淫夢を見たのに何でエヴァじゃねーんだよ(憤怒)
腹が立つのでナギ君をとことんイジメます。改訂するので時間はかかりそう。
「だから俺を弟子にしてくれよ爺さん!」
えー。
「むぅ。ワシにゃ、君を弟子にする理由はないと思うのじゃが」
「じぃじ、吹っ飛ばす?」
構わん。やれ。
なんて言えずにやる気なソフィにげんなりする。本気でやればナギ君死ぬんじゃないのかと思うんだが。人形であっても一撃が重すぎるから骨は容易く砕きそうだ。
じぃじ守る。ご主人様守る。それを創造主のエヴァンジェリンに創られて人格を作る時に刷り込みをして忠実に守っている。ネタもできやしない。
場所は変わって麻帆良学園内のオープンテラスのオシャレなカフェ。ジジイのボクとその隣にいるソフィ、対面に暑苦しいナギ君。弟子にしろと五月蝿くて鬱陶しい事この上ないんだが。
何故こうなった。殴り飛ばしたい。吹っ飛ばしたい。
「なあ。いいだろ? アンタの弟子になればもっと強くなれると思うんだ。爺さんが言うように油断しないように色々教えてくれよ」
「やじゃよ」
義理もないし。
「いいだろー! いいだろー! 説教してくれた事を直したいんだから教えてくれよー!」
「やじゃって言うとろうが。ワシ、君を鍛える理由も義理もないし」
寧ろ誰かに教えてもらえよ。ボクが積み重ねた苦労を好んで教える理由もない。というか教えて完全にマスターされて今まで積み重ねたものを否定されるのが嫌なんだよ。
この子、天才である事は間違いないんだもん。さっきの試合もカウンター技を再現しそうだったもん。カウンター技の中でもお遊びに近い完成度だけどああも一見だけで真似る事ができるなんてムカつくじゃないか。
残念ながらボクは自分の技術を教えて後の世に伝えるほどお人好しではないんだ。捻くれ者と言われるがそんな性格なんだよ。
「それにワシ、魔力は使えても魔法は使えんの。魔法を教えろと言われても無理じゃし」
「そんな事よりも俺は爺さんの体術を教わりたいんだよ!」
「ふぁー。めんどくさいのー」
体術と言ってもこの場合は無駄な動きを削げ落とした結果がこれだからねぇ。年を重ねれば自ずと体術は完成される。ジジイの格闘家が最強である事が多い理由がやっと今になってわかったよ。
ジジイ以上のジジイの年齢だけどボク。何歳だっけ?
しつこいナギ君にとうとう頭が痛み始めた。あんまり中身がジジイの外見ジジイをいじめないでくれよ。血圧が上がったらどうすんだ。
「爺さんじゃなくてもいいから何かこう、強い奴を紹介してくれよ」
「うむぅ。ワシの孫も強いけど人に教えるのは大の苦手でのぉ」
「じぃじを困らせるお前、嫌い」
「……じゃと。ワシも孫も君に教えるという事はないの」
フェヘヘヘヘ。ざまぁみやがれ。
ソフィの好感度はほぼ底辺である。護衛対象のボクが嫌な思いをするとそれに呼応するように眷族人形でもあるソフィに伝わり、好感度が変化するわけだ。つまり、ナギ君の印象は最悪なのである。
子供だからまだ許せるけど大人なら今頃、ソフィは金玉を潰してるだろうよ。エヴァンジェリン直伝のゴールデンボールクラッシャーはえげつない。
「もう話は終わりでええかのぉ? ワシ、もうまほら武道大会を引退して隠居生活をしようと思ってるんじゃよ」
「何ぃ!?」
所謂、勝ち逃げである。もう二度とこの天才少年とやるもんか。技を盗まれまくって挫折する前に逃げるんだよォォーーー!
