あと三話で大戦。無論、暗躍無双します。
一応、大戦終了まで書いたんですがマジでゲスい主人公になっちまった\(^o^)/
予定としてはネギ君が麻帆良学園に来てからの話は書かず、大戦で話は一旦終了します。二部とかあるから許してちょ。その前に題名『ぱられる☆わーるど』編やります。所謂、逆トリップですねー。
ふへへへ。楽しみだ。
実物は意外と重いんだな、と感想を抱く。命を刈り取る武器を持っているからこそ重さは更に増しているとどこかのキャラクターが言っていた気がする。
「ケケケ。似合ッテイルナ。ソレヲ使イコナセルヨウニナレバモット強クナレルゾ」
「やめてくれ。刃物の扱いは苦手なんだ」
剣術よりも同じ読み方をする拳術が得意だ。真っ直ぐ行ってぶん殴るのが得意だし魔法使いタイプに近いボクは刃物、剣に刀は使えない。振り方も素人丸出しだし、すぐに使いこなせるような主人公はしていないのだ。
ゼロが狩った刀の一本を抜いて反り返った刀身を眺める。日本刀と呼ばれるそれは最も美しい刃物と言えるだろう。こんなの使いこなせるわけがない。
「ボクに何をしろってんだよ」
「ケケケ」
返事は笑うだけだった。何が言いたいのかわかってしまう自分が恨めしく思える。
つまり、刀を使いこなせるになって斬り合えって事だろう。殺人狂と同時に刃物での殺し合いが好きなゼロだからこそ辻斬りもするんだろうなと思う。
犠牲者は何人出たんだ?
「ソレハヤルヨ。護身用ニ持ットケ」
「礼は言わないよ」
「ケケケ」
大前提に持ち運びはどうしろと。エヴァンジェリンのように影に放り込んで保存する器用な事はできないんだぞ。
スッ、パチン。おー。
本当に日本刀はこんな音を出すんだなと感動した。鍔と鞘がぶつかり合う音が日本刀特有でとても嬉しいんだけど。やっぱりボクも男の子なんだねぇ。
殺人狂だが刃物が大業物か否かを見極められる能力は誰よりも秀でているゼロ。だからこそどれが一番大業物かがわかって選べる。今、ボクが持つ刀はそのどれよりも上等な物なのだろう。
「ケケケ。乗ッ取ラレルナヨ」
「は? これ妖刀なの?」
「ケケケ。サアナ」
「え? マジで妖刀なの? マジどうなの?」
ちょっとゼロを見直せばこれだよ。
「ほう。チャチャゼロから貰ったのか」
「妖刀かどうかは最後まではぐらかしてたけど。妖刀の類なら闇の精霊が警告するはずだから大丈夫でしょ」
「待て待て。お前は意図的に妖刀が作れるのか。絶対にそれだけはするなよ」
パシパシパシと音が耳にも骨にも伝わる。エヴァンジェリンの小さな手を防ぐ度に手と肌がぶつかって鳴り響いている。空手でもこんな風になるのだろうかとどうでもいい事を思っていた。
久し振りに魔法を使わずに体術だけで勝負するとエヴァンジェリンの技術が上なのだと嫌でも実感する。元々高い技術に合気柔術が加わって最強に見えて仕方がない。
「やっぱり強いねエヴァンジェリン。見極めるだけで精一杯」
「ふんっ。全て防ぐ癖に余裕がないとか言うな」
「ホントホント」
忍ばない忍者を見ていて良かった。特殊な眼を使ってコピーする者がいてその応用で眼に魔力を流し、視力を強化した上で反射神経も底上げする事でようやくエヴァンジェリンと渡り合えている。
吸血鬼のなりそこないの膂力、吸血鬼の真祖の膂力。どちらが上かは一目瞭然。エヴァンジェリンもこちらが底上げをしているのはわかっているだろう。
「それにしてもお前の魔力の運用は凄いな。なりそこないと真祖の差を埋めるなんて滅多にない事だぞ」
「褒めてくれてありがとう。だけどその余裕、いつか崩してやる」
「ほぉう? 合気道を学んだ私に勝とうと思ってるの、かっ!」
一瞬の隙を突いたらしく、腕を絡め取られて地面に叩き付けられた。息が詰まり、息が口から吐き出された。というか頭を打ってマジ痛いんだけど。
また負けたし……純粋な体術じゃエヴァンジェリンには一生勝てないのだろうか。
「これで私の……」
「ボクの78419戦1勝78418敗だよ。あの1勝はマグレだったんだろうなぁ」
まさに奇跡の1勝だ。性技も絡めたセクハラでもぎ取った卑怯な戦法だったけど。
頭と打ち付けた腕を摩りながら腕を組んだエヴァンジェリンを見る。年の功というやつなのだろうか。経験もエヴァンジェリンが完全に上で基本スペックも眷族であるので差はどうしても出てしまう。
マギア・エレベアだけがその差を埋めているのだろうと思われる。マギア・エレベアの恩恵だけが魔力の運用を助けてくれているからエヴァンジェリンと渡り合えるだけの力を発揮できているのだろう。
「ふふん。これだけなら私は負けんぞ」
「そだね」
「まだまだ負けんぞ。純粋な模擬戦闘も何れは絶対的優位を取り戻してみせる。合気柔術の極意で
クックックと笑うエヴァンジェリン。自信に満ち溢れた顔に思わず喝采を差し上げたくなる。
……まだ強くなるのかこの子。余計な知識を与えない方がよかった。
素性を明かす際に記憶を覗かれたのは痛かったな。エヴァンジェリンにはエヴァンジェリンなりにボクの知識の中にある有効活用できるものを選んだのかね? 何を使ったのかも予想できんが。
まさかとは思うがエターナルフォースブリザード使わないよね?
