を突き出すと今度は作る側が苦笑していた。綺麗にペロリと食べたので心なしか少し嬉しそうにしている。愛嬌のあるツンデレオッサンだなぁ。

 

 おかわりを貰い、咀嚼する音とアドバイスする声、それに返事する声が店の中に響く。ほぼ毎晩こんな会話が交わされるようになったのは店主に信頼されている証拠だろう。

 ふむ。老若男女問わずに打ち解けられるようになるなんて昔の自分だと思いもしなかったと思う。趣味の合う人間と家族、子供の頃から仲が良かった親戚としか普通に話せなかったあの頃とは大違いだな、ホント。

 

 

「……ん?」

 

「どうした」

 

「や。少し外から変な音が」

 

 

 だけどモグモグは止まらない。麺に似た飯も美味で手が止まらないでござる。

 

 

「お迎えに上がりました」

 

「ついでだから喧嘩を売った外のアホ共は片付けておいた」

 

「あ。君等がノシた音だったのね。誰かが倒れたから心配しようと思ったけど心配無用だったね」

 

 

 ドサッて聞こえてたけど別に問題はなかったようだ。食べながらは行儀が悪いけどモグモグしながら外を覗いてみればギャグコメディーのようにチンピラが積み重なって捨てられていた。

 よくよく見ればその内の三人は前にもいたじゃないか。懲りないなぁ。

 

 

「なんかありがとねー。コレ、ボコボコにするのは雇ってもらう条件の中にあったんだけど代わりにやってもらってさ」

 

「構いません。ほとんどゼクトがやりましたし」

 

 

 人任せかい! アルビレオは何もしていないのに何でそんなにえばってるんだ!

 

 

「あーっと、ゼクト君でいいの?」

 

「うむ。フィリウス・ゼクトじゃ。よろしく頼む」

 

「ゼクトが麻帆良で言っていたナギの魔法の師匠です。これでも私よりも強いんですよ?」

 

「へー。ナギ君の。指導もさぞ大変じゃない? 魔法を使うのなら強いのがいいとかってごねてると思うんだけど」

 

「……わかっとるなら何故あの馬鹿弟子の体術を教えんかった」

 

「めんどくさい」

 

 

 キラッと星が付くほどウィンクをしてみた。白髪子供の額に青筋が立つのがよくわかる。笑顔で青筋は何をされるかわからないから怖いんだよね。

 もう初対面でめんどくさい子なのは経験上わかるもんでしょ。我の強い子でもあるし基礎を怠りそうな気もする。魔法を魔力で押して発動させる事も普通にやりそうだ、ナギ君の場合は。

 

 

「わかった。主、他人に自分の極意が盗まれるのを嫌うタイプじゃろ。馬鹿でも才能だけはピカイチじゃからのぉ。アンチョコを見なければ魔法も唱えられんが体術なら一見で真似するからの、彼奴は」

 

「そうそう。ボクの技もいきなりコピーされたからね。その時点で弟子入りはぶん投げておいた」

 

「クソじゃのぉ」

 

 

 いきなりクソ呼ばわりするとは。このショタジジイは辛辣のようである。

 まあ、押し付け感が凄まじいからしょうがないけどね。ナギ君、面倒そうな性格してるもんね。ゼクト君からすれば押し付けられたと思うだろう。

 ボクが最初にナギ君の師匠役を引き受けていればゼクト君は要らぬ苦労はせずに済んだのにと思っているだろう。どんだけナギ君はめんどくさいんだ。

 

 

「店主さん。この方をお借りします。長くなりそうなのでちょっかいを出している方々の根城や組織は潰させていただきました。当分は安心して営業はできると思います」

 

「え。早くね?」

 

 

 信じられないといった目で見ればアルビレオはゼクト君を見る。ゼクト君は可愛いドヤァをしてくれた。ムカつく気分よりもほっこりした気分になる。

 

 

「ゼクトは感知能力はずば抜けていますからね。怪しい所を片っ端から潰させてもらいました」

 

「マジでか。イイナー。ボクは感知能力は素人以下だから少し羨ましいよ」

 

 

 言い方を変えれば他の魔力を感じられない? この気配……貴様、見ているなッ的な事は不可能に近いわけだ。

 エヴァンジェリンにも矛盾の塊だと言われた事がある。魔力は使えるくせに他者の気配と魔力は感じられないのはおかしいと。元々魔法が使えるようになった過程も人と違いますからねぇ。しょうがないね。

 

 

「おやっさん。悪いんだけどちょいと休みを頂戴」

 

「お前さんの枠は空けておく。いつでも帰ってこい」

 

「おー。太っ腹。事が済んだら顔出すよ」

 

「おう。怪我だけはすんなよ」

 

 

 油で汚れた手で背中を叩いてきた店主、おやっさん。汚れるが純粋な好意は久し振りなのでちょっと嬉しかったりするので構いません。

 

 僅か三ヶ月しか働いていないがやめる事になった店を後に、アルビレオとゼクト君と共に場所を移す事にした。

 ょぅι゙ょ……幼女リスペクト厨のアルビレオがウザくて堪りませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 





 エヴァンジェリンに恐怖。だけど策略家と勝手に思う乙女心がわからないクソ野郎認定。まあ、どうかは後でわかりますけどね? どっちだと思いますか?

 オヤジさんからおやっさんはただの言い方の問題。別に間違えたわけではない。いらっしゃいませーとらっしゃせーと同じ。

 というわけで初登場のゼクト。彼にはショタジジイと毒舌のポジションに勤めてもらいます。どうやらナギ君にストレスが溜まっているようです。

 ナギ嫁が犠牲になるのは大体ロリコンのせい。紹介さえしなければああはならなかっただろうに……。


 ところで関係はないんですが今回の時獄編のラストは催促っぽいと思ったのは作者だけでしょうか。天獄編とか。カヲル君とシンジ君の絡みが見たかったのに(錯乱)

 ぶっちゃけヒビキ=アサキムとか言われても驚かないよ。




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