もう金も貯まっているし、ジジイの年齢も引退を考えてもいい頃だしね。まほら武道大会の主催者側もいいだろってなって引退は決まった。伝説にすれば客寄せにもなると乗り気なのは救いだった。
銅像は勘弁な。サタンのように自分の銅像を大会会場に置くのは嫌だわ。
「ジジイ! 勝ち逃げするつもりか!」
「口調が汚いから弟子入りの件はなし」
「テメッ!」
カフェテラスのテーブルの下から脛を狙って同時に蹴り飛ばす。ソフィと息が合ったので痛みは倍以上のはずだ。殴られる前に殴れという教えだけは忠実に守っているので主人のボクは嬉しいよ。
痛そうだな。まあ、関係はないか。自業自得みたいなもんだし。
この子の素の口調はこれなんだろうなぁ。子供っぽい乱暴な口調でほっこりした気分になる。ちょっと乱暴な口調にして見栄を張るのと同じような事を自分も経験がある。この子の場合だと将来はイケメンになると思うからこの見栄も女性受けするんだろうな。
何かイラつく。もう一度脛を蹴っておく。
「ぽわっ!?」
「じぃじ。パフェを頼んでもいい?」
「ふぉふぉふぉ」
ええよ。構わんよ。
一杯目のパフェを完食した孫が口をクリームで汚しながらもう一杯と要求してくる。服をチョイチョイするのが可愛いので何杯でも許しちゃう。
というかこんなに可愛いのは何で? この子を娘にするマモレナカッタさん羨ましくない? 爆発しろ。
すっかり温くなった珈琲を飲み干し、悶えるナギ君のケーキの分も支払って退散しようかと考え始めた頃。奢って何も言えないようにしようかと思った時。
「失礼します。相席をしても?」
「む?」
何か変なの来た。魔法使いっぽい容姿に胡散臭い笑顔をする男。女泣かせさせるような顔付きだ。とにもかくにも胡散臭い。
「初めまして。まほら武道大会の伝説と呼ばれた御方をこうしてお話してみたいと思いまして」
「ふぉ?」
「一応魔法使いです。他人に聞かれないように結界を張れますがどうでしょうか? あと一人が後で合流する予定なのですがそれも含めて相席よろしいでしょうか……お近づきの印にここの支払いはさせてもらいますよ」
「ホ。構わんのかの」
「ええ」
ふむ。それなら言葉に甘えて……じゃなくて胡散臭い奴だなコイツ。
こう、悪巧みをする事はボクよりも狡猾に思える奴だ。ここで主導権を握られると後々面倒な事になりそうだ。
相席をしてもいいか? と聞いているのにもう既にナギ君の隣に座っているではないか。凄くふてぶてしい奴だ。許可が得られずとも勝手に座るつもりだったのだろう。
「ところでそちらの子はお孫さんでしょうか? 可愛いですね」
「ワシの娘の忘れ形見でのぉ。ワシが代わりに育てておる。ワシみたいに偏屈にならずに育ってくれて嬉しいわい……何じゃその目は」
「いえいえ」
……アウトだこの男。アウトなんてもんじゃない。目を見ればどれだけアウトなのか経験が生きているボクならわかる。
ロリコンだ。生粋のロリコンじゃないか。少なくとも少女に向けるような目ではないぞ今の目は。
(着せ替えは何にしましょうかねぇ)
とか思ってる目だよこれ。しかも思考がダダ漏れで気持ち悪く思えるのに爽やかな笑顔がそれを相殺している。中の思考を読めるとこうもこの笑顔はドス黒く感じられるものなのだろうか。
「おっと失礼。自己紹介がまだでしたね。アルビレオ・イマと申します。お気楽にアルとお呼び下さい」
「ふぁっ!?」
「? 私の名前に何か変な事でも?」
ね、ネクロペドフィリアの精霊? 禁書の魔導書に宿る人格。アリアドネーで見つけた重力魔法の第一人者の名前と同じなのは偶然なのだろうか。
「もしよろしければ貴方のお名前も教えてくれませんか?」
「ふぉー……ワシ、あんまり名前は明かしたくないもんじゃが。まほら武道大会でも正体と素性を知られるのが嫌で名無しのチャンピオンとしてやってきたんじゃ。そっちは勘弁してくれんかの?」
「では代わりにお孫さんのお名前を」
「……もしかするとじゃが、そっちが本当の目的ではないかの?」
「…………フフフフフ」
せめて否定くらいはしろよ。
「じゃあアルビレオ。お前さんはこの子と知り合いなのかの?」