「ふむ。合気柔術の極意は習得したからもう長くいる必要はないな。そろそろ麻帆良学園の世界樹を見に行こう」
「……ごめん。何かエヴァンジェリンの事だから何か企みがありそうに思えるんだけど」
「まあ、一応な」
犯罪を起こして追われるのだけは勘弁ね。
「バレなきゃいいんだよバレなきゃ」
「何をするんだ何を」
「なぁに。ちょっと世界樹の枝を切り落として魔法媒介を作るつもりだ。世界樹と呼ばれるからには最高の杖ができるだろうな。フフフフフ」
ありそう。世界樹の杖ってのがゲームにもありそう。詠唱時間短縮やらMP消費軽減の効果が期待できそう。取り敢えずボクも欲しいんだけど。
世界樹のイメージって君と響きあう物語しかないんだが。マナとか生み出して中に世界樹の精霊がいるとかそんなのしか思い浮かばないんだけど。美人だった気もする。
「マナが満ち溢れる世界樹。別名は神木・蟠桃。一説によれば世界の中心にある魔力の噴き溜めで普通のそれよりも純度が濃すぎて武器が持ち主を選んでいる事になるとも聞いている」
「毎度毎度情報集めるの凄いねぇ」
「まあな。生き残るために情報は何よりも大事なものだ。強くなる前にまずそこを鍛えた。そこで吸血鬼の魔眼も体得したな。ハハハハ」
……ごめんエヴァンジェリン。君の事を誤解していた。努力はしていたんだ。
「もしかするとボクが金を集めている間に情報を集めてたの?」
「……う、うむ。情報料も含んでいたから……」
「……本当にごめんねエヴァンジェリン。昨日はあんなに怒って。君を誤解して怒ってしまってごめんね」
「(何か丸く収まっている……? ちょうどいいからこのままにしておこう。りょ、良心が痛むな……)」
エヴァンジェリンの小さな体を抱き締めて背中をポンポンした。怒り過ぎてエヴァンジェリンが可哀想になった。
ボクって最低だな。事情も聞かずに怒るだけ怒って。悪い事をした。
よくよく冷静に考えればエヴァンジェリンはボクよりも上だ。という事はボクには到底思い付かないような事も考えて実行しているはずなんだ。本当に悪い事をしてしまった。
「ごめん。これはお詫びだよ。好きに使って?」
「お、おう。妙に優しくなったな」
「情報が大事なのはわかった。このお金をあげるからどんどん情報を集めて」
「ごばっ」
「(心が! 心が痛むっ!)」
ボクのヘソクリも含めて大金をエヴァンジェリンに渡す事にした。今までの非礼と無礼への謝罪も込めて。コツコツと貯めた11万ドル、大事に使ってください。
「さて。麻帆良学園へはどうやって行くの?」
京都から埼玉なんてそれこそ新幹線しかないぞ。車もないから歩くしかないのか? 鉄道らしきものは明治維新か何かであったような。だけどボクが知る新幹線は割と最近だった記憶があるからまだないだろう。
新幹線はない。世界樹があるというならおそらく警備は厳重。魔法を使えば一発でバレてしまうかもしれない。やっぱり歩きか、歩きなのか。
「ふ、ふふん。実はな、もう用意してあるんだ。少なくとも歩きよりは楽だ」
「……あ。もしかして馬車?」
「残念。馬車は高かったからジジイから馬をもらっておいた。膝に乗って頭を撫でさせたら意外とチョロかったぞ」
もうエロジジイだから驚きはせんぞ。あれは色欲に惑わされる愚者なんだ。
「ほら。前に馬に乗ってみたいと言ってたろ。私はお父様に教わったがお前は初めてだろう? 教えるから二人で乗るぞ」
「え。練習もなしにいきなり? 落ちたりしないの?」
「飛行魔法ができるならバランス感覚は優れているはずだ。それも超高速で動けるお前なら闘牛すらも乗りこなせるだろ。吸血鬼の膂力があるからな……チャチャゼロ」
「アイヨ」
ビックリした。いつの間にかゼロが後ろから馬に乗って現れた。というより人形が馬に乗る光景はシュールだな。
「ケケケ。コイツ、中々使エルゼ」
「人形が馬さんを馬鹿にしてんじゃねーよ」
「ケーケケケ! オメーノモ馬並ダロウガ。同類ジャナイノカ?」
何でこうもこの子等セクハラ発言するの? ボクの息子は確かにでかいけど馬って表現はないでしょ馬は。黒人さんのには勝てないよジャパニーズは。
……この馬、雌か。もし雄なら獣姦モノの薄い本的な展開にエヴァンジェリンが巻き込まれてしまっていただろうか? そうなるなら今夜の飯は馬刺しだ馬刺し。雌でよかったなお馬さん。
ちょ、ちょっと緊張してきた。馬に乗るのは初めてだ。動物園とか阿蘇山の馬に騎乗体験を見た事はあるが乗った事はないんだから。
鞍? らしきものもあるからエロジジイがそこまで用意していたのだろうか? 干し肉っぽいものも吊るされている。今日は魔王討伐の旅立ちの日なのか。ボク等の立場だと勇者じゃなくて魔王だけどな。
「手を伸ばせ。引き上げてやる」
「えっ。そっちでいるの?」
「子供の姿だと難しいんだ。お前が慣れたらすぐに子供に戻るよ」
「……ゼロにボクにエヴァンジェリンだと馬さん潰れない?」
「意外と乗れるもんなんだよ。ほら早く」
まるで女騎士のようだ。馬に跨り、太陽を背にした戦女神のような立ち振る舞い。大人になったエヴァンジェリンにはよくその姿が似合っている。
実際には馬に乗って手を差し伸べているだけなんだが。それだけでも絵になるのだからエヴァンジェリンは凄いと思う。ボクもヒロインを助ける勇者みたいにあんなになれるかな?