「知り合いと言えば知り合いですね。まだ浅い関係しかありませんが、まほら武道大会の前で少しだけ会話をしまして。幼いですが才能に溢れた子供でしたので」
記憶してました。と。普通ならこんな子を育ててどこまで強くなるのかを知りたいと思うそうだがその普通にこのアルビレオは入っているのだろうか。
アリアドネーの歴史書では変わり者と書かれていたが結局はどうなのだろうか。それとなく聞こうとしてもアルビレオ・イマを知っている事を知られると厄介な事になりそうなので慎重に。
大図書館の禁書エリアにあったものだし、知っているとなるとそのエリアに入れる。入った者は記録をしているから調べられるとみばれが下手するとある。アリアドネー史上最悪の性犯罪者の正体がバレるかもしれん。当時に戻れるなら野郎共を殺してやってるのに。
「まほら武道大会の覇者、それも破れない記録を作った貴方の噂は真実だとわかりました。疑った事を謝るのと一緒に知り合いになれないものかと……ね」
何故そこでソフィを見る。グモッチュイーンしてやろうか貴様。
「後はそうですね。もう一人連れがいるのですが、その連れが貴方のファンらしいんですよ。強い者には誰もが憧れるようで彼も例外ではなかったようですね。それによれば何かの武術の型に似たものがあるそうで」
「ほう。見抜ける者がおるとは」
意味深な発言。だけど蓋を開けてみればただの嘘で虚仮威しなのだが。
「古今東西。今までの人生で戦い、学んだ武術の集大成がワシの拳だ。似通ったものがある事を見抜けるのは強者の証よ」
言い訳はこれで大体通る。格闘漫画やら格闘ゲームのジジイとかはこんな設定が多かった気がするから嘘よりは大丈夫だと思う。
東方不敗先生なら堂々とこれがマスターアジアの拳よ! とか言いながら論破はできただろうに。ドモンでもいいからあの妙な説得力のある論破のやり方を教わりたいものだ。ダンガンロンパ!
「フフフ。格闘家や武術家はこんな説明をするそうですが貴方もその類のようですね」
「ふぉふぉふぉ。褒め言葉として受け取っとくよ」
「ありがとうございます。フフフフフ」
(じぃじ。ちょっと怖い)
おっと。所謂、腹黒い奴がよくあるウフフフやらアハハハをしていたようだ。少しシチュエーションを変えれば爆発しろと言いたくなるがこの場合は当人から離れようとするだろう。
念話でソフィに注意をされ、ジジイの顔の髭を撫でる。気持ちを落ち着かせるのにジジイの姿はこの仕草が一番だ。顎を撫でてるようにも見えるので考えてる素振りにも見えている事だと思う。
「フフフ。こうして話すと腹の探り合いは無意味そうですね。やはりストレートに話せばいいでしょうか」
「ふぉふぉふぉ。構わんよ。そちらは正直に話せども、ワシは正直には言わんかもしれんがのう」
「大丈夫です。こう見えても人の心を探る事は得意ですので。話さなくても見抜いてみせましょう」
帰りたくなってきた。
「ところでナギ。負けてしまいましたがどうでしょう? 始まる前の提案を今なら冷静に考えられるはずです」
アルビレオは興味の対象をこちらから痛みから復帰してすぐのナギ君に移ったようで胡散臭い笑みを崩さないままに言葉を掛けている。
振られたナギ君といえばバツの悪そうな顔で顔を背け、ポリポリと赤い髪の毛を掻いている。その様子からナギ君とアルビレオの間に何があったのかは大体予想できた。
「貴方はこう言いました。“俺は最強だから誰かに教わる事はしねぇ”と。更に“教わる相手なら自分でも決められる”。今はどうでしょう? この御方に敗れた上に完敗とも言える屈辱的な負け方をしました。それでもまだ提案を断りますか?」
「うっ。それは……悪かったよ。あんな断り方をして」
「フフフ。しおらしい貴方もいいものですね」
え。アルビレオはロリコンに加えてホモでも……ないか。ただの愉快犯かドSなだけか。
どうやらナギ君は最初はアルビレオに弟子にならないかと誘われていたようだ。だが断ったようでアルビレオが再び勧誘しているのが現状だろうか。戦う前から自惚れてたのかこの子。
「魔法の師匠に最適な人材を知っています。私は教えるのが面倒臭いのでそっちに任せようかと」
自分から誘っておいて他人に丸投げか!
「
「じぃじに聞いて」
「なら断る」
「そうですか? 隠居先に良い場所を知っているのですが。どうでしょう? フフフ」
何でこうも興味を持つんだ。正体がバレているわけでもないのにここまでボクを知りたがって親交を作ろうとしているのはどうもおかしい。
「隠していても不振に思われるようですのでハッキリと私の目的を申し上げましょう。まずは私のアーティファクトの説明を。
ト、ト……何だって? やめてくれよ。アーティファクトの名前なんてわかるわけないし読めるわけもないだろうが。
「命の紙片、が日本語で合いますね。それならばわかりますか?」
「まあの」
「私の趣味は他人の人生をイノチノシヘンに記録し、鑑賞する事なのです。趣味が悪いとは言われますが長生きしていると変な趣味を持ってしまうものでして」
あー、わかるわかる。アルビレオと比べればまだ軽いがボクの趣味も普通の人間と比べれば悪いらしいし。長生きするとどうも暇なんだよね。
「ふぉふぉ。人には人の趣味がある。ワシはとやかく言わんよ」
「おや。珍しいですね。普通なら受け入れないやら気持ち悪いやらと言われるのですが……フフフ。ますます興味を持ちましたよ。できれば貴方の人生も見てみたいものですね」
やだよ。
ボクの人生を見られると正体はバレるしエヴァンジェリンしか知らない秘密も知られてしまう。デメリットが多すぎるので絶対に教えられないのが理由だ。
性格が悪そうな奴だし、未知なる情報やら技術を教えると碌な事にならないのが目に見えている。生粋のラスボス(?)にもなりそうだ。
「フフフ」
あーも。厄介なのに目を付けられたなぁ。
「俺は……行くぜ。アンタに弟子入りするのはやめた。今よりも強くなるためにアルの言う魔法の師匠に教わって強くなってアンタを倒すぜ爺さん」
え。何だって? ごめん。空気になっていたから何がどうなってそんな結論になったのかがよくわからないんだけど。
ナギ君が決意を固めた表情で宣戦布告しているのを見て戸惑うしかなかった。内心。流石に表情には出さなかったがもうポルナレフ状態だよ。
「見てろよ! いつかギッタンギッタンにしてやるからな!」
マジかよ……。
ナギに絡まれるの巻。
ここでもうジャック以外の紅き翼のメンバーはほのめかしております。アルビレオはエヴァと旧友と言ってたので例のショタジジイとも知り合いの可能性が微レ存、いや、かなりある。なのでアルビレオ伝いで師弟関係になると決定。
もしここでナギがオリ主に絡まなければ。作者の淫夢にエヴァが出ていれば酷い目にはならずに済んだものを……。
あ。ちなみにソフィですがネギ君の髪の毛のイメージから結び付けて出しました。ほら。暗くしたらパパになるじゃん。