心配していても仕方がないので差し伸べるエヴァンジェリンの手を掴んだ。グイッと引き上げられ、後ろに乗せられる。前の自分ならおっとととか言いながらバランスを崩しただろうに、今は危なげもなくフワリとエヴァンジェリンの後ろに乗れた。偶然おっぱいを触ったが怒られないのでよしとしよう。役得役得。
「手綱を握れ。リードしてやる」
「お、おう」
「前に進むには馬の脇腹を圧迫するんだ。動かないなら軽く蹴るんだ」
それはよくゲームとかで見たな。ハイヤッ! とか言いながら馬が駆けるのを何度も見た事がある。格好良い馬の乗り方をマスターすれば流鏑馬とかできるのだろうか。
エヴァンジェリンの言う事を素直に聞きながら手綱を緊張した手付きで操る。難しいと聞いていたが結構慣れると楽しくできるものだ。
「おっとと。どうどう」
「上手いな。上達が早い」
「エヴァンジェリンのアドバイスが的確なんだよ。それに絶妙なタイミングでリードしてくれなかったら暴れて落馬してるよ」
エヴァンジェリンにサポートしてもらいながら左と右と。馬をその方向に進めては停止させる。ちゃんと言う事を聞いてくれるのが嬉しく思える。馬ってこんなに素直なんだなと。
相変わらず笑うゼロが頭に乗って馬の進む方向に合わせて体を傾けている。人形って地味に重いから頭が鞭打ちになりそうだなぁ……包丁みたいなデカ刃物も背負ってるしその分も重くなってるんだろう。
「ケケケ。ヤッパリ上達スルノモ早イナ。オメー、意外ト武術ノ達人ジャナイノカ? 過去ニ武将ノ家系デモイソウダゾ」
「ないない。平々凡々の家系だって」
夢中になれる物事なら上達も早いって誰かが言ってた。乗馬って意外と夢中になれるもんなんだなと自分でも驚いた。
魔法もだけどファンタジー要素があると子供のように楽しめる。マギア・エレベアが闇の魔法である事だけが悔やまれるがそもそも魔法使いの才能がなかったボクが使えるようになるにはこの邪道しかなかったから文句は言えない。
「……もう私のリードはいらんか。じゃあ頼んだ」
「オケー」
少しだけ浮くと大人から子供に変わる。スッポリと横抱きするような体勢になり、子供っぽい笑顔を浮かべた。
……ってあれー? 薬を使っていなのに何で小さくなってんの?
「ん? ああ、体内に年齢詐称薬が残留していてな。ちょこっと操ればこういう事もできるわけだ。魔力を操る事に長けているお前もできない事はないはずだ。というかもっと他の事ができるだろお前」
「逆にありすぎて何をしたらいいかわからん」
「贅沢な悩みだな」
「刃物ノ扱イヲ頑張レヨ」
「しつこいね君も」
どうしてもゼロはボクを剣士にしたいらしい。だがごめんだ。
「じゃあ行こうか。麻帆良へ」
「ああ」
「ケケケ」
積もる話は道中でもできるしね。ゆっくりと乗馬を楽しみながら麻帆良へ向かおう。
エヴァは元貴族(?)らしいので乗馬も得意と勝手に解釈。この時代だとまだ移動手段は馬か馬車だと思われる。違ってもこの世界独自の設定だと思って受け入れてくれるとありがたい。
そしてオリ主御用達、ニッポントー。ぼくのかんがえたさいきょうのりゅうはで技を繰り出すオリ主さんマジカッケー。ウチのは剣術はからっきしだからウラヤマシイワー。
斬るんじゃなく切る。これに限る。後は魔力を乗っけて海波斬やら何やら。飛ぶ斬撃を見た事はあるか?